持続可能な経済・社会の発展に向けて - JXホールディングス

持続可能な経済・社会の発展に向けて
JXグループでは、
「エネルギー・資源・素材のX
(みらい)を。」をスローガンに、各事業分野で、
「エネルギー・資源・
素材の安定供給」
「資源の持続可能な利用と循環型社会」
、そして「低炭素社会」を追求しています。
課題認識
新興国を中心に、石油・天然ガスや金属資源などの
需要は年々拡大しており、それらの獲得をめぐる国や
企業の間の競争は激化しています。こうした中、産業や
経済、人々の暮らしに欠くことのできないエネルギー・
エネルギー・資源・素材の
安定供給に向けて
資源・素材の安定供給に対する期待が高まっています。
基本的アプローチ
JXグループの総合力で、エネルギー・資源・素材の安定供給を果たします。
現代社会において、非鉄金属は豊かで文化的な生活
になくてはならない資源であり、将来世代に持続可能
な社会を引き継ぐため、有限である資源を有効に循環
利用できる社会づくり、仕組みづくりが期待されてい
資源の持続可能な利用と
循環型社会の構築に向けて
ます。
基本的アプローチ
長年培ってきた技術力を活かし、金属資源を有効に循環利用できる社会づくりに努めます。
社会全体で、CO2 排出を抑制していくことが喫緊の
課題となっています。エネルギー政策の見直しから、
産業界におけるイノベーション、生活のさまざまな場面
でのライフスタイルの見直しなどあらゆるレベルでの
アクションが期待されています。
低炭素社会の実現に向けて
基本的アプローチ
低炭素社会の実現に資するエネルギー供給の仕組みづくりや、素材の開発に努めます。
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JXホールディングス株式会社
Annual Report 2015
マネジメントメッセージ
エネルギー・資源・素材の安定供給に向けて
JXグループは、エネルギー・資源・素材のそれぞれの分野で資源開発・生産から販売までの安定的な供給
体制づくりに力を注いでいます。エネルギーや資源、素材の世界的な需要の高まりに対し、安定的にそれら
成長戦略の進捗と今後の課題
を供給し続けることは、重要な社会的役割と捉えています。
石油製品の安定供給のために
震災時給油可能 SS の展開
JXグループは、石油製品の研究開発、製造、販売までの
より広範な災害によるリスクに対応するため、停電のみ
一貫体制の強みを活かし、海外における経済・産業の発展
ならず、浸水への対策を講じるとともに、緊急時の生活
にも貢献できると考えています。国内市場における石油精
インフラ機能を備えることも重要と考え、飲料水や一時避
製販売の最大手としての供給責任を果たすとともに、旺盛
難場所としての建屋屋上スペースなども設けた「新・震災
な需要が見込まれるアジア市場からの期待に、潤滑油や
対応 SS」の実証を行っています。
石油化学製品などを切り口として応えていきます。
現在、東北から九州にかけての太平洋側の沿海部に
「新・
経営管理体制
需要旺盛なアジア市場への製品供給
震 災 対 応 SS」の 設 置を進めており、2015 年 3 月末 時 点
韓国パラキシレンプロジェクト
では、宮城県石巻市および仙台市若林区、千葉県旭市、
パラキシレンは、ポリエステルやペットボトルの原料と
静岡県焼津市、大阪府堺市堺区および泉南市、広島県
なる基礎化学品です。JX日鉱日石エネルギーは、韓国の
尾道市、鹿児島県鹿児島市の計 8カ所が開所しています。
ロマティックス社を設立。パラキシレン製造工場の建設を
進め、2014 年 6 月に商業運転を開始しました。世界最大級
となる年間 100 万トンの生産能力を有する工場の稼働によ
り、拡大する需要に応えていきます。
成長とともに果たすべき役割
SK グローバルケミカル社と合弁契約を結び、ウルサン・ア
震災時の給油可能サービスステーション
(SS)
全国8カ所
(2015 年 3 月末時点)
海外における潤滑油事業の拡大
自動車用・産業用の需要増加を受けて、高品質な潤滑油
宮城県仙台市
2013 年 2 月∼
韓国の SK ルブリカンツ社とのベースオイル製造共同事業
に向けた原料出荷の開始、ベトナム潤滑油製造工場の商
業生産開始、南アフリカのヨハネスブルグ事務所の開所な
どで事業の進展をみました。また、インドとメキシコで、潤
2012 年 3 月∼
財務情報
の安定的な供給が求められています。2014 年 3 月期以降、
宮城県石巻市
広島県尾道市
2013 年 3 月∼
鹿児島県鹿児島市
2013 年 12 月∼
千葉県旭市
2015 年 3 月∼
滑油の販売会社を設立しました。
静岡県焼津市
インドネシアにおける燃料油の輸入・販売
