体育館利用を通じた老後生活の実態と新しい暮らしの可能性 201214006 上野 燎平 指導教員 黒木 宏一 1. はじめに 高齢者の日々の過ごし方は昔と比べて多様化してい る。その中でも、アクティブシニアと呼ばれる老後の時 間を趣味に当て、充実した暮らしをしている高齢者が増 えてきている。そうしたアクティブシニアの過ごす場所 は多様であるが、中には、体育館で日々トレーニングを < 体育館での利用者の様子 > 理のため、週に少なくとも 3 回以上は利用しており、体 育館を利用する時間以外は、散歩や庭、畑の手入れを行っ 週 3~4 回 / 健康管理 の属性 10:00~ 11:00~ 70 歳 / 男性 67 歳 / 男性 定年後 / 会社員 朝歩く (20 分程度 ) 9:00. 入館 ~20. ランニングマシン① ~25. 会話⑧ ~40. リカンベントバイク③ 5~6 年前から / 会社員 朝歩く ~20. ウォーキング ~10. ベントオーバーロウ⑧ ~30. レッグプレス④ ~20. デッドリフト⑧ ~40. トライセップス④ ~40. 懸垂⑨ 分の能力の限界を見定めて老後を過ごすだけでなく、更 に新しい目標に向かって自らの能力や可能性を高めてい る態度が見受けられる。 本研究では、こうした高齢者をアグレッシブシニアと 帰宅 ~30. 軽運動⑨レッグプレス トライセップス④会話 庭の手入れ、散歩 帰宅 カラオケなど 昼寝 (1 時間程度 ) ~50. ウォーキング、 ランニング ( コース ) 散歩、庭の手入れ として受け取られがちである。結果として高齢者は老後 の暮らしを受動的に捉えてしまい、ある程度決まった枠 の中での暮らしを選択してしまうのが大半である。 こうした現状に対し、アグレッシブシニアのように、 人生を現役と捉え、自らを高める高齢者が増加すること によって、これまでの高齢者に対するイメージが変わり、 より自律を促す社会へと変化する可能性がある。 そこで本研究では、市立体育館を利用する高齢者を対 象に、体育館の利用を通じた老後の暮らしの実態を捉え、 :体育館にいる時間 :体育館以外の時間 17:00~ < 柏崎市総合体育館プラン > ⑨ トレーニング室 サブアリーナ 軽体操室 エントランスホール 1F を目的とする。 3. 調査概要 新潟県内の市立体育館 ( 図 3) を対象に、高齢者の利 用実態を調査し、高齢者の利用の多い体育館を選定、利 用高齢者に対し、利用の目的や頻度、内容などのアンケー ト調査、さらに体育館の利用実態を把握する観察調査、 暮らしの実態を把握するヒアリング調査を行う ( 図 4)。 ⑧ ① ② メインアリーナ ロビー < 一階平面図 > < アクティブシニア > ①ランニングマシン (5 台 ) ②エアロバイク (7 台 ) ③リカンベントバイク (3 台 ) ④血圧、体組成計、、身長計、握力 ⑤ストレッチマット ④ ⑥⑦ ⑤ ③ 入口 ⑥下半身マシン器具 ⑦上半身マシン器具 ⑧高重量器具 ( ベンチプレスなど ) ⑨軽重量器具 ( ダンベル 1~10 ㎏など ) < トレーニング室 > 図1 体育館利用者の生活実態 < アグレッシブシニア > 趣味に意欲的 趣味の中に目標があり、プロセスがある 自立した社会生活 精神的・社会的に自立 健康志向 健康についての意識が高い 現役引退 生涯現役 物事に積極的 何事にもポジティブ 図 2 アグレッシブシニアの定義 柏崎市: 柏崎市総合体育館 刈羽村ラピカ 小千谷市: 小千谷市総合体育館 長岡市: 長岡市市民体育館 栃尾体育館施設 上越市 : 上越市柿崎総合体育館 新潟市: 豊栄総合体育館 鳥屋野総合体育館 亀田総合体育館 図 3 新潟県内の市立体育館 新潟県内の市立体育館を対象に、高齢者の利用者数や 高齢者の利用実態調査 (7 月中 ) 時間帯などを、体育館の職員やみてとれる情報から体 育館を利用する高齢者の実態を調査。 体育館を利用する高齢者の実態をもとに、高齢者の利 高齢者の利用の多い事例を選定 用が多い体育館を選定する。選定後、以下の三つの調 老後生活を積極的に送るための諸要素を明らかにする。 また老後の新しい暮らし方の選択肢として提言すること 15:00. 退館 帰宅 昼寝など 16:00~ 夕方頃、孫の迎え 受付 して捉えられ、社会が支えていかなければならない弱者 ~00. ランニングマシン① テレビ、畑、散歩など とは、高齢者にとって重要な要素である。一方で、今日 的な社会の高齢者の見方は、現役社会を引退した存在と ~30. ベンチプレス⑧ ~20. ダンベル⑨ 帰宅 15:00~ 13:10. 入館 会話 14:00. 退館 14:00~ 水戸黄門、用事など 定義する ( 図 2)。 2. 背景と目的 残りの人生をより豊かに、生き生きと暮らしていくこ 3~4 年前から / 会社員 10:30. 入館 ている人も見られる。 こうした高齢者は、これまでの暮らしの延長、また自 週 4~5 回 / ダイエット、健康 パチンコ 10:45. 退館 11:00. 退館 12:00~ 昼食 13:00~ 66 歳 / 男性 週 4~5 回 / ボケ防止、現状維持 毎週月 ~ 金 / 健康管理、改善 定年後 / 会社員 朝、犬の散歩 9:00. 入館 9:00~ ~10. 準備体操、会話⑨ ~40. ベンチプレス⑧ ~50. スクワット⑧ 行う高齢者も見受けられる ( 図 1)。 図 1 から、体育館を利用する高齢者は定年後、健康管 82 歳 / 男性 高齢者 査を行う。 観察調査 (9 月中 ) アンケート調査 (8 月中 ) アンケート一例 Q1. 体育館の利用目的 Q2. 健康に気をつけていること Q3. 理想の老後生活とは…など。 体育館でのトレーニングの内容 や、会話の様子などを観察する。 また利用者の生活実態を把握す る。 ヒアリング調査 (10 月 ~) プロフィール ( 年齢、前職など )、 トレーニングの始めた時期や実施 状況、トレーニングをする目的や 目標などアンケートでは調査でき ない詳しい暮らしの実態の把握。 体育館の利用や生活実態に関する 観察、ヒアリング調査から、アグレッシブシニアの実態を把握するこ アンケート調査から、アグレッシ とで、老後生活に対する意識や暮らしの実態が明らかにする。 ブシニアを見つけ出し、調査対象 また、二つの調査の結果から、老後生活を積極的に送るための要素を 者を選定する。 明らかにし、新しい暮らし方の選択肢とする。 図 4 調査方法
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