北極海航路活用戦略セミナーin 苫小牧 【講演録】

北極海航路活用戦略セミナーin 苫小牧
~北極海航路活用による欧州と北海道間の
新たな相互関係創出の可能性の検討~
【講演録】
日時:2015 年 7 月 1 日
場所:グランドホテルニュー王子
主催:北極海航路活用戦略研究プロジェクトチーム、
苫小牧港管理組合、北海道
北極海航路活用戦略セミナー in 苫小牧
~北極海航路活用による欧州と北海道間の新たな相互関係創出の可能性の検討~
北極海航路
北西航路
(北東航路)
■日 時: 平成27年 7月 1日,15:00~17:10(14:30開場)
■場 所: グランドホテルニュー王子
■主 催: 北極海航路活用戦略研究プロジェクトチーム※ 、北海道、苫小牧港管理組合
写真:Rosatomflot社提供
<プログラム>
15:00~15:10
開会あいさつ
苫小牧港管理組合 管理者 苫小牧市長
岩倉 博文
15:10~15:20
北極海航路を踏み台に~,北海道社会へのメッセージ
15:20~15:40
北極海航路を通じて北欧社会が見る北海道,日本,アジア
15:40~16:00
世界の海上物流環境と北極海航路
16:00~16:10
休 憩
16:10~16:30
北極海航路利活用戦略~試論:北極海航路の拠点を目指して
16:30~16:50
苫小牧港の北極海航路活用に向けた取組みと期待
16:50~17:05
質 疑
17:05~17:10
閉会あいさつ
田村 亨
礪波 亜希
古市 正彦
大塚 夏彦
柏葉 導德
北海道総合政策部交通政策局物流港湾室長 高瀬 浩
<※北極海航路活用戦略研究プロジェクトチーム>
代表: 田村 亨 (北海道大学大学院工学研究院北方圏環境政策工学 社会基盤計画学講座,教授)
礪波亜希 (Nordic Institute of Asian Studies (コペンハーゲン大学北欧アジア研究所,研究員,博士)
古市正彦 (京都大学 経営管理大学院,教授)
大塚夏彦 (北日本港湾コンサルタント株式会社,企画部長,工博)
別所博幸 (北海道総合政策部交通政策局物流港湾室,参事)
柏葉導德 (苫小牧港管理組合,専任副管理者)
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講演者略歴
田村 亨(たむら とおる)
北海道大学大学院工学研究院北方圏環境政策工学
社会基盤計画学講座 教授
1955年札幌生まれ。83年北大大学院工学研究科修了後、室蘭工業大学大学院工学
研究科教授などを経て、2012年10月から現職。公職は、国土交通省社会資本整備
審議会道路分科会委員、北海道総合開発委員会委員などの要職を務める。
専門分野は都市交通計画、国土・地域計画。
礪波亜希(となみ あき)
コペンハーゲン大学政治学部北欧アジア研究所研究員
博士
さいたま市生まれ。1998年サンタクララ大学ビジネススクールを卒業後、日本
ヒューレット・パッカード(株) に勤務。2004年京大経済学研究科修了、日本学
術振興会特別研究員、在オランダ日本大使館専門調査員を経て、2011年8月から
現職。京大地球環境学舎博士課程修了、博士(地球環境学)。東アジア諸国の政
治経済、北極地域における経済・科学外交政策に関する研究を行う。現在、書籍
「Asian Foreign Policy in a Changing Arctic: The Diplomacy of Economy
and Science at New Frontiers」(パルグレイブ マクミラン社)を執筆中。
古市 正彦(ふるいち まさひこ)
京都大学 経営管理大学院 教授
1958年玉野市生まれ。1983年北大大学院工学研究科修了後、運輸省入省。ノース
ウェスタン大学大学院修士課程修了。博士(工学)。(一財)運輸政策研究機構
運輸政策研究所、(独)国際協力機構などを経て2014年より現職。国際港湾協会
(IAPH)港湾計画開発委員会(PPDC)副委員長、熊本大学客員教授を歴任。また、
大塚夏彦氏との共著論文「Cost Analysis of the Northern Sea Route (NSR)
and the Conventional Route Shipping」が2013年国際海運経済学会(IAME)最
優秀論文賞を受賞。
大塚 夏彦(おおつか なつひこ)
北日本港湾コンサルタント㈱企画部長
工博
1958年函館市生まれ。81年北大工学部卒業後、東亜建設工業株式会社を経て1991
年北日本港湾コンサルタントに入社し現在に至る。
土木学会海洋開発委員会委員兼幹事、日本海洋政策学会理事、東京大学非常勤講
師、北海道大学スラブユーラシア研究センター共同研究員。海岸工学、氷海工学
をバックグラウンドとして、氷海の開発および北極海航路のフィージビリティに
ついて研究を進める。
柏葉 導德(かしば みちのり)
苫小牧港管理組合 専任副管理者
1956年美幌町生まれ。1981年北大大学院工学研究科修了後、北海道入庁。
2001年 石狩湾新港管理組合施設課長、2003年 水産林務部漁港漁村課主幹、
2006年 網走土木現業所企画調整室長、2008年 苫小牧港管理組合施設部長、
2010年 水産林務部漁港漁村課長、2011年 宗谷総合振興局副局長を経て、
2012年4月より現職。
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北極海航路活用戦略セミナー in 苫小牧
~北極海航路活用による欧州と北海道間の新たな相互関係創出の可能性の検討~
日時 2015 年 7 月 1 日(水)15 時~17 時 10 分
場所 グランドホテルニュー王子(北海道苫小牧市)
○司会 ただいまから北極海航路活用戦略セミナー in 苫小牧を開催致します。本日はご多
忙のところ本セミナーにご参加いただき誠にありがとうございます。本日、司会進行を務
めさせていただきます、苫小牧港管理組合の蠣崎(カキザキ)でございます。よろしくお
願いを申し上げます。
北極海航路活用戦略プロジェクトチームは昨年から日本港湾協会のご支援をいただき、
欧州と東アジア間の新たな物流ルート、北極海航路を活用することで期待される、欧州と
北海道間の新たな相互関係の可能性について研究を行っております。
本日のセミナーは、このプロジェクトの研究成果、最新の情報をご披露し、北極海航路
啓開を契機に、北海道が東アジアの物流の新たな中心となる可能性について道内関係者の
皆さまと共に考える機会としたく、北極海航路活用戦略研究プロジェクトチームと北海道
苫小牧港管理組合が共同で開催致しました。
セミナーの開会に当たりまして、苫小牧港管理組合管理者、苫小牧市長、岩倉博文より
ごあいさつを申し上げます。
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開会あいさつ
苫小牧港管理組合管理者・苫小牧市長
岩倉
博文
ただいまご紹介をいただきました苫小牧市長の岩倉でございます。苫小牧港管理組合管理
者も兼務しております。まずは、それぞれご多用の中、本セミナーにご出席をいただきま
した皆さま方に厚く御礼を申し上げます。誠にありがとうございました。
同時に、いまもお話がございましたが、今日のセミナーは、北極海航路活用戦略研究プ
ロジェクトチーム、北海道、苫小牧管理組合の共催によって開催されるわけでございます
が、後ほど貴重なお話をいただく先生にも、本当にお忙しい中、ありがとうございました。
昨今この北極海航路につきましては、いろいろな報道番組でお茶の間に流れる話題にな
りつつあるなということを感じております。これは日本だけではなくて、中国や韓国、そ
して昨年、ポートセールスで極東ウラジオストクに行ったのですが、そこでも北極海航路
が話題になっておりました。
一方では、地球温暖化と、スエズルートに比べると約 40%も輸送航路短縮ということが、
これから、どのように海上輸送の流れを変化させるのか。そのことが日本、そして、この
北海道にどういう影響をきたすのかという意味では、苫小牧港は 5 年、6 年前からワーキン
グをスタートしておりました。いろいろな意味で、単に北海道だけではなくてオールジャ
パンで、非常に関心の高いテーマであります。
一方で、さまざまな課題も、またあるわけでございます。そうした課題をどう乗り越え
て、これから日本の国益のために北極海航路を利用するには何を考えなければならないの
かということについて、本日さまざまな専門の先生からお話をいただくわけでございます。
ぜひ、限られた時間でありますが、今日のセミナーが皆さま方にとって有意義なお時間
になりますように心からお祈りを申し上げまして、重ねて、今日ご来席をいただいており
ます先生に本当に心から感謝を申し上げまして、冒頭のごあいさつに代えさせていただき
ます。よろしくお願いします。
(開会あいさつ終了)
○司会 岩倉市長、ありがとうございました。
それでは、これより講演を開始致します。本日のセミナーは、お手元のプログラムにご
ざいますプロジェクトチームのメンバーによりご講演をいただきます。講演が全て終了し
た後、質疑応答の時間を設けておりますので、各講演に対するご質問等は、その際に、よ
ろしくお願い申し上げます。
まず初めに、講演に先立ちまして、北海道大学教授で、本プロジェクトの代表者である
田村享先生より、
「北極海航路を踏み台に―北海道社会へのメッセ-ジー」と題してお話し
いただきます。それでは田村先生、よろしくお願い致します。
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「北極海航路を踏み台に ―北海道社会へのメッセ-ジ―」
北海道大学大学院工学研究院・北方圏環境政策工学社会基盤計画学講座・教授
田村 亨
北大の田村でございます。私は三つのお話を用意してきました。一つ目は、いま北海道
局である国が、新しい北海道の計画をつくっています。道庁も、それに倣って、いま作成
中です。
そこのところで、つくづく私が思いますのは、いよいよ北海道が世界に向かって自立す
るというのでしょうか、開国するというぐらいの気持ちでしょうか、それを強く感じてい
るところであります。そのときに決して北海道の中の内向きな議論をしてはいけないとい
うのが私の今日の最初のお話であります。
パワーポイントを見ていただきたいのですが、ここが北極海航路ですね。わが国や北海
道は、これまで北東アジアである、この辺りを見ているのですが、今後は、ロシアを含め
て北欧が視野に入ってくる。北欧まで行き着きますと、東欧も含めて EU のど真ん中に直結
してしまうということになります。これが何を意味するのか。
われわれはノルウェーのサーモンをおいしいと食べますが、ヨーロッパで食べる人は誰
もいないのですね。海を回遊しているサケは彼らは食べるのですが、川に遡上してくるサ
ケは食べません。それを峻別する技術を北海道庁の研究組織である道総研が持っています。
尾びれのところに、試験紙を挟みますと、3 秒で、これは川で上がってくるサケか海を回遊
しているサケかを判別できる。
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そういう道総研の技術や、生産から加工を含めて、物流・流通までの繋がりを整えて、
北欧へ品物を運び、それを消費してもらう、その機会をわれわれは手に得ようとしている
わけであります。世界市場を相手にした戦略をしっかりと立てることが重要であり、北海
道内の供給サイドの話ばかりするといった内向きな話を決してしてはいけないということ
です。常に相手がいる、北欧やEUの消費者の顔が見えていなくてはいけないということ
です。
北海道局が「北海道開発の将来展望」として議論していることは食と観光の世界水準の
価値の創造をしましょうということです。ここでは、決して内向きではなくてオープンな
議論を重ねています。
二つめのお話しは、礪波さんに今日お話しいただく内容です。先にお話しした世界の市
場戦略を越えて、世界中のどこが覇権を持っていて、文化や文明・歴史という時間軸の中
で、われわれの世界がどちらの方向に動こうとしているのか、それを北海道が考えなけれ
ばいけない。その中で初めて、この価値の創造というものができるのではないかというこ
とであります。
具体の話として、北極海航路をどう使うかという話を考えましょう。現在は鉄鉱石や LNG
をバルクで運んでいます。われわれ北海道は、コンテナ輸送でできれば冷蔵冷凍も含めた
