自動車運転免許と植込み型除細動器

近畿大医誌(M ed J Kinki Univ)第39巻3,4号 99∼104 2014
99
自動車運転免許と植込み型除細動器
栗 田 隆 志
近畿大学医学部循環器内科
心臓血管センター
人については疾患が事故の理由であるため,従来の
はじめに
法律では自動車運転過失致死傷罪にしか問われず,
植込み型除細動器(Implantable cardioverter
最高刑懲役が7年でしかない.そこで,今回,法律
defibrillator:ICD)/除細動機能付き心臓再同期療
法(Cardiac re-synchronization therapy with defi-
が改訂され,政令で定める疾患(てんかんのみなら
brillator:CRT-D)植込み患者に対する自動車運転
の規制については,平成13年,道路 通法の改正に
法律を遵守せず,人を死傷させた場合は危険運転致
伴い,
「不整脈に起因する失神例の運転免許取得に関
と定めたものである.
する診断書作成と適性検査施行の合同検討委員会」
2. 道路 通法の改定内容
が「合同検討委員会ステートメント」を平成15年に
①従来と同様の(変 されていない)内容
発表した .その後,ICD 適応の拡大,ICD 作動に関
わる状況 析の進展,社会的状況の変化などの背景
の既往と再発リスクを有し,医師から車の運転を控
があり,必ずしも従来の規制が最適なものとは言え
えるよう指示された患者は自動的に車の運転が不可
ないため,平成21年に日本不整脈学会,日本循環器
となる.この場合,患者は自ら 通 安局や警察署
学会,日本胸部外科学会が合同で運転免許取得に関
に届け出る必要はないが,医師は車の運転を控える
するステートメントの改訂を行った .さらに,栃木
よう,十 に患者に説明し,その内容をカルテに明
県鹿沼市クレーン車事故(てんかんがコントロール
記する必要がある.ICD・CRT-D を植え込んだ場
されていないことを知りながら患者がクレーン車を
合,車の運転は原則禁止となるが,ある一定の期間,
運転し,てんかん発作に起因する事故を起こし,6
一定の条件が満たされれば運転が許可される.その
名の児童が死亡)を契機に道路 通法と危険運転致
内容は不整脈学会が発表したステートメント
(表1)
死傷罪が改訂された(平成25年6月) .本項では今
に示されている(制限期間設定の妥当性などについ
回改訂された法律の概説と植え込み型 除 細 動 器
ては後述)
.1次予防の場合は植え込み後1ケ月間,
(ICD)や除細動機能付き心臓細動期療法(CRT-D)
を適応した患者に対する運転免許の取り扱いについ
2次予防の場合は6ケ月間 ICD の作動がなければ
て述べる.
ICD 植込み患者においては,運転中の意識消失は
もちろんのこと,意識消失を伴わない場合でも正常
ず,ICD・CRT-D 患者が含まれる)を有する患者が
死傷罪を適応し,死亡させた場合は最高刑懲役15年
失神の有無を問わず,持続性心室頻拍や心室細動
車の運転が可能になる.この際,学会が主催する
ICD・CRT-D セミナー受講証を有する医師が「車の
運転を控えるべきとは言えない」旨の診断書を作成
し, 通 安局(
安局)へ届け出る.その後,6
な運転操作の妨げになることが予想される. 通事
ケ月ごとに同様の診断書の提出,または同局からの
故が発生した場合,患者自身のみならず他人の生
問い合わせに回答する必要がある.
命・身体を損ないかねないことを
②変
えると ICD 植込
された内容
み患者の運転について適正な範囲内での運転行為の
今回の変 点は以下の3点,①免許取得,または
制限はやむを得ない.しかしながら,厳しすぎる運
免許 新時の自己申告義務違反(虚偽申告)の罰則
転規制は ICD 患者の社会的,経済的活動を過度に制
が明記されたこと,②医師からの任意届け出を認め
限し,それが ICD の適正な 用を抑制する(リスク
たこと,③免許再取得手続きの簡 化である.
の高い患者が植え込みを拒否する)可能性がある.
