44 両心室心尖部に血栓を認め、両心室のたこつぼ型心筋症が疑われた1例 ◎坂本 憲亜 1)、伊波 拓也 1)、福本 遥佳 1)、本郷 以津香 1)、井 裕美 1)、福山 修治 1)、柳 裕子 1)、前淵 大輔 2) 公立学校共済組合 九州中央病院 検査技術科 1)、公立学校共済組合 九州中央病院 循環器内科 2) 【症例】86 歳 男性【主訴】労作時呼吸困難感【既往歴】 度)を認めた。LVEF 57%。TRPG 23mmHg。【経過】入院 高血圧症、糖尿病、前立腺肥大、骨粗鬆症【現病歴】 後、心室内血栓および肺動脈血栓症に対して抗凝固療法が H20 年に無筋炎型皮膚筋炎に伴う間質性肺炎と診断され、 開始された。入院 10 日目の CT 上で右肺動脈および両心室 ステロイドが投与された。H25 年 11 月末より労作時の呼吸 内の血栓は消失し、15 日目の心エコー上でも、両心室心尖 困難感が増悪し、同年 12 月に当院呼吸器内科入院となった。 部の血栓様エコーは消失した。また、右室心尖部の壁運動 心エコー上 TRPG 60mmHg と肺高血圧を認め、間質性肺炎 は改善したが、左室心尖部の壁運動はより広範に低下し、 に伴う急性肺高血圧症と診断された。CT 上明らかな肺塞栓 LVEF は 40%程度に低下した。経過中、併発していた肺炎 症はなかったが、抗生剤の投与および抗凝固療法によって、 が増悪し、敗血症性ショックに至り、28 日目に永眠された。 TRPG 35mmHg と改善したため、在宅酸素療法を導入し、 【考察】文献上、両心室に発症するたこつぼ型心筋症の報 退院となった。その後、症状の増悪は認めなかったが、 告は少ない。さらに、両心室に血栓を認めた報告はほとん H26 年 1 月の外来で施行された CT 上で右肺動脈本幹・両 どない。今回の症例では、冠動脈造影が施行されていない 心室内に血栓を認め、肺動脈血栓症および両心室内血栓症 ため、急性心筋梗塞は否定できないが、壁運動低下の領域 の診断で再入院となった。【入院時検査所見】血液:WBC が冠動脈の支配領域に一致しない点、心筋逸脱酵素の上昇 12900/µL、D-dimer 18µg/mL、NTproBNP 5540pg/mL、血液 が軽微な点などを考慮すると、両心室のたこつぼ型心筋症 ガス分析:pH 7.4、pCO2 38mmHg、pO2 189mmHg、心電 が疑われた。【結語】今回、両心室心尖部に血栓を認め、 図:洞調律、Ⅱ・Ⅲ・aVF・V3~6 で ST 上昇、下肢静脈エコ 両心室のたこつぼ型心筋症が疑われた1例を経験したので ー:深部静脈血栓なし、心エコー:両心室ともに心尖部の 報告する。 壁運動が低下し、可動性のない血栓様エコー(径 10mm 程 連絡先:(092)541-4936(代表)
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