潮汐変動とスケトウダラ 太平洋系群の資源変動 志田 修 (北海道立総合研究機構 釧路水産試験場 調査研究部) Introduce myself ・1994 – 2001 ・2001 – 2009 スケトウダラ太平洋系群 北海道立!釧路水試 北海道立!函館水試室蘭支場 ・・未成魚 道東海域 ・・成魚 道南海域 栽培水試 ・2009 – 2015 ・2015 北海道立/道総研中央水試 スケトウダラ日本海北部系群 道総研釧路水試 調査研究部 スケトウダラ資源調査・生態研究 計量魚群探知機 2010.3 「スケトウダラ太平洋系群の資源変動におよぼす 成魚期の海洋環境の影響に関する研究」 Introduction Walleye pollock Gadus chalcogrammus Russia Canada Japan USA ・北太平洋に広く分布するタラ科魚類 ・漁獲量世界第2位(FAO)の中深層性回遊魚 日本に分布するスケトウダラ系群・海域 日本に分布するスケトウダラ系群 Introduction オホーツク海南部 根室海峡 日本海系群 太平洋系群 ・日本周辺で最大の資源量 ・親潮生態系の鍵種 Introduction 北海道周辺の海流 冬–春 沿岸親潮(極寒) 日本海系群 暖流一本支配 北海道 夏-秋 宗谷暖流変質水 対馬暖流 津軽暖流 親潮 太平洋系群 複数の暖・寒流支配 Honsyu Is. 黒潮 Pacific Ocean Introduction 太平洋系群の分布と産卵場 About Japanese Pacific Stock 太平洋系群 ・分布 常磐~北方四島 太平洋岸に分布 ・産卵場 噴火湾・日高湾 : 産卵場 噴火湾 日高湾 道東太平洋海域 道東海域 金華山周辺海域 択捉島周辺海域 (児玉ほか,1988;Tsuji, 1989; 濱津・八吹,1995) ©2012 Google 画像©2012 TerraMetrics, 地図データ©2012ZENRIN 成魚(3・4歳以上)の分布と回遊 Introduction ©2012 Google 画像©2012 TerraMetrics, 地図データ©2012ZENRIN 道南太平洋海域 噴火湾 日高湾 道東太平洋海域 索餌場 産卵場 Shida, 2010 索餌期 :5~10月 移行期 :11月 産卵期 :12~3月 移行期 Maeda, 1981 :4月 産卵回遊 Introduction Life history of JPS (continued) 二つの異なる加入経路 主経路 3‐5月 Hidaka Bay 6‐7月 道東海域 Hidaka Bay 養育場 産卵 1‐2月 日高湾 日高湾 輸送(Passive) 東北海域 東北海域 輸送(Passive) 噴火湾 移動(Active) 養育場 道東海域 16 Introduction Life history of JPS (continued) 二つの異なる加入経路 主経路 道東海域 Hidaka Bay Hidaka Bay 養育場 産卵 Colder environment 日高湾 日高湾 輸送(Passive) 東北海域 東北海域 輸送(Passive) 噴火湾 移動(Active) 養育場 Warmer environment 道東海域 16 SSB (x103 t) 350 300 250 200 150 100 50 0 Constant Pacific Stock Recruit (x109 individuals) 3 1980 1985 Japan Sea stock 1990 1995 Strong year classes Fishing Year (Apr.‐Mar.) 2000 2005 2000 2005 2 1 Constant 0 1980 1985 1990 1995 Fishing Year (Apr.‐Mar.) 10 Contents ・産卵場への来遊タイミングの経年変化 ・来遊タイミングの変化に 影響を与える要因 ・潮汐変動との関連性 ・来遊タイミングと資源変動の関係 志田,2011(2009);Shida et al., 2014 来遊タイミングの観察:計量魚探 分布量/密度推定 調査年: 1998 – 2005 年2回の調査 前半:9月または10月 後半: 11月または12月 計量魚探データ収集 : 12 fixed lines (A – L) 調査線間隔: 5miles 計量魚探 FQ‐70(Furuno) 50kHz (1998‐2000 ) EK‐60(Simrad) 38kHz(2001‐2005 ) 調査船 おやしお丸: 1998‐2000 金星丸: 2001‐2005 来遊タイミングの観察:漁業データ 道南太平洋 噴火湾 ©2012 Google 画像©2012 