月刊フードケミカル2015.7

災害食の現状と展望
別府茂
ShigeruBeppu
ホリカフーズ株式会社
て国は,首都直下地震,南海トラフ地震によ
る被害想定を見直した。その結果,死者・行
1.自然災害の多発時代
日本は自然災害の多い国である。2003年
方不明者は,首都直下地震では2万3000人,
から2013年の間に起きたマグニチュード6.0
南海トラフ地震では32万3000人と想定され,
以上の地震回数をみると,世界全体では1758
最大被災者数は720万人,950万人と東日本
回であるのに対して,日本は326回(18.5%)
大震災の規模を大きく超え(表1),首都直下
となっている。日本の国土面積の割合が世
地震の発生確率は30年以内に70%と予測さ
界の0.25%であるのに対して,M6.0以上の
れている。
地震回数は飛び抜けて多く,地震リスクは高
い。また,活火山も世界の1551個に対して
首都直下地震は人口密集地を襲い,これま
での災害にはない特性の被害が発生すると考
日本国内は110個(7.1%)となっており,噴
えられる。食の面では,720万人の被災者を
火リスクも高い。さらに,日本列島は台風の
通り道となっており,毎年のように台風によ
る風水害の被害が発生しているうえ,国土に
支える食料は物流が回復するまでの期間毎日
必要であり,首都直下地震の被災者に対する
まっている。2011年3月11日に起きたマグ
支援は東日本大震災の支援を大きく上回る膨
大な量が必要となる。さらに,発災直後には
放置車両と被災地から徒歩で帰宅や疎開しよ
うとする被災者により道路は混乱し,緊急車
両の到着に影響する可能性がある。そのため,
救援物資を都内に運搬し,配布するに必要な
ニチュード9.0の東北地方太平洋沖地震によ
日数も長期にわたるものと考えられる。
り,1万8475人もの死者・行方不明者(2015
南海トラフ地震では,九州から東海に及ぶ
範囲の津波被害を伴うと想定されており,太
平洋側の西日本で広域の被災地が発生し,分
は急傾斜地が多い。
日本は地震発生周期に入ったといわれる。
さらに,地球温暖化の影響によりスーパー台
風の発生や局地的豪雨,豪雪などの懸念も高
年3月10日現在)が発生し,最大被災者数は
47万人に達する大震災となった。これを受け
表1
1995年1月17日
2004年10月23日
2011年3月11日
想定(最大)
想定(最大)
月刊フードケミカル 2015−7
被災者数の比較
阪神・淡路大農災
6437人
31万6000人
新潟県中越地震
68人
10万3000人
東日本大震災
1万8517人
47万人
首都直下地震
南海トラフ地震
2万3000人
32万3000人
720万人
950万人
31
表2 東日本大震災 発生から1カ月前後の新聞報道
4月6日
4月7日
日本経済新聞
31
読売新聞
26
4月8日
新潟旧報
炭水化物中心の食生活長期化 避難者体調崩す恐れ 日本栄養士会調査へ
在宅高齢者へ物資を 釜石のNPOが奮闘
震災避難所に「おかず」必要 需要と供給ミスマッチ
全国知事会が調査 常温保存で手間のかからないおかず
4月8日
新潟日報・夕
7
最大の余震 6強 疲労もピーク 被災地で再び大規模停電
4月10日
読売新聞
14
被災者の栄養状態が心配「ごはんノマンだけ」続く
4月10日
4月12日
4月15日
4月16日
4月17日
22
朝日新聞
18
死者1万2898人(半数高齢者)行方不明者1万4824人 避難者1万6378人 4月9日現在
読売新聞
35
震災関連死疑い282人 避難所不衛生 寒さで拡大 3県病院調査
朝日新聞
30
給食はバンと牛乳のみ 女川の小学校で再開
読売新聞
28
ビタミン不足対策急ぐ
朝日新聞
21
被災地偏る栄養
散した被災地への食料の確保と輸送について
も東日本大震災を大きく上回る時間と労力が
必要となる。さらに,これまで経験したこと
のない量の救援物資を支える発災後の食料生
産・供給が重要となるが,急激に加工食品へ
のニーズが高まることによる需給バランスの
