IASB公開草案「制度改訂、縮小又は清算時の再測定/確定給付制度から

IASB公開草案「制度改訂、縮小又は清算時の再測定/確定給付制度からの返還の
利用可能性(IAS第19号及びIFRIC第14号の修正案)」に対する意見
平 成 27年 10月 19日
日本公認会計士協会
日本公認会計士協会は、国際会計基準審議会(IASB)の継続的な努力に敬意を表すと
ともに、公開草案「制度改訂、縮小又は清算時の再測定/確定給付制度からの返還の利
用可能性(IAS第19号及びIFRIC第14号の修正案)」に対するコメントの機会を歓迎する。
以下、公開草案の質問項目についてコメントする。
質問1―他の者が企業の同意なしに制度を解散したり制度加入者への給付に影響を
与えたりすることができる場合の会計処理
IASBは、企業が確定給付制度からの返還の利用可能性を判定する際に、次のことを要
求するようにIFRIC第14号を修正することを提案している。
(a) 企業が将来の返還に基づいて資産として認識する積立超過の金額には、他の者
(例えば、制度受託者)が企業の同意なしに他の目的で(例えば、制度加入者への
給付を増大させるために)使用できる金額を含めるべきではない。
(b) 企業は、他の者が企業の同意なしに制度を解散できる場合には、制度の段階的な
清算を資産の認識の正当化として仮定すべきではない。
(c) 他の者が年金契約を制度資産として購入するパワー又は制度加入者への給付を
変更せずに他の投資意思決定を行うパワーは、返還の利用可能性に影響を与えな
い。
この修正案に同意するか。賛成又は反対の理由は何か。
【コメント】
本公開草案の修正案の基本的な考え方には、以下の理由により、同意する。
・ 他の者の行動により、企業自らの利用可能な返還方法を通じて経済的便益を実現さ
せることが制限される状況下では、返還に対する無条件の権利を企業が有していると
は言えないと考えられる。したがって、他の者が企業の同意なしに他の目的で使用で
きる金額については、企業が将来の返還に基づいて資産として認識する積立超過の金
額に含めるべきではないと考える。
・ 年金契約を制度資産として購入する等、制度資産の将来の金額のみに関連する行動
は、企業が自らの利用可能な返還方法を通じて経済的便益を実現させることを制限す
るものではないことから、返還の利用可能性に影響させるべきではないと考える。
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しかしながら、修正案のうち、以下の2点については更なる明確化が必要と考える。
(1) 「パワー」という表現
本公開草案の IFRIC 第 14 号「IAS 第 19 号――確定給付資産の上限、最低積立要件
及びそれらの相互関係」
(以下「IFRIC 第 14 号」という。
)第 12A 項から第 12C 項ま
での記述に、「パワー」という表現を用いているが、その定義が含まれておらず、ま
た、必ずしも一貫した定義で利用されていないおそれもあると考えられる。このため、
「パワー」という表現をここで用いることは、その定義や解釈指針の適用において、
多様な解釈を生じさせるおそれがある。さらに、本公開草案では、「他の者」につい
ても定義していないため、「他の者」のどのような行動が、企業の返還の利用可能性
へ影響するか否かという点についても明確にすることが必要と考える。したがって、
本公開草案の IFRIC 第 14 号第 12A 項から第 12C 項までの記述について、他の者に「パ
ワー」があるのかどうかではなく、
現行の IFRIC 第 14 号第 12 項や本公開草案の IFRIC
第 14 号第 12A 項の冒頭の記述のように、返還に対する無条件の権利を企業が有する
ことに影響を与える他の者の行動を示す方が、本公開草案の明確化につながるものと
考える。
(2) 第 12C 項の記述
本公開草案の IFRIC 第 14 号第 12C 項では、
『他の者が企業の同意なしに制度資産の
将来の金額のみに関連する行動をとることができる場合』は、企業の返還に対する無
条件の権利に与える影響が異なるという指針が示されていると考えられる。しかしな
がら、『他の者が企業の同意なしに制度資産の将来の金額のみに関連する行動をとる
ことができる場合』は、本公開草案の IFRIC 第 14 号第 12C 項で明記されている二つ
のケースに限定されるものではないと考えられる。したがって、現在の提案では、解
釈指針の明瞭性を妨げるおそれがあるため、特定の事例のみを示すのではなく、原則
的な指針(つまり、『他の者が企業の同意なしに制度資産の将来の金額のみに関連す
る行動をとることができる場合』)を明示すべきであると考える。そして、現在記載
されている二つのケースは、「結論の根拠」において、解釈指針本文を理解するため
の補足的な事例として示すことが適切であると考える。
