知っておきたい税務調査における国税当局の解釈と判断 税理士 池畑芳子 本日は税務調査について、元国税局の野原 武夫氏、武田 恒男氏、松林 優 蔵氏をパネラ-にお迎えし、コ-ディネ-タ-の平川 茂氏より税務当局とよ く揉める「見解の相違になる問題点」や最近の調査の手法について迫力あるお 話を伺うことができました。 国税通則法の改正により調査方法が「広く浅く」から「深く狭く」に変わっ てきたことなどについても、生々しく語っていただきとても役に立つパネルデ ィスカッションでした。 Ⅰ 役員退職金 武田 恒男氏は国税庁のホ-ムペ-ジ、質疑応答事例、タックスアンサ- 恒男氏 の責任者で Q & A などの作成も手がけてきた立派な方です。 以下についてお話されていました。 1.役員退職金について明確な基準はない。 しかし基本的には、裁決事例、裁判事例に基づいて平均功績倍率が 3 倍を超 えたら訴状にのせる。 同業種、同規模法人でも管内だけの情報では無理があるので、国税局長から 上限の金額、下限の金額、月額報酬、勤続年数などについて周辺税務署の情 報も収集してもらった。 沖縄の勤務先であったが熊本まで情報収集したこともあるそうです。 2.最終月額適正報酬 2. 最終月額適正報酬で決まる 最終月額適正報酬 3.形式基準 最終月額報酬×功績倍率×年数=役員退職金 4.実質基準 同業種、同規模とくらべ ① 同業種、同規模 とくらべ 3 倍に収まっているのか ②金額基準はない 倍を超えればチェックされるし、5 1 億円未満でも 3 倍を超えればチェックされるし、 5 億~6 億円でも適正で あればOK 5.分掌変更 実質的に退職したのと同様な事情にあること。 その時は引退して引き継ぐがまた復活してくることもあるので、実質的に退 1 職したかどうかが問題 ※調査は忘れた頃にやってくる。その時に引退したはずの創業者が出て来て現 役員に任せておけないので説明している。これではダメ。 6.持ち株基準 過半数を持っていたらいつでも復活出来るので問題。 大塚家具の事例 7.役員退職金は原則未払いは認めない。 7.役員退職金は原則未払いは認めない 。 貸付金や借入金の処理 ※H氏の父親は今でも金庫のカギをもっているとか・・・ Ⅱ相続税調査 優蔵氏は東京国税局課税第一部資料調査課長など相続調査の第一線 松林 優蔵氏 でご活躍された素晴らしい方です。38年勤務中28年間資産税、特に相続税 に特化して調査をされていたそうです。 以下についてお話されていました。 実調については①著名人 ②高額所得者 ③複雑な事案 などが対象 相続税及び贈与税の重加算税の取扱いについて(事務対象 相続税及び贈与税の重加算税の取扱いについて(事務対象運営指針) 対象運営指針) 賦課基準 通則法第68条第1項又は第2項に規定する「納税者がその国税の課税標準 等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮 装し」とは、例えば次ぎに掲げる事実(不正事実 不正事実) 装し」とは、例えば次ぎに掲げる事実( 不正事実 )がある場合をいう。 相続税関係 1.相続人(受遺者を含む)又は相続人から遺産(債務及び葬式費用を含む。 ) の調査、申告等を任せられた者が、帳簿、決算書類、契約書、請求書、領収書 その他の財産に関する書類について改ざん、偽造、変造、虚位の表示、破棄又 は隠匿をしていること。 2~5についても詳細に説明 虚偽の答弁、仮装隠ぺい、過少申告することの意図、預貯金の一部或いは全 部をリストからはずす、同居の相続人や家族の生活状況から推認できる不正 行為があれば同居の親族にも重加算税賦課 2 2.家族名義預金 2. 家族名義預金 ①名義預金の場合贈与になるのか、単に名義を借りたのか、 ①名義預金の場合贈与になるのか、単に名義を借りたのか 、相続財産につい て調査することになる。