ヨーロッパのコンディショニング

Coaching & Playing Volleyball 63 号 (2009 年 7/8 月号 )
Coaching & Playing Volleyball 63 号 (2009 年 7/8 月号 )
Special Topics - Conditioning
Special Topics - Conditioning
メンタル・
コンディショニング
これは比較研究などで多数報告されて
試合に向けての準備としてのコンデ
のチームでは練習前のストレッチは実
ィショニングで一番難しいのはメンタ
施していないが、問題は起きていない。
ル面だろう。現在、ヨーロッパのトッ
強度の低い運動などで、筋肉の温度
プレベルチームでは、選手のレベルは
を上げるためのウォームアップは必要
近づいている。技術や、
戦術、
練習方法、
である。しかし、これはボールを使っ
負荷の変化
指導方法も、効率を追求し、チーム間
たスキルウォームアップやトレーニン
フランスではプリシーズンが短く、
の切磋琢磨が繰り返された結果が情報
グを兼ねた運動として行えば、特にウ
シーズンが長い。そのため、レギュラ
交換され、どこも大きな違いが無くな
ォームアップのためのウォームアップ
ーシーズンになっても、チームを向上
ってきている。そんな中、一番の違い
は必要ない。したがって、練習時間が
させていかなければならない。したが
はメンタル面の強化といえるだろう。
3 時間なら、3 時間の練習を意味する。
って、レギュラーシーズンにしても、
恐らくどのチームもやっていること
プレーオフにしても、常に 100%を目
は、相手のビデオをみて、戦術的にだ
技術の向上
指している。1 戦 1 戦がとても大切な
けではなく、メンタル面での準備とし
常にゴールを設定する。練習はゲー
戦いだ。そして、シーズンが始まると
て活用することだろう。相手の特徴が
ムライクで、プレーヤーはいつも入れ
全てが短い時間に感じられる。1 試合
分かっていれば、精神的準備になり、
替えて練習をする。チームメイトは味
が終われば、次の試合への準備がある。
安心できる。
方になったり、敵になったりして練習
午前
トレーニング
ヨーロッパでは各国のプロチー
月
火
水
木
金
土
日
ムのリーグ戦があり、指導者同士
シーズン (2 試合/週 ) の 1 週間
ヨーロッパのコンディショニング
の情報交換も盛んに行われている。
またヨーロッパ各国のプロリーグ
のフォーマットも似ているため、
強化やコンディショニングが精査
され、標準となるスタイルが作ら
ローラン・ティリ(Laurent Tillie) 氏
れつつある。フランスでも実績の
AS カンヌ監督
元フランスナショナルチームプレーヤーとしてソウル五輪、バ
ルセロナ五輪に出場。現役中、フランスとイタリアのプロリー
グで活躍。AS カンヌとパリ UC の 2 チームで合計 8 回のフラン
スチャンピオン、CEV カップ優勝 1 回。現役を引退後、すぐに
AS カンヌ男子バレーボールチームの監督に就任。リーグ (2005
年 ) とカップ (2007 年 ) を 1 度ずつ優勝に導いている。フィジ
カル・セラピストの学位を持つ。
ある AS カンヌの監督、ティリ氏
に話を聞いた。
トレーニング
午後
練習
練習
試合
練習
練習
試合
休み
おり、明らかにされている。実際に私
リーグのスケジュール
に参加するチームは、水曜日 ( 火木の
週 1 試合の時期
最初はやさしく、後半に力を貯めると
プリシーズンには高いところからの
を行っている。練習時間はあまり長く
フランスでは 7 週間のプリシーズ
場合もあり ) に試合が行われる。
シーズンに入ると、プリシーズン
いうことは難しい。
水面への飛び込みをやっているが、こ
はとらないようにしている。練習は 3
ンの後、リーグのシーズンは 10 月に
フランスのプロチームは、このよ