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質問2―企業が経済的な便益の利用可能性を判定する際に考慮すべき法的要求事項
IASBは、企業が返還及び将来掛金の減額の利用可能性を判定する際に、企業は実質的
に制定されている法的要求事項を、契約で合意された契約条件や推定的債務ととも
に、考慮に入れるべきである旨を確認するために、IFRIC第14号を修正することを提
案している。
この提案に同意するか。賛成又は反対の理由は何か。
【コメント】
本公開草案の提案に同意する。
推定的債務や実質的に制定されている法的要求事項を考慮することは、経済的便益の
利用可能性に係る実態をより適正に反映できるとともに、IAS 第 37 号「引当金、偶発
負債及び偶発資産」など他の IFRS の規定とも整合的と考える。
質問3―資産上限額と過去勤務費用又は清算損益との相互関係
IASBは、次のことを明確化するためにIAS第19号を修正することを提案している。
(a) 過去勤務費用又は清算損益は、IAS第19号の現行の要求事項に従って測定され純
損益に認識される。
(b) 資産上限額の影響の変動は、IAS第19号の第57項(d)(iii)で要求しているように、
その他の包括利益に認識される。これは更新後の積立超過(これ自体は過去勤務費
用又は清算損益の認識後に算定する)に基づく資産上限額の再評価の結果として行
う。
この提案に同意するか。賛成又は反対の理由は何か。
【コメント】
本公開草案の提案に同意する。
当該明確化により、資産上限額と過去勤務費用又は清算損益との相互関係に関する実
務上の懸念の低減に資すると考える。
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質問4―制度改訂、縮小又は清算が生じた場合の会計処理
IASBは、次のことを明示するためにIAS第19号を修正することを提案している。
(a) 確定給付負債(資産)の純額を、IAS第19号の第99項に従って再測定する際に、
(i) 再測定後の当期勤務費用及び利息純額は、再測定に用いた仮定を使用して算定
される。
(ii) 企業は、再測定後の利息純額を、再測定後の確定給付負債(資産)の純額に
基づいて算定する。
(b) 制度改訂、縮小又は清算の前の当報告期間における当期勤務費用及び利息純額
は、過去勤務費用や清算損益の影響は受けず、また、それらに含まれない。
この提案に同意するか。賛成又は反対の理由は何か。
【コメント】
本公開草案の修正案の基本的な考え方には同意する。ただし、以下の3点につき再検
討が必要と考える。
(1) 第99A項の必要性
本公開草案のIAS第19号「従業員給付」
(以下「IAS第19号」という。
)第99A項で述
べられている内容は、現行のIAS第19号第8項や本公開草案のIAS第19号第67A項及び
第123項において既に明らかと思われる。したがって、第99A項において再度繰り返す
必要性があるか否かについて、再検討いただきたい。
(2) 「通常は」
(ordinarily)の明確化
本公開草案のIAS第19号第67A項や第123項、第125項、第126項において、「通常は」
(ordinarily)という文言が使われている。この文言は「制度変更がない場合」を指
していると思われるが、文脈上、制度変更の有無とは関係なく「通常でない取扱い(す
なわち、例外的取扱い)
」がある可能性を示しているようにも見える。誤解を避ける
ためにも、
「制度変更がない場合」であることを明確化すべきである。
(3) BC64項の削除
「結論の根拠」はそもそも、原則やガイダンスではないと理解している。したがっ
て、今回の改正内容と整合しない現行のIAS第19号BC64項を存置させる必要はない。
適用上の誤解や多様性を無くすためにも、現行のIAS第19号BC64項は削除すべきであ
る。
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質問5―経過措置
IASBは、これらの修正を遡及適用すべきであると提案しているが、2011年のIAS第19
号の修正に関して与えられた免除と同様となる免除を設けることを提案している。当
該免除は、IAS第19号の範囲に含まれない資産(例えば、棚卸資産に含められた従業
員給付費用)の帳簿価額の修正に関するものである(IAS第19号の第173項(a)参照)。
この提案に同意するか。賛成又は反対の理由は何か。
【コメント】
本公開草案の提案に同意する。
新たな見積りが要求されていないことから(本公開草案 BC20 項参照)、実務にも配慮
されており、遡及適用による便益がコストを上回ると考える。また、2011 年の IAS 第
19 号の修正時と同じ免除規定が設けられることは、前回と整合した対応であり、実務
に対する配慮の観点から望ましいものと考える。
以
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上