昇圧リアクトルに不感な電流連続/不連続モード混在

昇圧リアクトルに不感な電流連続/不連続モード混在制御法
学生員
レ ホアイ
ナム
学生員
佐藤
大介
正
員
折川
幸司
正
員
伊東
淳一
(長岡技術科学大学)
Inductance-Independent Control Method for Mixed-Conduction Mode between
Continuous Current Mode and Discontinuous Current Mode
Hoai Nam Le, Student Member, Daisuke Sato, Student Member, Koji Orikawa, Member, Jun-ichi Itoh, Member
(Nagaoka University of Technology)
A current feedback control method for a boost converter with a saturated inductor operated in both Continuous
Current Mode (CCM) and Discontinuous Current Mode (DCM) is proposed in this paper. In the proposed control,
the detection of the current modes is achieved independently from the inductance. The validity of the proposed
control is confirmed in experiment by a 750-W prototype. From the step response results, it is confirmed the current
converges into the command regardless of the current mode transition and the saturated inductor. From the ramp
response results, the smooth and frequent transition between CCM and DCM is confirmed with 0.05 A/ms slope.
キーワード:リアクトル,飽和,フィードバック制御,電流不連続モード
Keywords:Inductor, Saturation, Feedback control, Discontinuous current mode
1.
いない MCM 制御方式を提案する。これに著者らが提案して
はじめに
いる DCM の非線形補償制御(6)を組み合わせ,インダクタン
近年,太陽光発電システムの小型化を目的として昇圧チ
ョッパの小型化が求められている。昇圧チョッパの中で,
昇圧リアクトルは大きな体積を占める。昇圧リアクトルを
小型化する方法として,SiC 等を適用して,スイッチング周
波数を高くする方法があるが,昇圧リアクトルでは直流重
畳するため,コアの大型化が避けられない。
ス値に不感な MCM 制御を実現し,実機による検証を行った
ので報告する。
2.
電流連続/不連続混在モード
〈2・1〉電流モード混在時の動作
図 1 に昇圧チョッパを示す。上側のスイッチはダイオー
一方,大きな電流リプルを許容することでインダクタン
ドでも良いが,高効率化の観点から同期整流を行うため,
スを低減する方法がある。この方法では,電流連続モード(以
MOSFET が使われる。昇圧リアクトルの電流リプルは一般
下,「CCM」)と電流不連続モード(以下,「DCM」)を切り
的に 10%程度に設計される(1)。しかし,本設計では高いイン
替えて,電流制御を行う
(2)-(4)
。軽負荷では不連続に,重負荷
では連続に電流を流す電流連続/不連続モード混在(以下,
「MCM」)制御方式は,CCM だけを用いる制御方式と比較し
(5)
ダクタンスを有するリアクトルが必要となるため,回路の
大型化が問題となる。
図 2 に CCM 動作と DCM 動作時のリアクトル電流を示す。
て,広い負荷範囲で高効率を得られる 。しかしながら,
CCM 動作でのみ駆動する場合,軽負荷時の電流リプルが電
CCM と DCM の切り替えを伴う従来の MCM 制御方式では,
流平均値に対して大きくなるため,効率低下が問題となる。
昇圧リアクトルのインダクタンスより電流モードを判別す
一方,
軽負荷では DCM,
重負荷で CCM により駆動する MCM
るため,昇圧リアクトルが飽和した際,所望の性能が得ら
れない。特に昇圧リアクトルの小型化の観点から飽和領域
を使う設計にした場合,電流制御系が不安定になる恐れが
ある
SW2
iin
L
A
(2)-(4)
。
そこで本論文では,リアクトルの飽和によりインダクタ
VL
Vin
Vout
SW1
ンス値が変化した場合でも,安定して電流モードの切り替
えを実現するため,昇圧リアクトルのインダクタンスを用
Fig. 1. Typical Boost Converter.
