最終刈取り時期がオーチヤードグラスの越冬性 b よび翌年の収量に

2
1
:167-169(1987)
北海道草地研究会報
最終刈取り時期がオーチヤードグラスの越冬性
b よび翌年の収量に及ぼす影響
増山
勇・嶋田
徹(帯広畜産大学)
緒 日
十勝地方で栽培されるオーチヤードグラスで秋の最終刈取り時期に危険期が存在するか否かについて検
討した。乙のととについてはすでに帰山
1
),平島 2〉,坂本・奥村 3〉,川端 4
)などの報告があり,危険期の
存在が認められている。しかし,その危険期は試験地により,いくぶん異なっている。すなわち,帰山
0月上旬,坂本・奥村(天北農試)は 9月
(畑作部)は 9月中・下旬,平島(根釧農試)は 9月中旬から 1
0月下旬,川端(北農試)は 9月下旬から 1
0月上旬が危険期であったと報告している。
下旬から 1
また,
川端は品種によっても危険期はいくぶん異なることを述べている。
ただ,
ζ れらの試験は,共通して刈取り時期の影響を主として翌春の
1番草収量でみているので,刈取
りの影響が,たんに秋の分げつ生産に影響した結果なのか,あるいは,秋の分げつ生産だけで、なく越冬性
を通しても影響したのか,解析できない面がある。そこで,本試験では越冬性についても解析できるよう
l
乙した。
材料および方法
2日K播種,造成した 1年目の草地を供試し
オーチヤードグラス品種キタミドリを用いて 1985年 5月 2
た。畦長 8
.
5m ,畦問 0
.
5m の条播とし, 8月 2日に掃除刈りをした。最終刈取り時期として 9月 3日か
ら1
1月 2日まで 1
0日間隔に 7回の刈取り時期を設けた。また,厳寒期 K試験区の半分を除雪し,除雪区
とし,除雪区と積雪区の 2通りの越冬環境を用意した。 1区 4
.
2
5n
t, 3反復であった。 TNC含有率分析
1月 20日と越冬後の 4月 1
0日に行った。 TNC含有率分析には,分
のためのサンプリングは,越冬前の 1
mを 90Cで 1時間,ついで 70Cで 48時間乾燥し,微粉砕したものを 2
0
01
!
l
f
J用いた。
げつの基部約 7c
0
0
α
ーアミラーゼを用いて抽出した液を除蛋白し,加水分解後中和, Somogy-Nelson法で測定して,グル
コ ス当量で示し, TNC含有率とした。圃場における分げつ生存率は観察による 5段階スコア(無二 4,
枯死二 o
)により評価し,完全枯死に対する生存積算比で表した。
結果および考察
2
.
4c
mから 1
1
.2
c
mまでしだいに低くなった。また,越
越冬前の草丈は,刈取り時期の遅れにともない 4
冬前の分げつの基部約 7c
mの乾物率は, 10月中旬刈取りが最も低い V字曲線となった。
越冬前 I
乙冠部凍結法で測定した分げつ生存率は, 1
0月中旬刈取りが最も低い値となる V字曲線となっ
た(図]:)0 ・越冬後の圃場における除雪区で、の分げつ生存率も同様であった O. この乙
ιから除雪区におけ
る越冬性には越冬前の耐凍性が重要であった乙とがうかがわれた。越冬後の積雪区の分げつ生存率は全般
に高く,刈取り時期の影響は認められなかった。また,積雪区では雪腐病の発生が認められたが,分げつ
を枯死させるほどで、はなかった。越冬前の TNC含有率は 1
0月中旬刈取りが最も低くなる V字曲線となっ
hu
円
円
i
-
c
i
. 2
1
rassl
. S
J
. Hokkaido G
1
0
0
1
6
7- 1
6
9(1987)
5
0
-積雪区
T N C濃 度 ( % )
分げつ生存率(%)
8
0
6
0
4
0
2
0
ロ除雪区
4
5
o越冬前
4
0
3
5
3
0
。
2
5
号
/
3 1
310~
~~/3
32
%
311~
72
1
3 2
.L
0
/
r
31
V
/
3
3 1L~
"
/
2
1
32
1
3 2
.L
.L
図 1 分げつ生存率および TNC濃度と最終刈取り時期との関係
た。乙れと越冬後の TNC含有率との聞には,除雪区で 0
.
8
3
3へ 積 雪 区 で 0
.
