イネミズゾウムシの翌年の薬剤防除が地域全体で不要となる“めやす”

( 発行 新潟県農業総合研究所)
《研究紹介》
イネミズゾウムシの翌年の薬剤防除が地域全体で不要となる“めやす”
作物研究センター
イネミズゾウムシは、春、田植え後の水田に侵入して、葉や根に被害を及ぼす重要害虫です。この
虫の防除薬剤には、育苗箱施用剤と本田散布剤がありますが、これまでの要防除水準は、育苗箱施用
の判断には利用できませんでした。
この技術では、地域全体の防除要否を前年の発生量から判断するため、育苗箱施用の判断に利用
できます。調査は、6月中旬に地域単位で、40地点くらいを調査します。被害株率の平均値が30
%以下の場合、地域全体で翌年の防除は不要です。
15
8
【防除指針掲載の防除が必要なめやす】
翌年5月末頃の成虫数(50株当たり)
7
ほ場単位で 50 株当たり 15 頭以上
6
5
各データの誤差幅は、
ほ場ごとの実際の
成虫密度の範囲を示す。
4
y = 0.05 x - 0.15
r2 = 0.94
3
2
1
0
0
5
10
15
20
25
6月10日頃の被害株率
30
35
被害株率が約30%の場合、翌年の成虫の数は、最も多かった圃場
でも50株当たり5頭で、“防除が必要なめやす”の15頭より少ない。
したがって、30%以下の場合は安心して翌年の防除不要!
内
容
◎研究紹介
○イネミズゾウムシの翌年の薬剤防除が地域全体で不要となる“めやす”
○外張り二重被覆による空気膜ハウスの特性
○花粉が不稔のユリを開発しています!
○妊娠牛からも胚の作出が可能
◎トピックス
○初めてのふれあい参観デーは大盛況
○農業総合研究所一般公開へのご来場ありがとうございました
(作物研究センター)
(園芸研究センター)
(アグリ・フーズバイオ研究部)
(畜産研究センター)
(中山間地農業技術センター)
1
《研究紹介》
外張り二重被覆による空気膜ハウスの特性
園芸研究センター
近年、原油価格の高騰から、施
設園芸における省エネルギー栽培
技術の開発が求められています。
保温性が高く省エネ効果が期待
できる空気膜ハウスの特性を明ら
かにするとともに、チューリップ
切り花栽培において暖房燃料消費
量を約20%削減できることを明ら
かにしました。
空気膜ハウスの模式図
35
空気膜
慣行
30
慣行ハウスと比較して夜温は高
く維持される
温度(℃)
25
20
15
10
5
無加温条件での保温性の比較
(ハウスサイドは9時に開、16時に閉)
0
12: 00
1 8:0 0
0:0 0
6 :00
1 2: 00
18 :0 0
1 0月 17 日
1 0月 16 日
0 :0 0
6: 00
1 0月 18 日
40
35
100
慣行
空気膜
80
25
20
15
空気膜
慣行
10
地温の上昇が緩やかである
5
0
0:00
6:00
12:00 18:00
0:00
6:00
12:00 18:00
燃料消費量
温度(℃)
30
60
40
20
0
2007年促成
7月1日
晴天日における地温の推移
2
2007年半促成
2008年促成
7月2日
チューリップ切り花栽培における燃油消費量
(慣行の消費量を 100 とした相対値で表記)
《研究紹介》
花粉が不稔のユリを開発しています!
アグリ・フーズバイオ研究部
遺伝子組み換え技術を用いて「青いユリ」の開発を進めています。遺伝子組み換え植物を普及する
ためには、花粉が飛散して野生種のユリと雑種を作ること(遺伝子拡散)を防止する必要があります。
そのために、材料品種の花粉を不稔(受精能力がない)にする技術の開発が期待されています。
ユリの培養細胞に「※イオンビーム」を照射することで、突然変異を
誘発し、その中から花粉が不稔の系統を選抜中です。
ユリのおしべから
培養細胞をつくる
培養細胞へイオン
ビーム照射
培養細胞から植物体
を再生、球根を養成
球根を定植、花が開花し
たら葯や調査花粉を調査
※イオンビームは、炭素やヘリウムなどの原子から電子をのぞいたイオンを高速に加速したものです。植物に照射す
ることで、自然界で起こる原理と同様に突然変異を引き起こし、今までにない性質の植物を開発することが可能に
なります。
《研究紹介》
妊娠牛からも胚の作出が可能
畜産研究センター
高能力牛の新たな増殖技術として、経膣採卵・体外受精技術(OPU・IVF)を紹介します。この技
術はこれまで繁殖(人工授精や受精卵移植)に供用できない分娩初期(生理空胎期)、妊娠期および
不妊牛からも受精卵を作出することが可能です。
特に妊娠期での OPU・IVF は国内ではあまり応用されていません。当センターでは既に100例以
上のデータ集積を行い、安全に卵子の採取と IVF による胚の作出技術の確立に取り組んでいます。
・OPU に用いる採卵針(上)とプローブ(下)
・プローブの先端はカメラとなり膣に挿入して
右写真のモニター画面で卵胞を探し吸引する
超音波画像診断装置
および卵子吸引器
3
《トピックス》
初めてのふれあい参観デーは大盛況
中山間地農業技術センター
8月1日に中山間地農業技術センターでは初めての一
般公開を行いました。当日は、地元川口町を中心に各地
から100名を超える方々が訪れ、研究員から試験研究成
果や実施中の試験研究について説明を聞きました。
また、ブルーベリーのつみ取り体験コーナーは来場し
た方々に好評で、午前中にブルーベリーの果実がなくな
ってしまうほどでした。
試験研究の成果をパネル展示で紹介
研究員の説明を聞く来場者の方々
小さな子供もつみ取りに挑戦
《トピックス》
農業総合研究所一般公開へのご来場ありがとうございました
8月から10月にかけて開催された、農業総合研究所・作物研
究センター、園芸研究センター、畜産研究センター、食品研究セ
ンター、中山間地農業技術センターの一般公開には、総勢1,600
名を超えるたくさんの皆様からご来場いただき、ありがとうござ
いました。
今後も、農業研究の内容や成果について、「わかりやすく」「楽
しく」お伝えしますので、ご期待ください。
稲の今昔~わらぞうり作成体験~
にいがた農総研だより 第21号【2009年(平成21年)10月発行】
編集・発行 新潟県農業総合研究所企画情報部研究情報室
〒940-0826 新潟県長岡市長倉町857番地 TEL.0258(35)0823 FAX.0258(39)8498
URL.http://www.ari.pref.niigata.jp/
[email protected]
【掲載記事に関する連絡先】
アグリ・フーズバイオ研究部
作物研究センター
園芸研究センター
畜産研究センター
中山間地農業技術センター
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〒940-0826 長岡市長倉町857
〒940-0826 長岡市長倉町857
〒957-0111 北蒲原郡聖籠町大字真野177
〒955-0143 三条市棚鱗178
〒949-7505 北魚沼郡川口町牛ヶ島135-1
TEL.0258(35)0824
TEL.0258(35)0836
TEL.0254(27)5555
TEL.0256(46)3103
TEL.0258(89)2330