ⅰ) 虚偽回答に対する罰則整備
1. 危険運転致死傷罪の改定の理由とその内容
免許取得,または免許 新時には表2に示す質問
これまで危険運転致死傷罪の処罰対象は酒酔い運
票に「はい」または「いいえ」で回答せねばならな
転や故意の暴走運転などで人を死傷させた場合に限
られていた
(死亡させた場合は最高刑懲役20年)
.し
い.ICD・CRT-D 植え込み患者は表2の5に該当す
る.この場合,車の運転を許可できる内容の診断書
かしながら,先の栃木県鹿沼市クレーン車事故の犯
を提出するか,すでに過去6ケ月以内に診断書が提
100
表
栗 田
不整脈に起因する失神例の運転免許取得に関す
る診断書作成と適性検査施行の合同検討委員会
のステートメント(平成15年)
1) ICD 新規植込み例では,植込み後6か月間が経
過し,頻拍に対する ICD の作動(抗頻拍ペーシン
グを含む),意識消失ともに生じていなければ「運
転を控えるべきとは言えない」旨の診断を 慮し
て良い.
ただし,一次予防 ICD 適応患者においては,
ICD 新規植込み後4週間が経過し ICD の作動,意
識消失ともに生じていなければ「運転を控えるべ
きとは言えない」旨の診断を 慮して良い.
2) ICD 植込み後に ICD の作動あるいは意識消失
を生じた症例においては,運転を控えるよう指導
し,その後12か月間の観察により頻拍に対する
ICD の作動(抗頻拍ペーシングを含む)も意識消
失もみられなければ「運転を控えるべきとは言え
ない」旨の診断を 慮して良い.
3) ICD 植込み後の患者においては,大型免許及び
第二種免許の適性はないと えられる.
4) ICD 換の前に「運転を控えるべきとは言えな
い」患者においては,ICD の再植込み(ジェネレ
ータ 換)後は術後1週間経過するまでを観察期
間とし,その間は運転を控えるよう指導(免許保
留)する.ただしリードの 換も行った際には,
換術後4週間を観察期間とし,その間は運転を
控えるよう指導(免許保留)する.
隆
志
万円以下の罰金が課せられる可能性がある.
ⅱ) 免許の拒否事由等とされている一定の病気等に
該当する者を的確に把握するための規定の整備
一定の病気等に該当する者を診断した医師による
任意の届出制度のことを指し,
「一定の病気等に該当
する者を診断した医師は,その者が免許を受けてい
ることを知ったときは, 安委員会にその診断の結
果を届け出ることができる」ことが記載された.こ
れはあくまで任意であり,義務ではない.ICD 患者
は法律を遵守した対応を行っていれば,もし,他の
非専門医師などから 安局に届け出がなされても,
何ら問題は生じない.通達された患者が正規の届け
出を行っていなかった場合,どのような対応がなさ
れるかについては不明である.
ⅲ) 免許を取り消された場合における当該免許の再
取得に関する負担を軽減するための規定
今回の法律の改訂(厳格化)に伴い,警察庁によ
り設けられた救済処置のひとつと えて良い.これ
までは運転休止期間中に免許の 新期限が来てしま
うと,免許が失効になる可能性が高く,失効になっ
た場合は免許証の再取得が困難で,取得に関わる時
間や費用の負担も大きかった.しかし,一定の病気
に該当する者であることを理由に免許を取り消され
た日から起算して3年以内に運転許可の条件をクリ
表
免許取得,または免許
る質問票
新時に回答を求められ
1. 過去5年以内において,病気(病気の治療に伴
う症状を含む.)を原因として,又は原因は明らか
でないが,意識を失ったことがある.
2. 過去5年以内において,病気を原因として,身
体の全部又は一部が,一時的に思い通りに動かせ
なくなったことがある.
3. 過去5年以内において,十 な睡眠時間を取っ
ているにもかかわらず,日中,活動している最中
に眠り込んでしまった回数が週3回以上となった
ことがある.
4. 過去1年以内において,次のいずれかの状態に
該当したことがある.
・飲酒を繰り返し,絶えず体にアルコールが入って
いる状態を3日以上続けたことが3回以上ある.
・病気の治療のため,医師から飲酒をやめるよう助
言を受けているにもかかわらず,飲酒したことが
3回以上ある.
