脳死臓器提供者の管理 - JSEPTIC | 特定非営利活動法人 日本集中

Crit Care Med. 2015 Jun;43(6):1291-­‐325.
脳死臓器提供者の管理
慈恵ICU火曜勉強会 2015年8月18日 飯島正紀 本日のメニュー
1. 
2. 
3. 
4. 
5. 
6. 
7. 
臓器移植・二つの死の定義 DCDDとDNDD 腫瘍・感染症ドナー 臓器提供者の管理 小児臓器提供者の管理 各臓器別の特殊管理 脳死下臓器提供の実際 本日のメニュー
1. 
2. 
3. 
4. 
5. 
6. 
7. 
臓器移植・二つの死の定義 DCDDとDNDD 腫瘍・感染症ドナー 臓器提供者の管理 小児臓器提供者の管理 各臓器別の特殊管理 脳死下臓器提供の実際 アメリカの臓器移植の現状
•  2013年データでは、120,000人以上が臓器移
植待機患者 •  8,143人の死後患者で22,187件の臓器移植が
行われ、一方で6,467人は臓器提供を待つ間
に死亡 •  在住のおよそ46%の成人で、臓器提供の意
思表示をしている •  近年の多くの場合、臓器提供は脳死患者で
あり、集中治療医は臓器提供者の管理に精
通しているべきである Crit Care Med 2015; 43:1291–1325.
アメリカの臓器移植の現状
•  2013年データでは、120,000人以上が臓器移
植待機患者 •  8,143人の死後患者で22,187件の臓器移植が
Organ Procurement and TransplantaNon Network 行われ、一方で6,467人は臓器提供を待つ間
(OPTN) に死亡 / United Network for Organ Sharing •  在住のおよそ46%の成人で、臓器提供の意
(UNOS) 思表示をしている からのデータ
•  近年の多くの場合、臓器提供は脳死患者で
あり、集中治療医は臓器提供者の管理に精
通しているべきである Crit Care Med 2015; 43:1291–1325.
各国の臓器移植ネットワーク
・Euro Transplant:オーストリア、ドイツ、ベルギーなど ・UK Transplant: イギリス、アイルランド ・Scandia Transplant: デンマーク、フィンランド、ノルウェーなど ・Agence de la biomédecine: フランス ・UNOS ( United Network for Organ Sharing):アメリカ(58団体) ・The Canadian Transplant AssociaNon: カナダ ・日本臓器移植ネットワーク: 日本 2010.10.19.齋藤敬太先生 勉強会スライド一部変更
Crit Care Med. 2015 Jun;43(6):1291-­‐325.
•  Society of CriNcal Care Medicine (SCCM), American College of Chest Physicians (ACCP), AssociaNon of Organ Procurement OrganizaNons (OPO)の合同コンセンサス ステートメント
死の判定
•  Criteria for death determinaNon 1)  Circulatory-­‐respiratory criteria set いわゆる三徴候(循環・呼吸・神経)の消失に
よる死亡 2)  Neurologic criteria set 不可逆的な皮質と脳幹機能の消失による死
亡、脳死 The Steps in a Clinical ExaminaNon to Assess Brain Death.
Coma or unresponsiveness (深昏睡) Absence of brainstem reflexes (脳幹反射の欠如) 2010.10.19.齋藤敬太先生 勉強会スライドより
Apnea-­‐test (無呼吸テスト)
N Eng J Med 2001;344:1215-­‐21
脳死判定の補助検査
1)  脳血管造影 2)  脳波 3)  経頭蓋超音波検査 4)  脳シンチグラフィー はあくまで補助検査であると位置付けた Neurology. 1995 May;45(5):1012-­‐4. 二つの死の定義と臓器提供
•  循環的死亡後の臓器提供( DCDD: DonaNon a`er circulatory determinaNon of death ) •  神経学的死亡後の臓器提供( DNDD: DonaNon a`er neurologic determinaNon of death) 本日のメニュー
1. 
2. 
3. 
4. 
5. 
6. 
7. 
