平成 26 年度日本ワックスマン財団学術研究助成金 発表要旨

平成 26 年度日本ワックスマン財団学術研究助成金
発表要旨
国立病院機構東京病院 臨床研究部生化学研究室長 鈴川 真穂
タイトル:結核感染症における活動性マーカーの新規同定とその病態形成機序の解明
(Identification of a new marker and its pathogenesis in pulmonary tuberculosis)
研究の背景
・ わが国は結核の中蔓延国であるとされる。結核感染には、(多剤)耐性菌の増加、社
会的弱者や免疫抑制薬使用患者における感染の拡大など、多くの問題が残されてお
り、新たな予防・診断・治療法の開発が喫緊の課題となっている。
・ リンパ球を結核特異抗原で刺激し、放出される IFN-γを測定する結核診断法、
IGRA(IFN-γrelease assay)は、迅速かつ特異的に結核感染を診断することを可能
にした優れたツールである一方、潜在性結核感染症(LTBI)や結核の既往症を明確に
区別することが不可能であるという大きな欠点を有す。
研究の目的
・ 活動性結核と LTBI や結核の既往を鑑別するのに有用、かつ結核の病勢を反影する
新規マーカーを同定すること。
・ 同定した新規マーカーが、生体における結核感染症の病態形成に関与するメカニズ
ムを明らかにすること。
研究の方法と結果の一部
・ 当院の活動性結核患者(active)、LTBI 患者、および健常人の IGRA 残血漿の一部、
約 70 例の検体を用いて、結核特異抗原刺激血漿中に存在する液性因子をマルチプ
ルサイトカインアッセイにより測定した。下図に示す通り、IL-1Ra および IL-2 と
IFN-γを組み合わせることにより、検査の感度、特異度が上昇することが示唆され
た。当院に保管されている IGRA 残血漿約 16,000 検体を用いて、引き続き活動性
結核と LTBI を鑑別するのに有用なマーカーの候補因子を探索する。
IFN-g:ROC curve
IL2/IFNγ:ROC curve
IL-1RA:ROC curve
100
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80
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Results
0.8085
Area
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100% - Specificity%
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Results
0.8246
Area
0
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100% - Specificity%
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Results
0.8387
Area
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100% - Specificity%
・ 当院で得られた結核患者あるいは結核既往患者肺、および健常肺由来のヒト気道上
皮細胞、肺線維芽細胞、血管内皮細胞を用いて、その新規マーカーの発現と作用を
解析する。
・ 当院を受診した結核の疑われる患者の診療情報を取得し、血清、尿、喀痰中の 新規
マーカーを測定し、活動性結核、LTBI、健常人の間で比較する。