違憲の戦争法案成立(「立法改憲」)は阻止できる

第 61 回日本母親大会
「平和と民主主義」23 分科会
「戦後 70 年『戦争をする国』にしたくない!」
違憲の戦争法案成立(「立法改憲」)は阻止できる!
~ 私たち主権者にとっての課題 ~
日時:2015 年 8 月 2 日(日)10 時~(11 時から 30 分)
会場:「神戸国際展示場」1号館2階展示室 A
上脇博之(神戸学院大学法学部・教授)
1.安倍政権の「戦争する国」づくりのための法的整備の現状
(1)特定秘密保護法(特定情報隠蔽法)制定強行(2013 年 12 月 6 日成立)・・・知る権利を侵害
し、戦争のために戦争関連情報を隠蔽する違憲の法律で、明文改憲の先取り。
(2)安倍内閣の集団的自衛権(他衛権)行使等の閣議決定(2014 年7月1日)「解釈改憲」
(3)「日米防衛協力のための指針」
(ガイドライン)改定合意(今年 4 月 27 日)
(4)安倍政権は「立法改憲」へ・・・明文改憲の先取りへ
・今年 5 月 14 日に安倍内閣は戦争法案を閣議決定、同月 15 日に国会に提出。
◆戦争法案=「平和安全法制」11法案(自衛隊法・武力攻撃事態法・周辺事態法など現行法の改正案
10 本を一括した「平和安全法制整備法案」と、自衛隊の海外派遣の恒久法となる「国際平和支援法案」
)
。
・集団的自衛権は自国が外国から武力攻撃を受けていなくても自国と密接な関係にある他国が武力攻撃
を受けた場合に当該他国を衛るために武力行使をする権利なので、自衛権ではなく他衛権である。
◆集団的自衛権=他衛権の行使は条約に基づく場合には法的義務であり、条約に基づかない場合には政
治的義務となっている=違憲の他衛戦争への参戦は義務!
・自民党政権はアメリカの戦争が間違った戦争であると批判したことがないうえに、後方地域支援(=
兵站)をしてアメリカの戦争に加担し参戦してきた。
◆従来の後方地域(非戦闘地域)支援(=兵站)は戦争法案で後方(非戦闘現場)支援(=兵站)へ・・・・
「現に戦闘行為が行われている現場」以外であればどこの地域でも自衛隊を派兵でき、隊員の正当防錆
のためだけではなく自衛隊の任務のためにも「武器使用」できるようになる(=違憲の武力行使)
◆国連平和維持活動(PKO)で実施できる業務を「駆けつけ警護」などへ拡大。
◆自衛隊員の他、国家公務員、地方公務員、指定公共機関の労働者も他衛戦争に動員され、平和的生
存権を侵害される!
・
「指定公共機関」とは、
「独立行政法人、日本銀行、日本赤十字社、日本放送協会その他の公共的機
関及び電気、ガス、輸送、通信その他の公益的事業を営む法人で、政令で定めるもの」で、政府が指定
した公共的機関・公益法人。
◆日本が武力攻撃をすれば、反撃を受ける。自衛隊員は「殺し、殺される」立場に強いられ、日本の民
間人もテロの対象になる可能性は高まってしまう・・・平和的生存権の侵害。「専守防衛」論者も戦争
法案反対!
◆新自由主義政策の強行、防衛費増額、消費税率引き上げ、社会保障など福祉予算削減へ!
・今年7月 15 日、自民、公明両党は衆議院安保法制特別員会で与党単独で強行採決、翌 16 日衆議院本
会議で強行採決
2.戦争法案とその衆議院強行採決に対する評価
(1)憲法研究者の違憲・廃案表明
1
①全国の憲法研究者有志の声明「安保関連法案に反対し、そのすみやかな廃案を求める憲法研究者の声
明」
(2015 年 6 月 3 日)呼びかけ人38名、賛同人128人、計166人。
6月29日15時現在で、呼びかけ人38名の他、197名の賛同人、計235名。
②衆議院憲法審査会(6月4日)での3名の参考人の“違憲”発言
・自民党が推薦した長谷部恭男早稲田大学法学学術院教授、民主党が推薦した小林節慶応大学名誉教授、
維新の党が推薦した笹田栄司早稲田大学政治経済学術院教授
③テレビ朝日「報道ステーション」の「憲法判例百選」執筆者アンケート(6月15日放送で発表)
憲法研究者198名。回答した151名のうち「憲法違反の疑いはない」は3人名。
④朝日新聞の「憲法判例百選」執筆者へのアンケート(7月11日朝刊で発表)
憲法学者ら209人。回答した122人のうち「憲法違反にはあたらない」2人。
⑤中日新聞・東京新聞の全国の憲法研究者等へのアンケート(7月9日朝刊で発表)
憲法研究者等328人。回答した204人のうち「合憲」7人(3%)。
⑥NHK「クローズアップ現代」の全国の憲法研究者・行政法研究者等へのアンケート(7月23日(木)
放送で発表)日本公法学会の会員や元会員で大学などに所属する憲法や行政法などの研究者1146人。
回答した422人のうち377人が法案は違憲もしくは違憲の疑いがあると回答(89・3%)。
(2) 自民党も違憲と思っている!