申告除外、遺産分割協議書に記載されていないから といっても名義人が実在するので、 といっても名義人が実在するので 、すぐに隠ぺい工作があったと認定できな い。 ②贈与税の申告があったかどうかはあまり問題にしない。 贈与を受けた名義人が管理、運用、 管理、運用、支配、預金設定の資金源、 支配、預金設定の資金源、利息 利息を自分で 管理、運用、 支配、預金設定の資金源、 利息 を自分で 受け取っているのか。 印鑑、通帳、証書の管理を被相続人に任せていないか。 管理、運用の帰属が重要な判断になる。 管理、運用の帰属 ③否認項目のトップ 預貯金、株、名義預金 相続税の申告をするにあたり資料収集するときは、 相続税の 申告をするにあたり資料収集するときは、古い資料も出来るだけ見 せて頂き、十分注意し、仕事を始めなければならない事が改めて分かりまし た。 ④質問応答記録書の記入 ④質問応答記録書 の記入 公務員2名立ち会いのもとで作成される。 公務員2名 立ち会いのもとで作成される。 課税要件の証拠保全の為に調査での物的証拠は大切 課税要件の証拠保全の為に調査 での物的証拠は大切 問われて答えて、問われて答えて、ここに読み聞かせして署名押印 署名押印しても 署名押印 らいます。 もし拒否した場合、末尾にこれこれの理由で拒否したと明記し、裁判にな ったときに使用されるように作成します。 もし何番目が違うのであれば指摘して訂正してもらってください。 と丁寧に説明されていました。 Ⅲ同族会社の組織再編成における節税スキ-ム 武夫氏は東京国税局調査第一部調査審理課主査で10年間、資本金1 野原 武夫氏 億円以上の法人の調査を専門にされ、退職して13年経た現在トップクラス の税理士事務所を開業されている方です。 右山研究会の会員で研修では一緒に勉強させていただいております。 活発な意見を発言されていて私の尊敬する人物の一人です。 以下についてお話されました。 1.租税回避を図に書きながら法132条、法132条2について 3 法人の行為又は計算 行為又は計算でこれを容認した場合には法人税の負担を不当 不当に減少さ 行為又は計算 不当 せる結果 結果 行為又は計算、不当 不当、 結果の文言が大切 行為又は計算、 不当 、結果 の文言が大切 平成13年以前とそれ以降についての取扱いの違い。 適格合併→帳簿価格→欠損金の引継ぎは認められる 非適格合併→時価 逆さ合併についても説明 ヤフ-事件については高裁で国側が勝訴しているが、共同事業要件、趣旨、目 的が分からないので最高裁ではっきりしてもらいたい。 2.国税通則法の改正 実地調査が減少している。事前通知。 ①修正申告を取れば調査終了(以前) ②更正の請求が5年間できることになったので税務職員は証拠書類を集める 事に必死。そのため調査期間が延びた。 課税要件を揃えなければならない。調査での物的証拠がなにしろ必要。 質疑応答 右山昌一郎先生が出席されていて申告納税制度により通則法の改正になった 右山昌一郎先生 経緯を話された。 今までは納税者の申告を自分たちの見識で否 自分たちの見識で否認していた。 今までは納税者の申告を 自分たちの見識で否 認していた。 修正したら終わりであったが、これからは申告否認する場合には、法律条文に よらなければならない。 憲法30条「納税の義務」に近づいてきた。 裁判が証拠主義、行政も証拠主義に変わった。 適正な報酬額の是非について、ゴ-ルしてから適正な報酬を元とした役員退職 金について、スタ-トに戻るような調査は困る。 毎年申告書を提出しているのだから否認するなら林 修さんの「今でしょう」 。 「税法のみが税務職員の道具だ」など パネラ-と右山先生のやり取りがありました。 本日のパネルディスカッションは私達会計人が一番お聞きしたい、調査に関わ る提言やエピソ-ドを伺うことができ、本当に勉強になりました。 る提言やエピソ-ド 有難うございました。 4
© Copyright 2024 ExpyDoc