5. 病気を理由として,医師から,運転免許の取得
又は運転を控えるよう助言を受けている.
www.pref.shizuoka.jp /police/anzen /jiko /.../
jidousyauntenshobatu.pdf
アすれば,技能試験及び学科試験が免除される.つ
まり,実技・筆記試験などは不要で,視力検査のみ
で再取得可能となった.再取得へのハードルは明ら
かに低くなり,自己申告を正確(正直)に行う環境
を整えようとする姿勢を示したものである.
3. 法律の改定を受けて医療従事者が対応すべき内
容
以上,今回の法律改定について概説した.法律が
厳格化された感は否めないが,これまで法律を遵守
してきたものにとって,ほとんど影響はない改訂内
容である.従来行われてきた手続きをより厳格に適
応しようとする一方で,免許失効時の救済処置も設
けられており,筆者は比較的バランスのとれた改訂
であると える.ICD・CRT-D の管理を担当する医
療従事者が内容を熟知せず,法律の厳格化ばかりに
とらわれて,必要な患者に ICD・CRT-D の適応を見
送るような行為だけは避けるようにせねばならな
い.
4. 車の運転制限期間設定の根拠について
法律は主にそれに違反した場合の罰則(量刑など)
を決めたものであり,細かい車の運転制限期間など
については政令あるいは警察庁通達によって定めら
出されていれば問題なく 新できる.ただし,これ
れている.警察庁の通達や不整脈学会から発表され
対して虚偽の申告をすると,1年以下の懲役又は30
たステートメント(表1)は両者間での協議を経て
自動車運転免許と植込み型除細動器
101
決定されたものであり,その内容については医療従
おいて示された ICD の適切作動率は植え込み3年
事者の意見が反映されている.ここではステートメ
後に約20%であり,この試験結果は我が国と同等で
ントに記載されている運転期間制限の妥当性(特に
ある .しかし,この試験では対象患者に対して電気
1次予防適応と
生理学的検査の施行は行われていないこと,VF に
対してのみの治療が設定(すなわち VT に対する作
換術後)ついて 察する.
①1次予防を目的とした場合の車の運転制限期間
ステートメント作成については,多少なりとも科
動が除外)されていることを加味してその作動率を
学的根拠に依拠して運転制限の期間設定を行うこと
察する必要がある.先述のごとく,よりハイリス
が求められる.そこで,我が国の ICD 患者の作動状
況について2006年に日本循環器学会の不整脈非薬物
クの患者を対象とし,VT にまで治療ゾーンを拡大
した我が国の作動率が DEFINITE のそれと同等で
治療ガイドライン作成班が我が国の代表的施設を対
あったということは,少なくとも海外に比して我が
象として調査した(以下ガイドラインアンケート)
.
国の患者の作動率は同等か,またはより低いと え
ICD 植込み患者2470例が対象となり,その患者背景
と ICD の作動状況について後ろ向き調査が行なわ
られる.
れた.対象患者の22.8%に1次予防を目的とした
りも運転制限期間の設定を緩和すべきであることは
ICD 植込みが行われたが,そのうち,58.9%の患者
で電気生理学的検査により VT または VF が誘発
明らかであるが,どの程度の設定が妥当なのかが問
されていた.つまり,この研究においては1次予防
なかった場合のその後の2年間の適切作動回避率を
を目的とした場合であっても,よりハイリスクの患
見たものである.1次予防の場合もこれまでの2次
者が登録されたと えられる.図1は VT と VF に
予防と同様に植え込み後の非作動期間が長いほど適
対する ICD 作動率を見た結果であるが,1次予防を
切作動の可能性が低くなっている.例えば運転休止
目的として ICD を適応した患者におけるその適確
期間を全く設けない場合(
「全例」の項)の作動確回
作動率
(VT に対する抗頻拍ペーシング,ショック作
避率は82.3%,1ケ月とした場合のそれは84.7%で
動を含む)は3年で約20%であり,2次予防のそれ
あり,表右下の2次予防における6ケ月間作動がな
の約 1/2に留まった.
かった場合(即ち,現在の運転許可基準を満たす場
上記の結果より,1次予防においては2次予防よ
題となる.表3は ICD 植え込み後,○○ケ月作動が
北米を中心として行われた MADIT-Ⅱ試験(心筋
合)の作動回避率(80.0%)よりも明らかに良好で
梗塞後患者で左室駆出率が30%以下の患者を登録
ある.従来のステートメントにおいては作動回避率
し,ICD 群と通常治療群との予後を比較した前向き
試験)における ICD の適切作動が報告されており .