崩れ,サプライチェーンの寸断,生産を継続
できる食品工場の減少,物流障害が発生する
ことも懸念事項となっている。
2.非常食から災害食へのパラダイム転換
これまでの被災時の食対策は,非常食の備
蓄と救援物資を組み合わせることであった。
個人と行政の備蓄で3日間を過ごせば,4日
日からは救援物資が届くというものである。
断層型の直下型地震や水害,土砂崩れなどの
災害では,被災地の範囲が数十キロ以下の限
定的な範囲となり,全国からの救援が迅速で
あれば救援物資が間に合う。このため,非常
食は3日間を生き延びるための食品と位置付
け,主食の代替えとして炭水化物主体の食品
を選択してきた。また,救援物資も,各地で
備蓄されていた非常食をはじめ,おにぎりや
パンなどが増産されて届けられる。その後,
これらの食品は弁当の供給が可能となるまで
続くが,4日目から弁当を届けることは被災
地が広域になるほど,被災者数が多いほど難
しくなる。東日本大震災では広域に津波被
害が発生し,海岸部の行政備蓄も家庭内の買
い置きも店舗や工場の在庫も失われた。また,
32
道路の損壊とガソリン不足も重なったため救
援物資の到着も遅れて,直下型地震の被害と
は全く異なる被害生活の様相を呈した。また,
救援物資の不足は長期化し,1カ月経過して
も炭水化物中心だけの食事が続いた避難所が
残っていた(表2)。
かつて非常食は賞味期間が長いほど価値が
あると考えられていたが,賞味期間の長さは
備蓄ニーズによるものであり,災害発生前の
価値であった。今後の首都直下地震と南海
トラフ地震による被災者数および被災地が密
集地または広域であることを考え合わせる
と,これまでの非常食の備蓄と救援物資を組
み合わせた従来型の対策に加えて,次の課題
への備えが不可欠となっている。
1)対象者
被災地では,普段の生活においても特別に
配慮された食品が必要な乳幼児,アレルギー
患者,妊産婦,高齢者,栄養不良者,病者,
障害者,外国人なども被災している。これら
の被災者は健康面の二次災害に至りやすい
が,これまでの非常食の備蓄と救援物資では,
その質的ニーズに配慮が乏しかった。一部
の自治体では乳幼児用の調整粉乳の備蓄が進
められているが,アレルギー疾患児童対策や
超高齢化を迎える時代の高齢被災者対策はこ
れまでにない課題となっている。
2)ライフラインの途絶と代替
薪や炭を燃料として,七輪で炊飯すること
月刊フードケミカル 2015−7
特集1災害食の“今’’手軽さと栄養とおいしさ
ができる日本人は年々減少している。現代
の生活では,電気,水道,ガス,下水道のラ
止,津波災害からの避難など人命を救うため
の対策にとどまらず,同時に「助かった,助
イフライン完備は当たり前であり,その便利
で快適な生活を通信と交通・物流のネット
けられた命」がその後の被災生活で失われる
ことのないような被災生活の減災対策も必要
ワークが支えている。首都直下地震では大
都市生活に慣れた被災者が大量に発生するた
め,ライフライン代替えとしての飲料水やお
となっている。これまで,被災者にとっての
湯への備えが必要となっている。
3)食の質
被災者にとって必要な食は,普段食べ慣れ
ている品質である。被災者にとって,食べ
た経験のない食品は被災地で食べにくいとい
災害対策は日常生活とは別の大災害専用対策
であったが,今後は日常生活の中に減災対策
を組み入れることが大切であり,日常生活で
も役立つ衣食住の被災生活研究が求められて
いる。食の分野では,日常生活と被災生活
の両方で役立つ食を災害食として位置付けて
いる。
う声は多い。これは,食べるとどうなるか分
からないというストレスを感じるためと考え
●災害食の定義(日本災害食学会)
られ,食べ慣れている食品が届いたのでほっ
としたという被災者の感想にもつながる。ま
1)「いつものように食べることができないとき
た,寒さ対策のない避難所などでは,体が冷
避難所や自宅で被災生活をする高齢者や乳幼
え切っているときに冷たい食品は食べられな
児,障害者や疾病患者など日常の社会におい
