展示ケース2 日本で流布した中国由来の相書

2.日本で流布した中国由来の相書
①
④
③
③
④
①
みんぱん
しんそう ぜんぺん せ い ぎ
神相全編正義
②
①
③
ちんたん
えんちゅうてつ
②
②
せきりゅうし
/ 陳摶・袁 忠 徹・石龍子 (国文学研究資料館蔵 ヤ 5-483-1~3)
しんぱん
明版・清版の『神相全編』は 10 冊の大部なものだが、日本のものはこれに限らず 3 冊程度の簡約にな
けいあんばん
ぶん か ねん かん
ぜんぱん
ごびゅう
ったものが多い。慶安版(4-②)に対してこれは文化年間の刊になる。前版の誤謬を改めるほか、医学に連
ぼう
なる人命に関わるものであるといって、読み間違いを防ぐために、「貌」字の略体「皃」を「㒵」に、「光」
こ
じ
ご おん
を「灮」にするなど、わざわざ古字を使用し、漢字の読み方でも呉音を踏襲するなど、表記上でも注目す
にんそう
ご ひゃく ら かん
ぷく
ほ
け きよう
か とう のぶ きよ えん じん
るべき点が多い。人相の絵は、五 百 羅漢の 51幅を法華 経 の文字だけで描いた絵で著名な加藤信清(遠塵
さい
『神相全編正義』
斎)が新たに書き起こしている。
しゆう が ひやくにんいつしゅ
りょくていせんりゅう
/
② 秀 雅百 人 一 首
かつしかほくさい
緑 亭川 柳 、葛飾北斎等画[当該箇所は一勇斎(歌川)国芳画]
(国文学研究資料館蔵 ナ 2-194)
てんめい
あんせい
せん
ほうれき
か えい
やながわしげのぶ
緑亭川柳(天明7 年(1787)-安政5 年(1858))の撰、葛飾北斎(宝暦10 年(1760)-嘉永2 年(1849))柳川重信、
けい さい えい せん
いち よう さい とよ くに
いち ゆう さい うたがわ くに よし
こう か
ほう
渓斎英泉、一陽斎豊国たち5名の絵師が腕をふるう。当該画像は一勇斎(歌川)国芳画。弘化5 年刊行。祝
り きよ かぜ
な か え とうじゆ けいちょう
けい あん
部清風から中江藤樹(慶 長 13 年(1608)-慶安元年(1648))まで百首。上段には各人についての略伝を掲載す
せんの り きゅう
るが、千 利 休 の絵は通常の絵と異なり、いかにも俗っぽい姿をしている。これは、肖像画家は観相をた
しなむべしという中国古来の言を如実に反映した絵といえる。参考までに『神相全編』の「俗相」と比べ
せん
りきゆう
どうちん
したが
ちゃ
み
よ
し ろう
うた
いひ
まな
やまざと
ちや
みち
せ
な
千の利休はじめは与四郎と云十七
そうえき
まつ
はる
才より道陳に 随 つて茶を学び名
くさ
ち ゃ き
き
を宗易といふ 茶の道とせる歌に
ゆ き ま
この
〽花を見て待らん人に山里の
き こ ぐ わ
いつ き
『秀雅百人一首』
歌の翻刻
釜一つ
持てば
茶の
湯
は
なる
ものを
よろづの
道具
好む
はかなさ
本来は釜一つの道具だけで成り立つ、質素
な茶の湯の道を理想と目指しながらも、現
実は様々な道具好みに大金を費やすマネー
ゲームを演出せざるを得なかった自分自身
を空しく儚いものと嘆いている。
雪間の草の春を見せばや
ひがしや ま ど の こ
ほうたいかう
せんきん
はかり ご と
此心をもつてすといへり 扨茶器のこと
あたひ
こうしん
むすば
は 東 山 殿古器古画を好み給ふより
く に こほり
たま
ちゃ
價 たかくなり又豊太閤の一奇器に
き ぶつ
ついや
して國 郡 も与ふべき功臣に千金の
ぢ せい
きんぎん
器物を給はりて人心を 結 ん為の 謀 事
をこり
かん
き
なるに治世に成りても茶をするもの
り
こ
奢 にふけり金銀を 費 し得がたき道
てい
具を求め或は其業ならぬ人も監
うつは
定にことよせこれをもて利をむさ
あた ひ
かけ
さ
ぼるなど心さまよからぬ人も有古器は
り よ く
ま
貴きものと心得 價 のたかき 器 をあい
ばち
うた
するは心利欲に走るがゆへ也缺たる
ほ ん い
すり鉢にても時の間にあふを茶道
の本意とすとこの歌をよめり
ていただきたい。
ま
い そう ほう たい ぜん
③ 麻衣相法大全
/
りよう
りく い すう
唐 鯉耀撰・明 陸位崇 (個人蔵)
りゆうそう そう ほう
中国・台湾では『麻衣相法』と『 柳 荘相法』が頻用されるという。対して日本では、両書の和刻本は稀
覯本となっており、滅多に用いられない。
えんりゆうそうそうしょ
えん りゅうそう
/ [明]袁 柳 荘
④ 袁 柳 荘相書
著の写し (国文学研究資料館蔵 ヤ 5-491)
柳荘相法とも呼ばれる。和刻本では宝暦7(1757)年刊のものがある。大陸では、女性の人相は本書を基本
とするという。
にんそうすいきようしゆう
⑤ 人相水 鏡 集
う けい どうじん
/ 右髻道人 纂要 (国文学研究資料館蔵 54-303-1~5)
しん そう すいきようしゆう
すいきようしゆう
しん そう ぜん ぺん
、
『水 鏡 集 』とも。第 5 冊の絵は慶安版の『神相全編』から採られた
中国・台湾では『神相水 鏡 集 』
『人相水鏡集』
という。