臓器移植・二つの死の定義 DCDDとDNDD 腫瘍・感染症ドナー 臓器提供者の管理 小児臓器提供者の管理 各臓器別の特殊管理 脳死下臓器提供の実際 DCDD腎移植
•  DCDDは特に腎移植で多く実施されてきた •  DNDD移植と合併症は同等であるが、DCDD
腎移植で生着遅延を認める •  生着遅延移植でみると、その後の生着率は
(DCDD vs. DNDD)、3年後は84% vs. 73%で、6
年後は84% vs. 62% Am J of Transplant 2003; 3: 614–618. •  腎の長期生着率はDCDDとDNDDで同等 グラフト虚血時間
•  早期生着不全は(摘出前の)高温虚血時間と
(摘出後の)低温虚血時間に関係する •  30分以上の高温虚血時間は早期生着不全
の独立関連因子(100例のDCDD検討) TransplantaNon 2005;79: 1195–1199. •  低温虚血時間は移植後腎機能の予測因子
(2,562例のDCDD検討) Am J Transplant. 2007 Jul;7(7):1797-­‐1807. •  DCDDでは生着遅延由来のコストが上がる
(透析の必要性、入院日数、再入院) DCDD肝移植
•  DCDD肝移植はDNDD肝移植と同等成績 •  若いドナー(≦47歳)で、高温虚血時間が15分
以内・低温虚血時間が10時間以内(874例の
DCDD検討)の肝移植で最良成績 Liver Transpl. 2007 Dec;13(12):1736-­‐42. •  DCDD肝移植では、DNDDと比して胆道狭窄や
感染症、再灌流後の高カリウム血症などの合
併症が起きやすい DCDD肺移植
•  2008年まで、統計的な予後報告なし •  8例のDCDD肺移植後患者では、平均311日目
まで良好な肺機能であった Am J Transplant. 2008 Jun;8(6):1282-­‐9. •  DCDD肺移植の2年生存率は87%程度 J Thorac Cardiovasc Surg. 2008 Oct;136(4):1061-­‐6. •  近年、DCDD肺移植時の体外灌流コンディショ
ニング適応が拡大
DCDD膵移植
•  腎・膵同時移植についての検討では、DCDDと
DNDDで5年後の膵臓グラフト生存率に差を認
めない •  (DCDD vs. DNDDで)89% vs. 77% Transplant Proc. 2008; 40(2):502-­‐505.
DCDD臓器提供の実際
•  同意取得後の患者はwithdrawalが決定した
のちに、手術室で循環機能の監視を実施さ
れたのちwithdrawalとなる •  60分以内に循環停止を来たさない場合には
再びICUに戻り、適応から外れる •  ある程度確実性を持った「死」の予測が重要
• 
• 
• 
• 
• 
• 
• 
• 
無呼吸 呼吸回数 カテコラミン 心補助デバイス VAまたはVV ECMO PEEP下で低酸素 徐脈 IABP これらのUNOSクライテリアを満たす数 •  0個:29% •  1個:52% •  2個:65% •  3個:82% →生命維持のwithdrawalによって、60分以内
に死亡に至る割合が推定可能 人工呼吸器からのwithdrawalは60分以内死
亡の独立したリスクファクター DCDDにおけるECMO
•  Extracorporeal membrane oxygenaNon (ECMO)
適応は、DCDD移植を増やすが慎重検討すべき •  心停止後、大動脈閉鎖バルーンが膨らみ心臓と
脳へ還流させなくする •  反対に、腹部など他臓器には回路血流がまかな
われるために臓器虚血時間を与えない •  高温虚血時間は、臓器機能に重要な要素となる
ためにECMOが重要な役割を担う可能性は高い
移植に対する家族の同意
•  本人の生前臓器提供意思が曖昧であった家
族からは、移植同意を得にくい •  アフリカ系アメリカ人では、Caucasianに比して
移植同意を得にくい →家族背景や人種に関わらずICUスタッフは、
臓器提供に関する平等な機会を与えるべきで
あり、そのタイミングも重要 上記1つ以上に該当する場合には1時間以内
に家族に伝え、臓器提供の可能性を説明 →移植への意思を固め、準備しやすくし、離
別(decoupling)の時間を設けることが可能 AuthorizaNon
•  早期に臓器提供の説明が可能な移植チーム
が存在すると、「認可された」移植を増やすこ
とが可能 •  可能な限りすべてのICUと外傷センターにコー
ディネーター配置が望まれる •  個人の移植意思表示が最も優先されるため、
その旨を早く遺された家族に伝えることが重
要
本日のメニュー
1. 
2. 
3. 
4. 
5. 
6. 
7. 