TerraMetrics, 地図データ©2012ZENRIN 日高湾 3.6~9.6万トン スケトウダラ漁獲量 スケトウダラ漁業 刺し網 沖底 定置網 その他 13.8% 沖底 28.1 % 刺し網 58.1% 漁期: 10~3月(10~1月が盛期) 2001~2010年の平均 計量魚探調査の結果 1st surveys 9/10月調査 2nd surveys 11/12月調査 1998 スケトウダラの分布密度 1998‐1999 9/10月調査 1999 > 11/12月調査 Change !! Year 2000 2000以降 2001 9/10月調査 2002 < 11/12月調査 来遊タイミング 早い: 1998‐1999 遅い: 2000~ 2003 2004 2005 2 1 0 1 mean NASC (x103 m2/nmi2) 2 刺し網漁業の月別漁獲量 Oct‐Nov Dec‐Jan 1998‐1999 10~11月 = 12~1月 1998 1999 Change !! 2000年以降 10~11月 2001 2002 60 Catch by GN (x103 t) Year 2000 2003 2004 2005 < 12~1月 N=16 r=0.81 p<0.01 50 40 30 20 10 0 50 30 10 10 Catch (x103 t) 30 50 0 1 2 3 2 2 mean NASC (x10 m /nmi ) スケトウダラ分布量 (計量魚探調査) と その後2ヶ月間 における 漁獲量の関係 月別漁獲量(比率):来遊タイミングの経年変化 漁期前半の漁獲量の割合=来遊の遅速 Decadalまたはそれ以上の長いスケールでの変動? Jan Dec Nov Oct 100 90 Percent of catch 80 70 Change 1989/1990 60 1990‐99 早い 50 Change 1999/2000 40 30 20 10 1980‐89:遅い 2000~遅い 0 1980 1985 1990 Year 1995 2000 2005 来遊タイミングに影響を与える要因 ・来遊時期の変化 ← 成熟開始時期の変動 A M J J A S O N D J F M 卵黄形成期 卵黄形成期 早い個体 産卵期 核移動期 5ヶ月 遅い個体 産卵場への来遊:成熟に伴う行動の変化 成熟開始時期の頻度分布変動 → 群としての来遊時期の変動 (尹,1981) 来遊タイミングに影響を与える要因 ・来遊時期の変化 ← 成熟開始時期の変動 ・産卵期:仔魚と餌料生物出現のタイミング (Cushing, 1969) ・スケトウダラの産卵時期も海域による差 (前田ほか,1988;佐々木,1984;北海道,2007) ・環境によって変化する可能性(外部要因) :資源密度、水温、餌料密度 ・スケトウダラの生物学的特性(内部要因) :年齢、サイズ (近縁の大西洋タラ研究) 来遊タイミングに影響を与える要因 データ 刺し網漁業による10~11月漁獲量の割合(%) 内部要因 刺し網漁獲物の平均尾叉長 外部要因 太平洋系群の資源量 太平洋系群の4歳以上の資源重量 太平洋系群の親魚量 餌料動物プランクトン(N. cristatus)の分布密度 産卵場(日高湾)の8月末/9月上旬 水温(200m) 産卵場(日高湾)の8月末/9月上旬 水温(300m) 索餌場(道東)の4月 水温(200m) 索餌場(道東)の6月 水温(200m) 索餌場(道東)の8月 水温(200m) 親潮第一分子の南限緯度 ALPI 期間 ソース 1980‐2005 北海道水産現勢 1980‐2005 道水試データ 1981‐2005 1981‐2005 1981‐2005 1980‐2002 1984‐2005 1984‐2005 1989‐2005 1989‐2005 1989‐2005 1980‐2002 1980‐2005 森・船本(2009) 森・船本(2009) 森・船本(2009) Tadokoro et al.(2005) 道水試データ 道水試データ 道水試データ 道水試データ 道水試データ 来遊タイミングに影響を与える要因 70 尾叉長 60 r = ‐0.44 n = 25 p = 0.03 Percent of catch in Oct and Nov 50 70 50 40 40 30 30 20 20 10 10 0 0 400 420 440 460 FL(mm) 索餌場の水温(春) 70 70 60 50 50 40 40 r = 0.51 n = 17 p = 0.03 20 10 r = 0.78 n =23 p = 6.3x10‐6 0 60 30 餌料 60 2 4 6 8 10 12 Abundance of N. cristatus (wet W mg/m2) 索餌場の水温(初夏) r = 0.59 n = 16 p = 0.02 30 20 10 0 0 0 1 2 3 Temperature(ºC) in April 4 0 1 2 3 Temperature(ºC) in June 来遊タイミングに影響を与える要因 70 1980‐1989 1990‐1999 2000‐2005 Percent of catch in Oct and Nov 60 Hamatsu&Yabuki(2007) 密度効果による成長抑制 50 40 30 20 10 0 410 420 430 FL(mm) 440 450 来遊タイミングに影響を与える要因 70 尾叉長 60 50 ? Percent of catch in Oct and Nov 40 30 r = ‐0.44 n = 25 p = 0.03 70 餌料 60 50 40 r = 0.78 n =23 p = 6.3x10‐6 30 索餌期 20 20 10 10 卵黄形成期前の環境要因 0 0 400 420 440 460 FL(mm) 索餌場の水温(春) 70 0 70 60 60 50 50 40 40 30 r = 0.51 n = 17 p = 0.03 20 10 2 4 6 8 10 12 Abundance of N. cristatus (wet W mg/m2) 索餌場の水温(初夏) r = 0.59 n = 16 p = 0.02 30 20 10 0 0 0 1 2 3 Temperature(ºC) in April 4 0 1 2 3 Temperature(ºC) in June 来遊タイミングの変化と潮汐変動 Tadokoro et al., 2009 表層におけるPO4濃度の5年移動平均 春-夏(4~9月)のN. plumchrus現存量の5年移動平均 PO4濃度の変化(20年周期)→ 基礎生産 →N. plumchrus 潮汐変動 → オホーツク中層水の形成 3 6 ? 5 4 3 ? 2 RPS Abundance of age‐0 fish(x109 ind.) 来遊タイミングと資源変動 1 2 1 0 0 0 20 40 60 80 Percent of catch in Oct and Nov 0 20 40 60 80 Percent of catch in Oct and Nov 0歳資源尾数・RPS:VPA(船本ほか,2015) ・資源変動=加入量変動との関係? お手上げ? 来遊タイミングと資源変動 - 二つの加入ルートと来遊タイミング - 主経路(1990年代~) 輸送 移動 道東海域 Hidaka Bay 養育場 産卵 噴火湾ルート 豊度の高い年級:1995YC 孵化日組成:1月 (中谷ほか,2003;Nishimura et al., 2007) Colder environment 日高湾 輸送(Passive) 生残 孵化日が早いことが有利 噴火湾 移動(Active) 道東海域 産卵時期も早いほうが 来遊タイミングと資源変動 - 二つの加入ルートと来遊タイミング - 主経路(1980年代) 仔魚分布密度が高い年級 孵化日組成:3月 Hidaka Bay 輸送 日高湾 輸送 東北海域 東北ルート 東北海域 養育場 Warmer environment (Hattori et al., 2009) 生残or輸送 孵化日が遅いことが有利 産卵時期も遅いほうが 来遊タイミングの変化が再生産に与える影響 Decadal Scaleの環境変化:水温変動に着目した仮説 再生産のルート ・寒冷年:1980年代→噴火湾-東北ルート 産卵は遅い方が有利 ・温暖年:1990年代→噴火湾-噴火湾-道東ルート 産卵は早いほうが有利 (Shida et al., 2007) 産卵期の親魚の環境と産卵タイミング ・寒冷年:1980年代→遅い ・温暖年:1990年代→早い (志田,2011) Conclusion ・成魚の索餌場から産卵場へ来遊タイミング Decadal Scaleの変動がある (志田,2011;Shida et al.,2014) ・来遊タイミングの変動 索餌期の環境要因の影響を受けている可能性 ・環境要因:餌料動物プランクトンの変動 (Tadokoro et al.,2009) 潮汐変動:基礎生産の影響を受けている可能性 ・来遊タイミングの変動 噴火湾・東北ルートへの生残・輸送影響? (志田,2011) Plans ・来遊タイミング予測モデルの作成 環境データ(潮汐変動も)発掘・収集、GLM・GAM ・過去のサンプル(耳石)・測定記録の発掘・リスト作成
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