83-86%が6ケ月間の運転休止の根拠となっており,
59%の患者に VT に対する抗頻拍ペーシングがプ
して大差ない.従って,社会生活へ復帰した後に非
ログラムされ,植え込み3年後の作動率は約35%で
作動期間4週間を満たせば十 に高い安全性が期待
あった.また,非虚血性心筋症のみを対象として
でき,かつ患者の社会的負担も認容できる範囲のも
ICD の1次予防効果を観察した DEFINTE 試験に
のと える.本ステートメントでは1次予防的 ICD
ガイドラインアンケートの2次予防患者のそれに比
適応患者においては社会生活へ復帰後,4週間の運
表
植込み後,○○か月適切作動がなければ,その
後2年間,何%が作動を回避できるか?
全例
82.3%
N=558
66.0%
2次予防
N=1,729
1次予防
図
我が国において示された1次予防と2次予防
適応患者における ICD の作動回避曲線
1次予防を目的として ICD を適応した患者
におけるその適確作動率(VT に対する抗頻
拍ペーシング,ショック作動を含む)は3年
で約20%であり,2次予防のそれの約 1/2に
留まった.
1カ月 2カ月 3カ月 6カ月
作動なし 作動なし 作動なし 作動なし
84.7%
N=516
71.5%
N=1,465
86.2%
N=506
74.1%
N=1,397
87.8%
N=496
76.2%
N=1,338
89.1%
N=469
80.0%
N=1,224
我が国の患者において ICD 植え込み後,○○ケ月作動が
なかった場合のその後の2年間の適切作動回避率を示
す.1次予防の場合も2次予防と同様に植え込み後の非
作動期間が長いほど適切作動の可能性が低くなってい
る.例えば運転休止期間を全く設けない場合(
「全例」の
項)の作動確回避率は82.3%,1ケ月とした場合のそれ
は84.7%である.
102
栗 田
転制限を推奨している.
隆
志
換はその後の作動率に何ら影響を及ぼさないことが
② ICD 本体またはリード
換後に強化される車の
運転の制限について
明らかになった .
換後の期間設定についても可能な限りデータに
この結果に依拠して,ICD 本体のみの 換で,か
つ 換の前,既に運転を控えるべきとは言えないと
依拠して 察がなされている.国立循環器病研究セ
いう条件を満たしている患者においては原則として
ンターでの調査によると,リードと ICD 本体双方の
運転休止は必要ないと
換を行った11例において, 換後6ケ月間のリー
ICD 本体
えられる.しかしながら
換後に設定が変
される場合もあるた
ドトラブルによる不適切作動の発生は認めていな
め, 換後の自動車運転制限は社会生活を初めて1
い.さらに,ICD 本体のみの 換を行った128症例の
週間の運転制限が妥当であることが決定された.
内, 換前の6ケ月間に作動を認めなかった患者121
名の
一方,リードと本体双方の 換を行った患者につ
換後の作動回避率は6ケ月間で94.5%と高値
いては国立循環器病研究センターでの調査で明らか
であった
(図2) .この作動率は前回のステートメン
になったようにリード先端の移動が生じない限り作
トで勘案した初回植え込み以降の作動状況(ICD 植
動のリスクを高めるとは えにくい.リード先端の
込み後6か月間 ICD 作動がみられなければ以後83-
移動について調査した幾つかの報告によると,ほと
86%において ICD の作動がない)に比べてより高い
んどが手術後早期(4週以内)に生じており ,リー
数値である.さらに,ICD 本体 換そのものが ICD
の作動率を高める可能性について検討するため,
ドの状況の安定性が確認できる 換術後4週間の運
換術を行った患者全例においてその前後での作動率
5. 車運転の許可(大型免許及び第二種免許を除く)
を比較した.表4にその結果を示すが,ICD の作動
率について 換前後で全く差が認められず,ICD
に関する実際の手順
転制限期間で十 と えられる.
注:この項で述べる「ICD の作動」とは ICD の頻拍
に対する作動を指し,不適切作動や抗頻拍ペーシン
グなども含む.
① ICD 植込み後,全く発作がなく,免許の 新が6
ケ月以上先の場合(図3)
主治医は植え込みが終了した時点で患者に車の運
転を控えるように口頭で伝える.この場合, 安局
に届け出る必要はないが,カルテに上記の内容を指
示したことを必ず記載する.