(ⅰ)高村正彦自民党副総裁も違憲と思っている!・・・・小渕恵三内閣で外務大臣だったときの国会
の安全保障委員会での答弁:
「憲法9条のもとにおいて許容される自衛権の行使は我が国を防衛するため
必要最小限度の範囲にとどまるべきものであると解しており、集団的自衛権を行使することはその範囲
を超えるものであって、我が国の憲法上許されない」
(1999 年 2 月 9 日衆議院安全保障委員会)
(ⅱ)
「日本国憲法改正草案」
(2012年)
(ⅲ)内閣法制局長官の恣意的人選(安倍首相のお友達の素人)
(ⅳ)中谷元・防衛大臣の「正直な」答弁(今年6月5日。ただし後日撤回):「憲法をいかに法案に適
合させていけばいいのかという議論を踏まえて閣議決定した」。
(3)今年6月の戦争法案についての世論調査結果・・・60%近くが反対
読売新聞(2015 年 06 月 08 日 12 時 00 分)安全保障関連法案の今国会での成立については、
「反対」が59%(前回4
8%)、
「賛成」の30%(同34%)。
NHK世論調査 (6 月 8 日 19 時 25 分)安全保障関連法案を今の国会で成立させる政府・与党の方針について、
「反対」
が37%、
「賛成」が18%。
日本テレビ< 2015 年 6 月 14 日 18:52 >安全保障関連法案を今の国会で成立させることについて「よいと思わない」が
63.7%。
「よいと思う」と答えた人は19.4%。
共同通信(2015/06/21 16:21)安全保障関連法案が「憲法に違反していると思う」56・7%。「違反しているとは思
わない」29・2%。安保法案に「反対」は58・7%(前回から11・1ポイント上昇)
。
「賛成」27・8%。
朝日新聞(2015 年 6 月 22 日 21 時 57 分)安全保障関連法案への賛否は「反対」53%、「賛成」29%。
産経新聞(2015.6.29 12:00)安保関連法案の合憲論と違憲論の「どちらに納得できるか」
、違憲論57.7%、合憲論
21.7%。同法案を今国会で成立させることには58.9%反対、賛成31.7%。
2
(4)主権者国民の平和憲法を踏みにじり、主権者国民を説得する気もなく強行採決!
衆院特別委員会で強行採決された7月15日、安倍晋三首相は同委員会で「国民の理解が得られていな
いのは事実だ」と認めた。
3.「立法改憲」(違憲の戦争法案の成立)は阻止できる!・・・私たちの課題
(1)法律案が成立する憲法上の要件の確認
①「両議院で可決したとき」(憲法第59条第1項)
・・・参議院でも過半数で可決
②「衆議院で可決」し、
「参議院でこれと異なつた議決をし」
(参議院で否決)し、
「衆議院で出席議員の3分
の2以上の多数で再び可決したとき」
(憲法第59条第2項)
③「参議院が、衆議院の可決した法律案を受け取った後、国会休会中の期間を除いて60日以内に、議決しな
いときは、衆議院は、参議院がその法律案を否決したものとみな」し(憲法第59条第4項)、
「衆議院で出席
議員の3分の2以上の多数で再び可決したとき」
(憲法第59条第2項)
◆法律案が成立しない憲法上の要件の確認
① 参議院で「60日」を超えても採決をせず、かつ、衆議院が「参議院がその法律案を否決したものと
みな」さず、
「出席議員の3分の2以上の多数で再び可決し」ないとき。
② 参議院で否決し、
「衆議院で出席議員の3分の2以上の多数で再び可決し」ないとき。
(2)衆議院での強行採決後の安倍内閣支持率の急落、支持率と不支持率の逆転・・・政権・与党
は追い込まれ孤立化へ!
