かみや母と子のクリニック - 公益社団法人 沖縄県看護協会

医療法人仁清会
かみや母と子のクリニック
1.病院概要
所在地:沖縄県糸満市阿波根 1552-2
診療科:産婦人科、小児科(外来のみ)
入院病床数:19 床
年間分娩数:760 件(平成 26 年)
看護職員数:40 人(産休・育休 5 人含む)
病棟の勤務体制:3 交代
写真(病院全景)
( )内、産休・育休者数
<看護職員数:人>
助産師
正看護師
准看護師
合計
常勤
11(1)
8(3)
4(1)
23(5)
非常勤
10
4
3
17
合計
21(1)
12(3)
7(1)
40(5)
2.WLB推進事業への参加動機
かみや母と子のクリニック(以下、当院とする)は、地域のローリスク分娩を担ってお
り、質の良い医療の提供と、妊娠から出産・育児までのトータルサポートを行うことを目
標としている。その為には、看護職員が健康で生き生きと働ける職場であることが望まし
いと考える。
当院は開院して 17 年になるが、開院当初からの職員も多く、離職率も低い。それを踏ま
えると、働きやすい環境であると言える。
しかし、現状はどうなのだろうか?ワークショップに参加することで、現状分析が出来、
よりよい働き方が見つけられる機会だと考え参加した。
3.WLB取り組み前の課題
1)WLB推進体制がない。現在ある制度が周知されていない。
2)超過勤務時間が多い(平均 17.5 時間/月)
。過労死レベルの超過勤務時間(45 時間/月)
以上が 3 人いる。
3)夜勤可能職員が少ない為、一人当たりの夜勤回数が多い。(12.3 回/月)
4)助産師の育成に時間がかかり、4 人の助産師が自立出来ていないことから、夜勤や超過
勤務をする職員に偏りがある。
5)新卒者を採用しにくい要因の一つである、教育体制の整備をすることが必要である。
6)「職員を大切にする施設である」と思っている職員が多い反面、「勤務先の将来に不安
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がある」職員が 2 割いる。当院の方針や施策の内容等が、職員に伝わらずに不安にさ
せている可能性がある。
4.WLB取り組み体制
推進体制委員メンバーは事務長、助産師長、助産師の 3 人で始め、各部署から人選し、
増員し、月 1 回、定例委員会を行うことにした。
5.WLB取り組みの実際
1)WLB支援制度の周知
【1 年目】多様性のある働き方を検討する為、就業規則の確認を行った。法律上の改定と
各種支援策の改正はされているが、制度の利用が進んでいない。
【2 年目】面接形式で支援体制の周知を行った。その中で年齢や家族形態の変化とともに、
支援策への関心や必要性が変化していることがわかった。子育て期に必要な支援策や年
齢とともに必要となる介護関連の支援策など、職員一人ひとりのニーズの違いを把握す
ることができ、利用促進に働きかけることができつつある。
【3 年目】看護職員全員に、当院の休暇制度・母性保護・育児支援・介護支援について説
明を行った。今後も定期的に制度の周知と利用促進の働きかけを行う。
2)超過勤務時間の削減
【1 年目】
「超過勤務 45 時間以上を「0」にするための取り組みをする」
超過勤務 45 時間以上の職員 3 人は独身で中堅の助産師。夜勤回数が多く、緊急応援の呼
び出しも多い。まずは、人手不足の改善、人材確保のために何が必要かを検討し、多様
性のある働き方ができる仕組み作りを目指すこととした。 経営者に現状を説明し、夜勤
専従制度、日勤常勤制度の導入を提案、日勤のみのパートタイム希望者の採用について
打診した。その結果、11 月より夜勤専従制度、日勤常勤制度が導入され、加えて、夜勤
を行う職員に対する優遇措置で夜勤手当も増額となった。日勤のみのパートタイム者 2
人の採用もあり、職員全体の超過勤務を減らす方向性が見えてきた。超過勤務 45 時間を
超えていた職員も 0 人になった。経営者と、次年度の職員の動向と事業計画、採用希望
人数について話し合いを持ち、夜勤可能助産師 2 人の採用が承諾された。
【2 年目】日勤のみの非常勤看護師を採用し、業務整理をしたことで、時間外勤務を一人
当たり平均 5 時間/月減らすことができた。さらに今年度のインデックス調査では「定時
で終えることができる業務である」と答えた職員が 1.5 倍に増えた。
【3 年目】産休・育休の職員が多く、その補充がないことで、超過勤務時間が増えた。休
暇者の長期予測を含めた適正人員について、経営者との話し合いが必要である。
3)夜勤負担の軽減
夜勤帯の業務整理を行い、増員された日勤帯に業務を移行したことで夜勤者の負担が軽
減された。
【3 年目】育休明けで日勤のみを希望する職員が増える傾向にあり、夜勤可能な職員が減
ってきている。夜勤可能な常勤者に負担が偏る為、再度、夜勤業務の見直しと、適正人
員について、経営者との話し合いが必要である。
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4)キャリア支援
【1 年目】
「新人教育のためのワーキンググループの立ち上げ」
新人教育プログラムの為のワーキンググループの立ち上げが必要であることを職員間で
共有し、現在取りかかっている助産師外来(妊婦健診)の為ワーキング内で、どのように
助産師を育てるかという項目で一緒に話し合っていくことになった。新人助産師 2 人、
中途採用者 1 人をそれぞれ中堅助産師が担当し、助産師外来での指導を始め、(OJT) 中
途採用看護師の為の勉強会プログラムを実施した。
【2 年目】助産師外来業務のための教育プランを継続した。当初の新人助産師2人、中途
採用者1人は助産師外来での指導や分娩介助での自立はできた。今年度も新人助産師1
人、中途採用者1人にプリセプター制による指導を始めた。中途採用看護師の為の勉強
会プログラムも継続している。
【3 年目】教育プランは継続中。助産師実践能力強化のため助産実践能力習熟段階(クリ
ニカルラダー)を導入した。助産師の出向制度受け入れを実施したことで、他施設の助
産師との交流から学ぶことが多くあった。
5)労働安全衛生・メンタルヘルス対策
【3 年目】9 月に医療安全委員会が発足し、活動を開始している。各部署からのメンバー構
成で月 1 回の定例会を行っている。
6.WLB取り組み後の組織の変化
WLB推進前後のインデックス調査でみえた成果としては、
「勤務先の将来に不安がある」
が半数に減り、
「現在の生活に満足している」が 13%も増えた。「上司は公平に評価してい
る」「現在の働き方に満足している」「長く勤めたい」は、WLB推進前でもいい評価だっ
たが、推進後には更に増え 100%近くになった。
7.WLB今後の課題
このように離職率の低い当院の職場の特性を踏まえ、今後の課題は、
1)職員の平均年齢が上がり、家庭環境や、家族内の役割分担の変化から、必要な支援策が子
育て~介護までと幅広い。そのため子育て支援のみではなく、介護支援にも注目し、利用
促進を図りたい。
2)現任教育では、個別の面接を行い、一人一人の段階にあった教育プログラムの充実を図り、
クリニカルラダーを活用していく予定である。
3)多様な勤務形態導入に伴い、よい点ばかりではなく、職員間の役割分担や教育体制、諸条
件などの課題が出てきた。これらの制度をよりよく継続するために改善に取り組む必要が
ある。
4)他職種(事務・栄養士・心理士)との連携もさらに深めていく。
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ワークショップの模様(かみや母と子のクリニック)
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