第1部 第2部 新実 徳英 青島 広志 谷川 雁「白いうた 青いうた」より 「少女の季節」より ぶどう摘み 元旦の夜 ぼくという名のひとり 三月蝶々 十四歳 夏休み 火の粉 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ 線香花火(初演) しらかば 銀杏 なぎさ道 クリスマス 火の山の子守歌 ☆ ☆ ☆ 萩原 英彦 立原 道造「暁と夕の詩」より 眠りの誘い やがて秋 ☆ ☆ ☆ 立原 道造「風のうたった歌」より そのⅠ そのⅡ そのⅢ 或る風に寄せて 休憩 2015.7.9 Sumida Triphony s-hall Photo by Y.Morimiya 現代日本歌曲の魅力を再構築する声楽家「森宮朱美」 現代日本歌曲の魅力を積極的に見出し、新たな光りで蘇らせる声楽家・森宮朱美さん。彼女 の特筆すべき点は、まっすぐさと繊細さの両方を兼ね備えた 声 。その響きに触れるたびに 「 『白いうた 青いうた』は、 まず私が旋律を作り、 それから詩人の谷川雁さんが詞を後付けする、 という順序で作られた計 53 曲の歌集です。私は日本語のイントネーションや構造にとらわれ 私は日本の原風景に想いを馳せ、静かな勇気が湧いてきます。 ないスックと立った旋律をつくりたかった。 (中略)美しく、奥深い抒情詩が、まるで曲より 彼女は 1998 年に現代日本歌曲のソロリサイタルを開始しました。2 年に 1 度の開催を目標 先に作られたかのようにピタリとはまっているのです。 (中略)順序が逆だからこそ学べたこと、 に今回で 9 度目となります。その都度違った曲を選び、トータル 150 曲近くもの歌曲を歌い続 そのような場を作りたいと思ったのでした。 」 (出典:新実徳英『うたの不思議』音楽之友社、 けてきました。2009 年からはサブタイトルを決めて統一的な選曲を行い、時代性を反映した 2009 年、2 頁) 表現を追求しています。 前回の 2013 年に開催された「空が凝視(み)ている」では、空にちなんだ歌曲を選曲。畑 作曲家と詩人がコラボレーション(協同作業)を行い、 曲づくりの相乗効果が見事に「カタチ」 中良輔作曲の「八木重吉による五つの歌」 、小林秀雄作曲の「空」 「胡蝶花に寄せて」 「日記帳」 、 となったのがこの歌曲です。各曲の雰囲気はバラエティーに富みつつも親しみやすさがダイレ 木下牧子作曲の「秋の瞳」 。 「空」をテーマにした楽曲同士を聴き較べることのできる味わい深 クトに伝わります。 い機会になりました。 続いて萩原英彦(1933-2001)が作曲した「暁と夕の詩」 (立原道造:詞) 。萩原氏は多くの 畑中作曲の「五つの歌」では短い曲の中に内蔵された強い意志と自然な発声を目指した響き 合唱曲を作曲する傍らでフランスの楽曲を多数校訂し、そのせいか目眩く変化する色彩感やゆ が会場を包みました。小林作曲の3曲はそれぞれ雰囲気の違いが現れるものでした。色彩豊か らぎを歌曲から感じ取ることができます。とはいえ、これらの歌曲は安定したバランス感覚を な声の変化に身を委ねていると、日本語のリズム感が見事に反映されたメロディラインが立ち 併せ持っています。 現れ、淡さと強さの幅を存分に感じ取ることができました。木下作曲の「秋の瞳」では歯切れ 最後は青島広志(1955-)が作曲した歌曲で締めくくります。青島氏は司会者・本の執筆・ の良さが現れ天へ突き抜けるような音世界でした。音域が非常に広く、声楽家にとっては果敢 少女漫画研究家の側面を持ち、テレビなどで音楽のインタープリター(紹介者)として大活躍 な挑戦となりましたが、威風堂々たる声色が空と地平を満たしました。 しています。 「少女の季節」は作詞・作曲ともに青島氏であり、氏の乙女心な世界観がユーモ アンコール曲は武満徹の「小さな空」 。元々は 1962 年ラジオドラマ「ガン・キング」の主題 アに表現されています。ちなみに「少女の季節」の選曲は森宮さんが 2003 年に公演した「風 歌でしたが、後に混声合唱のために編曲されました。今回は特別にピアノ伴奏を務める柳井和 に色をぬりたいな」と呼応しており、その頃の彼女を知る方にとっては、彼女の歩みが存分に 泉さんが編曲を行い、オリジナリティ 伝わることでしょう。ラストの「風のうたった歌」 (立原道造:詞)は、前出の「暁と夕の詩」 れる独唱曲に生まれ変わりました。最後は、ディズニー のアニメ『アラジン』のバラード曲である「A Whole New World」 。会場が一体となる情熱的 と同じ立原氏の詞作品。子ども心の無垢さを持つ直向きでまっすぐな立原氏の詞世界に、彼女 な締めくくりを迎えました。 の優しく響き渡る声色が深く呼応することでしょう。 そして 2 年後の 2015 年夏、今回のテーマは「夕ぐれは風を待っている」 。皮膚感覚をまとっ 本プログラムのすべての歌曲に共通する特徴は、詩とメロディが絡み合った余韻のある日本 た風景が立ち現れる夕ぐれの黄昏時。そんな雰囲気を描写した珠玉の歌曲がセレクトされてい らしい音風景です。あなたの耳で、懐かしくも新しい《夕ぐれ時》を是非感じ取ってみてくだ ます。新実徳英作曲「白いうた 青いうた」 、萩原英彦作曲「暁と夕の詩」 、青島広志作曲「少 さい。 女の季節」 「風のうたった歌」 。 まずは作曲家の新実徳英(1947-)と詩人の谷川雁(1923-1995)の合作による歌曲「白い うた 青いうた」 。ほとんどの歌曲は詞を元に旋律が生まれますが、 「白いうた 青いうた」は 逆の順序でつくられているのが います。 聴きどころ 。新実氏は次のような興味深いコメントをして 環境音楽家・効果音デザイナー・京都精華大学教授 小松正史
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