2015年春号 - 東海大学文学部ヨーロッパ文明学科

東海大学 文学部
2015 年 6 月 14 日発行 ©Department of European Civilization
ヨーロッパ文明学科 ニュースレター
2015 年春号
古代から現代へ
この春、イタリア・ローマで実地調査をおこなって
きました。
2015 年春、ローマ調査 河島 思朗
(教員:西洋古典学、ギリシア・ローマの神話)
私の専門は西洋古典学なので、古代ローマ時代に作
られた神殿や建造物などを確認することが調査目的の
ひとつでした。
「遺跡」というと、荒野にうち捨てられた廃墟のよ
うな遺跡群を思い出します。しかし、ローマでの調査
は街のなかに面白みがあります。たとえば、ローマの
玄関口であるテルミニ駅地下のハンバーガーショップ
には、紀元前 6 世紀に建造が始まったセルウィウスの
城壁があります(写真 1)
。紀元前 55 年に建てられた
写真1
半円形のポンペイウス劇場は、構造をそのまま利用し
てマンションになっています(写真 2)
。道端でも古代
の柱を目にすることができますし(写真 3)
、紀元前
62 年に架けられたファブリキウス橋はいまも現役で
使われています(上の画像)
。
このように、古代は現代と切り離された遠い過去で
はなく、現在につながっている道のりなのです。
写真2
写真3
République française
フランス
Bundesrepublik Deutschland
ベルリンでの
ブルゴーニュ大学
文化交流
での体験
ディジョン市内の凱旋門
今回、フランスへの語学留学(短期)を経験しました。
市内案内で訪れたベルリン大聖堂
私は、日本国内で今までずっと生活してきたこともあり、
外国の方や海外と接点を持つ機会が少なかったといえま
す。
大学へ入り、フランス語を学びつづけてきました。大学
の語学学習のなかで、自ら海外に出かけてみて、世界の習
慣や風土について身をもって感じてみたいと思い立ちまし
た。
はじめての海外渡航だったので、緊張の連続でしたが、
それは貴重な経験の連続でもありました。以下、具体的に
ご紹介したいと思います。
フランス中西部の都市ディジョンのブルゴーニュ大学
で、語学研修に参加しました。寮での生活は、一人部屋で
非常に快適でした。寮には多くの外国人留学生がいて、外
国人との接点を多く持つことができる空間でした。大学で
の語学講義は、当然ながらすべてフランス語なので集中力
を要しますが、
密度の濃い時間を過ごすことができました。
休日はディジョンの市内で買い物などを楽しむことがで
きます。現地の人々はわからないこともサポートしてくれ
たりと優しく、暮らしやすい環境でした。この留学は、日
本にはない習慣や環境を感じることができ、フランス語を
2015年3月の約1ヶ月間、大学の短期留学プログ
ラムを利用し、ドイツ・フンボルト大学へ留学しました。
高校生の頃からヨーロッパ訪問が夢だったので、今回の
留学でその夢が叶ったというわけです。その達成感もあ
り、ドイツで多くの経験を積もうと意気込みました。
ドイツ語の授業では、語学だけではなくドイツの食文
化や歴史的建造物などについて学びました。授業後の自
由時間にはドイツ人の学生がベルリン市内を案内をして
くれました。日本語がとても上手な学生もいて、案内で
行った建物についてより詳しく教えてもらえましたの
で、ドイツ語だけでは不安だった私も、ドイツで暮らす
ために知っておきたい基本的なことを知ることができま
した。そして、私たち日本人留学生からは、日本の料理
を作ってあげたり、折り紙をなどの伝統文化を教えたり
しました。また、ドイツ人学生と日本のサブカルチャー
について話し合ったことも印象的でした。
大学でドイツ文化を学ぶ私にとって、貴重な文化交流
ができ、充実した留学体験となりました。
学ぶ以外にも多くのことを学ぶ場として素晴らしいもので
した。
深井 あさひ(3 年生、大崎高校出身)
長谷川 晋(3 年生、釧路明輝高校出身)
フランス・ブルゴーニュ大学留学
ドイツ・フンボルト大学留学
Poblacht na hÉireann / Republic of Ireland
ダブリンの聖パトリックス・ディ
アイルランドでの
祝祭体験
私は春休みを利用して 3 月に約 1 ヶ月間、アイルラン
ドの首都ダブリンに留学しました。ダブリンでは語学学
校と乗馬場、そしてホームステイ先を行き来する毎日を
過ごしていました。学校には日本人が少なく、英語漬け
の毎日で頭がパンクしそうでした。しかし、日々、新し
く頭に入ってくる膨大な知識は、ヨーロッパ文明学科で
学んだことが基礎になければ理解できなかったかもしれ
ません。まさに「学びが活きている」と実感することが
できました。
【ヨーロッパ文明学科の講義紹介】
ヨーロッパの戦争と文明(担当:中川久嗣・柳原伸洋)
郊外にある乗馬場では、馬とともに広大な自然を全身
で感じられましたし、また、ホームステイによって生活
