オートモーティブ特集によせて

Panasonic Technical Journal Vol. 61 No. 1 May 2015
オートモーティブ特集によせて
パナソニック(株) 常務役員
オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社
上席副社長
柴田 雅久
パナソニックのオートモーティブ事業は,カーオーデ
車が未然に防止してくれるドライビング支援を目指し,
ィオ,カーナビゲーションなどインフォテインメント機
2014年4月にADAS(Advanced Driving Assistant System:先
器を中心に事業を拡大してきました.これまで約60年の
進運転支援システム)開発センターを発足させました.
歴史のなかで,多くの世界初,業界初の商品を生み出し,
当社がこれまで家電分野で培ってきたカメラ技術・画像
インフォテインメント分野ではグローバルNo.1シェアの
処理技術や産業分野で培ったセンサデバイス群など,当
メーカーに成長することができました.
現在のガソリン自動車が登場して約100年が経(た)ち,
社のリソースや経験を結集したADAS開発を加速し,既に
実績のある車載カメラ・ソナー・ECU(Electric Control
車は3つの大きな転換期を迎えています.1つ目は環境・
Unit)も活用して,安全な車社会の実現に向けてお客様
エネルギー問題に端を発した環境対応車の普及拡大,2つ
へのお役立ちをより一層加速しています.
目は,車の普及に伴い増加した交通事故の撲滅に向けた
「環境」分野では,鉛電池からニッケル水素,リチウ
取り組みの加速,そして3つ目は,ネットワーク社会に適
ムイオン電池までの幅広い電池ラインナップと,それを
応するための車のコネクティビティ化です.これらの進
核としたシステム統合化技術や小型化・高効率化デバイ
展に伴う電子化や電動化によって,車を構成するカーエ
ス技術を活用した電源システムの提供により,CO2排出規
レクトロニクス部品は増え続けており,部品を統合する
制に対応する多様な環境技術で環境対応車の普及に貢献
ためのモジュール化が進行し,当社にとってもビジネス
していきます.
チャンスが拡大しています.
このように当社は,家電や産業で培った技術や経験を
当社はカーナビゲーションからバッテリー,カメラな
車載事業に適用することに加え,2014年9月に発表したス
どのシステムでカーメーカー様にご貢献することに加え
ペインのフィコサ・インターナショナルS.A.との資本業
て,スイッチ,センサなどのデバイスを他のサプライヤ
務提携など,協業・M&Aなどにも取り組み,2018年度に
ー様に納めて間接的にご貢献するデバイスメーカーとし
オートモーティブ事業で2.1兆円販売達成に向けさまざま
ての側面と,基板材料などを納入する材料メーカーとし
なチャレンジを続けています.
ての側面も併せもっており,電子化や電動化による部品
今回の特集では,
「快適」分野からコックピットにおけ
の統合化が急速に進む車業界のおかれている環境下では,
るドライバー支援システムの関連技術とデバイスの取り
当社のもつ幅広いシステム,デバイス群がお客様へお役
組み事例を,
「安全」分野からITS(Intelligent Transportation
立ちできるものと考えています.
System:高度道路交通システム)関連技術・ドライビン
そうしたなかで,当社は,「快適」「安全」「環境」の3
グ支援システムの関連技術を,
「環境」分野から環境対応
つの分野で,お客様にとって不可欠なサプライヤーにな
車向けシステムの関連技術・デバイスの取り組み事例に
るべく取り組みを強化してきました.
ついて,当社グループのシステム商品とそれらを支える
「快適」分野では,ドライバー支援をコンセプトにグ
ローバルNo.1シェアのDA(Display Audio)と,これまで
デバイス技術について紹介しています.
当社は,当社グループがこれまでに家電・産業で培っ
培ってきたHMI(Human Machine Interface)を進化させ,
てきたさまざまな技術やノウハウを有効に活用すること
飛躍的に増大するドライバーへの情報を簡単かつ効果的
で車専業メーカーには真似(まね)できないユニークな
に提供できる次世代コックピットシステムを開発し,快
提案を実現し,グローバルサプライヤーのTOP10入りを
適な運転環境の提供に取り組んでいます.
目指しています.当社オートモーティブ新規事業の取り
「安全」分野では,ドライバーの不注意による事故を
組みについてご理解いただければ幸いです.
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