農水産品を売りたい、その加工品を売りたい。しかし、北海道から北欧やEUに運ばれる
冷蔵冷凍の量は、少ないだろうと考えてしまう。ここがポイントなのです。
今日ここに、道庁の「北東アジア・タ-ミナル構想」の座長をされている経済学者の濱
田先生がいらっしゃるので、私の話が間違っていれば訂正をお願いしたいのですが、品物
が集まれば集まるほど市場は活性化するし、ものの値段は下がります。ところが、市場厚
の経済と言うのですが、市場厚が厚ければ厚いほどニッチな部分が出てきます。例えば、
食の安全に関わる北海道の技術を生かして、中国市場と言う市場厚の中で「食の安全にか
かわる市場」を分離していくということです。
市場の集積する力ではなくて、分散させる力を北海道からつくればよいのです。ここま
では分かっているのです。問題は誰がやるか。その辺りの話は、今日たくさんの方々にお
話しいただけると思います。
そして、これは北海道大学の北極圏研究センターについてです。今日、文科省の方にも
来ていただいております。文科省に海洋地球課があるのですが、課長の山口さんに来てい
ただいています。北大でも、このセンターが立ち上がり、いよいよ 5 年を目途に大きなプ
ロジェクトが動きます。その中の一つに北極海航路も入っています。 その中の北極海航
路の位置付けは、地球環境の科学的な研究分野ではなく、少数民族や国境交流、文化交流
の中に含まれています。北大は、かなりの精力を傾けて、北極圏の研究を進めていこうと
しています。
二つめの話の要点は、相当な世界市場の厚みの中で北海道が商機を見出すためには、ニ
ッチな市場を見つけることであり、それを展開するためには地政学的かつ少数民族や国境
交流、文化交流に関わる知識を深める必要があるということです。
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今日、最後の話は意思決定についてです。わが国の意思決定は、欧米に比較すると、リ
スクが低い方へ低い方へ流れてしまい、戦略性が求められません。北海道が初めて開国を
するわけでありますから、明治維新のように、リスクは高くても戦略性の高い目標を高く
掲げて進むべきだと思います。
そんなことを言っていたら北極海航路の活用にスピード感が出ないではないかと言う人
がいるかもしれません。そんなことはございません。国も北海道庁の計画も、間違いなく
地方の人口減による疲弊を解決する一つの大きな方策として、食と観光を中心にして世界
に広げるマーケットをつくろうとしています。その動きは着実に進んでいるわけでありま
すから、現場のリアリティーとスピード感を持って、北海道の各地域において、小さくて
もいいから、世界の分厚い市場に北海道の分離市場を見つけてニッチに入り込んでいく、
こういう時代なのではないかなという気が致します。
今日、礪波さんにはコペンハーゲンから来ていただきましたけど、文化の話も含めて少
し幅広に、何といっても北海道が開国するわけでありますから、世界の中の北海道、世界
の中の苫小牧は、EU からどう映るんだということも含めてお話を頂き、議論させていただ
きたいということであります。以上です。
(田村先生終了)
○司会 田村先生ありがとうございました。
それでは本日、初めの講演は、コペンハーゲン大学北欧アジア研究所研究員の礪波亜希
さまより「北極海航路を通じて―北欧社会が見る北海道、日本、アジア」と題してご講演
いただきます。
それでは礪波さま、よろしくお願い致します。
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Source: Offshore Energy
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Gleb Luxemburg, Yamal LNG Project overview, GASTECH, London,
October, 2012.
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Sergey Vasiliyev, CNIIMF, 2014.11
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11
講演 1
「北極海航路を通じて―北欧社会が見る北海道、日本、アジア」
コペンハーゲン大学北欧アジア研究所研究員・博士
礪波 亜希
ご紹介いただきました礪波亜希と申します。本日はどうぞよろしくお願い致します。タ
イトルには「北極海航路を通じて―北欧社会が見る北海道、日本、アジア」という順番で
書いてあるのですが、あえて、アジア、日本、北海道という順番に、狭めていくような順
番でお話ししたいと思います。
具体的には、私どもの研究所で、どのような研究を行っているかというような事例を通
じて、間接的に、北欧社会が、どのように北海道を見ているのかを共有させていただけれ
ばと思っております。
まず、皆さま、私がいったい何者なのかと思っている方もいらっしゃると思いますので、
簡単に自己紹介です。コペンハーゲン大学という、デンマークの首都にございます国立の
大学の政治学部の下にあります、北欧アジア研究所というところで研究員を勤めておりま
す。こちらにお世話になる前は、京都大学と在オランダ日本大使館にも勤務しておりまし
た。
この北欧アジア研究所はアジア地域に関する研究所としては古い方で、1968 年に設立さ
れました。現在はコペンハーゲン大学政治学部の下にございまして、研究部、出版部、図
書部がございます。当研究所の主な資金源は、こちらは個人的に非常に北欧らしいと思う
のですが、北欧閣僚理事会(Nordic Council of Ministers)というアイスランド、スウェーデ
12
ン、デンマーク、ノルウェー、フィンランドの北欧 5 ヵ国による国際組織です。北欧 5 カ
国のうちデンマークはスウェーデンに次ぎ二番目に人口が多いのですが、それでも 550 万
人程度ですので、各国とも比較的人口規模が小さい国々です。ですので、5 カ国それぞれの
大学でアジア研究所を持つことが難しいので、あえて資金を集中させ、私どもの研究所に
北欧 5 カ国各地からアジア研究を行う研究者の方、もしくは院生の方に来ていただくとい
うような、非常に特徴のあるネットワーク型の研究所として存在しております。
さてなぜ、このような研究所で北極、ないし北欧とアジアの関係について研究を行うよ
うになったかと申しますと、やはり、皆さまもご存知かと思いますが、北極圏に関する唯
一の国際機関であります北極評議会(Arctic Council)で 2000 年代後半からアジア諸国によ
るオブザーバー資格の申請がなされるようになったことが背景にございます。北極圏の沿
岸国にとってはアジア諸国は地理的にも非常に遠いですし、特に中国に対して、
「なぜ北極
に興味を示すのだ?」というような非常に懐疑的な意見が出てきたわけです。
結局、数々の議論を経て 2013 年 5 月にスウェーデン・キルナでの閣僚会議で、イタリア
を含む6カ国、そのうち 5 カ国がアジア諸国ですが、インド、韓国、シンガポール、中国、
日本が新たなオブザーバーとして北極評議会に迎えられることになりますが、こうした背
景の中、私どもの研究所では 2012 年から 2014 年の間、先ほど申し上げました北欧閣僚理
事会から研究資金をいただいて「ASIA IN A CHANGING ARCTIC」という研究プロジェクト
を行いました。
グリーンランドという、デンマーク王国内の自治領があります。詳しくお話しすると長
いのですが、グリーンランドはデンマーク王国からの経済的、政治的独立を目指しており
まして、この自立にアジア諸国が、間接的・直接的にどのように関わるのか、というよう
な点について、
「To the benefit of Greenland(グリーンランドの利益のために)
」というよ
うな報告書をグリーンランド自治政府に提出したことも研究成果のひとつです。
研究成果のご紹介の一環として、簡単に、中国と韓国の北極政策についてご説明したい
と思います。中国は東アジア諸国の中でも比較的、戦略的な取り組みをしていると言われ
ています。過去 20 年間で、さまざまな北極関連の国際枠組みに参加して、
「中国の 5 カ年
北極地政策は『極地権』をさらに守るために中国の『地位と影響力』を向上させること」
と明言するなど、非常に包括的に、先ほど田村先生が仰った例で申しますと、リスク高め、
戦略性高めのポジションを取っています。
中国の北極政策について具体的にみていきますと、日本と比較した場合、日本の方が、
「ス
ピッツベルゲン条約」や国際北極委員会等に加盟したのは早く、実績を残しているのは確
かです。しかしながら中国は、先ほど申しましたとおり北極を非常に戦略的に重要な地域
であると捉えています。例えば、北極は中国の将来の石油・鉱物需要にとって重要である。
また、北極海航路、空路の確保は、もちろん物流のためということもあるのですが、中国
が世界随一の勢力となるために不可欠と考えています。実際に外交を行う際には、北欧諸
国を「比較的寛容な北極海沿岸国」とみなし、北欧諸国に対し非常に積極的に外交活動を
行っています。
13
2013 年に設立された China‑Nordic Arctic Research Center はその一例といえるでしょう。
同時に、米国、ロシア、カナダといったような、比較的北極圏についてナショナリスティ
ックな思いを抱いている国々に対しては比較的ローキーで、挑発するようなことは避けて
います。
次に 韓国の北極政策ですが、韓国は日本に比べても、比較的北極圏へのニューカマーと
言えるかと思います。特徴的なのは大統領府による強力なリーダーシップが存在している
ことかと思います。主な関心事項は、北極海航路、資源開発、科学外交です。
具体的には、2013 年 2 月に朴槿恵政権が始まりましたときに、140 項目の国政課題が発
表されますが、その第 13 項目に「北極海航路及び北極海の開発」が入れられました。 そ
して、北極海航路のハブ港として釜山、蔚山を想定しています。
韓国で興味深いのは、政府が釜山をハブ港にすると決め、そこに資金を投入するという
形ではなく、釜山と例えば蔚山、もしくはほかの港に競争させるようなことをして、最終
的に生き残った港がハブ港になるというような枠組みを取り入れている点です。
また韓国政府は、科学技術外交を非常に戦略的に捉えており、グリーン成長(Green
Growth)というキャンペーンを打ち出し、これを鍵として北極海沿岸国との協力を進めて
います。こうした科学技術外交を通じ、一流の先進国であるという国際的プロファイルを
作り上げようとしている点も指摘されるところです。
まとめますと、日本も含め、北極に興味を示しているアジア諸国の全体的な特徴という
と、まず第一に、エネルギー資源の大部分を輸入に依存していること。第二に、海洋国家、
貿易国家であること。第三に、開発志向型国家、すなわち、国の政府が国全体の経済成長
の方向性を定めるのに非常に重要な役割を担っているというような国家であるということ
が言えるかと思います。
ここから北極海政策について言えることは、アジア諸国の北極海政策は、科学技術外交
の一環であるということです。あくまでもその中で、経済的関心が第一にあり、その上で
政治的関心があるといえます。しかしながらここで留意が必要なのは、アジア諸国にとっ
ては経済安全保障が、他の地域の先進国、例えば欧州や米国などに比べて非常に重要だと
見做されている点です。従来型の安全保障の概念が経済成長と非常に深く関わっているわ
けです。
次に私ども研究所の北極関連の研究ネットワークについてご紹介させていただきます。
当研究所はアジア研究所ということで、日本に限らず、東アジア、アジア地域全体を対象
に協力を推進しております。この関連で、先ほど申し上げました China-Nordic Arctic
Research Center についても、唯一、北極に特化しない、アジアに関する研究所として参加
しています。さらに、中国の復旦大学のヨーロピアン・センターを研究所内に擁し、主に
政治学、社会学関係の北極に関する研究を共同で行っています。
韓国とは、韓国極地研究所、延世大学との研究協力協定がございまして、こちらでも、
韓国の場合は特に北極海航路ですが、共同研究を行う予定です。日本の研究機関とは現時
点で特に協定がございませんので、ご検討いただければ幸いです。