のスケジュールからトレーニングセ
練習の負荷を変えるとしたら、プレ
れは効果があるのかどうかは分からな
時間くらいで、短くしている分、プレ
はじまり、8 ヶ月間ある。プロリーグ
うなスケジュールの中で、練習やト
ッションを 1 回少なくし、月、水は
ーヤーの調子を見て、疲労が残ってい
い。
ーヤーには 100%を要求し、練習の強
は、レギュラーラウンドを 14 チーム
レーニングの負荷を調整している。
午前中だけで行うようにしている。
るときや、ケガなどの場合である。試
のホームアンドアウェーにより、各
これはイタリアのプロチームも同様
練習時間も 2 ~ 3 時間の間で調整す
合での負荷のかかり方や、練習時のプ
チ ー ム 26 試 合 を 戦 う。 上 位 8 チ ー
である。
る。
勝、準決勝、決勝と 2 試合ずつ戦い、
1 週間のスケジュール
1 勝 1 敗になったときはゴールデン
プリシーズン
セット (2 試合目の後にもう 1 セット
試合のないこの時期は、1 時間半~
の勝敗決定戦 ) を行ってきた。今年
2 時間のウエイトトレーニングを週 3
(2009-2010 シーズン ) からは、準々
回、月水金に行っている。ボールを
決勝、準決勝はベストオブ 3( 三番勝
使った練習は 3 時間のセッションが
午前
月 トレーニング + 練習
火
水
練習
木
トレーニング
金
土
練習
日
休み
負 ) に、決勝戦は 1 試合のみに変更
週 6 回である。
ムがプレーオフに進出する。準々決
される。
ヨーロッパ各国のプロリーグ上位
のチームは翌年のヨーロッパバレー
ボール連盟 (CEV) のリーグに参加す
る。11 月~ 1 月の 3 か月間にメイン
( レギュラーラウンド ) が、4 月上旬
に決勝戦が行われる。CEV のリーグ
24
月
火
水
木
金
土
日
午前
トレーニング
トレーニング
トレーニング
休み
プリシーズンの 1 週間
Coaching & Playing Volleyball 63 号 (2009 年 7/8 月号 )
午後
練習
練習
練習
練習
練習
練習
度は高くしている。
バレーボールはバレーボールで覚え
レーヤーの動きから、メニューを変更
ウォームアップと
ストレッチ
することは、よくあることである。
イタリアのプロチームでは 40 分の
技術の修正が必要な場合は、6 対 6 な
ストレッチ+ウォームアップセッショ
どのゲームライクドリルの中で修正し
ンは当たり前だが、私はウォームアッ
ていく。そのため、全てのプレーヤー
プのためだけの運動にかけ
のチェックをするための 2 人のアシス
る時間は 5 分程度である。
タントコーチが必要となる。
私はフィジカル・セラピ
例えばブロックで一番大切なことは
ストの学位を取得している
何だろうか? レセプションを見て、
が、その研究の中で練習前
セッターを見て、ボールを見て、アタ
週 2 試合の時期
のストレッチがケガの予防
ッカーを見る。それぞれの瞬間にすべ
CEV のリーグなどが入り、水曜日
にほとんど効果がないこと
きことをタイミング良く、適切に行う
と土曜日に試合がある場合は、月曜
を学んだ。信じられないこ
ことである。台上のスパイカーが打つ
日に重い負荷によるトレーニングと
とかもしれないが、運動後
ボールをブロックしていても、上記の
練習を行い、木曜日は軽めのトレー
のストレッチには効果があ
ことは何一つ身につかない。
ニングとプリベンション・トレーニ
るが、運動前のストレッチ
特に最近のバレーボールは展開が速
は あ ま り 意 味 が な い の だ。
くなっているため、プレーヤーはゲー
午後
練習
練習
練習
試合
シーズン (1 試合/週 ) の 1 週間
ングを行う。
シーズンの中でチームを向上させる。
るというのが基本的な考え方である。
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