特別活動を中心とした心の教育総合プラン r認める」活動を通した気づき合い、築き合う集団づくり 教育実践高度化専攻 心の教育実践コース P08035C 枝川拓矢 EDAGAWA Takuya I 問題の所在とプランの目標 る。そのために、学級活動を「種まき型」授業に 社会の変化とともに、学級集団内の人間関係も よって充実させ、より内発的で主体的な活動にっ 変化している。高度で繊細な気くばりを必要とさ なげ、深い課題意識をもった上で体験的な活動に れ、相手に合わせることだけを考える傾向にある。 臨むことが求められる。 そのなかで、学校では、教育活動、特に、特別活 体験的な活動を充実させるために、課題意識を 動において、子どもたちどうしの人間関係を育み、 もって臨むことと同時に、体験の意味を理解し、 彼らが主体となって社会を創っていくことが求め 体験に伴う道徳的価値の自覚を深化していく必要 られる。さらに子どもたちの体験を拡大深化させ、 がある。これが、r言葉による納得」のためのふり 豊かな体験の場を提供している特別活動のより一 かえり授業である。作文に加え、グループ活動に 層の充実が求められる。 おいてふりかえりを行うことで、他者の視点を得 このような現代の課題から、連帯によって構成 たふりかえりを行うことができる。学級集団を築 され、生徒が主体的な活動を築くことのできる集 くためにも望ましいことである。 団、そして、自己や他者の側面に気づき、人問関 これらの活動を通して、「気づき合い、築き合う 係を形成していくことのできる集団、r気づき合い、 集団」を構築していく。 築き合う集団」の構築を目指す。 さらに、学級集団の成長を個人の成長へとつな げていくために、一一・人一人が個性的に輝き合し\ ■ 特別活動を機能的にするために 調和的にまとまることが求められる。「認める」活 学級集団は人為的に形成された集団である。そ 動を通して、自己・他者を認め、自己有用感・自 のため、生徒にとって、当初は単に所属集団であ 己存在感を感じ、自分を表現することが、それに る。しかし、学校での学習や生活が首尾よく展開 つながるだろう。集団を通して、集団の中で、集 されるためには、生徒にとって準拠集団であるこ 団とともに自己実現できる場を構築していく。 とが求められる。学級における様々な共通体験や 時間の経過とともに、学級を準拠集団へと変化さ ㎜ 「認める」活動プログラムの実施 せていき、積極的な活動への参加を促す。そうす 学校行事を充実したものにするために、ふりか ることで、顕著な特色をもつ学校行事での道徳的 えり授業を実践した。また、それと同時に、学校 実践に生かすことができる。 行事が生徒に与える影響を調査するための質問紙 集団を築くために、活動を築くことが必要であ 調査を実施した。 山60一 質問紙調査に関しては、「生きがい感尺度」を用 学校行事では、集団的で統一的な行動を求めら いて、体育大会や文化祭前後の計3回、実施した。 れることが多い。そのため、r認め.る」活動では、 しかし、いずれにおいても有意な変化は見られな 集団の一員としての自覚をもつことや、個人の特 かった。 性を生かした自主的な参加ができることなどの指 体育大会後に実施したふりかえり授業において 導にも着目した。 は、自他の努力していた場面をふりかえることに 「認める」活動は、心の教育のあらゆる領域に より、感じたことや気持ちを確認し、自他を尊重 効果的であると考える。開発的生徒指導において する心を育み、励まし合う姿勢を育成すること、 は、所属する学級の雰囲気が安心できる場である 集団での視点から目標を考察することを目標とし ことが重要であることから、集団の中での自己存 ていた。生徒の授業の感想から、意識の変化が見 在感・自己有用感を形成するための、個性を尊重 られた。特に、自己・他者の新たな側面を発見す した指導が必要である。同時に、学級内の人間関 ること、自己の行動を他者の視点から考察する二 係が共感的・支持的なものになることを員指した とで、より集団に貢献しようと考えていたことが 学級経営が求められている。学級づくり・集団づ 分かる。 くりや個別への指導という点においても、「認め 以上のことから、特別活動をより効果的に展開 る」活動は効果的であるだろう。また、道徳の時 するためには、特別活動と関連を持たせた指導を 間では、特別活動における道徳的実践のための実 充実させる必要があるといえる。 践力の育成が、求められる。「認める」活動での価 値の自覚を、道徳の時間で普遍的な価値の追求へ lV 「認める」活動と心の教育 とつなげることができよう。さらに、キャリア教 多様な集団における望ましい人間関係を築きな 育では、人間関係形成能力や意思決定能力の育成 がら、様々な集団への適応を図ることを目標とし、 との関連を深めていくことにつながる。 r認める」活動のプランを作成した。特別活動を 中心に据え、「認める」活動を進めていくことで、 V まとめと今後の課題 自立した個人の連帯によって構成される集団、自 特別活動における集団づくりという視点でプラ 己と他者の交流により準拠集団化へとつながって ンを作成した。特に、学校行事とその前後の活動 いく人間関係の形成を目指す。 (種まき型授業・ふりかえり授業)を関連させるこ 作成した「認める」活動は、3年間を通して、 とで、それを達成しようとした。 段階的にねらいを定めた。自己から他者、そして 理念的な傾向が強く、本プランの効果測定や学 集団へと視点を広げていく活動を中心とする。 級集団のアセスメント、実践可能性について課題 「認める」活動の授業は、学級活動で展開され が残った。しかし、特別活動を効果的に行うこと る。生徒の生活や活動を実践するための基礎的な での集団づくりの可能性については、言及できた 場として存在することに意義があるためである。 と考える。 さらに、学級活動は他の教育活動、なかでも道徳 修学指導教員 渡邊 満 教育と密接に関連しているため、道徳的価値を意 指導教員 古川雅文,一安原一樹 識した活動の展開が望まれる。 一61一
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