の場合,軽負荷時の電流リプルを低減できるため,軽負荷
Full Load
CCM
時の効率を改善することが可能となる。しかしながら,DCM
Light Load
CCM
Current
Average Current
を適用する際には,DCM の非線形補償,CCM と DCM の切
り替え制御という課題を解決しなければならない。
Full Load
CCM
Light Load
DCM
Current
Average Current
〈2・2〉従来の電流連続/不連続モード混在制御
図 3 に従来の MCM 制御のブロック図を示す(2)。
本制御は,
0
0
DCM 時の非線形補償,CCM と DCM の切り替え制御からな
る。本制御では,(1)~(2)式により CCM のデューティ比 DCCM
(a) Only CCM Control
と DCM のデューティ比 DDCM を推定し,フィードバック制
御系の出力にフィードフォワードすることより,DCM の非
線形補償を行う。
DCCM  1 
DDCM 
Vin
............................................................. (1)
Vout
*
2iavg
L(Vout  Vin )
TswVin2
........................................... (2)
DCCM
1- Vin
Vout
(i) DCM Nonlinearity Compensation
(i)
2L(Vout-Vin)
TswVinVout
Fig. 3. Conventional MCM control(2).
Current
Peak
ipeak
Inductor
current
i
が不連続となる。これによりモード判別を実現する。DCM
の非線形補償にはインダクタンス値を用いるため,飽和よ
0
りインダクタンスが変わる場合には性能が劣化する。
D1Tsw
D2Tsw
Tsw
提案する電流連続/不連続モード混在制御
Vin
図 4 に DCM の電流の波形を示す。図 1 より,平均電流 iavg
D1
1
sL
D3
VinTsw
2L 0.5ipeak
る。また,SW1 のソース電位から見たドレイン端子電圧 VA
図 5 に(7)式に基づき構成される回路モデルを示す。DCM
動作時に発生する電流ゼロ期間 D3Tsw により SW1 がオンす
Vout
iavg
Vout-Vin
ここで D1,D2 と D3 はそれぞれ図 4 に示すデューティであ
次に,(3),(4),(5)式を(6)式に代入して,(7)式を得る。
2 Liavg
VL  Vin  Vout  D1Vout  (Vout  Vin )(1 
) ........ (7)
Vin D1Tsw
D3Tsw
Vout
V
 i D1Tsw .............................................................. (4)
L
VL  Vin  VA .................................................................. (6)
Average
current
iavg
Fig. 4. Inductor current waveform in DCM.
〈3・1〉DCM の非線形補償(6)
VA  D2Vout  D3Vin ........................................................ (5)
D1
iavg
合は,電流が連続になり,DDCM より大きい場合には,電流
とリアクトル電圧 VL はそれぞれ(5)と(6)式で表される。
DDCM
MIN
VALUE
PI
る。(1)式より計算される DCCM が(2)式の DDCM より小さい場
と電流ピーク値 ipeak はそれぞれ(3),(4)式で表される。
i peak
i peak
iavg 
( D1  D2 ) 
(1  D3 ) ............................... (3)
2
2
(ii)
iavg*
令値,L はインダクタンス,Tsw はスイッチング周波数であ
i peak
DCCM≧DDCM:DCM
DCCM<DDCM:CCM
(ii) Current Mode Detection
ここで Vin は入力電圧,Vout は出力電圧,i*avg は平均電流の指
3.
(b) MCM control
Fig. 2. Current waveform with high current ripple.
1
iavg
0.5ipeak
Nonlinear
factor
(Do not exist
in CCM)
iavg
Fig. 5. Circuit model for boost converter operated in MCM.
Conventional PI controller for CCM operation
iavg*
D1
PI
iavg
Vin
z-1
(i) Vout-Vin
(i) Nonlinearity Compensation
Fig. 6. Proposed DCM control(6).