14
北極圏内での活動については、デンマーク王国内の自治領グリーンランドの国立大学で
あるグリーランド大学で、2013 年 12 月に集中講義を行ったことがございます。グリーン
ランドには鉱物資源、もしくは石油があると長く言われてきましたが、なかなか投資環境、
自然環境が厳しく、資金提供先が見つからない中、中国の企業が興味を示したことが一大
ニュースになったということがございました。グリーンランド人の皆さん自身が「グリー
ンランドは北の僻地」という感覚なので、そんな場所にどうしてわざわざ中国が?という
疑念がおこったわけです。しかしながら、中国をはじめとしたアジア諸国からの関心につ
いて的確な判断を下すのには非常に情報が足りないということで、招聘いただきまして、
政府、大学、企業関係者、学生対象に二日間、日中韓に関する集中講義を行いました。
余談ですが、グリーンランドの皆さんはクジラを食べます。写真はグリーンランドの首
都ヌークにあるタイ料理屋さんで供された鯨肉のお刺身です。また、グリーンランドは北
極圏の先住民が住んでいる地域の中で唯一、先住民(イヌイット)が多数を占める地域と
なっています。グリーンランド人の方々はアジア人と同じモンゴロイド人種ですので、デ
ンマークのコペンハーゲンからはるばる飛行機に乗って参りましたが、何か懐かしい感じ
が致しました。そういった土地柄ですので、日本では先住民をどう扱っているのか、中央
政府と、どういう関係を持っているのかというようなことに非常に強い関心を示されてい
ました。
また、大塚夏彦博士にコペンハーゲンに来ていただき、日本の観点から見た北極海航路
の未来というようなことをお話しいただきました。海運、政府、大学関係者等の参加があ
りましたが、北極沿岸国でなく、日本という全く違った観点に基づく意見を聞けたと非常
に好評でした。
昨年の 2014 年 12 月には「アジア諸国の北極海航路戦略」ということで、フィンランド
のトゥルク大学で、欧州の研究者と日中韓印の研究者にお集まりいただいて、アジア諸国
から北極海はどう見えるのか、またそれに対して北極海沿岸国はどの考えているのかとい
う よ う な 研 究 ワ ー ク シ ョ ッ プ を 行 い ま し た 。 こ の ワ ー ク シ ョ ッ プ で は 、「 サ ブ 国 家
(SUB-STATE)アクターと北極海航路」について発表いたしました。サブ国家アクターと
は行政単位、自治区、市町村等を意味します。
先ほど田村先生が、北海道が開国するとおっしゃっていましたが、従来、国際政治経済
学では、国民国家を対象として分析を行います。本研究では、北海道というサブ国家アク
ターが、全世界に向けて、どのような関係を持とうとしているのか、持っているのかとい
うようなことに注目します。
北極海航路においては、特にロシアで、このサブ国家アクターの研究が進んでおり、ム
ルマンスク、アルハンゲリスク、ペトロザヴォーツクといった地方都市が北極海航路に、
モスクワよりも深く関わり重要な役割を果たしていることが指摘されています。では、北
海道はどうでしょうか。
学術的には、このような国民国家でない主体が外交を行うことをパラ外交と呼んでいま
す。北海道によるパラ外交に関する既存研究は、日露関係における北海道の役割、サハリ
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ンと北海道の関係についての論文がございます。しかしながらロシアからの見地が主流で、
北海道がいかに主体的にロシアとの関係を結んできたか、もしくは、ロシアを超えての国
際関係に影響をもたらしたかについての研究はあまりなされていません。
こうした背景の下、 北海道がいかに日本の北極海航路政策に関わってきたのか、また今
後関わっていくのかという点に注目します。具体的には、「北極海航路のハブ港としての苫
小牧」というアイデアが存在していて、現実に前に進みつつあるということを分析事例と
します。ここでは、北海道とロシア(サハリン)との、ある種、特別な関係。東京、モス
クワから離れて、独自の関係を結んできているという歴史も鑑みる必要があります。
さらに、苫小牧に関しては「破綻」と括弧を付けさせていただいたのですが、過去国家
レベルのインフラ開発事業があって、それが、あまりうまくいかなかったというような、
政治経済的な背景があり、それでいままた新たに苫小牧を見直しつつあるという部分があ
るかと思います。
このように、これまでアジア、日本、北海道と焦点を狭めてきましたが、北海道と北欧
という意味では、北欧および欧州は北海道を日露関係における重要なアクターとして見て
いると言えると思います。
北欧にとってはロシアとの関係は非常に重要です。特にクリミア危機以後は、欧露関係
に影響を及ぼし得る可能性のあるもの全てに注意が払われています。この意味で、日露関
係が間接的、もしくは直接的に欧露関係に影響を及ぼす可能性、もちろん直接、北欧から
北海道を見ているということもございますが、それに加えて、ロシアを挟んで北海道、な
いし日本が、ロシアに対してどのような動きをするのかということに注目しているといえ
るでしょう。
また、北海道には北方地域の先住民としてのアイヌの方々がおられます。北極圏におり
ますと、必ずこの部分については聞かれるところです。北海道と言えばアイヌというよう
な認識はあるかと思います。
最後に雑談的ですが、このオレンジ色の野菜は「ホッカイドウ」という名称で市場に出
ているカボチャです。毎年秋ごろになるとスーパーなどでも手に入るようになります。な
ぜこのカボチャがホッカイドウと呼ばれるのかは知り得ないのですが、北欧では北海道の
知名度は皆様のご想像以上に高いのです、ということでお話を終わらせていただきたいと
思います。ご清聴ありがとうございました。
(講演 1 終了)
○司会 礪波さま、ありがとうございました。
次の講演は京都大学経営管理大学院教授である古市正彦先生より「世界の海上物流環境
と北極海航路」と題して、ご講演いただきます。それでは古市先生、よろしくお願い致し
ます。
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講演 2
「世界の海上物流環境と北極海航路」
京都大学経営管理大学院教授
古市 正彦
ただいまご紹介いただきました京都大学の古市と申します。どうぞよろしくお願い致し
ます。私の方からは「世界の海上物流環境と北極海航路」ということで、田村先生や礪波
さんの少し戦略的な話と比べて現実的な実際の物流の中で、北極海航路を利用すると、ア
ジアとヨーロッパの間の物流として王道のスエズ運河を通る航路に対して相対的にコスト
でどの程度の競争力があるのかというお話をさせていただきます。
今日の発表の流れはこんな感じで進めさせていただきます。
田村先生からの北大で、北極域研究の巨大プロジェクトが今年から始まったという中で、
私が京都からここに来て、実はアウェイに感じておりますが、私がなぜここにいるのかと
いうお話を少しだけさせていただきます。
実は、国際港湾協会(IAPH)という港湾管理者の協会がありまして、そちらで 2 年を期
間とした研究プロジェクトをやってきました。2013 年にリポートを一つ、そして今年の 6
月にリポートを一つ、2 回分の研究プロジェクトを、苫小牧港管理組合と、私と、この後、
講演いただく大塚さんとの三者で、このプロジェクトを進めてきました。今日のお話は、
この共有プロジェクトの内容をご紹介することになりますので、そのプロジェクトの担当
者という意味で京都から参った次第です。
北極海航路を通ってアジア、特に東アジアとヨーロッパ、これも地中海側ではなくて、
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むしろ北側、まさにデンマーク、オランダといった辺りですが、その間を海上航路で結ぶ
と、岩倉市長からもお話がありましたが、通常のスエズ運河、マラッカ海峡を通る航路に
比べると、北極海航路の方が輸送距離が 40%ぐらい短くなる。輸送距離が短くなれば消費
する燃料も少なくて済むわけですから、速い、安いという意味で、競争力があると言われ
て、直感的に、こちらのほうが有利ではないかと皆さんが感じるところです。
ただし、北極海航路は、当然、氷のある海を通るわけですから、1 年中、通れるわけでは
ありません。通れる期間は 1 年間の中で、ある期間限定である。経験的には 3 カ月から 6
カ月ぐらいの期間は通航が可能だろうと言われています。
その北極海航路を通ったときの輸送コストをあらゆる貨物を積めるコンテナで輸送した
場合で、どうなるかという試算を致しました。
このときに、例えば、北極海を通るためには、船は耐氷型、氷に対してもある程度、強
度が強いという、ある種、特殊な船でなければならないのですが、そういう船で 1 回航海
するだけのコストがいくらかというのを出しても、1 年間通して使えるわけではありません。
そこで、1 年中、通れるスエズ運河航路と比べるためには、やはり1年間、通しで使い切っ
てコンテナ一箱を1回輸送するのにいくら掛かるのかという意味しました。つまり、夏の
間、北極海航路を通れる間は北極海航路を使い、そうでない冬の間はスエズ運河航路を使
い、北極海航路(NSR)とスエズ運河航路(SCR)を組合せて 1 年間通して使う。それで
1 年間通して運航したときの輸送費用を、北極海航路を使う場合の輸送費用として、比べる
相手は、1 年間、常にスエズ運河航路を使い切るコンテナ船による輸送航路と比較しました。
輸送コストは、実は規模の経済に非常に強く依存していまして、輸送するコンテナ船の
大きさ、これは TEU というコンテナの箱の数で積載能力を示していますが、大きな船で運
べば運ぶほど 1TEU 当たり、一箱当たりの輸送費用は安く済みます。
この後ご紹介しますが、スエズ運河航路には現在 15,000TEU 積みのコンテナ船も登場し
て実際に運航されています。非常に規模の経済が働く大型船が通っています。一方、北極
海航路は、どれぐらいのサイズまで通ることができるのかということで、ここでは
4,000TEU 積みのサイズを想定して、そういう比較をこの後しております。
北極海航路に 4,000TEU 積みを想定した理由は、北極海を通るときに、いくつか、いろ
いろなルートが実は細かくあるのですが、船の大きさが制約を一番受けるのは、ここの
Sannikov Strait(サニコフ海峡)を通るときが、どうも一番制約が大きいと。ここを通れる
船の大きさの限界が、どうも 4,000TEU 積み、いわゆるパナマックス型の船と同サイズぐ
らいだろうと言われています。
ただ、1 年のうちで、ある期間は、もっと、この北側を通ることができて、この Sannikov
Strait を通らないでも済むことができる、
その場合は、もっと大きな船も通れるそうですが、
その場合は、より一層、1 年間の中で通れる期間が限定的になってしまうということがあり
ますので、ここではサニコフ海峡を通れるサイズで 4,000TEU サイズを設定しています。
一方で、スエズ運河航路は、船のサイズが受ける制約は、実はスエズ運河とマラッカ海
峡を通れるか、この両方を通れるまでは大きくないだろうということで現在は 15,000TEU
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サイズのところまで船が大きくなってきているわけです。
その中で、船で輸送するときの輸送コストの内訳を、船の建造費に当たる資本費から燃
料費まで含めて、いろいろ細かい費用の内訳を想定しまして、これで実際に費用試算して
みました。
こちらブルーの棒グラフの方が、北極海航路とスエズ運河航路を組み合わせて使いなが
ら耐氷型の 4,000TEU のコンテナ船で輸送したときのコストです。棒グラフが何本もある
のは、北極海航路(NSR)を通れる期間が短い、長いに合わせて変動させてあるものです。
105 日(3 カ月半)だけ北極海航路を通れる場合から、30 日ずつ延ばし、225 日(7 カ月
半)北極海航路を通れる場合まで北極海航路を通れる日数が長くなればなるほど輸送距離
が 40%短くなるメリットを享受して、輸送コストが 1TEU 当たり 1,211 ドル(NSR を通れ
る期間が 105 日の場合)に対して、984 ドル(NSR を通れる期間が 225 日使える場合)と、
ここまで安くなってくるということになります。