くなるため,高齢者には特に問題となる。
ても特定の食事を必要とする人々,さらに救
4)栄養
援活動に従事する人々など,被災地で生活,
の食のあり方」という意味で災害食を考え,
被災生活が3日間に限定されるのであれば,
活動するすべての人々に必要な食をいう。
炭水化物主体の非常食だけでも栄養不足は
問題とならないとしても,被災生活が長期化
2)日常食の延長線上にあり,室温で保有できる
し救援物資も炭水化物中心の食品が継続する
と健康問題が生じる。これまでの被災地でも
3)加工食品(飲料を含む)および災害時に限定
繰り返し野菜不足が指摘されている。エネル
ギーのみを充足しようとする非常食,救援物
資のあり方の見直しが不可欠となっている。
以上のこと・は,1995年に発生した阪神淡
路大震災の被災者の指摘に始まり,2011年
の東日本大震災でも同様な指摘が続いてい
る。これらの課題は,あればよいという対策
ではなく,普段と同じ質の食を被災地で提供
する工夫が求められていることがわかる。さ
らに,自然災害による被害は,全国的に高齢
食品および飲料はすべて災害食となり得る。
された熱源,水により可能となる調理の工夫
も含める。
3.加工食品の役割
被災地ではライフラインが途絶するため,
電気もガスも水道もないときに食べる食品を
非常食としてきたが,ライフラインの代替え
となる手段は,日常生活のための開発が進
み種類も増えている。その好例は,水道の代
替えに当たるものがペットボトルの飲料であ
り,都市ガスの代替えがカセットコンロであ
る。また,電気自動車のバッテリーは,停電
化が進む中で発生するほか,被災地は広域化
し,被災生活は長期化する可能性が高い災害
が想定されている。このため,地震災害の防
時も電気の供給が可能となっている。自宅に
耐震性があり,津波や地震火災の被害がなけ
災活動では耐震性の向上,地震火災の発生防
れば,ペットボトルの水とカセットコンロを
月刊フードケミカル 2015−7
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使って米を炊くことができ,缶詰やレトルト
ため,救援物資として届いても,その必要性
食品,乾燥食品などを副食とできる可能性が
ある。湯煎が可能であれば食品を温めること
を仕分時や避難所では理解しにくいという課
題もあった。さらに,避難所では数の公平さ
を優先するあまり,要配慮者に不可欠な食品
を配布することを避難所住民全体にとって不
公平とする判断もあった。このため,災害時
の物流や仕分けを想定した表示のあり方も検
ができるだけでなく,食べることができる加
工食品の種類を大きく増やすことができる。
一方,普段の生活での食事は,家庭内で調
理する内食が減少しつつあり,惣菜や弁当を
購入して食べる中食およびレストランや食堂
で食べる外食が増え,食の外部化が進行し
ている。大規模災害の発生では内食,中食,
外食のいずれも利用できなくなるが,特に調
理経験の少ない被災者が苦慮することにな
り,常温で買い置きでき,お湯や水だけで食
べることができる加工食品の役割は大きい。
また,平常時には外食で出来立ての料理を食
べるほか,弁当や総菜を中食で利用している
住民が増えており,災害時だからといっても
外食や中食で食べる食品と大きく異なる質の
食品を食べ続けることが受け入れられなく
なっている。そのため,常温保存可能な加工
製品であっても,外食や中食で食べる食品と
同様なおいしさを有した災害食の開発が必要
となっている。すでに,無菌包装などの技術
を生かした常温製品はパックごはん,ジュー
ス,スープなどで製品化されており,その種
類は増えている。今後は主食,副食の分野
や野菜加工品の分野では,さらに多くの種類
の開発が望まれる。
乳児用の調整粉乳や介護食をはじめとし
て,日常の生活でも特別に配慮が必要な食品
を必要としている要配慮者にとって,これま
では食の備えの面で配慮されることは少な
かった。普段の生活において特別に配慮さ
れた加工食品は,消費者庁が特別用途食品と