補償する必要がある。
るデューティ比 D1 と電流平均値 iavg の関係が非線形となる
図 6 に DCM の非線形補償のブロック図を示す。本制御で
ため,CCM の制御器のみで制御する場合,電流制御性能が
は,デューティ比の前回値 D1[n-1]を利用して,D3 を推定す
悪化し,滑らかな CCM/DCM の切り替え制御を実現できな
ることにより,DCM の非線形補償を行う。従来法に対して
い。したがって,CCM の制御器を使用する場合と同様の応
インダクタンスを用いずに DCM の非線形補償を実現する。
答を得るためには,D1 から推定される D3 により非線形性を
〈3・2〉CCM と DCM の切り替え制御
と,やがて,DDCM は DCCM と等しくなり,電流平均値 iavg は
図 7 に(1),(2)式より計算される DCM のデューティ比 DDCM
臨界モードの電流値 IBCM となるため,CCM に移行する。
と CCM のデューティ比 DCCM を示す。従来の電流モードの
図 8 に本論文で提案する MCM 制御の制御ブロック図を示
判別方法では,インダクタンスより計算される臨界モード
す。DCCM は電流やインダクタンスに依らず計算できる。ま
の電流値 IBCM と入力電流の平均値 iavg を比較することで,
た,DCM における非線形補償はインダクタンスをパラメー
CCM と DCM の判別を実現する。しかし,判別のためには
タとして使用していないため,CCM と同様に DDCM の計算
インダクタンスが必要となるため,飽和によりインダクタ
にもインダクタンス値は不要となる。これにより,インダ
ンスが大きく変化するような場合には性能が劣化する(2)-(4)。
クタンスに依存しない DCCM と DDCM の関係を得られるため,
一方,提案手法では CCM と DCM 動作におけるそれぞれの
図 7 に示したとおりに,DCCM と DDCM の関係だけで電流モー
デューティ DCCM と DDCM の関係に着目して切り替え制御を
ドを判別できる。したがって,本制御法は飽和によりイン
行う。DCM において,DDCM が増加すると図 4 に示すリアク
ダクタンスがダイナミックに変化するリアクトルにも適用
トルの充電期間 D1 が長くなり,電流平均値 iavg が増加する。
可能である。
電流平均値 iavg の増加とともにゼロ電流期間 D3 が減少する
0.6
Duty ratio
0.4
検証を行った。表 1 に実機の諸パラメータを示す。電流平
均値は 1.4 MHz のサンプリング周波数で検出した値から算
DCCM
0.3
0.2
出する。また,効率を改善するため,CCM のみならず DCM
においても同期整流を行う(7)。
Inductor current value at
Boundary Mode
IBCM
0.1
0
0.5
1
1.5
Inductor Current [A]
2
実機検証
提案する MCM 制御の有用性を確認するため,実機による
DCM CCM
DDCM<DCCM
DDCM≧DCCM
Mode transition point
DDCM
0.5
0
4.
図 9 に提案する MCM 制御系を導入した場合の電流ステッ
プ応答を示す。DCCM が DDCM より小さい場合は,電流が連続
2.5
になり,DDCM より大きい場合には,電流が不連続となるこ
Fig. 7. Relationship of DCM and CCM duty ratios in CCM and DCM.
とから,提案法によりインダクタンスを使用せずに,電流
Table 1. Circuit parameters.
モードを判別できている。したがって,飽和によりリアク
トルのインダクタンス値が変化する場合でも,電流モード
Vin
Vout
P
fsw
fsampling
Lunsaturated
fc
Input Voltage
Output Voltage
Rated Output Power
Switching Frequency
Sampling Frequency
Unsaturated Inductance
Cutoff frequency of PI controller
zC
Damping factor of PI controller
Step response (DCM→CCM saturated)
Ramp response slope
TL
Inductor time constant
TRamp
Ramp response time constant
Current density
Gap length
Winging turn
Inductor core
Switching device
1iavg*
PI
Vin
Vout
250 V
400 V
750 W
20 kHz
1.4 MHz
1200 μH
1000 Hz
0.707
1 A→3 A
0.05 A/ms
14.4 μs
60 ms
4 A/mm2
0.6 mm
52
PC40EI50
TPH3006PS
が切り替わる場合でも,電流制御を実現できる。
図 10 に提案する MCM 制御系を適用した場合の電流ラン
プ応答を示す。負荷が緩やかに変化するほうが,モード混
在制御の問題点が顕著に現れると思われることから,0.05
A/ms(昇圧リアクトル時定数に対し約 4000 倍)の傾きをもつ
ランプ指令を与えている。図 9 に示す結果と同様に,DCCM
と DDCM の関係から,CCM と DCM が切り替わるタイミング
を正確に検出できていることが確認できる。
図 11 に提案する MCM 制御を適用した昇圧チョッパの効
率特性を示す。最高効率は出力電力 712 W (0.95 p.u.)におけ
る 98.9%である。MCM 制御に同期整流を実現することで,
効率を最大 0.3%改善できることを確認した。また,今回の
設計ではリアクトルが飽和する領域では,磁束密度の変化
(ii) Current Mode Detection Circuit
DCCM≧DDCM:DCM
DCCM<DDCM:CCM
DCCM
(ii) MIN
VALUE
Vin
D1
1
sL
Vout
DDCM
iavg
Vin
z-1
(i) Vout-Vin
(i) Nonlinearity Compensation
Proposed Control System
Fig. 8. Proposed MCM control.
