ダジキスタンにおける親の労働移民経験と子供の教育支出の分析

報告概要
タジキスタンにおける親の労働移民経験と子供の教育支出の分析
本研究では、代表的な移民送出国であるタジキスタンのデータを用い、親の移民送出経
験が子供の教育投資に与える影響を分析する。影響は2点考えられる。1点目は、労働移
民送出が、所得の拡大を通し、子供の教育投資を増やすことである。2点目に、労働移民
送出経験そのものが、親の意思決定を変えることである。先行研究において、タジキスタ
ンに残った労働者の賃金に比べ、移民の賃金は教育水準にあまり影響されないこと、多く
の国で、親が移民経験を持っている場合、その子供も移民する傾向があることが示されて
いる。このことから本研究では、『移民経験のある親は、子供が移民するであろうこと、
またそうならば高い教育を与えても、あまり多くのリターンを得られないことを予測し、
移民経験のない親と比べて教育投資を減らす』という仮説を立て、実証する。具体的には、
現在移民のいる家計と過去に移民した経験のある家計を区別し、過去の移民経験に注目す
ることで、所得拡大による教育投資への影響を除いた移民送出経験の影響を抽出する。実
証分析の結果、貧しい家計では所得拡大を通して教育投資を増やすが、非貧困家計におい
ては労働移民送出経験が教育投資を減らすことが示された。
北海道大学大学院経済学研究科 博士後期課程 山田大地
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