健康支援 第17巻2号 9-14,2015 気分・感情状態評価としての POMS-VAS の妥当性の検討 大杉 紘徳1),田中 芳幸2),兒玉 隆之1),村田 伸1) Examination on validity of a visual analogue scale for the Profile of Mood States Hironori OHSUGI 1),Yoshiyuki TANAKA 2), Takayuki KODAMA 1),Shin MURATA 1) Abstract The purpose of this study is to determine the clinical validity of a mood and emotion measure developed by us, named the Visual Analogue Scale for the Profile of Mood States(POMS-VAS). Participants were 169 young healthy university students(mean age: 19 . 1 , SD: 0 . 7). All gave written informed consent. The study was approved by the Kyoto Tachibana University ethics committee. Mood and emotion were measured using the POMS-VAS and the Short Form of the Profile of Mood State(POMS-SF)at 2 times: 2 months(1 st)and 1 week(2 nd)before a routine examination. The POMS-VAS comprises 6 items, each of which corresponds a subscale of the POMS-SF: Tension, Depression, Anger, Fatigue, Vigor, and Confusion. Data were analyzed using Wilcoxon s signed-rank tests and Spearman rank-order correlations. Results showed significant differences between the 1 st and 2 nd times in each subscale of the POMS-SF(P< 0 . 01). Vigor scores significantly decreased between the 1 st and 2 nd assessments, whereas other subscale scores significantly increased in the same period. On the POMS-VAS, all subscales except for vigor had significantly higher scores in the 2 nd assessment than the 1 st(P< 0 . 01), while vigor scores did not significantly differ between assessments. There were significant correlations between each POMS-VAS item and its corresponding POMS-SF subscale(ρ= 0 . 51 - 0 . 74). These results suggest that the POMS-VAS scores reflect participants mood and emotion, and indicate that this new measure has clinical validity. The POMS-VAS is very easy and quick to complete. Therefore, it could be useful for assessing mood and emotion in clinical settings. : clinical assessment, POMS-VAS, mood, emotion 1)京都橘大学健康科学部理学療法学科 Department of Physical Therapy, Faculty of Health Sciences, Kyoto Tachibana University 〒607-8175 京都府京都市山科区大宅山田町34 京都橘大学健康科学部理学療法学科 Tel: 075-574-4313 Department of Physical Therapy, Faculty of Health Science, Kyoto Tachibana University: 34 Ohyakeyamada, Yamashina-ku, Kyoto-city, Kyoto 607-8175, Japan. TEL: +81-75-571-4313 E-mail:[email protected] 2)京都橘大学健康科学部心理学科 Department of Psychology, Faculty of Health Sciences, Kyoto Tachibana University 9 健康支援 第17巻2号 9-14,2015 Ⅰ.はじめに クさせるものである。これは痛みの評価のために開発され 主観的な気分や感情状態を定量的に評価する試みは心 たものであるが,これまでに主観的健康感 20)や主観的な気 理学を中心に検討され,現在では Profile of Mood States 分 21)の評価にも用いられてきた。大杉ら 19)は,VAS の質 (POMS)や State-Trait Anxiety Inventory(STAI),De- 問項目を,POMSを参考にして 「緊張」 , 「抑うつ」 , 「怒り」 , pression and Anxiety Mood Scale(DAMS),Positive 「活気」 , 「疲労」 , 「混乱」の6項目とし,VASで気分・感情 Mood Scale(PMS)など数多くの評価尺度が開発されて 状態が簡便に評価可能であるかを検討している。その結 いる。