報 告 フォークリフトを利用した少人数でできる 子宮捻転整復法 伊藤 忠則 (受付:平成 27 年1月 27 日) Correction of uterine torsion by a few persons using a forklift TADANORI ITO Fuchu Veterinary Clinic Center, Hiroshima P.F.AM.A.A., 396-1, Fukae, Jouge, Futyu, Hiroshima 729-3421 SUMMARY Uterine torsion is not frequently encountered, but when correction using manual fetus rotation via the parturient canal fails, dam rolling using a plank or a Caesarean section is necessary, requiring many persons and much time. For uterine torsion that cannot be corrected using the fetus rotation method, we developed a method using a forklift that allows accurate correction by a few persons in a short time. ── Key words: uterin torsion, forklift 要 約 子宮捻転は日常茶飯事に遭遇する疾病ではないが,産道から手腕で行う胎子回転法で整復 出来ないと,踏板を利用した母体回転や帝王切開など人数と時間を要する疾病である.今回 胎子回転法で整復出来ない子宮捻転に対して,フォークリフトを利用し少人数・短時間で確 実に整復できる方法を考案した. ──キーワード:子宮捻転整復,フォークリフト利用 NOSAI 広島 府中家畜診療所(729-3421 府中市上下町深江 396-1) ─ 17 ─ 広島県獣医学会雑誌 № 30(2015) 序 文 方 法 2010 年 4 月から 2014 年 1 月まで筆者が手がけた 子宮捻転 14 頭の内,フォークリフトを利用した 3 頭 の子宮捻転整復法と他整復法等について比較・検討し た.その内訳は,胎子回転での整復は 6 頭で可能で まず後肢を普通の幅に繋ぎ(写真 1)その中央に誘 引ロープを取り付ける(写真 2).その誘因ロープを 持ちフォークリフトのフォークに掛けて吊り下げて仰 向けにする(写真 3). あった.残り母体回転で整復したもの 1 頭,帝王切 開 2 頭,踏板を利用した母体回転法 2 頭であった. 仰向けにしたら,術者がそのままの姿勢で保持して (写真 4)フォークリフトは一旦バックして(写真 5) ホークの幅を広めに調整して片側のフォークは後肢の 後側でスルー状態とし,片方のフォークは乳房の前を 子宮捻転の整復法は表 1 の通りだが,術者の腕一 本による整復が出来なければ多大なる人数と時間が費 やされる.また,捻転が 180 度以上で手指の挿入が 子宮頸管より困難な場合は,最初から帝王切開の選択 が最優先となる.今回筆者は,胎子回転法で整復不能 な子宮捻転で胎児の一部に触れ 180 度以内の子宮捻 圧迫するようにする(写真 6) .圧迫は 25cm 腹部を 圧する程度で腹部とフォークの間に手を入れると少し 圧迫されて痛いと感じる程度とする.圧迫したまま術 者が母牛の後肢を子宮捻転している側に側臥させるよ うに回転させる(写真 7) .圧迫力を間違えなければ そんなに力を入れずに回転は可能で,安易に整復可能 転に対して農家の二人でも整復出来る子宮捻転整復法 を考案したので報告する. である(写真 8・9). 結果と考察 表 1 子宮捻転整復法の比較 整復法 簡便性 必要人数 準備物 胎子回転法 ◎ 1人 母体回転法 △ 4〜5人 綱・ロープ 踏み板による 母体回転法 △ 4〜6人 綱・ロープ・踏み板 帝王切開 × 2人 手術道具 フォークリフト 利用の整復法 ○ 2人 綱・フォークリフト 産道から手腕で行う胎子回転法で整復出来ない子宮 捻転に対し,従来の母体回転や踏み板を利用した母体 回転法に比較して,極めて簡単に労力を要することな く整復可能であった. フォークリフトは殆どの酪農家が有するため,踏み 板や多くのロープを必要としない. 写真 1 写真 2 写真 3 写真 4 写真 5 写真 6 写真 7 写真 8 写真 9 ─ 18 ─ 広島県獣医学会雑誌 № 30(2015) 他の方法で最低 4 〜 5 名の人数を必要としていた が,フォークリフトを使用するため術者と農家の 2 名で整復可能であった. 圧迫力は術者の手指がフォークリフトと母体の間 で,かなり痛くて力を入れないと抜けない状態で行う と,子宮破裂等の心配もなくほぼ 1 回で整復可能で あった. 実施した 3 頭に要した整復時間は,後肢にロープ を掛けてから,全て 5 分位で極めて短時間に整復可 能であった. 今回は 3 頭での実施報告だが,機会ある毎に症例 を重ねて,胎子の生存や捻転の程度により,より詳細 に検討していく予定である. ─ 19 ─
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