地元企業お仕事100選 (株式会社 豊川設計事務所) 開催日:平成27年4月18日(土) 場 所:若者ワークプラザ北九州・セミナールーム(小倉北区) 講演者:豊川設計事務所 常務取締役 豊川仁喜 氏 下記は、当日お話していただいた概要をまとめたものです。 1 豊川設計事務所の概要 弊社は創業約40年を迎える建築設計を主な業務として行う会社です。事業内容は、 設計監理、ランドスケープデザイン、都市計画、再開発・地区整備、環境デザイン、建 築マネジメント、改修等です。近年は建物を設計する上で多様なニーズに応えるべく、 コンサルタント業務や、土地の紹介等も同時に行い、ご依頼を頂くお施主様(お客様) の夢や、夢を実現するための「舞台」を共に創造するため、日々切磋琢磨しております。 弊社は元々、北九州市が誕生する前の門司港で建設会社を営んでおりました。当時は 今も現存するレンガ倉庫等の建設に携わっていました。その後、業態を変えて現在の建 築設計事務所となりました。現社長で3代目の建築家になります。実際の業務を説明す る前に、「建築家」は何をする人で「建築設計事務所」はどんな仕事をするのかを説明 させていただきます。 2 建築家の仕事(JIA 日本建築家協会ホームページより抜粋し紹介) ○建築家は建物のお医者さん 「素敵な建物を建てたい」 建築家の仕事は、お施主様からの依頼でスタートします。 まず、建物を使う方、住む方の希望や生活習慣、建設地の状況、環境などをしっかりチ ェックして設計に入ります。それぞれの診断結果に合わせて、最適な建物のカルテ(設 計図)をつくるのです。 ○建築家は建物の財務マン こうしたい、ああしたいと色々希望はあっても建物には、あらかじめ予算があるもの。 建設会社から出された見積書をしっかりチェックし、建物そのものの費用から、実際に 使用することでかかる費用の経済性の問題も考えます。 ○建築家は建物のコンサルタント 建物を建てるうえで気になるのが様々な法律です。また、法律だけでは解決できない ご近所等との問題もあります。これらの問題に、お施主様の身になって考えます。 ○建築家は建物の演出家 建物への夢や希望をどんな形にするか、いかにオリジナリティのある空間を創造する かを、照明の位置や階段などの演出により、建物という舞台で生まれるドラマを演出し ます。 ○建築家は建物づくりのキャプテン 建築家にとって、現場に行き、設計図通りに工事がおこなわれているかを監理するの も大切な仕事です。 ○建築家は一生のパートナー 私達は一生のパートナーとして、お施主様との信頼関係を作っています。祖父の代に 建てたお施主様のご子息様のアフターケアもさせていただいております。人の住む環境 の変化に応じて効率を考え、材料、工法を変えるなどより良い提案を行います。 ○建築家は環境価値の創造者 建築家は、地域社会のよりよい環境づくりを目指し、お施主様はもちろん、市民や行 政などにも働きかけます。街全体との調和、自然との調和も大切なテーマです。 3 建物が完成するまでの流れ それでは、建物が完成するまでの流れを、弊社で実際に手がけた事例を元にお話しし ます。住宅機器会社様より本社を建て替えたいとのご依頼を受けた案件です。 お施主様は、約20年前に弊社が手がけた公共建築物の落成式に地域利用者として参 加されました。「地域の方々の集会や、催し物を開催する場として親しまれる建物」を テーマに設計した建物を気に入っていただき、「いつか自分の会社を建て替える時はこ の設計者に頼もう」と思われたそうです。そして月日は流れ、今回の御依頼となりまし た。 ①企画 新本社ビルを計画する上で、現状での不満な点や、ご希望、ご要望等をヒアリングす るところから始めました。この時点で、どれだけお施主様の心を読み取れるかが今後の 計画で重要なポイントとなります。 ②基本計画 様々な話を基に、平面プランを構築します。そして打合せを重ね意見交換し、それを 元に修正・提案を繰り返します。 ③基本設計 大まかなプラン、建物の規模、要望等がまとまったら、 次は立面や断面、構造体、仕上げ材、電気・機械設備を 決めていきます。基本方針がまとまったら「基本計画書」 を作成し、そのプランを元に模型等を制作することで、 設計のイメージをお伝えします。 ④実施設計 基本設計が終わったら、更に具体的な詳細設計を進めていきます。建物の軸となる構 造体で、実際にどのくらいのサイズの鉄骨を使用するかの検討、付随する設備機器の配 管や電線をどう配置するか等。そして建物のデザインをより具体的に決めていきます。 ⑤工事監理 実施設計が終了すると、実際に工事をする建設会社との入念な打合せをして工事を開 始します。実施設計までの仕事は、簡単に説明するとプラモデルの「組み立て説明書」 を作成するようなものだとお考えください。では、その通りに組み立てれば誰でも同じ ものを作れるのでは?と思われるかもしれませんが、そこは「人の手」でつくるものな のでそういうわけにもいきません。自分が設計したものを監理することがとても重要に なってきます。 ⑥地鎮祭 みなさんは地鎮祭がなぜ行われるのか知っていますか?日本には八百万の神様がい ます。その神様に、地面をキズつけること、建物を建ることを許していただき、また、 工事中の安全祈願を込める神事です。神事だけではなく仏事もあります。この地鎮祭の 後、工事が始まっていきます。 ⑦工事着工 設計図をもとに建設現場の地面に建物の中心線を描き、その線に沿って建物の基礎を 造っていきます。