して認定する食品も含めて,常温で買い置き
できる商品も多い。しかし,特別用途食品に
は賞味期間が3年以上ある製品は少なく,こ
れまで非常食として備蓄されることは少な
かった。また,日常的に要配慮者用の食品を
扱う機会は病院などの栄養士などに限られる
34
討の余地がある。また多くの加工食品は,平
常時を前提とした喫食方法が表示されている
ことが多く,災害時にライフラインに支障が
生じた前提の喫食方法の表示は少ない。一
方,これまでは要配慮者向けの食品などは,
対象者のみに限定した利用を前提としてお
り,生産量が少ないためコスト低減に課題が
あった。今後は,災害時要配慮者用の食品は,
障害のない多くの被災者も食べることができ
るため,ユニバーサルな食品と位置付けて市
場を広げ,生産量を増やしてコストを引き下
げる取り組みが重要である。
4.災害食の備え方の課題
被災者への食支援については,公助では自
治体の備蓄と救援物資が避難所で生活する被
災者に提供されるが,その種類と量は自治体
ごとに異なる。また,東日本大震災では行政
の機能や職員も被災し,その計画が想定通り
に発揮できなかった事例も発生している。被
災生活の減災対策としては,まず自助の備え
が不可欠であり,一人一人の生活や活動に必
要な質と量の食の備えを増やす取り組みが必
要である。農林水産省では,「家庭備蓄のガ
イドライン」を2014年2月に発表し,自助の
備蓄を薦めている。また全国的に自助での備
蓄,買い置きが進むほど,大災害発生直後に
全国で発生する急激な需要増の抑制に役立つ
ため,自助の備えは同時に被災者に必要な物
資を届けやすくする全国規模の共助となる。
今後の公助の取り組みとしては,避難所に
飲料水と熱源を用意し,お湯を用意する取り
組みが重要である。さらに要配慮者向けの食
月刊フードケミカル 2015−7
特集1災害食の‘今万事軽さと栄養とおいしさ
品の備蓄は,賞味期限内に消費し使用分を常
に補充して一定の備蓄量を確保するローリン
グストック法を取り入れることも賞味期間
の短い食品対策として有効である。一方で,
要配慮者向け食品の賞味期間の延長も製品改
良として必要と考えられる。
被災地では内食,中食,外食からの食の供
給が長期間に渡って制限されるため,大量の
加工食品が必要となるが,全国の食品メー
カーの稼働率を維持,向上させる備えも必要
である。稼動を維持するためには,直接被
害(建物,設備など)と間接被害(原材料,包
装資材などの不足・入手困難,ライフライ
ン停止,物流停止など)への対策があるが,
これらを想定した食品企業の事業継続計画
(BCP)だけでなく,全国の食料供給におけ
る継続計画として,サプライチェーンと物流
の減災対策への取り組みも並行して取り組む
必要がある。
5.展望
自然災害の多発時代にあっては,発生を前
提とした生活に変えていかなくてはならな
い。人間の力で発生を防ぐことはできない
できた。学会では研究発表,学会誌の論文
などは学会ウェブサイトで公開しており,学
会員でなくとも知ることができる。これは,
災害食の研究者は,研究成果を次に起きる被
災生活に活かしてほしいと願っているからで
ある。また,2015年1月には,災害食の定義
を明確にした災害食認証基準を発表した。こ
れらの取り組みが広がり,被災者にとって役
立つ災害食が増えることを願っている。
参 考 文 献
1)内閣府:平成26年版防災自書
2)中央防災会議:首都直下地震ワーキンググループ(最
終報告)首都直下地震の被害想定(2013)
3)中央防災会議:東南トラフ巨大地震対策について
(最終報告)南海トラフ巨大地震で想定される被害
(2013)
4)奥田和子:震災下の「食」神戸からの提言(NHX
出版,1996)
5)新潟大学地域連携フードサイエンス・センター:こ
れからの非常食・災害食に求められるもの(光琳,
2006)
6)新潟大学地域連携フードサイエンス・センター:こ
れからの非常食・災害食に求められるもの2(光琳,
大災害に襲われる可能性があるという意識を