臓器移植・二つの死の定義 DCDDとDNDD 腫瘍・感染症ドナー 臓器提供者の管理 小児臓器提供者の管理 各臓器別の特殊管理 脳死下臓器提供の実際 腫瘍・感染症ドナーの移植
•  2つのデータベース 1)  Israel Penn InternaNonal Transplant Tumor Registry (IPITTR) 2)  United Network for Organ Sharing (UNOS)
Israel Penn InternaNonal Transplant Tumor Registry (IPITTR)
•  絨毛癌:93% •  悪性黒色腫:74% •  肺癌:43% •  腎細胞癌:63% •  大腸癌:19% でレシピエントに腫瘍伝播の可能性 ü しかし、14例の腎細胞癌脳死ドナーからの移植
では未発症 ü 最大規模のデータベースと言われているが、腫
瘍のステージや治療などのデータは不十分 United Network for Organ Sharing (UNOS)
•  一方、UNOSデータではより低い伝播の報告 •  140件の悪性黒色腫ドナーからの移植で、既往ド
ナー(32年前発症、治療後) の、1件のみで伝播 •  乳癌、肺癌、卵巣癌、大腸直腸癌ドナーからの
伝播はこの報告からは認めない TransplantaNon 2007;84: 272–274. ü 腫瘍のステージや治療などのデータは不十分 中枢神経腫瘍ドナー
•  原発性脳腫瘍の神経外転移は0.4-­‐2.3%とさ
れ、臓器提供には問題ないとされる •  UNOSデータでは、642件のCNS腫瘍患者から
の臓器移植で3件(0.5%)の伝播報告があり、
全て同一のglioblastomaドナーからであった TransplantaNon 2007;84: 272–274. •  一方でIPITTRのデータでは、伝播率はより高
い(23%程度)
中枢神経腫瘍ドナー
•  Grades I-­‐IIの低グレードで、開頭術・放射線治
療・VPシャントを実施されていなければ移植ド
ナーとして適合 •  Grades III-­‐IVの高グレードで、上記手術実施
後であれば各移植コーディネーターや移植セ
ンターとの合議が必要 •  最終的には、移植のリスク・ベネフィット次第 •  脳出血原因が脳腫瘍の疑いのある場合には、
移植後早期の限局性病理検査を検討
Bacteremia/Sepsisドナーの移植
•  Bacteremia・Bacterial sepsisは臓器移植適応
の禁忌とはならない •  ドナーに速やかに適合した抗菌薬投与を実
施することが大切 •  抗菌薬投与から最低限48時間の治療を実施
するまで臓器提供は待つことが推奨 •  真菌血症の報告は未だされていない
髄膜炎ドナーの移植
•  髄膜炎起因菌:Neiserria meningiNdis、
pneumococcus、Haemophilus influenzaeなど •  抗菌薬治療を適切に行い、レシピエントにも
同じ治療を継続することにより伝播しない •  Listeria monocytogenesの場合には、長期治
療が必要 •  LymphocyNc choriomeningiNs virus(リンパ球
性脈絡髄膜炎)とrabies virus(狂犬病)の伝播
報告は認めるため注意 •  細菌性髄膜炎のドナーは、適正な抗菌薬治
療を受けていることで臓器移植適応となる •  「適切な抗菌薬治療の期間」は、 1)  ドナーでは概ね24-­‐48時間 2)  レシピエントでは概ね5-­‐10日間 HIVドナーの移植
•  血清学的HIV陽性ドナーから、HIV陰性レシピ
エントへの移植は臓器移植の適応外 •  陽性ドナーから陽性レシピエントへの移植に
関しても、HIVによる余命と比較して移植後余
命が長ければ実施可能 •  慎重適応は、血清学的陰性であるがHIV感染
リスクの高いドナー(viremic windowの存在) ドナー10,000人あたりの伝染リ
スクとしては、 •  経静脈薬物使用者では12.1 •  男性同士の性交をする男性
では10.2 •  性労働者では6.6 •  刑務所服役者では2.3 •  過去12ヶ月以内にHIV陽性
の血液暴露にあった者では
1.5 •  過去12ヶ月以内にハイリス
クな相手と性交した者では
0.7 •  血友病患者では0.09 •  Nucleic-­‐acid amplificaNon test (NAT: 核酸増
幅検査法)により、認識不能であったviremiaド
ナーを排除することが可能 •  アメリカではドナーへのNAT検査のうち 1)  68%は全ドナーに対する定期検査 2)  30%はハイリスク群に対する検査 •  ハイリスク群の把握のためには、移植チーム
はドナーの行動(趣向)も把握すべき
B・C肝炎ドナーの移植
•  HCV陽性ドナーからの移植は、HCV陽性レシ
ピエントに限定 •  HBs抗原陽性ドナーは、臓器移植の適応外 •  HBc抗体陽性ドナーであれば臓器移植の適
応を実施している施設もある •  HBe抗体陽性ドナーは、臓器移植の慎重適応 本日のメニュー
1. 