インドネシアでは増加を続ける燃料油需要に対して国
内の石油精製能力が不足しており、石油製品を恒常的に
2013 年 4 月∼
大阪府泉南市
2013 年 11 月∼
大阪府堺市
2013 年 10 月∼
輸入しています。こうした市場環境に応えるべく、JX日鉱
日石エネルギーは同国で軽油の輸入・販売事業のライ
センスを取得し、2014 年 6 月から事業を開始しています。
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持続可能な経済・社会の発展に向けて
資源の持続可能な利用と循環型社会の構築に向けて
JXグループは、貴重な金属資源の有効活用を実現するため、環境リサイクル事業を通じて資源循環型社会
の構築に努めています。上流(資源開発)から中流(金属製錬)
、下流(電材加工、環境リサイクル)まで一貫
した事業体制の下、シナジー効果を上げながら、経済性と環境保全を両立させていきます。
環境リサイクル事業
環境リサイクル事業では、産業廃棄物を適正な処理に
②独自の技術に基づく効率的で信頼のおける
より無害化する「環境事業」と、有価金属を含有するリサイ
処理プロセス
クル原料を純度の高い材料に再資源化する「リサイクル
リサイクル事業における非鉄金属の再資源化は、長年
事業」を行っています。
培ってきた製錬技術をベースとして独自に構築した、効率的
かつ信頼のおける処理プロセスによって行われています。
中でもJX日鉱日石金属が出資するパンパシフィック・カッ
環境リサイクル事業の特徴と強み
①ゼロエミッション
パー佐賀関製錬所では、銅精鉱の製錬時に発生する余熱
産業廃棄物の無害化とリサイクル原料再資源化のいず
を利用してリサイクル原料の溶解を行うことで、省エネル
れの工程でも、埋め立て処分を必要とする二次廃棄物が
ギーを実現しています。
全く生じません。非鉄金属以外の鉄分などはスラグとして
回収され、セメント原料などとして利用されます。また、
③全国的な集荷・処理ネットワーク
処理工程で発生するダイオキシンなどの有害物質は、適正
苫小牧(北海道)
、日立(茨城)
、三日市(富山)
、敦賀
な処理により無害化されます。
(福井)
、佐賀関(大分)の 5カ所の処理拠点をベースに、
産業廃棄物とリサイクル原料の集荷ネットワークを全国的
に構築しています。
資源循環型社会のイメージ
製品
使用済み製品など
(=都市鉱山)
最終製品
各メーカー
(家電、自動車、
機械など)
消費者
リサイクル事業の海外展開
国内のリサイクル原料の発生量は、電子部品・製品メー
製品
にあります。一方、海外におけるリサイクルニーズは年々
回収システム
部品加工
メーカー
リサイクル原料
環境リサイクル事業本部
日立事業所 HMC* 製造部
敦賀工場
パンパシフィック・カッパー(株)
佐賀関製錬所
環境グループ 4 社
環境事業
電子部品
材料など
電材加工
事業本部
非鉄金属
リサイクル事業
JX日鉱日石金属グループの
事業領域
* 日立・メタル・リサイクリング・コンプレックス
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カーなどの海外移転や省金属化対応などにより減少傾向
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Annual Report 2015
高まっており、これに対応するため、JX日鉱日石金属では
海外集荷網の拡大を図っています。
JX日鉱日石金属は 2010 年、電子機器・部品の生産基地
である台湾に、リサイクル原料の集荷拠点(台湾日鉱金属
彰濱リサイクルセンター)を設置しました。リサイクル原料
の破砕などの前処理を行った上で、日本へ送り再資源化を
実施しています。
さらに2014年、米国に営業拠点を設置し、本格的な集荷
活動を開始しました。同国では環境関連法規制の整備・
強化が進んでおり、非鉄金属のリサイクルニーズの高まり
が期待されています。
マネジメントメッセージ
低炭素社会の実現に向けて
JXグループは、総合エネルギー企業として、エネルギーを効率的・安定的にお届けするとともに、環境負荷を
成長戦略の進捗と今後の課題
低減するために新エネルギー事業のさらなる拡大を図り、低炭素社会の実現を目指します。
ENEOS 創エネ事業
JXグループは、
「ENEOS 創エネ事業」を推進しています。
家庭用燃料電池「エネファーム」や太陽光発電システム
エネルギー利用効率を高める「省エネ」
、再生可能エネ
の普及、住宅に自立・分散型エネルギーシステムを導入する
ルギーの導入を加速する
「再エネ」
、災害時などにもエネル
「ENEOS 創エネリノベーション」を進めており、2012 年度に