一方で、ライバルに当たるスエズ運河を超大型のコンテナ船で運行したときの輸送コス
トは、4,000TEU から、6,000TEU、8,000TEU、15,000TEU まで大きくしていって、一番
気になる、最大の 15,000TEU の場合の輸送コストですと 944 ドル、225 日間(7 カ月半)
北極海航路が利用可能であれば、ほぼ拮抗するような輸送費用になります。
これは非常に競争力のある、北極海航路の輸送の経済性が強いなと。実は国際港湾協会
のプロジェクトの最初の 2 年間の結論は、ここまででした。非常に競争力があって、これ
は、今後なかなか可能性が出てくるのかなと。季節的に限定され、1 年間フルで使えるわけ
ではないものの、コストだけを見たら優位性が高いなという結論を得ました。
このときの試算の条件で一つ重要なのは、船の燃料費です。C 重油と呼ばれる燃料の費用
が 1 トン当たり 650 ドルという当時の燃料費の値段を想定して試算をしました。
この燃料費が非常に重要な意味を持つのは、先ほどの、1,211 ドルであった輸送費用の内
訳を見ますと 55%が燃料費です。やはり消費する燃料の量が圧倒的に多いので、燃料費用
がここまで輸送費用の内訳として大きな部分を占めています。
ここまでが最初の 2 年間の結論だったのですが、その後 2 年間(2013 年から 2015 年ま
での間)で、いくつか大きな外部環境の変化がありました。
こちらのグラフは横軸が時間軸で、縦軸がそのときに世界で走っていた最大のコンテナ
船が何 TEU 積みであったかという積載能力です。2005 年を過ぎで、ちょうど 15,000TEU
ぐらいのものが、2012 年から 2013 年頃まではこのサイズが世界最大でした。ですから、
最初の 2 年間の我々の研究プロジェクトでは、最大のコンテナ船を 15,000TEU 級であろう
と設定しました。この大型コンテナ船に対して輸送費用の観点から北極海航路輸送はそれ
なりに競争力があるという結論が出ました。
しかし、2013 年になってから、さらにコンテナ船の大型化が進みました。現在では
18,000TEU から 20,000TEU の船が出現してすでに運航を一部、開始しています。というこ
とで、ライバルの方に大きな変化があって、規模の経済がより一層発揮される状況が迫っ
てきたということであります。
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もう一つの大きな外部環境変化は、先ほどの船の燃料費に当たる C 重油の価格です。直
近の 5 年ぐらいは 1 トン当たり 700 ドルぐらいの値段でしたので、先ほどの試算では 1 ト
ン当たり 650 ドルという値を設定して輸送コストを算出したのですが、2015 年になって半
年ほどですが、この価格が劇的に下がっています。最近の C 重油の価格が、だいたい 1 ト
ン当たり 300 ドルにまで下落したわけですから、先ほどの 650 ドルの設定に対して半分以
下まで下がってきたということです。これは完全に原油価格の下落に連動しています。
輸送費用の内訳の 55%が燃料費であり、輸送距離を 40%短くできることで輸送費用を削
減できるのが強みだった北極海航路輸送にとって、その燃料費の単価が半分以下になった
ということですから、強みの部分がこれで減殺されてしまう可能性が出てきたということ
です。
一方で、20,000TEU のコンテナ船が出現してきたというお話をしましたが、将来、
20,000TEU よりも更に大きくなるのでしょうか。これだけ大きくなってきて、これ以上大
きくなれば、北極海航路から見てライバルに当たるスエズ運河航路の利用により大きな規
模の経済が働いて、より安価に輸送することができることになります。
この答えは、まだ出ておりません。世界では、いろいろなことをおっしゃる方がいて、
まだ大きくなって 25,000TEU のコンテナ船がこれから出現するとおっしゃる方もいます。
一方で、これは、いろいろな船会社がこぞって 20,000TEU 級のコンテナ船を発注したとい
う去年の 12 月の新聞記事ですが、この中にいくつかのコメントが出ています。
マラッカ海峡を通れる、ぎりぎりの船のサイズ、さらに、スエズ運河を通れる船のぎり
ぎりのサイズ、両方を満たすものは、どうも、このサイズで決まりではないかと。コンテ
ナ船の船長は 400 メートル、船の幅は 59 メートル、最大の喫水は 16 メートル、これで、
ほぼ 20,000TEU 積みになる。これ以上大きくなると、マラッカ海峡か、スエズ運河か、ど
ちらかの通行が困難になるということで、20,000TEU のサイズで、どうもコンテナ船の大
型化は頭打ちになるであろうと言う方も一方ではいます。これについては、今後、現実は
どうなっていくのかを注視していかなければなりません。
過去 10 年、20 年前に、経済学者を中心に、経済的にみて最適なコンテナの船型、大きさ
は、どれくらいかという議論が海運経済学の分野でなされたときは、20,000TEU なんてい
うサイズは経済的にみて決して合理的ではないので出現しないという意見が大勢だったの
ですが、現実には、この 20,000TEU サイズが出現しておりますので、今の議論が、このま
ま通じるかどうかはこれから展開される現実を見なければ分からないのですが、
20,000TEU 級が上限になる可能性も大いにあるということです。
その上で、先ほどの、棒グラフで見てきたものをちょっと別の視点で見てみました。折
れ線グラフにしていますが、コンテナ船の大きさ、積載容量を横軸に取りまして、大きく
なればなるほど、1TEU 当たりの平均輸送費用がどんどん安くなってきていますが、通常、
規模の経済が働く程度は、大きくなればなるほど緩やかになってきて、最後はほぼ平らに
近くなる、この紫の矢印のようになるだろうと言われていました。
大した規模の経済が働かなくなるのに、これ以上、大型化することに意味があるのだろ
24
うかという議論も、また一方で、なされていました。しかし、現実に出現した 20,000TEU
の船を想定した輸送費用の試算結果は、この予想を大きく覆し、もっと規模の経済が発揮
される、1TEU 当たり 715 ドルという結果が出てきました。
この理由は次のようなものです。この棒グラフは 4,000TEU、6,000TEU、9,000TEU、
11,000TEU、14,000TEU、20,000TEU と船のサイズを大きくしながら、ブルーの棒グラフ
はコンテナ船 1 隻の建造コストです。単位は 100 万ドルだったと思いますが、1 ドルを 100
円とすれば、だいたい、このまま億円と数えていただき、例えば、20,000TEU の船を建造
するには 190 億円必要だという感じになります。
この上昇の具合は、実は積載容量が大きくなるのに比べて、ほぼ比例関係で建造コスト
が高くなっていますから、積載容量を大きくしたことで規模の経済が働くということはほ
とんど見られません。
逆に、規模の経済に一番大きく効くのは、先ほどの、輸送費用の内訳で一番大きな燃料
消費量、燃料費です。燃料消費量を決定するのは、オレンジの棒グラフが示すエンジン出
力です。メガワットと書いてあると思いますが、これに走った距離と走ったときの速度を
入力すると燃料消費量が算出できます。
ずっと船が大きくなるにつれて、実はエンジンの出力は比例しては大きくなっていなく
て、緩やかにしか大きくなっていません。要するに、低燃費型、燃料消費効率の高いエン
ジンを搭載していた。ここが規模の経済の一番大きな要因だったわけですが、14,000TEU
から 20,000TEU になって、今度は逆にエンジン出力が下がりました。
これは、私は、あまり詳しくないのですが、造船の方々に言わせると、この 14,000TEU
か 15,000TEU を境に、これ以上、大きくなると、スクリューを一つではなくて二つ載せな
いとうまく船を動かすことができないようなので、2 基 2 軸と言い、2 つのエンジンで 2 つ
のスクリューを同時に回すタイプに変え、そのことと最新の技術を取り入れたことで燃料
消費効率が高くなった、低出力なエンジンで同じ船を同じように動かすことができるよう
になったようです。
このことによって、先ほどお見せしたようにみんなが想像していた、紫色の矢印の傾向
(規模の経済の効果が緩やかになるはず)が覆され、また一層、規模の経済が発揮される
ことになったということであります。その結果、北極海航路のこれからの活用を考える上
では、ライバルであるスエズ運河航路輸送がとてつもなく強力なコスト競争力を持つよう
になったということに留意しなければなりません。
実は、半年から 1 年前ぐらいのことですが、これでもう北極海航路は終わったなと感じ
ていました。そして、今年の前半に、国際港湾協会の 2 度目の研究プロジェクトの報告書
を書いているときは、それに近いトーンで書きかけておりました。
ところが、実際に書いているうちに、また事態が少しずつ変わってきて、意外とそうで
もない。この規模の経済のコスト競争力は、この後、継続的に続くのか、サステナビリテ
ィーがあるのかという問題に直面することになってきました。
これは概念的に書いたものですが、ブルーのラインで示されているコンテナ貨物の需要
25
が 2008 年、2009 年のリーマンショックでいったん落ちた後に、また、復活して成長軌道
にあるのですが、先ほどの 2012、2013 年頃に 20,000TEU のコンテナ船がどんどん投入さ
れ始めるようになって、赤いラインが示しますコンテナ輸送サービスの供給量の方が、は
るかに実際の需要より大きくなっています。そして、供給過剰の状態がいま現実に起こっ
ているようです。
これは概念的なグラフでしたが、まさに今月の『日本海事新聞』という業界紙に、こう
いう記事が出ています。もう皆さんも、こういう新しいリスクをご存じだと思いますが、
アジアから北欧向けの運賃が 300 ドルぐらいに下がったと。
このスライドの左上に運賃のグラフが載っていますが、2 年前は 1,200 ドル、1,300 ドル
から 1,500 ドルの間ぐらい。先ほど私が試算した 4,000TEU 積みのコンテナ船による 1,200
ドルぐらいのコストというのに近いような数字が実際の運賃でしたが、たった 2 年間の間
に、特に、この半年ぐらいで劇的に下がってきて、いまは 300 ドルを割れましたというこ
とで、運賃自体は 2 年前の 4 分の 1 まで下がってしまった。これでは船会社は経営上成り
立たないので何とかしなければいけません。
この 300 ドルという運賃が、ずっと永続的に続くのであれば、荷主にとっては天国のよ
うな話なのですが、輸送業者にとってみれば、こんなことでは経営が成り立ちませんから、
この運賃を何とか、船会社でよく使う言葉で言うと「修復」、要するに、値上げの方向で、
経営が成り立つように何とかしたい。
その結果、こんなことが起こっています。欧州航路で船腹削減。船腹削減というのは輸
送能力を減らすということです。方法は二つあります。スケジュール、船のサービスを間
引く。毎週 1 回の定曜日サービスをいわば間引いてしまうということ。もうひとつは、前
のサイズ、一回り小さいサイズに落とすということですね。そのどちらかが、どうも導入
されつつあるようで、これは、これから半年あるいは 1 年の間に実際にどうなっていくか
を見ていけば結果が出てくると思います。
ということで、20,000TEU サイズのコンテナ船が出現して、理論上は、お客さん(貨物)
が満載状態になれば非常にコスト競争力が強いのですが、実際に需要が供給力に追いつか
ない場合は、こういうことが起こってしまって、今後、永続的に 20,000TEU のサイズが北
極海航路のライバルとして定着するかどうかは、これから注視していく必要があります。
そういう意味で、15,000TEU サイズのコンテナ船に対して北極海航路は十分にコスト競
争力を持っているという結論を、もう少し時間をかけて評価をしていく必要があるだろう
と思っています。
それから、コンテナ以外の貨物についても国際港湾協会の研究プロジェクトでも検討致
しました。一つは、完成自動車です。完成自動車は多くの場合、1 地点から別の地点に自動
車を運んで下ろすというような、比較的単純な航路のパターンですので、単純に輸送コス
トが安くなる部分は、距離の短縮分に比例するということです。一方で、自動車航送船は
