水と人間の生活について

Ⅱ
城主の子供の岩松尚純は勘当されているくらいです
ディスカッション
から、この儀式がいかに重要な儀式であったかがお
水と人間の生活について
分かりいただけるかと思います。と同時に、この日
ノ池の水が、単なる飲み水ではなく、とても重要な
能登 前半の事例報告の最初は旧石器のお話を関口
役割を果たしてきた神聖な水として考えられていた
さんにしてもらいました。後半の最初も関口さんに
こともご理解いただけたのではないかと思います。
旧石器時代の人の生活を少し復元しながら、さらに
このように日ノ池の水は、精神的なよりどころとし
水との関係をお話いただければと思います。
て、あるいは城の象徴としての重要な意味があった
ということが分かってきています。
ナウマンゾウを狩る場所
能登 重要な発言があったのでおさらいしましょ
関口 旧石器時代の人間も今の人間と同じように当
う。土馬は平安時代、10世紀頃の遺物になります。
然水を必要としていました。また同じように人間以
そして日ノ池は中世の山城です。そうすると、金山
外の動物も水を必要とします。
城はそれ以前から雨乞い信仰の対象になっていた池
前半でお話ししましたように大間々扇状地の桐原
を取りこんだ城づくりをしたということですね。
面では標高90メートル付近に湧水がたくさんあり
さて水に対する信仰まだいくつか事例がございま
ました。今から3万年程前ですと、今では絶滅して
す。今日は新田町の小宮さんから古墳時代の水の信
しまったナウマンゾウやオオツノジカといった動物
仰についてのお話もしてもらう予定になっていま
がそこに水を飲みにやって来ます。あるいは餌を食
す。それから近世では、皆さんご承知の岡登用水に
べにやって来ます。その大型動物を追って旧石器人
ついて、笠懸町の國井さんからも話題を提供してい
もその湧水のある地域に集まってきたんじゃないか
ただこうと思っております。楽しみにしていただけ
と私は考えるのです。
ればと思います。これで事例報告が終わりました。
先ほど、図5で大上遺跡の石器の出土した様子を
この後はこの報告をふまえて、話をふくらませてい
ご覧頂きましたが、どうしてこんなにも大規模な遺
きたいと思います。
跡がこの地に残されたのか、それについて私の考え
をちょっと発表したいと思います。図5の中に示さ
れた一点一点の黒い点は石器が出土した場所ですと
言いましたよね。この石器が出た場所というのをよ
く見ていくと、その黒い点は適当に散らばっている
のではなくて、まとまっている所があることが分か
ると思います。さらにそのまとまりは幾つかの単
位に分かれてきます。これは何を意味するかという
と、旧石器人の少人数の集団がいくつか集まってき
て、およそ50∼60人もの人々がこの地に集まった
ということじゃないかと思うのです。
旧石器時代の人間を直接調べることは出来ないの
です。でも、世界の民族にはまだ原始的な暮らしを
している人たちがいます。その人たちのことを参考
にして旧石器人を考えることは出来ます。そうした
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