Vout
Vout-Vin
D3
VinTsw
2L 0.5ipeak
1
iavg
0.5ipeak
iavg
Nonlinear
factor
(Do not exist
in CCM)
iavg
0.3
CCM duty DCCM
DCM duty DDCM
DCM duty DDCM
0.3
CCM duty DCCM
Mode transition point: DCM
Mode Transition Point: DCM CCM
0
CCM
400 ms
1A
Average Current iavg
Average Current iavg
1A
0
0
0
0
Inductor Current iin
2A
Inductor Current iin
99.2
CCM duty DCCM
99.0
Mode Transition Point: CCM DCM
0
400 ms
1A
Average Current iavg
Conversion Efficiency η [%]
DCM duty DDCM
0.3
98.8
0.3%
98.6
98.4
98.2
Asynchronous
Switching
98.0
DCM
Unsaturation
Region
97.8
97.6
0.0 0.1
2 A (1)
Inductor Current iin
(2)
20 ms
At light load, inductor current
becomes DCM.
Inductor Current iin
Inductor Current iin
0
At heavy load, inductor current
becomes CCM and saturated.
CCM
Saturation
Region
0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1.0 1.1
Output Power Pout [p.u.]
Fig. 11. Efficiency Characteristic of boost converter with saturated
inductor operated in MCM.
CCM と DCM を滑らかに切り替えが可能であることを確認
した。
今後は,提案する MCM 制御の安定限界を導出する予定で
ある。
文
2A
20 ms
(1)
(c) Magnified Current Waveform from (1) and (2).
Fig. 9. Current Step Response.
(2)
幅が広くなるため,リアクトル鉄損の増加を招き,効率が
低下することがわかった。
(3)
以上の結果より提案 MCM 制御方式は,リアクトルが飽和
しも安定した動作を得られるため,さらなるリアクトルの
(4)
小型化が可能となることを確認した。
5.
0.2
CCM
Unsaturation
Region
ンプ指令を与えた場合,昇圧リアクトルの飽和があっても
(b) Step Down Response.
2A
1 p.u. of output power is 750W.
Maximum Efficiency: 98.9%
Synchronous
Switching
0
0
2A
40 ms
Fig. 10. Current Ramp Response (Slope: 0.05 A/ms).
(a) Step Up Response.
0
DCM
0
まとめ
本論文では,インダクタンス値を用いずに DCM と CCM
の判別を行う MCM 制御法を提案し,リアクトルを飽和領域
(5)
(6)
で用いても昇圧チョッパを安定に制御可能であることを実
機により検証した。実験結果より,提案手法を適用し,ス
テップ指令とゆっくりとした変化(0.05 A/ms の傾き)のラ
(7)
献
R. C. N. Pilawa-Podgurski, et al., “Very-High-Frequency Resonant Boost
Converters”, Transactions on Power Electronics, Vol. 24, No. 6, pp.
1654-1665, 2009.
K.
D.
Gusseme,
et
al.,
“Digitally
Controlled
Boost
Power-Factor-Correction Converters Operating in Both Continuous and
Discontinuous Conduction Mode”, Trans. on PE. Vol. 52, pp. 88-97, 2005.
Sh. F. Lim, et al., “A Simple Digital DCM Control Scheme for Boost PFC
Operating in Both CCM and DCM”, Transactions on Power Electronics,
Vol. 47, No. 4, pp. 1802-1812, 2011.
T. S Hwang, et al., “Seamless Boost Converter Control Under the Critical
Boundary Condition for a Fuel Cell Power Conditioning System”,
Transactions on Power Electronics, Vol. 27, No. 8, pp. 3616-3626, 2012.
Y. P. Su, et al.: “Current-Mode Synthetic Control Technique for
High-Efficiency DC–DC Boost Converters Over a Wide Load Range”,
Transactions on VLSI Systems, Vol. 22, No. 8, pp. 1666-1678, 2013.
レホアイナム,et al.:「電流不連続モードを有する双方向 DC/DC コ
ンバータの電流フィードバック制御」, 平成 27 年電気学会全国大会,
No. 4-083, pp. 141-142 (2015).
レホアイナム, et al.:「昇圧チョッパの電流不連続モードにおける電
流平均値検出手法の検討」, 平成 26 年電気学会電子・情報・システ
ム部門大会, Vol. , No. MC5-6, pp. 1344-1349 (2014).