Waseda CALET Operations Center (WCOC) におけるミッション運用

P-055
Waseda CALET Operations Center (WCOC)
におけるミッション運用
早大理工研1, 早大先進理工2, 早大国際教育センター3,神奈川大工4,
JAXA/SEUC5, JAXA/ISAS6, 東大宇宙線研7
浅岡陽一1, 鳥居祥二1,2, 笠原克昌1, 小澤俊介2, 神尾泰樹 2, 下村健太2,
2
2
3
4
仁井田多絵 , 力石和樹 , Holger Motz , 田村忠久 ,
清水雄輝5, 上野史郎6, 冨田洋6, 赤池陽水7, 他CALETチーム
概要: CALETは国際宇宙ステーションにて長期観測を行う高エネルギー宇宙線観測装置である。撮像型と全吸収型を組み合わせた計30放射長の分厚いカロリメータを
搭載し、1GeV-20TeVの広い範囲で電子のエネルギースペクトルを高精度で決定する能力を持っている[1,2]。国際宇宙ステーション軌道上でCALETが取得するデータ
は、これまでに実施されている他の船外実験と同様に、NASAとJAXAが有する2種類の伝送経路を利用してJAXAにて受信する。軌道上での観測開始に向けて、CALET
の状態を常時監視し適切な機器運用を行うための地上運用システムがJAXAにて準備されている。早稲田大学にも、JAXAの地上運用システムと連携し、ミッション運用
とデータ解析を行う Waseda CALET Operations Center (WCOC) が設置され、観測開始に向けてハードウェアやソフトウェアの準備を進めている。WCOCにおけるミッショ
ン運用は、(1)運用計画、(2)リアルタイム監視、(3)科学解析用データ処理によって構成される。各項目の詳細と軌道上運用開始に向けた準備状況について報告する。
ミッション運用のイメージ
機器運用
ミッション運用
リアルタイム
監視 (WCOC)
観測状況 (CALET Status)
リアルタイム
監視 (JAXA)
軌道上から地上へ
運用計画
主なミッション運用手段:
• 運用計画
-スケジュールコマンドファイル作成
-マクロコマンドファイル作成
• リアルタイム監視
-リアルタイムデータの受信
- QL による監視 ⇒ コマンド送信依頼
• 科学解析用データ処理
CALET
-Level0 データの受信 ⇒ 検証
-Level1データの作成 ⇒ 配信
トリガ閾値変更等
フィードバック
(注) Level0: 科学解析用生データ、Level1: 科学解析用一次処理データ
HV Off等
時間
地上システムのデータフロー
運用計画
•
•
•
CALET
onboard ISS
WCOCの役割に着目して簡潔にまとめた
それぞれの役割に対応したJAXAとのインタフェースを有する
全てのインタフェースの疎通を試験にて確認済
Uplink
Source
Files
Command
Uplink File
運用計画
物理ターゲット
較正データ取得
Raw
data
Raw data
CALET
Level0
Real Time 監視
Quick Look
科学解析用
データ処理
Level0 to Level1
CALET
Level0
JAXA CALET GSE
科学解析用データ処理
CALET
Level1
WCOC
GSE: Ground Support Equipment (地上支援装置)
運用計画を立てるためには、電子に対するエネルギー
閾値とトリガーレートの関係を予測しておく必要がある。
また、トリガーレートは地磁気カットオフにより大きく変
化する。そのため、トリガーレートのエネルギー閾値・
緯度依存性をシミュレーションにより評価した。
Real Time 監視
科学解析用生データ
• WCOCでも24時間体制でCALETの運用状態を監視
• 様々なQLを駆使して科学観測のクオリティを常時モニター [4]
• 必要に応じてJAXAへコマンド送信を依頼
トリガ効率50%と
なるエネルギー
をエネルギー
閾値と定義
高エネルギー電子の統計量を最
大限に確保しつつ、状況に応じて
低エネルギー電子、GRBガンマ線、
超重粒子等のデータや、ペデスタ
ル、非シャワー事象といった較正
データを取得する。スケジュールコ
マンドファイルにより、ISS軌道に
沿って、トリガーモード等を適切に
切り替えていく運用が実現可能。
•
•
直感的な検出器
の状態把握
センサの健全性
(生死/ノイズ)
•
Summary Display
•
•
オペレータが常時モニタする
運用に必須な情報を集約
CALETの運用状況を、QLプロ
グラム自体が総合的に把握・
判断し、色や音で警告
ISS Orbit
Monitor
•
Trend Display
Histogram
Monitor
•
詳細情報の確認
•
観測データの時間変
化を監視
異常の予測と原因の
推定可能
軌道予測に基づき
運用計画を確認