ギーを自給自足できる「自立」の3つの柱で取り組みを進め
はメガソーラー発電事業を開始しました。また、メガソー
ています。
ラー事業者などへの機器販売などの産業分野への取り組
経営管理体制
みも拡大していきます。
「ENEOS 創エネ事業」概念図
①省エネ
②再エネ
③自立
エネルギー利用効率向上による
資源の高度利用
再生可能エネルギーの導入加速
系統から独立して発電できる機能
成長とともに果たすべき役割
ENEOS 創エネ事業
家庭向け展開
産業向け展開
電池 3 事業を中心に家庭のエネルギーシステムを供給
産業分野においてエネルギーソリューションを提案
エネファーム
太陽光発電システム
蓄電池
メガソーラー・
マンション用ソーラー・
産業用ソーラー
ガス・
コージェネレーション
エネルギー診断サービスの推進
財務情報
低炭素社会の実現 自立・分散型エネルギー社会の実現
水素の普及に向けて
水素は燃料電池と組み合わせればエネルギー効率が
経済産業省がとりまとめた水素・燃料電池戦略ロード
高く、利用段階で二酸化炭素を排出しないことから、省エ
マップでは、2015 年 度 内に国 内 水 素ステーション数を
ネと環境負荷低減を実現できる、将来のエネルギーとして
100カ所程度とすることが目標に掲げられています。JX
期待されています。現在は工業プロセスでの利用やロケッ
グループとしてはそのうち 40カ所程度の整備を目指し、
ト燃料として使用されているほか、自動車用燃料や家庭用
本格的な普及に向けて取り組んでいます。
燃料電池としての利用も進んでいます。さらに、将来は、
水素発電やバス、鉄道の燃料などとしても利用されること
が期待されています。
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Annual Report 2015
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持続可能な経済・社会の発展に向けて
メガソーラー発電事業の拡大
JX日鉱日石エネルギーは、再生可能エネルギーの拡大
全国に広がるメガソーラー発電事業
を目指し、2013年以降、日本各地へメガソーラー発電事業
稼働中
建設中
の展開を進めています。2014 年度は福島県の小名浜油槽
所跡地、山口県の下松製油所跡地、秋田県の秋田製油所
跡地、愛媛県の松山油槽所跡地、香川県の高松油槽所
跡地、大分県の佐賀関製錬所社宅跡地、沖縄県の沖縄石
油基地に設置したメガソーラー設備が新たに稼働を開始し
ました。これらを合わせるとメガソーラー発電事業は合計
10カ所、約 28メガワットとなります。
秋田県男鹿市
宮城県仙台市
秋田県秋田市
福島県いわき市
2016 年 3 月∼
2013 年 2 月∼
2014 年 7 月∼
2014 年 10 月∼
茨城県日立市
山口県下松市
2016 年 3 月∼
広島県広島市
2013 年 3 月∼
2016 年 3 月∼
茨城県かすみがうら市
2013 年 11 月∼
山口県下松市第 2
2014 年 9 月∼
埼玉県朝霞市
2016 年 3 月∼
愛媛県松前町
2015 年 2 月∼
大分県大分市
沖縄県うるま市
香川県高松市
2015 年 3 月∼
2015 年 3 月∼
2015 年 2 月∼
LNG 事業の拡大
天然ガスは、石油に比べ世界各地に豊富に埋蔵されて
JX日鉱日石エネルギーは、2007 年、それまで大規模な
おり、安定的な供給が可能であるとともに、CO2 の発生が
天然ガス供給基地がなかった北東北で八戸 LNG 基地の
少ないクリーンエネルギーとして注目されており、日本に
運転を開始しました。そして、さらなる供給の拡大に向
おける利用量は年々増えています。
けて、これを大型輸入基地化することとし、運営子会社とし
需要の増加に対応するため、JXグループは、海外での
てJX日鉱日石エルエヌジー・サービス(株)を設立するとと
ガス田開発、水島・八戸の自社基地からの出荷、全国の
もに、2015年4月からは八戸LNG輸入基地および釧路LNG
内航船・ローリー・導管供給など、採掘から販売に至るサプ
ターミナルの運転を開始しました。
ライチェーン全体で安定供給体制の構築に努めています。
JXグループの天然ガス・LNG サプライチェーン
外航船(60 千トン級)
開発
調達
内航船(1 千トン級)
一次基地
(輸入基地)
二次基地
(内航船受入基地)
LNG タンクローリーによる供給
導管による直接供給
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お客様
サテライト基地
消費機器
ボイラ・
コージェネ
レーションなど