2. 
3. 
4. 
5. 
6. 
7. 
臓器移植・二つの死の定義 DCDDとDNDD 腫瘍・感染症ドナー 臓器提供者の管理 小児臓器提供者の管理 各臓器別の特殊管理 脳死下臓器提供の実際 輸液管理目標
•  循環動態モニタリングツールを使用しながら
管理すると摘出後の臓器状態を改善 •  推奨値: 「通常通り」を推奨 1)  平均血圧 MAP > 60 mmHg 2)  最低尿量 1 mL/kg/hr 3)  左室駆出率 EF > 45% 4)  最低量の血管作動薬 (e.g., Dopamine ≦ 10 μg/kg/min)
Crystalloids or colloids
•  ドナーの循環管理への初期輸液の選択に関
する結論は出ていない •  Crystalloidsとしては生理食塩水と乳酸リンゲ
ル液が推奨 •  Hydroxyethyl starch (HES)のルーチン使用は
推奨しない(生着遅延をきたすため、使用は
500-­‐1,000ml以内に限定) •  赤血球輸血の目標値は7 g/dL以上 ドナーへの血管作動薬
•  ノルアドレナリン、フェニレフリン、ドブタミン、
アドレナリン使用はsevere shockで考慮 •  バソプレシン投与は難治性shockでは考慮す
べき追加治療である •  ドパミンは、脳死患者で十分なデータが存在
せず他血管作動薬よりも弱い推奨 •  血管作動薬で不十分な場合のみHormone replacement therapy (HRT)の併用を検討
内分泌不全とHRT
•  脳死移植ドナーでは特に、脳浮腫などにより
内分泌機能不全をきたしやすい •  脳死患者の80%程度で、バソプレシン (AVP: Arginine vasopressin)減少による尿崩症をき
たす •  同様に、脳死患者では下垂体前葉ホルモン
減少による下垂体機能不全をきたす
AVP補充開始基準
•  尿崩症基準を満たさなくても、適正な輸液管
理下での低血圧を認めたらAVP補充開始 •  下記は臨床的尿崩症と診断 1)  多尿: 3-­‐4 L/day or 2.5-­‐3.0 mL/kg/hr 2)  血清浸透圧正常 3)  尿比重低下: < 1.005 4)  高ナトリウム血症: > 145 mmol/L
AVP/デスモプレシン補充
•  低血圧かつ体血管抵抗の低下を認める場合
にはAVP 0.01-­‐0.04 IU/minで開始 •  低血圧を認めず尿崩症のみであれば、デス
モプレシンを使用する(初期量は1-­‐4 μg) •  尿量、電解質は正常を維持できるよう適宜変
更
ステロイド補充
•  脳死後のコルチコステロイド不足への対応 •  高容量コルチコステロイドは、脳死によるド
ナー臓器機能への有害な炎症を軽減する •  Methylprednisolone 1)  1,000 mg IV 2)  15 mg/kg IV 3)  250 mg IV bolus + 100 mg/hr
甲状腺ホルモン補充
•  血行動態不安定な場合や心機能低下ドナー
では、AVP・コルチコステロイドなどのHRT併用
治療として、甲状腺ホルモン補充を検討 •  T3 / T4 ともにHRTに使用可能である 1)  T4 IV with a 20 μg bolus + 10 μg/hr 2)  T3 IV with a 4.0 μg bolus + 3 μg/hr 脳死ドナーの血糖補正
•  72%の脳死ドナーで血糖値が200 mg/dL以上、
39%では250 mg/dLにまで達する Anesthesiology. 2009 Feb;110(2):333-­‐41. •  ドナー高血糖は、集中治療患者の血糖補正
同様に 180 mg/dL以内に補正することを推奨
本日のメニュー
1. 
2. 
3. 
4. 
5. 
6. 
7. 