6ケ月後
(1次予防の場合は1ケ月後)
,ICD の作
動がないことが確認された場合,運転を控えるべき
とは言えない旨の診断書(原則として6ケ月間有効)
図
表
ジ
ェ
ネ
レ
ー
タ
ー
換
6
ケ
月
前
ICD 本体 換前の6ケ月間に作動を認めな
かった患者121名の 換後の作動回避率は6
ケ月間で94.3%と高値であり, 換後に作動
が増える事実は確認されなかった.
ジェネレーター 換前6ケ月と
に ICD が作動する確率
ジェネレーター
を作成する.患者は診断書を 安局に提出し,同局
から運転が許可される.
さらに6ケ月後,ICD の作動がないことが確認さ
換後6ケ月間
換6ケ月後
あり
なし
計
あり
3
5
8
なし
4
101
105
P=1.0
M cNemar
ジェネレーター 換6ケ月前に作動があった患者 8/113
ジェネレーター 換6ケ月前に作動があった患者 7/113
計
7
106
113
ジェネレーター 換前6ケ月と 換後6ケ月間に ICD
が作動する確率に有意差はない,すなわち,ジェネレー
ター 換というイベントは ICD の作動確率に影響しな
い.
図
ICD 植え込み後作動がなく,車の運転が許可
される場合
自動車運転免許と植込み型除細動器
れれば,再度同様の診断書を作成し,
安局の許可
103
合は,残念ながらいったんは失効となる.ただし,
をもらう
(6ケ月毎の診断書の再提出を必須とせず,
今回定められた救済処置により,失効後3年以内に
口頭での確認としている都道府県もある)
.
運転許可基準を満たせば簡単な検査(視力検査)の
② ICD 植込み後,6ケ月(1次予防では1ケ月)以
みで再取得が可能となっている.
内,または作動後1年以内に免許の 新時期がくる
6. 今後の課題
場合(図4)
現在,問題となっているのは,いかなる ICD 作動
であっても一律に12ケ月の運転休止期間が求められ
免許 新期日までに ICD 植え込みを受けたこと,
現時点で運転許可を獲得するまでの期間が充足して
る点である.たとえば心房細動に対してたった1回
いないことを 安局に届け出る.免許はいったん停
でも不適切な抗頻拍ペーシングが行われれば,12ケ
止(場合によっては取り消し)となるが,要求され
月の運転休止を患者に宣告せねばならない.心情的
た期間(1,6,または12ケ月間)に ICD の作動が
には厳しすぎる制限と思われるが,現在の所,この
ないことが確認されれば,医師の診断書を提出する.
制約を打破する科学的根拠を我々は有していない.
免許停止の場合は免許の 新,取り消しの場合は再
本 年,我 が 国 の ICD 患 者 を 前 向 き に 登 録 し た
取得となる.いずれの場合も学科や技能試験は免除
される.
NIPPON storm 試験がフォローアップ期間を終了
した.本試験の結果を応用して,ICD 患者に対して
3) ICD 作動があっても運転が可能な場合
適正な運転制限がより高いレベルの科学的な根拠を
ICD 作動があった場合はその後12ケ月間,車の運
転はできない. 安局への届け出は不要であるが,
もって決定されると期待される
文
カルテに上記内容を患者に指示したことを記載す
る.12ケ月以上にわたって ICD の作動がない場合は
診断書を作成し, 安局に届け出る
(図5)
.前述の
ごとく,作動後12ケ月以内に免許 新時期が来る場
.
献
1. 不整脈に起因する失神例の運転免許取得に関する診断書
作成と適性検査施行の合同検討委員会,日本心臓ペーシン
グ・電気生理学会会頭:三井利夫他,不整脈に起因する失神
例の運転免許取得に関する診断書作成と適性検査施行の合
同検討委員会ステートメント,不整脈
2003,Vol 19,502
-512
2. 不整脈に起因する失神例の運転免許取得に関する診断
書作成と適性検査施行の合同検討委員会ステートメント」
改訂のための補遺.日本不整脈学会.jhrs.or.jp/pdf/com
icd201006 01.pdf
3. 過失運転致死傷罪
自動車運転死傷処罰法(新法)刑法
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