油井亀美也宇宙飛行士の 国際宇宙ステーション長期滞在(初フライト) 2015年1月5日 2015年1月26日 宇宙航空研究開発機構 有人宇宙ミッション本部 A 長期滞在ミッションロゴについて 2012年6月のNEEMO訓練 訓練3日目に現れたウミガメ 国際宇宙ステーション(ISS)第44次/第45次長期滞在ミッションのJAXAロゴは、油井亀美也宇宙 飛行士の名前の漢字から連想される“亀”をモチーフにデザインしました。 また、“亀”は、コツコツと目標に向けて努力を積み重ねてきた油井宇宙飛行士の性格を表して います。甲羅部分は、国際宇宙ステーションに設置されている「キューポラ」(7つの窓を備えた、 地球や天体などの観測用施設)に見立てました。キューポラから見える月と火星の輝きは、将 来の宇宙開発への期待を表現しています。 油井飛行士インフォメーション 新米宇宙飛行士最前線:http://iss.jaxa.jp/astro/report/column/ 宙亀日記:http://iss.jaxa.jp/iss/jaxa_exp/yui/sorakame/ Twitter :https://twitter.com/Astro_Kimiya 2 油井宇宙飛行士の長期滞在概要 ISS長期滞在 約6カ月程度 2015年5月 打上げ予定(43S) (カザフスタン共和国 バイコヌール宇宙基地) 油井亀美也 (ソユーズ レフトシーター) オレッグ・コノネンコ (ソユーズコマンダー) チェル・リングリン 2015年11月頃帰還予定 (カザフスタン共和国) 今回のISS長期滞在が初の宇宙飛行(日本人飛行士としては6人目) ソユーズ宇宙船を操縦するコマンダーの補佐役「レフトシーター」(※)を担当 ※不測の事態に対して、ソユーズ宇宙船コマンダーに代わり、ソユーズ宇宙船を操縦する役割を担う。 3 2015年のISS/「きぼう」トピックス 「きぼう」利用の新展開(新しい実験環境の稼働) 船内利用 船外利用 工業的付加価値の高い 高融点材料の特性研究 マウスを用いた疾病研究、 新薬研究など 静電浮遊炉 小動物飼育観察装置 3000℃を超える高融点の 希少材料の熱物性を非 接触測定できる、ISS唯一 の装置 高融点金属の用途例: 航空機材料やジェットエン ジンのタービンブレード 半自動飼育・観察ができ る装置。軌道上で1G/μG の比較対照が可能 老化・加齢メカニズム研究 や治験環境としての活用 最先端の研究実施 民間需要の取り込み 最新の検出器で、暗黒物質 発見と宇宙線の起源解明 宇宙用材料の実証データ 取得の簡便化 高エネルギー宇宙線観測装置 (CALET ) 船外簡易取付機構 (ExHAM) 日・米・伊の共同観測。 これまでにない高エネルー 宇宙線の長期観測を実現。 暗黒物質(ダークマター)の 発見は国際競争の中。 信頼性の高い宇宙用材 料開発に貢献。 将来の宇宙活動に向け た技術の獲得、民間企業 の国際競争力強化を支 援。 4 2015年のISS/「きぼう」トピックス こうのとり5号機による物資補給 • 日米大型実験装置の輸送 • 飲料水や食料など、クルー の活動に関わる物資輸送 (こうのとりへの振り替え) 米露宇宙飛行士の1年長期滞在 • 2015年3月より1年長期滞在開始。 • より長期の宇宙活動に向けて、医学的知見の 獲得、日本も宇宙医学研究のデータシェア等 で参加予定 国際宇宙探査に向けて、 ISS参加各国も動き始め ている。 日本のプレゼンス発揮 • 大型、大量の物資輸送能力 • 高い信頼性と確実性(4機連 続のオンタイム打上・到着) 2014/12/18 ISS参加国による 1年滞在ミッション共同記者会見 民間による利用拡がり(新たな利用へ) 2015年のISS/「きぼう」 は新たなステップへ 創薬研究利用(探索フェーズ) 超小型衛星 の有償利用 先端材料実験 バイオ 研究 5 油井宇宙飛行士って、こんな人 赤:一般の印象 青:JAXA職員からの声 緑:本人ブログより 素朴? 自分の限界を 知る男 テストパイロットの 経験の賜物 努力家、 日々勉強! 操縦技術が スゴイ! 