持ち,被害の程度を減少させる取り組みを生
活の中に常に取り入れることが必要となって
7)新潟大学地域連携フードサイエンス・センター:災
いる。
8)新潟大学地域連携フードサイエンス・センター:災
外部救援を待つ期間は,発生する災害の種
類と地域性によって異なり,直下型地震など
の想定地域では少なくとも3日間,首都直下
2008〉
害時における食と福祉(光琳,2011)
害時における食と福祉(建烏社,2014)
9)日本災害食学会ウェブサイト
http://www.mmjp.or.jp/TELEPAC/d−food/
地震と南海トラフ地震の被害が想定されてい
る地域では,1週間以上の備えが必要と考え
10)農林水産省:緊急時に備えた家庭用食料品備蓄ガイ
られる。さらに720万人,950万人と想定さ
11)内閣府(防災担当):避難所における良好な生活環境
れている首都直下地震,南海トラフ地震の想
定被災者数は過去の経験の範囲を大きく超え
る規模であり,被災者の生活のあり方,支援
の進め方の研究も十分とはいえない。
2013年9月1日日本災害食学会が設立さ
れ,継続的に災害食の研究成果を集める場が
月刊フードケミカル 2015−7
ド(2014)
の確保に向けた取組指針(2013)
12)鎌田譲:東日本大震災における食品製造茅の被害状
況と復旧対応(2014)
35
著 書
ベっぷ・しげる
1)高齢者食品の開発と応用(シーエムシー出版,
ホリカフーズ株式会社経営戦略室
2012)
1977年新潟大学農学部卒業,同年堀之
2)災害時における食とその備蓄(建南社,2014)
内缶詰(現 ホリカフーズ)入社。社内
研究者として介護食,災害食に取り組
論 文 等
む。災害食では,1995年の阪神淡路大震災から被災地
1)戦闘程食の技術が支える災害時の食事,宇宙航空環
で必要な食のありかたを調査,2(泊4年の新潟県中越地
境医学会誌,47(4),(2010)
震では被災し,その後も災害による状況障害のため食
2)健康を守る災害食の新たなパラダイムの提案,テク
べることができない被災者のニーズと食品のあり方に
ノイノベーション,21(1),(2011)
ついて研究。レスキューフーズの開発を担当するとと
3)非常食から被災生活を支える災害食へ 科学技術動
もに災害食研究を続け,その成果を発信している。
向(2011)
4)岨囁・喋下機能障害の評価区分に応じて提供してい
る食事形態 一全国の介護保険施設の実態調査「
日本岨噂学会雑誌,22(2),(2012)
5)あなたの被災生活を支える災害食,ARDEC,51
(2014)
乳酸菌と酵母の香りが持つリラックス効果をヒト試験で証明,カルピス
カルピス発酵応用研究所は,「乳酸菌と酵母」で発酵し
さらにこの香りには,自律神経にはたらきかけて,日
た乳酸菌飲料の香りは,自律神経にはたらきかけ,不安
周リズムの改善や,不安感を和らげる効果があることを,
感を和らげることを,久留米大学文学部心理学科津田
彰教授との共同研究で明らかにした。この研究結果は,
動物実験にて確認している。今回,ヒトを対象とした
5月23日から開催された第33回日本生理心理学会大会
果について検証した。その結果,乳酸菌と酵母で発酵し
た乳酸菌飲料の香りを嗅ぐと,リラックスに関わる神経
試験で,乳酸菌と酵母で発酵した乳酸菌飲料の香りの効
で発表された。
同社は,乳酸菌などの微生物を活用した研究に取り組
み,健康に役立つ商品や技術の提供をしている。その中
である副交感神経活動が活性化する,不安感が軽減する,
で,乳酸菌と酵母が作り出す香りに着目し,乳酸菌単独
るということがわかった。
ストレスを強く感じている人は心拍数の上昇を抑えられ
では作り出せない乳酸菌と酵母で発酵して作られる独特
ストレスの解消方法はさまざまあるが,今回の試験結
の香りが,発酵乳のおいしさに重要であることを明らか
果から,乳酸菌と酵母で発酵した乳酸菌飲料の香りがス
トレス対処方法の一つとして役立つ可能性が示された。
にした。
36
6
月刊フードケミカル 2015−7