臓器移植・二つの死の定義 DCDDとDNDD 腫瘍・感染症ドナー 臓器提供者の管理 小児臓器提供者の管理 各臓器別の特殊管理 脳死下臓器提供の実際 小児ドナーの管理
•  小児における成人とのドナー管理相違点 1)  提供臓器の大きさ、重量 2)  小さな臓器に対する外科的手技 3)  年齢によるバイタルサインの違い、それによ
る神経学的死亡の判断 4)  小児ドナーのマネジメントが未確立 5)  本人による意思表示が不可能
小児ドナー管理の推奨
•  非小児専門施設に重篤な小児症例が発生し
た場合には、速やかに小児専門施設への搬
送を考慮 •  搬送が不可能であれば、小児ドナー管理に
慣れている施設へのコンサルトが重要
小児における神経学的死亡宣告
•  SCCM・American Academy of Pediatrics・Child Neurology Societyの合同ガイドライン(1987年)
6つの推奨事項を提言
6つの推奨
1.  満期新生児・乳児・小児での脳死決定は昏
睡の原因すべてを除外した上で行う 2.  低血圧・低体温・代謝障害を補正し、検査に
影響する薬剤を中止して神経学的検査や無
呼吸検査を行う 3.  無呼吸検査を含む二つ以上の検査は、間隔
をおいて実施すべき(新生児で24時間以上、
乳児以降の小児で12時間以上; 日本基準
は全小児で24時間以上の間隔) 4.  無呼吸検査でPaCO2が基礎値より20mmHg
以上上昇するか、60mmHg以上になることは
脳死支持所見 5.  補助検査は脳死判定に必須ではない(ただ
し、より年少の際には検討すべき) 6.  すべての基準を満たせば死亡宣告が可能 小児脳死ドナーの管理
•  基本管理方法は成人と同様に実施する •  年齢によるバイタルサインの違いが、循環・
呼吸管理で問題 •  甲状腺ホルモン、AVPによる管理は報告が少
なく、低いEvidenceであるが検討しても良い
一般的には・・・ PALSガイドライン上、 最低限SBP ≧ Age×2 + 70 mmHg 新生児・乳児では、 最低限MAP ≧ 在胎週数 (+5) mmHg 外傷小児ドナー
•  非交通外傷小児がドナーとなる可能性の時
に、常に虐待を鑑別 •  鑑別に難渋する際には、地域の弁護士や専
門の鑑定人を交えて検討すべき •  医師・移植チーム・移植コーディネーター・医
療鑑定人の協力が不可欠 •  (小児)法医学者との連携も重要
小児DCDDドナー
•  近年、小児でもDCDDドナーが増加傾向となり
アメリカでは全DCDDドナーの10%に達する •  長期的な移植後予後は良いと見込まれてい
るが、継続した調査が未だ不十分 無脳症
•  現時点では研究や経験が少なく、慎重に適
応を検討すべき •  日本国内でも移植実施がされた報告あり 近畿大医誌. 1989; 第14巻4号: 149-­‐150.
hnp://www.cdc.gov/ncbddd/birthdefects/anencephaly.html
本日のメニュー
1. 
2. 
3. 
4. 
5. 
6. 
7. 
臓器移植・二つの死の定義 DCDDとDNDD 腫瘍・感染症ドナー 臓器提供者の管理 小児臓器提供者の管理 各臓器別の特殊管理 脳死下臓器提供の実際 Organ system specific consideraNons for DNDD
心臓移植ドナー
•  ドナーの移植適応年齢は原則55歳未満 •  55歳以上も移植メリットが高ければ慎重適応 •  軽度左室肥大(wall thickness ≦ 1.4 cm)は移
植適応 •  心停止20分以内の ROSCは移植適応 •  レシピエントに肺高血圧があり、ドナー心が小
さい場合は、移植は推奨されない (ドナーBMI < レシピエントBMIの80%) •  胸部外傷ドナーからの心臓移植に関しては、
情報が少なく慎重適応 検査
•  心筋逸脱酵素、BNPの数値は移植適応判断
に関連しない •  ドナー決定後は、特に連続したエコー検査が
重要 •  冠動脈造影検査は、ドナーが40歳以上であ
るか3個以上のリスクファクターがある場合に
推奨 CMAJ. 2006 Mar 14;174(6):S13-­‐32. 検査
• 
年齢 •  心筋逸脱酵素、BNPの数値は移植適応判断
•  性別 に関連しない •  家族歴 •  ドナー決定後は、特に連続したエコー検査が