抜群の空間認識能力で ミッションを遂行 ゲーム 大好き 親しみやすい Twitter、ブログで多く の情報を発信 異文化交流、 大好きです! ロシア語習得の秘訣は コミュニケーション 安心感を 与える男 難しい状況でも周囲を 安心させる力 天体オタク 子どもの頃、夜通し 空をみてました スーパーポジティブ 困難な状況には感謝 まじめ? 硬派? ※ 略歴はリソグラフをご参照ください 6 初フライトまでの道のり 技量の維持・向上 ISS搭乗員認定に向けた訓練 • • • • • 長期滞在ミッションに向けた訓練 • • • • • 地上サバイバル訓練 船外活動訓練 T-38操縦訓練 ロボットアーム操縦訓練 ISSモジュール運用訓練 など ソユーズ操縦訓練 緊急対処訓練 水上/冬山サバイバル訓練 実施予定の実験訓練 ISSモジュール運用訓練 など ロシア語没入訓練 ロボットアーム操縦訓練 ソユーズシミュレーション訓練 NOLS訓練 T-38操縦訓練 2008年8月 「きぼう」 利用開始 船外活動訓練 NEEMO訓練 2015年5月 初のISS長期滞在ミッション 開始(予定) 2012年10月 ISS長期滞在クルーに任命 2009年2月 JAXA宇宙飛行士 候補生として選抜 2011年7月 ISS搭乗宇宙飛行士に認定 7 長期滞在に向けた訓練例 2012年6月 極限環境ミッション訓練(NEEMO) 海底実験室を利用することで、軌道上に最も酷似した隔離環境を実 現。閉鎖環境における異文化対応、自己管理、チームワーク及び リーダーシップなどの能力向上が目的。 2013年6月 水上サバイバル訓練 ソユーズ宇宙船が着陸する際に、海などの水上に不時着したことを 想定した訓練。 2012年9月 野外リーダーシップ訓練(NOLS) 野外リーダーシップ・集団行動資質向上を目的とした訓練。 2014年1月 冬季サバイバル訓練 ソユーズ宇宙船が着陸する際に、山などに不時着したことを想定 した訓練。 8 油井宇宙飛行士の活動概要 油井宇宙飛行士の滞在中に想定される実験例(調整中) <船外利用> • • • 高エネルギー電子、ガンマ線観測装置の設置・観測(CALET) 「材料・部品の宇宙環境での耐久性評価」、「宇宙浮遊物の捕獲」実験(ExHAM) X線天体観測(宇宙の速報役として継続観測中) <生命科学、宇宙医学> • • • 小動物飼育装置の初期検証(その後、老化加齢研究や疾病研究に使用) 長期滞在リスク低減の宇宙医学研究 植物の重力応答実験(継続)、細胞の長期被ばく影響観測実験(継続) 幅広い活動 • 子供向け教育実験 • アジア等との交信 イベント • 民間利用の支援 等 <物質物理> • • 静電浮遊炉の初期検証、実証実験(工業材料の基礎研究の開始) 燃焼実験(燃焼のメカニズムを解明)、流体実験(マランゴニ対流実験) <産業競争力強化、技術開発> • • 高品質たんぱく質結晶生成実験(創薬研究、民間のトライアルユース) 超小型衛星放出(国内/海外の衛星を放出予定) 「きぼう」及びISSシステムの機能維持 ロボットアーム操作による、補給船のドッキング作業 ISSの運用に重要な機器の交換・メンテナンス 高品質なタンパク質結晶 超小型衛星 (写真は2013年に放出したピコドラゴン) 油井宇宙飛行士の今後の予定 平成27年 ・ 2月中旬~ GCTC(モスクワ郊外)での訓練、 A 訓練公開、記者会見 ・ 3月中旬~ JSC(ヒューストン)での訓練 訓練公開、記者会見 ・ 4月上旬 ESA(ドイツ・ケルン)での訓練 ・ 4月中旬~ GCTCでの訓練、最終試験、記者会見 ※ 今後の予定は、変更/中止となる場合がございますので、予めご了承ください。 ※ 取材機会が確定しましたら、別途お知らせいたします。 