尿沈渣にて高異型度尿路上皮癌との鑑別に苦慮した前立腺癌の 1 症例

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尿沈渣にて高異型度尿路上皮癌との鑑別に苦慮した前立腺癌の 1 症例
◎佐谷 純一 1)、河村 紗也子 1)、溝口 義浩 1)、平山 賢司 1)、角 正恵 1)、宇野 大輔 1)、緒方 昌倫 1)
公立学校共済組合 九州中央病院 1)
【はじめに】
疑う細胞像であった。
尿沈渣で腺癌細胞が出現することは稀であ
【まとめ】
り、前立腺癌では膀胱や尿道に腫瘍が浸潤し
前立腺癌は円形~類円形の明瞭な核小体を
た場合に、尿中に腫瘍細胞が出現することが
有し、細胞質が顆粒状を呈してくることが特
ある。しかし、前立腺癌は高異型度尿路上皮
徴である。しかし、前立腺癌は高異型度尿路
癌(UC,high grade)との鑑別は容易ではない。
上皮癌と比べ細胞異型は軽度であり尿沈渣で
今回、尿沈渣で高異型度尿路上皮癌との鑑別
の組織型の推定は容易ではない。また、尿沈
に苦慮した前立腺癌の 1 例を経験したので報
渣で前立腺癌が出現することは稀である。よ
告する。
って、尿沈渣を鏡検する際には前立腺癌細胞
【症例】
の特徴を理解しておくことが重要である。ま
74 歳男性。脳梗塞の既往があり、当院にて
た組織型の判定に苦慮したときは、悪性疑い
経過観察中。頻尿症、尿勢低下のため当院泌
で臨床に報告し、細胞診や画像検査を併用す
尿器科に紹介され尿検査が施行された。
ることが望ましいと考える。
【尿定性】
連絡先 092-541-4936(内線 2274)
比重 1.015/pH6.0/蛋白(-)/潜血(-)/ビリルビ
ン(-)/白血球反応(-)
【尿沈渣所見】
背景は清浄で、孤在性に異型細胞が散見さ
れた。異型細胞の細胞質は顆粒状で、N/C 比が
高く、明瞭な核小体を 1~2 個有し、クロマチ
ン増量を認めた。また核濃縮細胞もみられた。
悪性で、腺癌を疑ったが高異型度尿路上皮癌
との鑑別が困難であったため、細胞診検査が
追加で施行された。
【細胞診所見】
比較的清浄な背景に孤在性~小集塊で異型
細胞が多数認めた。異型細胞の細胞質は顆粒
状で、細胞径は小型で N/C 比が高く、明瞭な
核小体を有し、クロマチンは微細顆粒状に増
量していた。一部で腺腔配列を認めるなど、
腺癌を疑う細胞像であった。
【画像所見】
CT 画像上、前立腺は全体が腫瘍に置換され
ており、精嚢浸潤、リンパ節転移、骨転移を