•  喫煙 重要 •  高血圧 •  冠動脈造影検査は、ドナーが40歳以上であ
•  高コレステロール血症 るか3個以上のリスクファクターがある場合に
•  糖尿病 推奨 •  肥満 CMAJ. 2006 Mar 14;174(6):S13-­‐32. •  高ストレス 腎臓移植ドナー
•  腎生検:クレアチニン値正常のドナーへの
ルーチンは推奨されない •  画像検査:ルーチンでの検査は推奨されない
が、以下では検討が必要 1)  多発性嚢胞腎の家族歴 2)  腎結石の既往歴 3)  尿路奇形の既往歴 肝臓移植ドナー
•  近年の肝臓ドナー不足により、適応基準が緩
和されてきている •  30%程度の脂肪変性肝臓は、移植によるメ
リットが高ければ移植適応 •  移植において高ナトリウム血症は、早期グラ
フト不全の独立したリスクファクター Transplant Proc. 2004 Oct;36(8):2215-­‐8. •  ナトリウム管理目標値: 155 mEq/L以下 肝ドナーの補液・栄養管理
•  肝移植ドナーでの血圧管理は明確に定義さ
れていないが、MAP 60-­‐70 mmHgが推奨 •  血管作動薬使用は、移植成績に直接関与し
ない •  肝移植直後は、肝機能障害により低血糖が
生じるために確実な糖質投与が重要 肺移植ドナー管理
このクライテリア
を満たさない肺
移植は、15-­‐25%
程度しか成功し
ない
•  PaO2/FIO2 ≧ 300 mmHgが広く推奨され、満
たさない場合には慎重に検討 •  PaO2/FIO2 < 300 mmHgである場合、補液管
理や利尿薬治療による改善を試みる •  さらに改善が乏しい場合には、体外灌流(高
張性灌流液使用)を試みてから移植すること
も検討
肺移植ドナーの呼吸器管理
•  Lower Ndal volume and higher PEEPが推奨 •  肺移植ドナーの呼吸器管理はARDSに対する
肺保護戦略と同様 JAMA 2010; 304: 2620-­‐27. •  誤嚥や感染の可能性がある場合や、気道ク
リーニングを実施する際には気管支鏡検査を
が必須
肺移植ドナーの補液管理
•  目標 conservaNve strategy 1)  CVP: < 4mmHg かつ 2)  PAOP(Pulmonary artery occlusion pressure): < 8mmHg が推奨される (CVP: 10-­‐14mmHg, PAOP: 14-­‐18mmHgと比較) 膵移植ドナーの管理
•  膵浮腫を防ぐことが重要 •  通常通りの輸液管理が必要であり、過剰輸
液は生着不全をきたす •  低灌流による血栓症のリスクもあり、補液管
理に難渋することもある •  ドナー高血糖は膵グラフト不全のリスクファク
ターとなるため、180 mg/dL以下に保つ Ann Surg. 1992 Mar; 215(3): 217–230. 小腸移植ドナー
•  過剰補液により小腸も浮腫をきたす •  また、過剰な循環作動薬を使用したり遷延し
た心停止後のドナーは、移植適応外とすべき •  経腸栄養は可能な限り続け、粘膜構造を保
つことが重要 •  広域スペクトラム抗菌薬投与により、小腸移
植後の感染を防ぐ •  消化管出血や潜血便を認める場合には、小
腸移植ドナー不適合となる
本日のメニュー
1. 
2. 
3. 
4. 
5. 
6. 
7. 
臓器移植・二つの死の定義 DCDDとDNDD 腫瘍・感染症ドナー 臓器提供者の管理 小児臓器提供者の管理 各臓器別の特殊管理 脳死下臓器提供の実際 日本臓器移植ネットワーク
hnps://www.jotnw.or.jp/index.html
脳死下臓器提供の実際
脳死下臓器提供の実際
まとめ
•  脳死臓器移植は増加傾向にあり、集中治療
医は臓器提供者の管理に精通しているべき
である •  臓器移植はDCDDとDNDDに分けられる •  DCDD移植では虚血時間が特に重要となる •  悪性腫瘍患者・感染症ドナーからの移植で、
適応外となるものは多くない •  ドナー臓器の循環呼吸管理は「通常通り」が
中心となる •  臓器移植においてHRTは重要となる •  小児ドナーでは、虐待の鑑別が必須である •  各種臓器別管理方法に関しても、さらなるエ
ビデンスの蓄積が必要である