文化に触れ、伝統的な家庭料理を教えてもらうこともで
きました。
18 世紀はじめのプロイセン軍(擲弾兵)
一学期間をかけてヨーロッパの戦争の全体を概観する
講義で、週 2 回でワンセットになっています。古代から
中世までは、中川先生が担当し、近世から近代、現代ま
では、私(柳原)が担当しています。
どの学年でも履修登録できますが、1 年生に向けた基礎
的な内容です。「戦争」を通じて、高校の世界史教科書を
アイルランドの家庭料理(ジャガイモ料理)
アイルランドでは 3 月 17 日に「聖パトリックス・ディ」
というアイルランド最大の祝祭があり、世界各地の人が
集まります。この日にはシャムロックと呼ばれる三つ葉
のマークを身につけ、街の中心部で行われるパレードを
見たり、パブでアイリッシュミュージックを聞いたりす
ることで、アイルランドという国を心の底から楽しめま
した。
読み返していくと思えば、イメージしやすいかもしれま
せん。
柳原の担当する近現代の戦争では、ドイツ 30 年戦争、
ナポレオン戦争、フランス・ドイツ戦争、バルカン戦争、
第一次世界大戦、第二次世界大戦、そして 20 世紀後半の
戦争について扱っています。
講義では、身近な題材から戦争を考えながら、「現代の
戦争とは何か」について知ってもらえればと考えていま
す。そして、戦争を学ぶことを通じて、物事の考え方や
世界の見方にまで到達することが目標です。ここで培わ
れた思考法は、卒業後も一生のスキルになるでしょう。
三枝 衣織(3 年生、聖セシリア女子高校出身)
アイルランド・ダブリン留学
文章:柳原 伸洋(教員:ドイツ現代史、製品文化論) 学科シンポジウム「ヨーロッパの喜怒哀楽」を開催しました。
2015 年 1 月 21 日に、学科教員による研究報告シンポジウム
「ヨーロッパの喜怒哀楽」を開催しました。
「喜怒哀楽」という
感情からヨーロッパを探ろうとする試みです。
各教員の専門分野「ギリシア演劇」
「ローマ文学」
「詩論・
翻訳論」
「ドイツ現代史研究」から、感情渦巻くヨーロッパの
2500 年を読み解きました。学内・学外から多くの学生や研究
者が集い、大教室が満員になるくらいのにぎわいでした。
また、同日には卒業論文報告会も開催されました。卒業論文
は 4 年間の学びの成果の集大成です。ヨーロッパ文明学科では、
「大学時代に何を学ぶか、何を学んだか」を卒業論文としてカ
タチにしてもらいます。
s 教員紹介:中澤達哉・准教授 (東ヨーロッパ地域、ナショナリズム論など)
過去 20 年間の東欧では、ユーゴ内戦にみるように民族紛争が多発し、流血の惨事が続いていました。
なぜ、東欧の人々は自らの民族や国民のために命を賭してまで戦えるのでしょうか。民族や国民は、い
つから、その原理の名の下に人々を戦争に動員できるほどの政治集団として認識されるようになったの
でしょうか。その理由を知るには、彼らの近世史を紐解く必要があります。なかでも私は、スロヴァキ
ア史・ハプスブルク帝国史を事例に、民族が影響力をもつ政治集団となる際に、近代の人権原理のみな
らず近世の伝統的な封建原理がこれに影響を及ぼしたことを解明しました。
現在は、東ヨーロッパでのアンケートや聞き取り調査を通じて、マイノリティのアイデンティティの
作られ方や変わり方についても検証しています。 東海⼤学⽂学部・ヨーロッパ⽂明学科
■お問い合わせ・資料請求などは下記まで
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TEL /メール: 0463-58-1211(代表)→内線 3067(学科事務室:佐々木)
■ネットで学科情報を配信しています→ 「ヨーロッパ文明学科」で検索すると、以下のサイトがヒットします。
http://www.u-tokai.ac.jp/undergraduate/letters/european_civilization/ (東海大学文学部サイト内のページ)
http://www.europe.u-tokai.ac.jp/ (学科サイト)
https://www.facebook.com/tokaieurope (学科 Facebook)
■今後のオープンキャンパス予定(いずれも、東海大学湘南キャンパスにて開催)
6 月 14 日(日)体験講義「神話とおとぎ話は違う? 神話を知ると、いまがわかる/学科説明」(担当:河島思朗 講師)
7 月 26 日(日)体験講義「紋章から読み解くヨーロッパ ハプスブルク・ロマノフ・ウィンザー/学科説明」(担当:中澤達哉 准教授)
8 月 9 日(日) 研究室紹介(担当:平野葉一 教授)
11 月 3 日(祝)学科説明・ブース対応による各種相談の受けつけ(担当:中川久嗣 教授、原基晶 講師)
※東海大学・建学祭の開催期間中です。
※ヨーロッパ文明学科の教員による出張講義などのご要望にもお応えいたします。 お問い合わせは金沢まで。
発行責任者:金沢百枝(かなざわ・ももえ:ヨーロッパ文明学科主任)[email protected]