9
0
6料 の 有 意 な 相 関 係 数 が
えられた。
翌年の再生草における 1番草の出穂期は,積雪区にくらべ除雪区での遅れが認められたが,両区とも刈
取り時期の影響は顕著で、はなかった。また,
1番草の草丈は,積雪区が除雪区よりも明らかに高くなって
0月中旬刈取りが最も低くなったが,積雪区では刈取り時期の影響は顕著で、はなかった。
いた。除雪区では 1
翌春の 1番草収量では,積雪区が除雪区より多収であった。また除雪区では 1
0月中旬刈取りが最も減収
したのに対し,積雪区では 9月下旬刈取りが最も減収した(図 2)0 2番草収量では,積雪区と除雪区との
0月中旬刈取りが最低となった。
収量の差はなくなったが,除雪区では刈取り時期の影響がまだ認められ 1
6
6
-積雪区
4
/ノ
、
_
.
/
3
2
~一~
% 13
2番草収量(匂/zm)
1番草収量(匂/zm)
5
1
0
/
11/
2
3 /
3 1
3 /
2
3 2
ロ除雪区
5
4
3
2
~日之コフ
%
1
0
/
1
1
/
3 /2
3 /3 1
1
3 2
3 2
. 2番草収量と最終刈取り時期との関係
図2 1
乙ζ で,積雪区と除雪区との危険期が異なっていたことは重要である。すなわち,積雪区では危険期は
9月下旬であるのに,除雪区では 1
0月中旬であった。 積雪区での危険期が 9月下旬となった理由は,乙
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北海道草地研究会報
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の時期の刈取りが秋の分げつ生産をもっとも抑制した結果と考えられる。
)
り時期との関係から推察される(図 3。
ζ の乙とは出穂茎数と最終刈取
積雪区では, 9月上旬から 1
0月上旬までの聞に刈取りがなされ
ると,秋の分げつ生産が阻害され,翌年の出穂、茎数は
お0
0月中旬以降の刈取り
著しく減少した。これに対し, 1
出 穂 茎 数 ( 本 /2m)
では,分げつ生産への影響は小さくなるので,翌年の
出穂茎数は著しく多くなった。一万,除雪区では多く
の分げつが冬枯れで、枯死するので,刈取り時期の分げ
つ生産に対する影響はかくされたものと考えられる。
したがって,冬枯れの少ない積雪区のような越冬条
2
4
0
2
0
0
1
6
0
1
2
0
件下では,分げつ生産を通しての刈取り時期の影響が
8
0
現れ, 9月下旬が危険期となり,冬枯れの多い除雪区
4
0
。
のような条件下では,秋の TNCの蓄積量や耐凍性に
およぼす刈取り時期の影響から, 1
0月中旬が危険期に
%
なるものと考えられる。そして,年次による冬枯れの
3 1O~
~v/3
1
3 2
3 11~
~~/2
1
3 2
図 3 出穂茎数と最終刈取り時期との関係
発生程度に応じて,乙の時期内で危険期が変動する可
能性があると思われる。
以上の乙とから,本地方におけるオーチヤードグラスの秋の刈取り危険期は 9月下旬から 1
0月中旬で
あると推察される。既往の報告では,試験地により危険期がいくぶん異なっていたが,それは試験地によ
り冬枯れ程度がそれぞれ異なった結果であると考えられる。しかし,本結果は 1年だけの結果であり,ま
た刈取り時期が遅くなるほど生産される分げつが少なくなるという報告 5) もあるので,さらに試験を継続し
て上記の結果を検討したい。
要
約
本地方におけるオーチヤードグラスの秋の刈取り危険期は 9月下旬から 1
0月中旬である乙とがわかった。
すなわち,冬枯れの発生が少ないような越冬条件下では 9月下旬が危険期となり,冬枯れの発生が多いよ
0月中旬が危険期になるものと考えられる。
うな条件下では 1
引用文献
1
) 帰山幸夫・八幡林芳・名久井
969) オーチヤードグラスの最終刈取時期に関する試験成績
忠 (1
書.北農試畑作部家畜導入研究室
2
) 平島利昭(1978) 道立農試報告
1-9.
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3
) 坂本宣崇・奥村純一 (1973) 道立農試集報
4
) 川端習太郎(1972) 北草研報
28 :2
2-3
2
.
6:1
7-2
1
.
5
) 近 藤 秀 雄 (1
2(
1
) :1
0-1
8
.
975) 北農 4
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