非常に軽い船なので、もともと燃料消費量が少なくて済むということもあって、北極海航
路を使った場合のコストの縮減率というか、安くなる程度は 3%から 12%程度です。これ
26
も北極海航路を使える期間に応じてですが、この程度になるということです。
ただ、自動車は貨物の中で非常に価値の高い貨物です。例えば、6,500 台積みの船に 1 台
200 万円の自動車を積んでいれば、貨物の価値は 130 億円ですから、非常に価値の高い貨
物なので、ひょっとすれば北極海航路を使う可能性がある貨物かもしれません。
さらに、このあと議論に出てくるかもしれませんが、北極海域のヤマルというところで
LNG の産出プロジェクトが始まっていて、数年後には、これが市場に出てきます。そのと
きは、ヨーロッパに向けて運ぶのと、もう一つ重要な市場であるアジアに向けて運んでく
るには、必ず北極海を通らなければいけないので、これについては、たぶん確実に北極海
航路を利用することになるだろうと思います。
仮に日本で LNG を輸入する場合、いろいろな輸入元があります。メキシコ湾のシェール
ガス由来の LNG、オーストラリア、カタール、あるいは、いまのヤマル。それで、ヤマル
から北極海航路での輸送コストを他の産地と比較してみると、さすがにオーストラリアの
場合は距離が近いので輸送コストも安いのですが、カタールと同程度、メキシコ湾からシ
ェールガスを持ってくるよりは安いというような輸送費用になります。
原子力発電が止まっている現在、電源の燃料の多様化、さらに、その LNG の調達先の多
様化という意味では、このヤマルの LNG プロジェクトは、これから確実に利用されるんだ
ろうなと思っています。
まとめは、先ほど申しましたけど、まずコンテナに関しては、もう少し、ライバルであ
る 15,000TEU あるいは 20,000TEU のコンテナ船をどう見極めるかが重要になります。
最後に北極海航路を利用するコンテナ輸送に関してですが、一昨年の 2013 年に中国の船
会社 COSCO が 1,500TEU 積みぐらいの船でしたが、試験運転で商業運行を実際に行って
大きな話題になりました。
それから、今年 2015 年 3 月のマースク、世界最大のデンマークの船会社ですが、マース
クのホームページによると、彼らは 3,600TEU 積みの耐氷型のコンテナ船7隻を発注した
と発表されています。ただ、これはバルト海で利用するものであるということを謳ってい
ますが、いつでも北極海航路に利用可能なコンテナ船がもうすぐ実際に運行される時が近
づいているということです。いつ実際の商業運行が始まるのかについても注視して、もう
少し見ていく必要があるのかなと思っています。
ということで、世界の海上輸送、コンテナ輸送の環境の中で北極海航路の立ち位置、競
争力のありや、なしやというものを少し俯瞰したお話をさせていただきました。どうもあ
りがとうございます。
(講演2終了)
○司会 古市先生、ありがとうございました。
それでは、ここで約 7 分間の休憩と致します。16 時 10 分から講演を再開致しますので、
お早めにお席に戻られますようお願い致します。
27
(休憩)
○司会
ただいまより「北極海航路利活用戦略~試論:北極海航路の拠点を目指して」と
題してご講演いただきます。それでは大塚さま、よろしくお願い致します。
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Breadth: 59m
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LOA: 427m
Breadth: 55m
Draft: 18.3m
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Breadth: 59m
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1994
1995
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Bremerhaven
PCC
Scenario
Yokohama
[Pure Car Carrier (PCC, 6,500CEU)]
LOA: 200m, Beam: 32m, Draft 10.3m
Dead Weight Ton (DWT): 21,500 ton
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19
USD592/CEU (SCR)
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USD574䡚519/CEU (NSR/SCR-combined)
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20
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LNG to Asia
ཎἜ䛾㍺ฟ
䠄2008ᖺ௨㝆䠅
89.7
73.1
Sovcomflot:
http://www.sovcomflot.ru/npage.aspx?d
id=90216
Offshore Energy Today Staff, December 23,
2013; “Gazprom Begins Oil Production
from Prirazlomnoye Field”
49.6
46.5 44.3
25.9
ཎἜ䛾⏘ฟ䠄2013
ᖺ䠍2᭶㛤ጞ䠅
LNG䛾⏘ฟ䠄2017ᖺ
㛤ጞணᐃ䠅
USD44.3/ton (䝲䝬䝹䠖NSR)
USD49.6/ton (䝇䝜䞊䝡䝑䝖䠖NSR)
֟
USD46.5/ton䠄䜹䝍䞊䝹䠅
USD73.1/ton䠄䝯䜻䝅䝁‴䠅
LNG
LNG to EU
Gleb Luxemburg, Yamal LNG Project overview, GASTECH, London,
October, 2012.
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USD1,211/TEU䠊
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2. NSR㏻⯟ྍ⬟᪥ᩘ䜢225᪥㛫䛸䛛䛺䜚㛗䜑䛻᝿ᐃ䛩䜛䛸䠈
NSR䞉SCR⤌ྜ䛫㍺㏦䛾㍺㏦㈝⏝984USD/TEU
䠄4,000TEU⣭䠅䛿䠈985USD/TEU䠄14,000TEU⣭䝁䞁䝔䝘
⯪䛻䜘䜛SCR㍺㏦䠅䛻༉ᩛ䛩䜛➇தຊ䜢᭷䛧䛶䛔䜛䠊
5. 䜎䛯䠈໭ᴟᅪ䛷⟬ฟ䛥䜜䜛LNG䛾䜰䝆䜰䞉䝬䞊䜿䝑䝖䜈䛾
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㏦㈝⏝䠄715USD/TEU䠅䛻䛿ኴยᡴ䛱䛷䛝䛪䠊䛯䛰䛧䠈
20,000TEU⣭䛾㉸኱ᆺ䝁䞁䝔䝘⯪䛾ᙅⅬ䜒䠊
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31
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24
講演 3
「北極海航路利活用戦略~試論:北極海航路の拠点を目指して」
北日本港湾コンサルタント株式会社企画部長
大塚 夏彦
どうもご紹介ありがとうございます。北日本港湾コンサルタント、大塚と申します。本
日は北極海航路の利活用戦略、北極海航路の拠点を目指そうという、ちょっと力強いとい
うか、華々しい題を付けさせていただきました。とはいうものの、なかなか、うまくまと
まりがつかなくて、資料も、ぎりぎりまでかかってしまった次第です。とにかく、いま皆
さまの前でお話しできる範囲で、できるだけ前向きなアイデアを紹介したいと思いますの
で、約 20 分間お付き合いください。
今日、まず最初に、北極海航路で最近どんなものが、どんなふうに運ばれているか、最
近の様子をちょっとだけ紹介したいと思います。こちらの絵は去年 6 月から 11 月の間に貨
物船が、どのぐらい走ったか、走った跡の線を引いてみたものです。結構たくさん走って
いるように見えるのですが、しかしながら、2014 年、北極海航路を全部通り過ぎて、アジ
アからヨーロッパに行ったり、ヨーロッパから北極海航路を全部通り過ぎてアジアに行っ
たりした貨物の量は、2013 年の 5 分の 1 近くまで減ってしまいました。どうして減ってし
まったのかは後で紹介しようと思うのですが、減ったとはいえ、全体として北極海航路を
使っている貨物量は、だいたい 21 世紀に入ってから増えている基調が、ずっと続いており
ます。
この北極海航路の全部をわたって運ばれた貨物の行き先はというと、こちらが日本、一
32
番多いのは中国、次に多いのが韓国というような順番になっております。貨物の種類とし
ては、一番たくさん運ばれてきたのがガスコンデンセートというものと鉄鉱石などだった
のですが、去年ぐらいからコンデンセートに代わって、ナフサがアジアに運ばれるように
なりました。それ以外では、ロシアの国内輸送向けのディーゼル燃料であったり、韓国か
らフィンランド向けのジェット燃料だったり、そういったものが運ばれているのが現在の
状況です。
アジア、あるいはロシア沿海州の方に発着する船は、どの辺を通ったかというと、この
図は去年の様子で、かなりの数が宗谷海峡、そして一部、津軽海峡を通って、沿海州だと
か韓国に脚を伸ばしています。これは、韓国から距離を考えていくと、だいたい、津軽海
峡を通っても、宗谷海峡を通っても、そんなに距離は変わりません。津軽海峡を通ったら、
ちょっと遠いぐらいの感じですから、韓国や中国から北極海航路を使う船は、オホーツク
海側の天気、太平洋側の天気を見ながら、走りやすい方を選んでいるような状況のようで
す。
去年ですが、荷物が減ったとはいえ、実は北極海航路を走った船の数は増えているんで
す。何か起きているかというと、先ほど古市さんの話にありました、ロシアの北極海沿岸
にヤマル半島というところがあって、ここで LNG 基地が建設されておりまして、その基地
を建設するために、いろいろな資機材が、たくさん運ばれています。主にヨーロッパ北方
地域、あるいは、ドイツやオランダから運ばれていまして、そこのサイトに行く貨物の量
が、すごく増えたものですから、全体としては貨物量、船の数も増えているというのが現
在の状況です。また一部はロシアの北極海の東側の方の沿岸の資源調査であるとか、そう
いった活動のために必要な資機材などがロシアの極東地域から、この辺りに結構な回数で
運ばれているというのが去年の状況でした。
だいたい北極海航路の国際輸送は 2010 年ぐらいから始まっているのですが、これまで運
ばれたもの、それから、この先ちょっと可能性がありそうなものを地図にプロットしてみ
ると、まずは北極海で開発される天然資源、先ほど出てきている LNG などが、ヨーロッパ
であるとかアジア市場であるといったところに運ばれているのが最も主要な貨物になりそ
うだと思われます。
それ以外にも、ロシアのムルマンスクだとか、あるいはノルウェーの北の方の拠点の港
だったり、産業拠点だったりというところが北極海航路を使えば、アジア市場で自分たち
の生産品であるとか、天然資源が主体でしょうが、それを輸送できる可能性があります。
アジア市場が、こういうヨーロッパの北部の地域にとっては、これまでより物理的に、夏
だけではありますけれども、より近い市場になり得る可能性が出てきたのが現在の状況で
す。アジアのわれわれ、日本、韓国、中国にとっては、同じように、ヨーロッパ市場が、
スエズ運河を通って延々行くのに比べると 30%、40%近くなって、もっと物理的に近い経
済圏として、新しい関係が生まれるのではないかというのを期待する声も上がっているわ
けです。
その中で、北海道、われわれは、どういう戦略をもって何を、どこを攻めていけばいい
33
のだろうかを何とか、この研究プロジェクトのアウトプットの中で示していきたいなと考
えている次第です。その中のアイデアをいくつか今日は紹介したいと思います。
とにかく、ありそうな貨物を羅列してみると、ドライバルク、これは北欧の方で結構、
鉄鉱石が出ます。でも、鉄鉱石は北海道で使うというと室蘭しかないわけですが、これま
で違うところから調達してきたものが北極圏から調達できると、より安く提供できるので
