香りの科学 りの科学 ~ちょっぴり学問的 ちょっぴり学問的に 学問的に香りのことを勉強 りのことを勉強してみましょう 勉強してみましょう~ してみましょう~ 第四十四回 四十四回 香りに係 りに係わる漢字 わる漢字の 漢字の解字 北里大学 薬学部 教授 小林 義典 生薬(しょうやく)は、植物・動物・鉱物などをそのまま、または簡単な処理をして医薬品あるいは医 薬原料に供するもので、 「きぐすり」ともいいます。西洋薬に対して、まさに生(き)(自然のまま)の薬 という意味です。ところで、薬(藥)という文字は、艸(草冠)と楽(樂)とで構成されています。俗 に草を楽しむという意味である、といわれることもありますが、樂は割砕く意で、例えば礫は岩石の小 さな破片のことです。したがって、藥は病を治す草を粉砕した粉末、というのが本来の意味です。しか し、この俗説にも捨てがたい意味があります。漢方薬は、西洋薬がもっている薬理学的な働きだけでな く、独特の味や香りの力で感覚を刺激して様々な生体反応を引き出すことで、生活環境の変化や生活習 慣の乱れによって生じた生体バランスのひずみを回復させる働きも持っています。実際、本草学(漢方 における薬物学)では生薬を「性味」で分類します。 「性」には温める温・熱、冷ます涼・寒、どちら でもない平(へい)、 「味」には酸、苦、甘、辛、鹹(かん)(塩からい)のそれぞれ 5 種類あります。辛味 は生理学的には味覚ではありませんが、温度や芳香成分の刺激を受容する重要な感覚です。生薬の性味 の効果を存分に引き出すためには、味や香りをしっかり感じることができる昔ながらの煎じ薬が最適で す。漢方薬の煎じ方は、一般に、1 日分の煎じ薬に水 600ml を加え、やかん(薬罐)またはなべ(鉄製 や銅製は使用しない)で、約 40~50 分かけて、約半量の 300ml になるまで、煎じます。煎じ終わり、 かすをこして得られる煎じ液を、1 日 2 回又は 3 回に分けて服用します。煎じている間は、部屋中に生 薬のかおりが充満しますので、まさにアロマセラピーです。 このように、漢字や物事の成り立ちを知ることで、そのモノの持つ本来の意味が見えてきます。以下、 香りに係わる漢字の成り立ちについて紹介します。 香:禾は黍(きび)、日は甘の変化したもので、黍の下に甘いという文字を組み合わせた漢字である。黍 を蒸すと漂ってくるうまそうなにおいの意、ひいて「かおり」の意を表す。 芳:艸(くさ)と方(放つ)とで、草花が香気を放つ意を表す。 臭:臭の省略形。自(鼻)と大(犬)とで、犬が鼻でにおいをかぐ意を表す。後に主として悪いにおい を表すようになった。 匂:匀の変化した字形。勹(めぐる意)と二(かさねる意)とで、広くゆきわたる意、 「ととのう」意 を表す。余韻があり、趣のある意の「におう」に当て、転じて香気の「におい」の意にも用いる。 嗅:齅が本字。後、鼻が口に変化した。鼻で臭いを嗅ぐ意を表す。 聞:耳と門(通じる意)とで、耳にとどく、 「きこえる」意を表すが、聞香など、においをかぐ意にも 用いられる。中国語で「かぐ」意には、聞、嗅を用いる。 薫:薰の省略形。艸(くさ)と熏(煙がたちこめる意)とで、香りがたちこめる草の意、ひいて「かお る」 「かおり」の意を表す。 炉:爐の省略形。火と盧(容器・かこいの意)とで、火を入れておくところの意を表す。いろり・ひば ち・香炉の意味。 いかがでしたか。漢字の成り立ちを知ることで、その言葉の持つパワーがより強く感じられませんか。 「かおり」は快い嗅覚刺激、 「におい」は快・不快のどちらの嗅覚刺激にも使われますが、ちょっと勉 強するだけで、 「言葉のイメージ」変わってきませんか? 今後はデータベースを構築することがアロマセラピーのさらなる飛躍の礎になると信じています。 日本アロマコーディネーター協会
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