A 10 参考資料 11 日本人宇宙飛行士の長期滞在 H20 H21 H22 H23 H24 H25 H26 H27 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 ISS6人運用体制開始(H21年5月~) シャトル退役(H23.7.21) 3便目 HTV1号機 HTV2号機 HTV3号機 HTV4号機 HTV5 号機 (2J/A) H25.8.4 H24.7.21 H23.1.22 H21.7.16 H21.9.11 「きぼう」日本実験棟組立 1便目 2便目 (1J/A) (1J) H20.3.11 H20.6.1 ・船内保管室 宇宙ステーション補給機(HTV):H21年~H28年の間、年1機程度、計7機打上げ ・船外実験プラッフォーム ・船内実験室 ・船外パレット ・ロボットアーム 「きぼう」運用・利用開始 土井飛行士 星出飛行士 若田飛行士 野口飛行士 1J/A搭乗 長期滞在 1J搭乗 長期滞在 (2J/A組立) (H21.12~H22.6) (H21.3~H21.7) 山崎飛行士 シャトル19Aミッション搭乗 (H22.4) 古川飛行士 若田飛行士 星出飛行士 長期滞在 長期滞在 長期滞在 (H23.6~H23.11) (H24.7~H24.11) (H25.11~H26.5)) 国別の宇宙滞在日数は、 ロシア・米国についで日本 は世界第3位 大西飛行士 長期滞在(予定) (H28.6月頃.から 約6ヵ月間) 油井飛行士 長期滞在(予定) (H27.5.から 約6ヵ月間) 12 JAXAの宇宙飛行士 専門:航空宇宙工学 資格:1993年8月MSに認定 飛行実績: ・1996年1月(宇宙実験・観測フリーフライヤ回収) 」 ・2000年10月(ISS組立) ・2009年3月-7月(第18/19次長期滞在) 若田 光一 ・2013年11月-14年4月(第38/39次長期滞在) 第39次ISS船長 専門:航空機操縦(パイロット) 資格:2011年7月ISS搭乗宇宙飛行士 に認定 現在:第44/45次長期滞在に向けて訓 練中(2015年5月から約6か月間 の滞在予定) 油井亀美也 専門:航空宇宙工学 資格:1998年4月MSに認定 飛行実績: ・2005年7月(船外活動) 野口 聡一 ・2009年12月-10年6月(第22/23次長期滞在) 専門:航空機操縦(パイロット) 資格:2011年7月ISS搭乗宇宙飛行士に認定 現在:第48/49次長期滞在に向けて訓練中 (2016年6月頃から6か月間の滞在予定) 専門:医学(外科) 資格:2001年1月ISS搭乗宇宙飛行士に認定 2006年2月MSに認定 飛行実績: ・2011年6月-11月(第28/29次長期滞在) 大西卓哉 専門:航空宇宙工学 資格: 2001年1月ISS搭乗宇宙飛行士に認定 2006年2月MSに認定 飛行実績: ・2008年6月(船内実験室の取付け) 星出 彰彦 ・2012年7月-11月 (第32/33次長期滞在) 金井 宣茂 古川 聡 専門:医学(潜水医学) 資格:2011年7月ISS搭乗宇宙飛行士に認定 現在:ISS搭乗に向けて訓練中 MS: Mission Specialist(搭乗運用技術者) 向井 千秋 現在:JAXA特任参事 油井宇宙飛行士と飛行・滞在する宇宙飛行士 第43次 第44次長期滞在 ISS船長 一年滞在クルー 一年滞在クルー ゲナディ・パダルカ (ロシア) スコット・ケリー (アメリカ) ミカエル・コニエンコ (ロシア) 第45次長期滞在 ISS船長 油井 亀美也 (日本) オレッグ・コノネンコ (ロシア) 第46次 チェル・リングリン (アメリカ) ISS船長/一年滞在クルー スコット・ケリー (アメリカ) 一年滞在クルー ミカエル・コニエンコ セルゲイ・ヴォルコフ (ロシア) (ロシア) 参考:利用実験の例(1/3) 宇宙線と暗黒物質の謎に迫る、宇宙科学のフロンティアに挑む宇宙線天文台 【CALET :高エネルギー宇宙線観測】 概要:宇宙を飛び交う粒子のエネルギー量とそれらの粒子の種類や飛来方向を測定。 非常に高いエネルギーの電子やガンマ線、陽子・原子各成分を高精度で観測可能。また、ガンマ線バーストの現 象の測定や太陽活動の地球環境への影響についても調べる。 期待される成果:①高エネルギー宇宙線の起源と加速のメカニズム、②宇宙線が銀河内を伝わるメカニズム、 ③暗黒物質(ダークマター)の正体等の宇宙の謎、の解明を目指す。 