あれば可能性が出てきます。ただし、すでに調達しているものの調達地が一部変わるとい
うことで、全体量として、われわれの地域の全体量、物流量が増えるというわけではあり
ません。LNG はすで北海道に入っておりまして、将来その一部が北極圏のものになるとい
う可能性がないとは言えないと思います。
一方、純粋に新しい市場に新しいものを持っていける可能性は何だろうかと思っていると、
一つには水産品があるのではないかと考えてみました。完成車もそうですが、完成車を使
うためには北海道で完成車を生産しなければならないという課題があります。
コンテナ貨物について、いくつか可能性について述べてみたいと思っております。北極
海航路は、何といっても北極海の氷が、どんどん減ってきたのが一つの背景になっていま
す。より走りやすくなっていって、走れる期間が少しずつ延びているということです。
とにかく北極海航路は何か使えそうになってきたのだから、コンテナはできないのか、
なぜ、いま運べないんだというような議論になってくると、もうちょっと待ってください、
時間軸をもうちょっと考えてくださいと申し上げています。例えば、バルク貨物は単純に 1
回、運んで、これで終わりということもできるのですが、コンテナは、そうではなくて、
先ほど古市さんが言ったように、通年で連続的に継続的に運ぶサービスを考えなければい
けないため、北極海の氷に、もう少し弱まってもらって、走れる期間が長くなってくれな
いと経済的にも厳しそうだなと思われます。ですからコンテナについては、現在は夏にス
ポット的に試験運行が行われるにとどまっています。
一方、バルク貨物はすでにたくさんの実績があって、事実上、一つのニッチな市場として
成立しつつあると思います。近い将来、LNG 船が通年で定期的に運行する段階には来てい
るのですが、コンテナについて考えてみると、もうちょっと待たなければいけない、もう
ちょっと長い時間軸で考えていかなければならないと思います。
それは、海の氷の問題でもありますし、北極海を走れる船の数がまだたくさんないとい
う問題でもあります。市場も、北極海航路が使えるように、どんどんなってきたといえど
も、そう認識し始めてまだ4年、5年しかたっていないわけです。まだ unknown なところ、
不確実な部分が、たくさんあるのですから、本当にコンテナを使おうと思っても、夏期に
スポット的に、ちょっとやってみようかなという動きがあるかどうかというのが現在の状
況だと思います。いずれ、海氷がもう少し減ってきて、市場環境も安定してきて、ビジネ
スモデルとして、こういうことをやれば、うまくいくのではないかという企画が生まれて
くることが、もうちょっと長い時間軸であれば期待できるのではないかと思っています。
そのコンテナですが、最近、船のサイズが、今日も紹介されましたように、20,000TEU
まで大型化すると、輸送コストが劇的に安くなっています。しかしこの大型船は少々ずる
34
いことをやっています。設計されている定格速度を落としてしまっているのですね。
「スロ
ースチーミング」という言葉がありますが、これは重油燃料が非常に高いときに、船の速
度を落として船の速度を落とすと、だいたい、その 2 乗から 3 乗に反比例して燃料消費率
が減るため、ゆっくり走ることによって、ものすごく燃料を削減することなのです。
20,000TEU の船が 8,000TEU ぐらいの船と同じぐらいのエンジンを積んでいるグラフが
出ておりました。その代わり、相当、速度を落としています。定格速度を落とし、時間が
かかってもいいから、安く、たくさん運ぼうというのがコンセプトになっているというこ
とです。ただ、それ以外にも、コンテナ輸送を定期的に行うのであれば、定時性、あるい
は、途中に、たくさん寄港地がなければいけないなど、いろいろ条件があるわけで、そう
いう条件を北極海航路は満たせない部分がたくさんあります。
そこをどう回避して北極海航路の利点を強調するか、そしてビジネスとして成り立つよ
うに持っていくか、そういうシナリオをいかにつくるかが、特にコンテナの輸送を考える
ときには必要になってくるわけです。
では、どうしたらいいのだろうかというので、いくつかアイデアを書いているので、お
時間がある方は読んでいただければと思います。今日、皆さまの前でお話しして、皆さま
の中で、ぜひいろいろ考えていただきたいのは、それでは、北海道、われわれは、どうし
たらいいのだろう、どこを攻めていこうかということです。
例えば、鉄鉱石の話は先ほど出ましたが、それ以外に北海道の特徴というと一次産品。
水産品だけでなくて、農産品もそうです。では、その水産品を、物理的に空間的に、より
近くなったヨーロッパ市場やロシアの欧州側市場に、どうやって投入していくことができ
るのだろう、どうやったら市場価値が持てるのだろうというところを考えて攻めていくこ
とができるのではないかと思います。
一つのアイデアとして、ロシアは、いまムルマンスクという、モスクワ、サンクトペテ
ルブルクという大消費地から 1,500 キロぐらい離れた港に、コンテナのターミナルをつく
りたいと思っているんですね。もう一つ、このムルマンスクは、こちらのペトロパブロフ
スク・カムチャツキーから北極海航路を通して水産品を持ってきたいと考えています。そ
して、そこで揚げて鉄道で、ロシアの大消費地であるモスクワやサンクトペテルブルクに
運ぶためには、どういうシナリオがあるかについて、水産会社、鉄道会社、船会社、州政
府などが集まって検討する委員会が今年、立ち上がって、いま検討中です。
並行して、このペトロパブロフスク・カムチャツキーというところでコンテナターミナ
ルを整備しようという計画もつくっております。ロシアは本当に、たくさん計画があって、
そのほとんどが実施されないというのが実際のところではあるのですが、その一つかなと
思っていたのですが、結構詳しい構想図ができたりしています。ここのコンテナターミナ
ル整備については、中国と、ロシアのロスモルポルトすなわちロシアで港湾の施設を建設
する機関が、コンテナターミナル建設に関する協力覚書を結びました。こうして中国マネ
ーが、ここに入ってくるという可能性も出てきました。ターミナルの建設工事は、まだ始
まっていませんが、その前の航路の浚渫工事は、始まったと聞いております。
35
本当にロシアがペトロパブロフスク・カムチャツキーとムルマンスクの間で水産品を輸
送しようということを始めるのであれば、これを黙って見ている手はないだろうと思いま
す。苫小牧はウラジオストクへの定期航路をお持ちであります。ウラジオストクからは
FESCO(Far Eastern Shipping Company)がペトロパブロフスク・カムチャツキー行きの
船を毎日出していたと記憶しています。まだ確認していないので、これから確認しようと
思いますが、そういうかたちで、すでに、つながりがある、持っていける可能性はあると
思います。
ロシアは、あまりコンテナ輸送の経験のない国です。自分たちだけで、そのプロジェク
トを現実のものに持っていくためには結構、大変だと思うんですね。日本や韓国や中国の
協力があれば彼らのプロジェクト自体も早く進むだろうと思っています。
もう一つ。中国、あるいは韓国の、北極に関する動きについては礪波さんの方からも今
日ご紹介がありましたが、実は先週、私も上海に行っまいりました。上海は、中国の北極
南極研究の拠点になっています。そこの政策担当の人たちとお話をすると、中国側は、ず
いぶんコンテナにこだわっているんですね。
「北極海航路の利用については,コンテナが使
えるかどうかを大きな関心事にしている」と言っていました。ロシアもちょっと使ってみ
たい。中国は何とか実用化したいと。では、ロシアと中国に頑張ってコンテナ定期航路を
つくってもらって、われわれは、それを利用することを考えてはどうかと思っております。
もし本当に中国からコンテナ航路のサービスを夏だけでも動かせることになったときに、
おそらく中国は、やはり釜山、あとは日本の貨物をぜひ一緒に載せたいと思うのではない
かと思っております。それは、ある程度は貨物量を確保するという意味合いでも必要にな
ってくる可能性があります。
ですから、苫小牧としては、その航路をいかにして北海道・苫小牧に立ち寄らせるかと
いう戦略を考えていく必要があると思っております。その解決策が水産品であるかもしれ
ないし、農産品であるかもしれないし、それ以外の、時間価値の高い工業製品である可能
性だって、ないとは言えません。何とか、そこを解決するというか、1歩を踏み出すシナ
リオを考えていくというのが、これからの課題になっていくと思います。
このほか最近の話題を紹介すると、今年の 8 月に、アイスランドからクジラ肉が北極海
航路で運ばれるそうです。これは代替ルートとして北極海航路が使われることになりそう
だということです。どうしてかというと、クジラの肉を運ぼうとすると捕鯨反対団体が、
いろいろと過激な妨害行動をしかねないので、そういうリスクも含めて安全に運べそうな
ルートとして北極海航路が選ばれたということだそうです。
それ以外にも、中国や韓国の事業、ビジネスに協働してお互いにリスクを分かち合って
戦略的なシナリオを動かそうというのが一つの手だろうとは思っております。その中では、
北海道に寄るという動機を、貨物の中身であり、サービスであり、それ以外のものなど、
動機をつくってやらないといけないと思っています。
それ以外では、遠い将来、北極海でも東の方、太平洋と近い側の方でも天然資源開発が
行われるとなれば、その支援拠点の港がどうしても必要になります。そういう可能性も頭
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の片隅に置いておいていいのではないかと思います。
さらにもう一つ、水産品について紹介します。今日、韓国の釜山が、水産品の大きな市
場の機能を持つようになりました。韓国では水産業は非常に盛んで、たくさん魚が取れて
いるのですが、韓国産だけでは賄いきれず、かなり大量の水産品が北米から釜山に行って、
釜山の市場で中国市場や日本市場に、また売られていくというような市場機能を果たしつ
つあります。どうしてできたのだろうかというと、やはり欧州・北米間の大きな物流基幹
航路を持っているというところが一つのバックグラウンドにはなりますが、集積してサー
ビスを行うことによって、日本の水産加工業者さんも原材料調達の先として釜山を視野に
入れているという事実が生まれてしまいました。
この点で、集積機能を持つ国際的な水産物の市場機能を考えてみると、日本には国内市
場向けの市場しかありません。外から入れてきて日本で売るというのはあるのですが、日
本のものを出していく、日本のものや外国のものをここに置いてトレーディングの場にす
るというような市場は日本にはないわけです。ならば一つぐらい日本にあってもいい、そ
れだったら、北海道につくってもいいのではないかなということを、考えたりしている次
第です。
とにかく自分たちの足元をちゃんと見なければいけないと思うのですが、少しリスクが
あっても戦略的なシナリオが、どういうところにあるのだろうかというのを、この研究会
の中で、怒られてもいいから打ち出してみたいと思っている次第です。ご清聴どうもあり
がとうございました。
(講演 3 終了)
○司会 大塚さま、ありがとうございました。
本日最後のご講演は、地元を代表致しまして、苫小牧港管理組合専任副管理官、柏葉導
德より、
「苫小牧港の北極海航路活用に向けた取組みと期待」と題して講演致します。
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講演 4
「苫小牧港の北極海航路活用に向けた取組みと期待」
苫小牧港管理組合専任副管理者
柏葉 導德
ただいまご紹介いただきました苫小牧港管理組合の柏葉でございます。今日のセミナー
は、これまでのところで、だいたい北極海航路については皆さんの頭の中に入ったのでは
ないかなと思っております。
私の立場からは若干苫小牧港の現状の一端を示しながら、会場の皆さまと一緒に、この
苫小牧港湾が今後どう関わっていくべきなのか、どう期待を持つべきなのかというところ
について考えていただければと思っている次第でございます。
苫小牧港をお客さまに紹介するときに、苫小牧港のいいところは何だろうということで
(このように)四つのくくりで、だいたい、いつも説明させていただいております。
