入学式 式辞 2015年4月 2日

入学式 式辞
短期大学部、大学、大学院に入学される皆さん、おめでとうございます。また、ご家族
ならびに関係者の方々にも心よりお祝い申し上げます。
イギリス人女性、イザベラ・バード氏をご存じでしょうか。イザベラ氏はヨークシャー
の牧師の家に生まれました。彼女は病弱であったため、ほとんど家で過ごすことが多かっ
たと言われています。しかし、1854 年、健康のために海外旅行を決意し初めてカナダ、米
国を訪れました。その後も転地療養ならびに他国への興味関心を動機にオーストラリア、
ニュージーランド、ハワイへと渡航先を広げました。
さらに、イザベラ氏は自らの日本への興味関心を満たすため、1878 年、明治 11 年 5 月
21 日、48 歳の時、サンフランシスコから上海を経由して横浜に到着しました。所要時間
18 日間の長旅でした。彼女は船上から初めて日本の美しさを見ることになりました。それ
が富士山です。富士山の美しさについて「これほど荘厳で孤高の山を見たことがない。近
くも遠くにも、その高さと雄大さを滅殺するものがない」と書いています。
いよいよ同年 8 月 12 日、
青森から津軽海峡を船で 14 時間かけて渡り函館に到着します。
函館の最初の印象を「とにかく平穏な北国らしい光景が私を嬉しくさせてくれた」と記述
しています。ここ函館から彼女が未踏の地と呼ぶ、北海道での旅行が開始されました。彼
女が目にしたのは駒ヶ岳、そして森町から噴火湾を渡り室蘭、白老へと足を踏み入れます。
この行程を通じて「孤独な大自然と自由な空気の中へ入れることはよいものである」と述
べています。イザベラ氏の日記を読むととにかく彼女は好奇心旺盛な人物であることがわ
かります。
今日のような情報化社会においては、皆さんは興味関心がある事柄について容易に情報
を取得することが可能になりました。パソコン、スマホ、携帯を通じて文字、画像、動画
情報を直ぐに得ることができます。イザベラ氏が生きた時代にはこのような便利な道具は
なかったので、自ら行動することで興味関心を満たしていました。かつてアメリカの社会
学者ダニエル・ブーアスティンは 1960 年代の社会を幻影の時代と称し、マス・メディアが
生み出す大量の情報世界を疑似イベントという言葉を用い、自己の見解を示しました。私
たちは今、ブーフスティンが示した時代よりさらに進んだ情報の渦の時代に暮らしていま
す。そして、自らパソコン、スマホ、携帯を用いてイメージを他者へ伝えることも可能に
なりました。
現代社会を生きる上で大事なのは、真正性(しんせいせい)の確認です。それぞれが接した
情報或いは発信した情報が本物なのか、正しいのかを選別できる判断力を身に付けてくだ
さい。判断力とは知性、感情、意志などが現実の世界に正しく反応する力です。様々な学
問、人間関係、経験を通じて知性、感情、意志を磨き、正しい判断力を自己に浸透させ、
自らを成長させてください。皆さんの社会での自立への一歩が今日から始まります。
以上、式辞とさせていただきます。
札幌国際大学短期大学部 札幌国際大学 学長 越塚宗孝 平成 27 年 4 月 2 日