星や惑星など、現在観測 できる天体は宇宙全体 の5%の質量のみ。残り 95%は未知の部分。 最新の検出・電子技術を用いた検出器を搭載。 既存の衛星や天文台では観測困難であった高 エネルギー領域を探ることが可能。 暗黒物質(ダークマター)の謎が解ければ、宇 宙や物質の成り立ちの解明や宇宙の進化の 解明が進む。 (暗黒物質の発見は、ヒッグス粒子(2013年)に 続くノーベル賞級と言われている) ガンマ線バースト現象を観測し宇宙線の起源 に迫る。また、太陽活動の地球環境への影響 を調べる。 詳しくはこちら→http://iss.jaxa.jp/kiboexp/equipment/ef/calet/ JAXA,早稲田大学のほか、NASA、イタリア宇 宙機関との国際協力実験。 15 参考:利用実験の例(2/3) 高融点材料を浮かせて隠れている素材の性質を解明 【静電浮遊炉 Electrostatic Levitation Furnace(ELF)】 概要:微小重力環境の特徴を利用し、融点が非常に高い金属(いわゆる希少金属)やセラミクス・ガラスなどの材料を 浮かせた状態で溶かしたり、固めたりすることで材料の特性データを取得(非接触計測)。また、過冷却状態で の物質状態の追及や、過冷却凝固(融点より低い温度で急速に固体化)を利用した新しい物質の特性を調べる。 溶かした試料を過冷却凝固することで地上に持ち帰り詳細に分析することも可能。 期待される成果:地上では測定できない材料の特性を高精度に計測し、解明することで、新機能を持った革新的な物 質の創製や、高機能材料を発見することができ、工業的に重要となる材料開発の発展に貢献。 地上 電極(X/Y/Zの3対) 電解で位置制御 加熱レーザ による溶融 計測 拡大カメラ等 UVランプ による帯電 浮き上がる仕組み 宇宙 静電浮遊炉が導く 科学・技術 高精度な熱物性の取得によ るジェットエンジンタービンブ レードの高性能化 新機能材料創製 惑星科学 高温融体物性 詳しくはこちら→ http://iss.jaxa.jp/kiboexp/equipment/pm/elf/ 巨大誘電率を持つチタン 酸バリウムは、高誘電率 コンデンサとして期待 液体シリコンの特異な電子 構造の解明し、半導体電子 部品生産性の向上へ貢献 ダイヤモンドの屈折率に 匹敵するJAXAガラスは 高密度DVD用のボール レンズとして期待 材料開発のブレークスルーへ 参考:利用実験の例(3/3) 高機能・高性能な材料研究、宇宙塵採取により太陽系や生命の起源の謎に迫る 【船外簡易取付機構(ExHAM)による 「材料・部品の宇宙環境での耐久性評価」、「宇宙浮遊物の捕獲」実験】 概要:地上で再現することの難しい宇宙環境を利用することで長期間の曝露による材料の経年変化を調べる。また、I SSに衝突するスペースデブリや宇宙塵などの微粒子を捕獲する。 期待される成果①:先進的な材料の開発への貢献 宇宙放射線などの過酷な宇宙環境が材料に与える影響を調べ、明らかにすることでより耐性の強 い優れた特性を持つ素材を作る手がかりを得ることができる。 期待される成果②:太陽系、地球生命の起源の解明への貢献 宇宙塵を地球の汚染が無い環境で直接採取することで、彗星や小惑星などの宇宙塵の母天体に 関する情報を取得することで、宇宙の起源や地球生命誕生の原材料が分かる。 ExHAMの「きぼう」船外取 付け可能位置: <ExHAMのメリット> きぼうのエアロックとロボットアームを使うことで、船 外活動無しで曝露環境実験ができる。 日本の「こうのとり」や各国の補給船を使用すること で、打上げのタイミングをフレキシブルに設定、定期 的に地上に回収が可できる。 進行方向 船外簡易取付機構 (ExHAM) 宇宙空間での材料・部品の劣化状態を地上で現物 を見ながら評価することができる。 詳しくはこちら→http://iss.jaxa.jp/kiboexp/equipment/ef/exham/ 国際競争力の高い宇宙材料の開発 きぼうの民間利用の拡大へ 17
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