その後、建物の骨格となる柱、梁を組み立てます。そして外壁を貼っ ていき、内装工事へと進んでいきます。それぞれの工程の合間に電気配線や水道の配管 等も同時に施工していきます。工事中は定期的にお施主様と会議を設けて、進捗状況や 細かい要望の打合せを念入りに行い、そして完成を迎えます。 4 建築設計のおもな業種 まず前提として、建築設計に関する仕事は、いわゆる営業職、技術職というものはあ ありますが、細かく分類されてはいません。なぜなら、建築設計においては様々な業務 をする必要があるからです。そのため必ずしも完全に分けている訳ではありませんが、 弊社では建築設計の仕事を大まかに分けると以下の仕事になると考えます。 ○営業職 これは、通常の営業職のイメージとは全く異るかもしれません。例えば、広告やチラ シ等で不特定多数に行う営業活動や、電話をかけて営業するなどの仕事は行いません。 建築設計の仕事とは、評判が次の仕事に直結します。例えば、「あの建物を建てたのは 豊川設計事務所らしいよ」との評判や「○○さんから話を聞いたんだけど・・・」と噂 を聞いて相談をしてくれる方もいます。 つまり我々の仕事は、仕事の過程や結果が全て評判になり、それこそが最大の営業活 動なのです。顧客の様々な要望にしっかりと対応することで、顧客の信頼を獲得するこ とができます。 創業者の教えで、「ふすまが外れたから来て、というように声がかかるようになりな さい。ささいなことでもお願いされるような信頼関係をつくりなさい」との社訓があり ます。顧客から多くのことを相談される、何でも相談されることが大事です。これは、 私を含めて社員全員が日々実践しています。 ○技術職 相談に対応するには、専門的な知識を持ち合わせていないといけません。そのため、 入社したら先輩のお手伝いから始まります。 一昔前は手書き図面でしたが、今は CAD(キャド)と呼ばれるパソコンでの作画が ほとんどです。実施設計をすると建設工事がスタートします。工事の中では設計段階で 気付かなかったことが判明するので、お施主様と相談しながら、施工者に「指揮」をと る役目でもあります。 さらに、計画通りにしっかりと進捗しているのかを監理しなければいけません。建物 は人の命に関わっています。監理をしっかりしないと建物が倒壊する恐れもあり、それ は命が失われることに直結します。我々の仕事は細心の注意を払って建物が完成するま で見て行くことが重要です。 ○コンサルタント職 多くのお施主様が「新しい家が欲しい」、 「自社ビルを建てたい」、 「リフォームしたい」 等を考えた時に、まず何から始めたら良いかを迷われる方が多いです。そんな時に専門 知識を用いて的確なアドバイスをして、夢の実現までサポートするのがコンサルタント の仕事です。よって、営業能力と技術能力が同時に求められます。 ○事務職 一般的に地味であまり仕事がないようなイメージですが、営業職や技術職が仕事する 上で非常に重要な存在です。来客対応や電話対応、お茶出し、書類作成、雑用などをし てくれる事務職は業務を円滑に進める為にも大切な役割です。社員は事務職とコミュニ ケーションをしっかりとることが大事です。 5 建築設計の魅力、やりがい等 建築設計の最大の魅力は、人の夢を叶え、未来を創り、そして形として残せることだ と思います。お施主様との打合せや建設現場での調整は、想像を超える仕事量のように 感じるかもしれませんが、この職種ほど異業種の方々と密に触れ合え、専門分野以外の 業種を知ることができる仕事はないのではないかと感じます。 どんな職業でも活動する場(建物)が必要です。その空間をつくるのですから非常に 大きな責任が課せられます。ですから、御依頼を頂いた施主に報恩感謝の気持ちで取り 組み、その結果喜んでもらえた時に、なんともいえない感動があります。 6 弊社で求められるスキル ○事務職 ワード、エクセルを最低限使える必要がありますが、資格等は気にしません。様々な 書類の作成や入力作業が多いので、整理・書類管理能力は必要となります。 建築設計に対する専門性は、業務を行っていけば、自然と理解できてくると思います ので、専門的知識を予め持っておく必要はないと思います。 また、電話対応や来客対応等がありますので、人当たりが良い方が望ましいです。 ○技術職 建築士の資格が必要です。ただし、現時点では持っていなくても、この仕事をずっと やっていきたいと夢を持つ方には、会社が支援をします(資格学校や受験など)。何事 にも一生懸命取り組む姿勢が一番大事です。 7 就職活動のアドバイス 企業によって採用基準は異なりますが、何かしらの資格保有は評価できます。なぜな ら、「何かに努力し、成し遂げきる可能性がある人」と、判断できるからです。新入社 員は、最初は先輩より仕事ができなくて当然です。採用側としては、その人の将来的な 「伸びしろ」があるかどうかを見極めます。 就職活動をする上で大事なことは、給料や休みも大切ですが、どんな会社なのかを事 前に調べて、そこでの自分の将来が描けるかどうかです。 どんな職に就こうと、 「仕事」は、 「事に仕える」ことです。人の為に何かをして、そ の対価として給料があります。就職した会社で自分が人の役に立てるかどうかは、実際 に働いてみないと理解できないことかもしれませんが、明確な目標、理想とするゴール 地点を模索することで、就職活動に力がはいるのではないかと思います。
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