3.薬用作物の国内生産拡大 漢方製剤等は医療現場におけるニーズが高まっており、その原料となる生薬の需要量は、今後と も増加が見込まれています。漢方製剤等の原料となる生薬の年間使用量は約 2.2 万トン(平成 22 年) 。このうち、国産は約 0.26 万トンと全体の約 12%であり、8 割以上を中国からの輸入に頼っ ています。 国内での生産増に向け、行政、漢方薬メーカー、生産者などによる取組が活発化しています。 漢方製剤等の国内生産金額は、平成 24(2012)年における国内医薬品全体の生産金額 6 兆 9,767 億円のうち、全体の2%に過ぎませんが、医療現場におけるニーズが高まっており、5年 間で 20%増加しています。一方で、原料となる生薬は中国からの輸入に依存しており、生薬の使 用量は、平成 22(2010)年度に約 2.2 万トン、そのうち 80.8%を中国産が占め、国産は 11.7% となっています。 日本漢方生薬製剤協会の調査によれば、平成 22(2010)年時点で、会員各社で取り扱われて いる生薬は 264 品目であり、このうち、使用量の多い上位 60 品目で全体の 92.4%を占めてい ます。 【図3-1】漢方製剤等の生産額の推移 (単位: 億円) 1,600 1,500 1,519 1,422 1,400 1,385 1,366 1,300 1,270 1,200 平成20年 平成21年 平成22年 平成23年 平成24年 厚生労働省の「薬事工業生産動態統計調査」より作成 【図3-2】薬用作物(生薬)の使用量と生産国 その他の国: 日本:2,577 トン 1,649 トン(7.5 %) (11.7 %) 中国: 17,780 トン(80.8 %) 日本漢方生薬製剤協会「原料生薬使用量等調査-平成 21 年度および 22 年度の使用量」より作成 漢方薬原料に多く用いられる「甘草」や「麻黄」が、近年中国において、輸出規制の対象となっ たほか、中国国内の需要増加などによる輸入価格の上昇等により今後の安定的な調達が困難にな る恐れがあります。薬用作物の国内需要は今後も増加すると見込まれていることから、薬用作物 の国産化を進める機運が高まっています。 薬用作物は、他の農作物のように一般的な取引市場が存在しないため、漢方薬メーカーと国内農 家が個別に契約を結び、栽培に取り組むのが一般的です。企業は生産農家を見つけられず、一方、 農家も収益に見合う需要度の高い生薬の選び方や生産方法、その販売先をどうするかが分からな いなどの問題があり、これまで国内での生産が進まない状況にありました。平成 25(2013)年 度より、農林水産省と厚生労働省、日本漢方生薬製剤協会の3者が薬用作物栽培に関する説明会 を全国8カ所で開催し、国内で漢方薬メーカーが使用している生薬リストを提示する等、漢方薬 の原料となる薬用作物の国内栽培化に向けた、農家と漢方薬メーカーのマッチングの取組を加速 させています。 (参考文献) 【3】・日本漢方生薬製剤協会資料「原料生薬使用量等調査報告書(平成 21 年度および 22 年度の使用量)」 ・(公財)日本特産農産物協会資料「薬用作物(生薬)に関する資料」 ・厚生労働省「薬事工業生産動態統計調査」(http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/105-1.html)
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