地理的な面、気象的な面でありますとか、北海道・本州間、国内分野での定期航路が日
本で一番多いことでありますとか、それは太平洋側、日本海側、津軽海峡があることによ
って週 100 便以上という強みがございます。
また、近くに新千歳空港があり、これも非常に苫小牧港にとっても大きな強みでござい
ます。あまり身近に感じることができないかもしれませんが、JR 貨物の駅もプラットホー
ム化があります。高速道路インターチェンジは、現在、西と東にありますが、さらに 5 年
後ぐらいには中央インターチェンジができるということもございます。それから多様な臨
41
海企業、しかも日本を代表するような、ものづくり産業が苫小牧港で非常に活発に活動を
しているというところでございます。
次に道路網の話です。先ほど申し上げました交通ネットワークが苫小牧から道内に幅広
く通じているというところでございます。これは空路でございまして、ここでは国内航路
のところをご紹介していますが、海外の方への 14 ぐらいの空港に定期便が就航している新
千歳空港でございます。
新千歳空港までは 30 分ぐらいの距離です。また、これは内航の部分でございまして、太
平洋側は、八戸、仙台、大洗、さらには名古屋方面と、日本海の方は秋田、新潟、敦賀に
デイリーでフェリーが通っております。先ほど(他の講師から)燃料の話もありましたが、
この RORO 船の場合は燃料の消費を抑えた運航をしている会社もございます。
苫小牧港が、これから本当に伸びていけるかどうかは、海外と、どのようにつながって
いるかということになります。直接的なつながりではないかもしれませんが、ここでお示
ししているのは直接的には北米のバンクーバーの方から来ておりますし、やはり一番多い
のは、先ほど古市先生、大塚先生からもありましたが、アジア方面が特に多く、釜山と結
んだ航路が非常に多いという特徴が苫小牧港でございます。
この表は、苫小牧港の数字遊びというわけではないのですが、苫小牧港のランキング 1
位のものを挙げてみたものです。物流だけではなくて、ホッキ貝の漁獲量ランキングも全
国 1 位でございまして、今日、来られた講師の先生方にも、ホッキのカレーを少し賞味い
ただいたところでございます。一番下の、シャーシの登録台数ランキングが全国 1 位とい
うのも苫小牧の一つの特徴ではないかなと思っています。
積雪寒冷地の北海道にあって苫小牧は冬季間の積雪量が極めて少ないところです。全国
ニュースですと、北海道は冬になりますと毎日のように雪害のニュースが多くございます。
しかし、苫小牧に限って見ますと、お隣の室蘭さんもそうですが積雪が少ない。これは 2014
年 1 月 21 日に市内と埠頭のところを撮影した写真を右側にご紹介しているのですが、極め
て積雪量が少ないというのが苫小牧の一つの特徴でございます。
最初に開港したのが西港区でございまして、昭和 38 年に開港しているのですが、こちら
の方には港の建設以前からの製造、王子製紙さんであります。また港ができることによっ
て、最近ではトヨタ自動車北海道さんには 3 千 300 人を超える方が働いておられますし、
東北以北唯一の出光興産の石油精製所があるとか、そういったところが苫小牧の港の特徴、
強みだと思っております。
一方、東港区は破綻したと先ほど聞かれましたけれども、北海道電力の石炭火力発電、
平成 20 年に西港から東港に国際コンテナターミナルが全面的に移転致しまして大幅に能率
がよくなりました。
西港時代は航路の信号の問題もあって沖待ちしていたコンテナ船が多かったのですが、
東港に移りまして、ほぼそういった面が解消されました。東港区の東側には新日本海フェ
リーがありましてこれは津軽海峡を通じまして日本海側の航路に出るのですが、これも通
る位置が近いということが強みになっております。
42
ちなみに、開港したときの苫小牧市内の製造品出荷額は 290 億円ほどでしたが、ほぼ 50
年後の 2014 年には、
道内の製造品出荷額が 6 兆円をちょっと上回っているということです。
つまり、1 兆 2 千億円を苫小牧市内の製造業の出荷額が占めているということになります。
これは港湾活動から見ると、市の人口動態と、経済活動が盛んだということを、経済指
標と取扱貨物量、いわゆる統計学的には相関しているという言い方をよくするのですが、
昭和 38 年から見ますと、人口も 17 万 4 千人まで増えてきたというところが苫小牧でござ
います。
このように、貨物と人口が相関しているということをちょっと頭に入れておいていただ
きたいと思います。日本国内で苫小牧港は 4 番手ぐらいの貨物量でございまして、一番多
いのは名古屋、次いで、千葉、横浜、苫小牧ということでございます。
下のグラフは、港に近接する人口を少しずつ足しこんでいるのですが、例えば、名古屋
港のところですと、名古屋市に、さらに愛知県全域の人口を入れますと、740 万人というよ
うな数字が出てまいります。千葉も、千葉県全域で 620 万人ぐらい、横浜は、横浜市だけ
だと思うのですが、370 万人ぐらいです。
一方、苫小牧港は上のグラフで 4 位ですので、苫小牧市だけだと、先ほどは 17 万 4 千人
と申し上げましたが、札幌市を含めて 212 万人ぐらいですので、隣の横浜や北九州から比
べて苫小牧の経済活動が人口の面から見ても広域的な役割を果たしているのではないかな
ということが、この数字からも読み取っていただけるのではないかなと思います。
そうしますと、道内で苫小牧港が占めるシェアを貨物別に少し見た、この横の棒グラフ、
全体をお示しできないのですが、完成自動車みたいなもの、いわゆる消費財みたいなもの
は非常にシェアが高い傾向にあります。
また、道内のほかの地域にも、ものづくり産業がありますので、紙・パルプであります
とか、重油でありますとか、石炭でありますとか、こういったものが、それぞれの地域の
経済活動に伴っていて、苫小牧港もそれなりのシェアを占めているというところでござい
ます。
外貿コンテナで見ますと、これは平成 25 年の統計のデータですが、年間 21 万 TEU ぐら
いが苫小牧港で扱われています。これには、ちょっと内航の運んだ貨物が入っていません
が、それを入れますと 24 万 TEU を少し超えるという辺りでございます。
港湾整備の主な最近の取り組みは、既存の施設を改良している、また、新たな施設への
投資も含めてやっているのですが、左側の図が西港区で、右側の図が東港区です。西港区
の方は、いわゆる RORO 船のターミナルで、平成 25 年 9 月に耐震強化岸壁、1 バースが供
用を開始したところでございます。
東港区の方は、マイナス 14m 岸壁と 12m 岸壁の 2 バース、3 基のガントリークレーンを
擁するコンテナヤードでございまして、こちらの方もマイナス 12m 岸壁が耐震強化となっ
ているところでございます。現在、右側の、少し青いですが、この辺りの延伸工事が今年
度、終えようとしているところでございます。
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このスライドは、その整備の効果をお示ししようと思って見ていただいているのですが、
特にコンテナが西港区から東港区に移転して、それまで沖待ちが多かったのですが、平成
23 年、平成 24 年には画期的に沖待ち時間が減ったということがございまして、これは本当
に港湾整備の効果があったと、いろいろな場面でも強調させていただいているところでご
ざいます。
このスライドは東港区の国際コンテナターミナルを紹介しているところでございます。
岸壁そのものは 2 バース、ガントリークレーンは 3 基でございますが、積雪寒冷地らしく、
全天候型の検査所を設けてございます。道内は酪農産業が盛んでございますので、干し草
等が輸入されますと、こちらの方で全天候型の施設で、いつでも検査ができるという状態
を保っているというところでございます。
港湾施設の現状の中で、どのぐらい苫小牧港に大きな施設があるのかというところでご
ざいまして、北極海航路に関係するような貨物の中で言いますと、原油とか、石炭とかだ
と思います。原油で言いますと、出光さんのシーバースで 25 万トン級の対応の施設、東港
区の方ですと 30 万トン級の船に対応できる施設があります。
石炭では東港区の方に苫東ふ頭さんの 6 万トン対応の施設、西港区では日軽金中央ふ頭
に 6 万トン対応の施設があるということでございます。木材チップ、飼料穀物についても、
お示しの通りでございます。
これは出光興産北海道製油所の施設をお示しするのですが、西港区の沖合にシーバース
があって、東港区のシーバースと違ってちょっと天候が悪いと使えないということはある
のですが、シーバースに船を着けて、海底を通って製油所まで原油を運んでいます。
LNG の関係で申しますと、STS(Ship To Ship)による LNG 移送試験として過去に 2 回、
平成 23 年と平成 24 年にカタールとマレーシアから LNG を輸送しまして、東港区の、先ほ
どのシーバースから西港区まで、大型の LNG 船から小型の LNG 船へ天然ガスを積み替え
て輸送した試験を実施していまして、こうしたノウハウ等も蓄積されているところでござ
います。
こういう国際バルク貨物に、これから、われわれがどう立ち向かっていくのか。先ほど、
大変、国際的に厳しい情勢については、いろいろお話をいただきました。しかし、苫小牧
港で扱っているような石炭、穀物、原油といった量は少ないですが LNG、こういったもの
が、国際的な獲得競争が非常に激化しているという現状にあって、とりわけ中国などが大
量に買っているわけです。こういった情勢と、われわれはどう向き合って施設を運用して
いくかというところが、立地している企業にとっても大きいな関心事になろうかなと思い
ます。
これは昨年 7 月の『日本海事新聞』に掲載されましたが、2013 年の主要コンテナの動き
です。これでお示ししたかったのは、アジアと北米でありますとか、アジアとヨーロッパ
間のコンテナ貨物の動きは、出る方が倍で、戻ってくるのは半分ということでございます。
このコンテナの荷動きの数値は千 TEU 単位ですが、こういったものをどう考慮していくか
というところでございます。
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先ほどの大塚先生の話に関係しますが、苫小牧は、どういうところとつながっていくの
かを考えることが大事になります。これはアジアと北ヨーロッパの航路のところでありま
すが、いわゆる寄港地としてローテーションに入っているというようなところと、いかに、
しっかりとつながっていくか、日数を短くしていくか、こういったところが荷主の皆さん
にとっても非常に関心事になるのではないかなと思っているところでございます。
このスライドは、海外宅急便事業で、細かく説明できませんが、ヤマトさんが海外の宅
急便を年々展開していっています。こういったビジネスが今後どう急速に拡大していくか、
こういったことについても、非常に関心を持っているところでございます。
こういった国際コンテナ輸送を巡る、いろいろな論点があり、先ほど太平洋、津軽海峡
を通る北米、ロシア基幹航路、これにさらにヨーロッパからの北極海航路、こういったも
のが加わっていって全体的にどうなるのか。アジア域における国際コンテナ輸送のビジネ
スがどう展開されるのか、こういったことを見極めながら、基幹航路を形成する中継拠点
と、この苫小牧港が、どう利便性を高めてつながっていけるのか。こういったところを考
えていきたいなと思っているところでございます。
このスライドは水産物の輸出の一例ですが、日本から出ている輸出水産物の品目の内訳、
これも財務省の統計を参考にしているのですが、平成 25 年で言いますと、北海道が一番多
いのは、4 分の 1 を占めるホタテということになると思います。
このホタテの輸出について少し統計を見ていきますと、全国の税関があって、ここの中
に苫小牧があるわけですね。その 50.2%というのが苫小牧のポジションでございまして、
こういうところの強みをどう生かしていくか。
それと、地域的にはアメリカと EU のなかを見ていきますと、比較的、距離は遠いのです
が、生活文化的な距離は近いと考えますと、アメリカに 5.5%輸出しているのですが、EU
には、まだ 2.1%しか輸出していないということになりますので、こういったところとどう