Text Monitor
•
•
詳細情報の確認
全テレメトリを監視
可能
1. データ定義とRead/Writeルー
チンの整備を行い、共同研
究者に提示した
2. 軌道上CALET模擬データを用
いて、解析プロセスの開発を
進める
⇒ Sample Data も提示済
Temperature Trend Monitor
CALET
Level1
装置較正に供する
- MIP較正
- 位置/温度補正
装置較正済データ
CALET
Level2
物理解析に供する
- 粒子選別
- 解析アルゴリズム
CALET
Level3
高次データ
and higher
物理対象毎のサブセット
やスペクトルデータ
CALET打ち上げに向けて、国際コラボレーションにおいて具体的な議論が進行中[3]
Rate Monitor
HKデータモニタ用QL
表示するトレンドの指定が柔軟
に行え、かつ全チャンネルの生
値、工学値も常時確認可能。
また過去状況の表示や部分拡
大、範囲指定も自由に行える。
CALETのシステム試験でも、装
置状態の監視に使用している。
(注) 表示機能確認用のダミー
データ使用
論文に繋がる``Official’’な
データセットはWCOCで作成
科学解析の基本データ
Level1 Data Process Status:
QLモニタ画面のイメージ
Event Display
パケットを連結したデータ
- 時系列補正
- 欠損補完
CALET
Level0
Orbit Monitor
Event Display [シミュレーション]
(上) 積分表示 (下) 陽子シャワーの例
HV Trend Monitor
Summary Display
集約された情報を表示。色や音で運用者の確認を促す。
まとめと展望:
1. WCOCの役割:WCOCには運用計画、リアルタイム監視、科学解析用データ処理の3つ
の役割があり、これらを通してミッション運用を実施する。
2. WCOCの準備状況:JAXA CALET-GSE とのI/F試験が完了した。CALET地上システム全体
の検証においても、軌道上データ模擬システムを用いて作成したシミュレーションデー
タやツールを使用し、現実的な性能試験が行えている。
3. 予定:CALET全体のスケジュールと整合して順調に進捗しており、運用開始に向けて運
用訓練や地上システム全体の最終検証が予定されている。
本研究は、JSPS科研費 26220708 (基盤研究S 研究代表者 鳥居祥二) (H26-H30) 及び私立大学
戦略的研究基盤形成支援事業(研究拠点形成)(H23-H27)による助成を受けています。
CALET 軌道上データ模擬システム: CALET地上運用システムのテスト
や、WCOCでのQuick Look, 初期解析のためのソフトウェア開発とLevel0
データ処理システムの開発、軌道上運用のシミュレーションを目的として、
軌道上で期待されるデータを再現する軌道上データ模擬システムを開発
した。ISS軌道上で観測される二次粒子を含む宇宙線流束をATMNC3を
用いて予測し、検出器やCALETデータ処理システムの詳細シミュレー
ションを駆使して現実的な軌道上CALETの模擬データを作成した。
参考文献:
1. S. Torii for the CALET Collaboration, “Overview of the CALET Mission to the ISS”, Proceedings of the 33nd
International Cosmic Ray Conference (Rio de Janeiro, Brazil), CR-IN ID# 0147 (2013)
2. S. Torii for the CALET Collaboration, “The Calorimetric Electron Telescope (CALET) for High Energy Astroparticle
Physics on the International Space Station”, IEEJ Transactions on Fundamentals and Materials, 132, 8, 603-608 (2012).
3. T.G. Guzik for the CALET Collaboration, “The CALorimeter Electron Telescope (CALET) ground data handling
and processing system”, Proceedings of the 33nd International Cosmic Ray Conference (Rio de Janeiro, Brazil),
CR-IN ID# 0168 (2013)
4. 赤池陽水他、“CALETの運用及びデータ解析・管理システムの概要”, JAXA-RR-13-010, 99-107 (2014).