時事通信(2015/07/17-15:07)安倍内閣支持率40.1%。不支持率39.5%。
共同通信(2015/7/18 20:04) 内閣支持率37・7%、不支持率51・6%。
朝日新聞(2015 年 7 月 19 日 23 時 37 分)安倍内閣支持率37%、不支持率46%。
テレビ朝日(07/20 11:48)安倍内閣支持率36・1%。支持しない47%。
産経新聞(2015.7.20 23:22)安倍内閣支持率39・3%。不支持率52・6%。
毎日新聞(2015 年 07 月 22 日)安倍内閣の支持率35%、不支持率51%。
日本経済新聞(2015/7/26 22:00)内閣支持率38%、不支持率50%。
読売新聞(2015 年 07 月 26 日 22 時 01 分)安倍内閣の支持率は43%で、前回調査(7月3~5日)の49%
から6ポイント下落。不支持率は49%と前回の40%から9ポイント上昇。
(3)戦争法案強行採決に批判的で戦争法案成立に「反対6割前後」の世論
時事通信(2015/07/17-15:07)安保法案が「違憲」53.8%、「合憲」19.8%。
共同通信(2015/7/18 20:04)与党が安全保障関連法案を採決したことに「よくなかった」73・3%。
「よ
かった」21・4%。今国会成立反対68・2%。賛成24・6%。法案そのもの反対61・5%、賛成 27.5%。
毎日新聞(2015 年 07 月 19 日)与党が安保法案を強行採決したことに「問題だ」68%、
「問題ではない」
24%。安保法案「反対」62%(前回比4ポイント増)、
「賛成」27%(同2ポイント減)。自衛隊の海
外での活動拡大で「戦争に巻き込まれる恐れが強まる」64%、「抑止力が高まる」28%、今国会成立に
3
「反対」63%(前回比2ポイント増)、
「賛成」25%(同3ポイント減)
。
朝日新聞(2015 年 7 月 19 日 23 時 37 分)安保関連法案「反対」57%、
「賛成」29%。安保関連法案採決
強行「よくなかった」69%、「よかった」17%。政府の憲法解釈を変え、集団的自衛権を使えるように
する法律整備を進めていること「適切ではない」74%、「適切だ」10%。安保関連法案今国会成立「必
要はない」69%、
「必要がある」20%。
テレビ朝日 (07/20 11:48)安保法制を「今の国会にこだわらず、時間を掛けて審議するべきだ」6割近く。
産経新聞(2015.7.20 23:22)安全保障関連法案の成立「必要でない」49・7%、「必要」42・1%。今
国会での成立「反対」63・4%、
「賛成」29%。
日本経済新聞(2015/7/26 22:00)全保障関連法案今国会成立「反対」57%、
「賛成」26%。集団的自衛
権行使「反対」は3ポイント上昇し59%。
読売新聞(2015 年 07 月 26 日 22 時 01 分)与党が安保関連法案を採決したこと「適切ではない」61%。
法案今国会成立「反対」64%(前回63%)
「賛成」26%(同25%)
。
(4)安倍首相の強がりと焦りと説明能力の欠如
①安倍晋三首相は7月20日、フジテレビ番組に出演し、各種世論調査で安全保障関連法案への理解が
広がらず、内閣支持率が下落していることについて「支持率だけを大切にするなら、こういう法案を通
そうとは思わない。支持率だけで政治をやっていない」と述べた。
②安倍首相は、テレビ出演し、アメリカの戦争への参戦のための集団的自衛権(他衛権)行使を、お隣
の母屋の家事に例えて意味不明な「解説」。
(5)新国立競技場についての世論調査結果との比較・・・7割・8割「反対」
読売新聞(2015 年 07 月 07 日 11 時 30 分)新国立競技場の建設を巡り・・・建設計画を「見直すべきだ」と答
えた人81%、
「そうは思わない」14%。
朝日新聞(2015 年 7 月 14 日 05 時 08 分)新国立競技場の建設計画をめぐり71%が「反対」との結果。
(6)安倍政権にとっての逆境・・・支持率下降・不支持率上昇につながる要因
・新国立競技場問題の政府(とくに下村博文・文科大臣)責任追及
・8月15日前後に出される安倍首相の「戦後70年談話」問題
・8月中旬、九州電力の川内原発の再稼働強行の恐れ
・沖縄県の辺野古新基地建設のための埋め立て承認が取り消される可能性
(7)
「反対7割・8割」を目指して全国津々浦々で学習会と運動・行動を!・・・とくに鍵を握る
女性と若者
・反対に確信をもたせる学習会の重要性・・・・憲法研究者の「全国出前講師団」結成
・朝日新聞(2015 年 7 月 19 日 23 時 37 分)
:安倍内閣の不支持率は、男性が前回調査に比べてほぼ横ばいの4
1%に対し、女性は前回の43%から50%となった。
・来年参議院通常選挙から18歳選挙!
以上。
4