つなげていくか、増やしていけるかということになると思います。
トヨタ自動車さんの出荷先についても、国内だけではなく、国外、多方面に向かわれて
おりますので、ものづくりの面においても、こういった貨物をどう苫小牧港から増やして
いけるのかというところになろうかなと思っております。
先ほど、大塚先生から、貨物の推移をお示ししていただいたかと思うのですが、苫小牧
港から見ますと、なかなかスエズ運河やパナマ運河では想像しにくいのだと思いますが、
北極海航路は何といっても近いわけですから、非常に親近感を持って考えていけるのでは
ないかなということになろうかなと思います。また、フリー・トレード・ゾーンみたいな
ものも東港港であれば設定しやすい、考えやすいのかなということがあります。
札幌が非常に至近距離にあります。そういう国際的なつながりや、都市的サービスの利
便性を高めていけるところも非常に重要で大事だと思っておりますし、港湾機能の拡張性
についても今後、増え続けるのかなと思います。
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こういったことで、私どもなりの期待と致しましては、北東アジアにかなり大きな中継
拠点ができるのだとした場合に、これはもう、これまでの北米も同じですが、極めて近距
離に拠点ができることが期待されるのではないかなと思います。
あとはバルクの輸送利用の場合には、季節的な利用がされるということでありますが、
国内外、既存ネットワークを核とした連携が期待できるのかなと思います。もしくは、バ
ルクの場合、ヨーロッパの方からスエズルートで来て、北極海航路で帰る、そういったこ
とも期待できるのかなというところでございます。
最後の方になってきましたが、こういった「北極海航路における苫小牧港のハブ港構想」
と言いますと、そういう大それたものではありませんが、こういったところを訴えかけて
いくのかなというところのものだけを取り上げています。
先ほどのスライドにもありましたが、北極海に近い、近接している、フリー・トレード・
ゾーンの設定が可能な東港区がある、その背後に大都市札幌があるということで、そうい
った交通・都市インフラがあると。地形的にも平坦で広大な土地がある。これについては、
昨年ご講演いただきました北川先生にも取り上げていただいているところでございます。
このスライドはアジアの中で、苫小牧港がどのくらいの位置にあるか、これをどう使っ
ていけるかというところは、われわれも、皆さんにとっても非常に関心を強く、これから
も持ち続けていきたいなと思っているところでございます。
ちょっと駆け足になりましたが、苫小牧港が北極海航路に、どういった面で期待してい
くか、期待していきたいか、そういった面の一端を会場の皆さんに考えていただきたいな
と思います。ご清聴どうもありがとうございました。
(講演 4 終了)
○司会 ありがとうございました。これをもちまして、全ての講演が終了致しました。
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51
質疑応答
○司会 これより 4 講師の講演について質疑応答を行います。質問をされる方は、どの講
師へのご質問かを最初にご発言いただくようお願い致します。それでは質問されたい方は
挙手をお願いします。
○会場 1 大変貴重なご講演をありがとうございました。礪波先生にご質問させていただき
たいと思います。
中国と韓国の北極政策についての影響力について拝聴させていただきました。一方で、
パラ外交ということで、しかしながら、北海道や苫小牧のパラ外交だけでは、なかなか、
やはり北極海航路活用に関しては中・韓などに対峙できないのではないかと感じた次第で
ございます。
そこで、わが国として、いわゆる北極政策、これは研究などのソフト、あるいは建設協
力などのハード、いろいろあろうかと思いますが、現状のわが国の北極政策は、どのよう
になっておられるのか、あるいは、どのようにあるべきだとか、ご示唆をいただければと
思います。
○礪波
ご質問ありがとうございます。日本の北極政策については、私よりもエキスパー
トの方が、こちらの会場にいらっしゃると思いますので、僭越ながら私の方からは個人的
な意見です。
わが国の北極政策ということで、現在は三つほど優先事項があります。まず最初に、気
候変動、環境問題について。次が、北極海航路、第 3 に資源開発ですね。
霞ケ関でヒアリングをしますと、実業界の関心が若干低いのが問題と考えている印象を
受けました。国としては、やはり実業界、国民の中から北極にもっと関わっていくべきだ
というような声がないと、なかなか動けないということのようです。科学技術、サイエン
ス系の研究については、日本は南極でずいぶん長くやってきましたので、そことの兼ね合
いをどうするかというところがあるように見受けられます。
どうあるべきかについては、日本政府としては北極評議会のオブザーバーとなって、オ
ブザーブするだけですが意思決定過程に参加できるようになったので、これを今後どう活
用していくかというところのアイデアを広く国民から募集しているのではないでしょうか。
日本は中・韓に比較しますと語弊があるかもしれませんがより民主主義的です。これが
強みでありジレンマなのですが、結果的に中央政府のイニシアチブの弱さに繋がっている
のかもしれません。
○司会 ほかに質問されたい方は挙手をお願い致します。
52
○会場 2 大塚先生に質問が一つあります。
実は、5 月 19 日にロシア連邦サハ共和国の第一副首相が来道して、道庁、山谷副知事と
意見交換をして、その中で、北極圏に属するサハ共和国は北極海航路にも非常に関係があ
って、ぜひ北極海航路でも協力関係を取っていきましょうというお話がありました。
そのとき、ちょっと同席していて、具体的に、どんな協力があるのかなと思っていたと
ころ、今日、大塚先生のご講話に、北極海の資源開発物資の輸送拠点という話が出てきて、
おそらく、これなのかなと感じました。具体的に、この輸送拠点とは、例えば、どういう
ことなのかなということで、もう少し詳しくお話しいただければと思います。
○大塚
ご質問ありがとうございます。サハ共和国の輸送拠点は北極海のティクシだと思
っています。これはレナ川の沿岸の、例えば天然資源の積み出し港として、サハ共和国は
長年、対応しているところなんですね。
ただ、ソ連邦が崩壊して新生ロシアになってという中の経済混乱で、経済発展からほと
んど置いていかれてしまった地域かもしれません。ですから、非常に、共和国の方は、国
の経済開発に何とかしなければという期待をかけられているのだと思います。
おっしゃいましたように、サハ共和国の沖の方の海の天然資源開発というキーワードも、
遠い将来は出てくるかもしれません。もうちょっと近いところでは、例えば、サハ共和国
では木材や石炭が出ます。石炭は、いまはご時世ではないかもしれませんが、それ以外に
も、なにがしかのサハ共和国の天然資源を、ということは今後あり得るかもしれません。
サハ共和国というところは、そういう天然資源が非常に豊かなところなのですが、陸上
のアクセスが、ものすごく大変で、陸続きであるけれど、道路で行こうと思ったら、ロシ
アからは、ちょっと無理ですね。鉄道も、もうちょっとでつながるところで、まだつなが
っていないのではないかなと思うんですね。
基本、飛行機でしか行けないところなので、たぶん、そういう課題を持っているところ
同士が共同することは、何か課題を見つけながら、それを戦略に転じられる可能性がある
かもしれません。
そういう意味で、サハ共和国第一副首相がいらっしゃったことは、僕も初耳だったので
非常にありがたいことですし、ぜひその辺の情報を教えていただければと思います。今後
とも、どうぞよろしくお願いします。
○司会
質疑は続いておりますが、会場の都合がございまして、最後に一人の質問にて終
了させていただきたいと思いますので、ご了承お願い致します。質問されたい方は、いら
っしゃいますか。
○会場 3 古市先生にご質問です。今後の需要に不確定要素があるというのは非常によく分
かったのですが、耐氷型の船の発注状況や、コンテナ船のお話だったのですが、その辺が
あれば、お聞かせいただければと思います。
53
○古市 ご質問ありがとうございます。
先ほどのプレゼンテーションの一番最後にご紹介しましたが、コンテナ船についてはマ
ースクという会社が発注したというのがあります。それ以外には、1 年前に同じような情報
で、日本の NYK がヨーロッパでつくっている会社でユナイテッド・ヨーロピアン・カー・
キャリアー(United European Car Carrier: UECC)という会社が、3,800 台積みだったと思
いますが、自動車専用船の耐氷型の船をすでに発注したという情報が同社のホームページ
上に公開されています。
これも先ほどのマースクと同じなのですが、NYK のホームページによると、バルト海で
のサービスを想定した耐氷型の船であるということです。
バルト海は、礪波さんがいらっしゃるデンマークから東に向かって、スウェーデン、フ
ィンランド、ロシアのサンクトペテルブルクまでつながっている海域なのですが、冬にな
ると氷で埋まってしまうところなので、そこで安定的なサービスを行うためと聞いていま
す。
ただ、その船が実際の運行を始めてしまえば、ある日、突然いつでも北極海航路は通れ
るんだということは一応、意識しておきたいということだと思います。以上です。
○司会 それでは、これにて質疑応答の時間を終了させていただきます。
最後に、貴重で有益なご講演をいただいた 5 名のプロジェクトチームの方々に盛大な拍
手をもって感謝申し上げたいと思います。よろしくお願い致します。
ただいまをもちまして、北極海航路活用戦略セミナー in 苫小牧の全プログラムが終了致
しました。最後に、本日のセミナーの主催者を代表致しまして、北海道総合政策部交通政
策局物流港湾室長の高瀬
浩より閉会のごあいさつを申し上げます。高瀬室長、よろしく
お願い致します。
54
閉会あいさつ
北海道総合政策部交通政策局物流港湾室長
高瀬 浩
ただいまご紹介をいただきました北海道総合政策部物流港湾室の高瀬でございます。本
日はお忙しい中、大変多くの皆さまにご参加をいただき誠にありがとうございます。
経済活動の国際化が拡大し、世界規模での物流ネットワークの構築が進む中、本日のセ
ミナーのテーマであります北極海航路が、スエズ運河やパナマ運河の開通に匹敵する第 3
の画期的な航路と言われております。東アジアと欧州との距離を大幅に短縮することから、
近年、国際的に大きな注目を浴びており、わが国や中国においても、夏の期間の商業運行
が始められたところでございます。
現在の基幹航路上では、東アジアの中で欧州から最も遠い北海道が、この北極海航路の
利用が進展すると、欧州に最も近い東アジアの玄関口となります。道では、こうした地理
的優位性を活かしながら、国際的な物流拠点となることを目指す、「北東アジア・ターミナ
ル構想」を進めております。
中でも、北海道と欧州の新たな物流ネットワークの構築により、本道活性化の起爆剤と
なることが期待される北極海航路において、本道が重要な役割を果たすことを目指してお
り、この取り組みの推進を図るため、「北海道北極海航路調査研究会」を立ち上げ、北極海
航路の現状や北海道における活用の可能性などについて研究を重ねているところでござい
ます。
こうした中、本日は、北極海航路活用戦略研究プロジェクトチーム、苫小牧港管理組合、
道の三者の共催により、北極海航路活用による欧州と北海道間の新たな相互関係創出の可
能性の検討として本セミナーを開催させていただいたところでございます。本セミナーが
皆さまにとって有意義なものとなれば幸いです。
最後になりますが、講師の皆さまには貴重なご講演をいただきましたことに心から厚く
御礼を申し上げますと共に、本日お集まりの皆さまのご健勝を心から祈念申し上げ、閉会
のあいさつとさせていただきます。本日は、ありがとうございました。
(閉会あいさつ終了)
○司会 高瀬室長、ありがとうございました。
以上をもちまして、北極海航路活用戦略セミナー in 苫小牧を終了と致します。本日はご
多忙のところ、長時間にわたり当セミナーにご参加いただきまして、誠にありがとうござ
いました。
(終了)
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