POMS(および POMS 短縮版)は 65 項目(短縮版 果,POMS 短縮版で得られた成績とPOMS-VAS で得られ では 30 項目)の質問結果から,「緊張−不安」 , 「抑うつ た成績の間に中等度から高い正相関を認め,POMS-VAS −落ち込み」 ,「怒り−敵意」 , 「活気」 , 「疲労」 , 「混乱」 の妥当性が確認されている。しかし,大杉らの報告 19)では の6項目の気分や感情状態が評価可能であり1),リラク POMS-VAS の併存的妥当性が示されたのみであり,実際 ゼーション効果の検証2,3)や,Quality of Life(QOL)評 に気分・感情状態を変化させる負荷が生じた際に,その反 価4,5),医学・医療介入効果の検証6-8)など広く用いられ 応が捉えられるか(臨床的妥当性)については明らかにさ ている。STAI は「不安」という気分・感情状態の一つに れていない。POMS-VAS は臨床での簡便な繰り返し測定 焦点を当てた評価であり,刻々と変化する不安状態(状 を目的としているため,気分・感情状態を変化させる負荷 態不安尺度)や不安になりやすい性格傾向(特性不安尺 に対する反応が適切に評価可能かを明らかにする必要が 度)を,それぞれ 20 項目の質問により評価することがで ある。 きる。医学的介入9)や疾病 10),心身状態 11)に関わる不安 そこで本研究では,POMS-VAS の臨床的妥当性を明 状態などの評価において広く用いられている。DAMS らかにするために,気分・感情状態を変化させる負荷が は,これまで明確に弁別されてこなかった 「抑うつ気分」 かかる前後で,POMS 短縮版と POMS-VAS を同時に測 と「不安気分」を十分に弁別することのできる質問紙と 定し,その負荷に対する気分・感情状態の変化が POMS- して作成され 12),介入効果の検証に用いられている 13)。 VAS で評価可能か否かを明らかにした。 一方,PMS はリラックスや快気分など肯定的な気分を 評価する質問紙として作成された 14)。 Ⅱ.対象と方法 このように,数多くある気分・感情状態の評価は,そ 1.対象 れぞれに特徴を持ち,目的に応じて用いられている。中 対象はA大学a学科在籍中の若年健常人 186 名とし でも POMS は,6つの異なる気分・感情状態の評価が可 た。対象者選定のフローチャートを図1に示す。全 186 能であり有用性が高い。また,各項目おいて,年齢階層 名のうち,初回測定日に参加し,研究参加に同意が得ら 別に平均値が示されており,標準化が可能であることか れた者は 179 名であり,うち1名に欠損値が認められた。 15) 16) 17) ら,医療 ,福祉 ,食品,栄養 ,環境 18) など様々な 分野で広く用いられている。しかし,POMS に限らず, 気分・感情状態の評価票はヒトの種々の感情を広く詳 細に捉えるために,多くの質問項目が設定されており, 刻々と変化する心理的情報を捉えるには時間的問題およ び対象者にかかる負担が問題となる。臨床での介入効果 を検証するためには,介入前後の状態を評価する必要が あるが,介入前後に数十に上る質問に回答させる既存の 評価では負担となりやすい。そこで McNair1)らは,65 の質問項目からなる POMS の質問数を 30 項目に削減し た POMS 短縮版を開発したが,臨床ではさらなる簡便 化が求められている。 このような背景の中で,大杉ら 19)は Visual Analogue Scale(VAS)を応用した気分・感情状態の評価法(Visual Analogue Scale for Profile of Mood States: POMS-VAS) を検討している 19)。VAS は紙面上に配置された10 cm の 直線の左端を「まったくない」 ,右端を「これ以上ないくら 図1.対象者選定のフローチャート い強い」として,質問項目に対する回答者の状態をチェッ 10 健康支援 第17巻2号 9-14,2015 2回目の測定に参加した学生は 170 名であり,うち1名 を引いた値であり, 「全体的気分」として解析に用いた。 に欠損値が認められた。全2回の測定に参加し,欠損値 が無い 169 名(平均年齢 19 . 1 ± 0 . 7 歳,男性 97 名,女性 2)POMS-VAS の測定 72 名)を解析対象とした。なお,本研究の実施にあたり POMS 短縮版の下位6尺度に準じて,「緊張」, 「抑う 京都橘大学研究倫理委員会の承認を得て行った。 つ」 ,「怒 り」 ,「活 気」 , 「疲 労」, 「混 乱」の6本 の 直 線 (10 cm)を用意し,対象者にそれぞれの項目について 2.測定方法 チェックをさせた。また,教示を統一するために,それ 本研究では,学期末に行われる定期試験を気分・感情 ぞれの項目の前には項目の説明文を入れた(図2) 。対 状態を変化させる負荷とした。定期試験期間2ヶ月前 象者にチェックをさせた後に,測定者が左端からチェッ (初回)を負荷のない状態とし,定期試験期間1週間前 ク箇所までの距離を測定し,その距離(cm)を測定値と (2回目)を気分・感情状態を変化させる負荷に暴露され した。さらに,全体的な気分を示すために,POMS 短縮 ている状態として,2回にわたり,対象者の気分・感情 版の TMD に準じて, 「緊張」 , 「抑うつ」 , 「怒り」 , 「疲労」, 状態を POMS 短縮版および POMS-VAS を用いて「現在」 「混乱」の5項目の合計値から「活気」の値を引いて得ら の気分について測定した。 れた値を「全体的気分」として検討に用いた。 1)POMS 短縮版の測定 3.統計学的解析 本研究では,横山ら 22)によって翻訳された日本語版 定期試験が気分・感情状態に影響を与えるか,また POMS 短縮版を用いた。POMS 短縮版は気分の状態を POMS-VAS が定期試験による気分・感情状態の変化を 評価する 30 項目からなり,各項目に対して「まったく 反映しているかを検討するために,定期試験期間2ヶ月 なかった」から「非常に多くあった」までの5段階(0- 前(初回)と定期試験期間1週間前(2回目)の POMS 短 4点)のいずれかを回答させた。それぞれの項目得点か 縮版および POMS-VAS それぞれの項目得点および全体 ら「緊張−不安」 , 「抑うつ−落ち込み」 , 「怒り−敵意」 , 的気分を,Wilcoxon の符号付き順位検定と,Spearman の順位相関係数により検討した。 「活気」,「疲労」, 「混乱」の6つの下位尺度得点を算出 して解析に用いた。さらに下位尺度得点を用いて Total 解析は全て SPSS Statistics ver. 19 を用い,有意水準 Mood Disturbance(TMD)を算出した。TMD は6つの を5%とした。 下位尺度のうち,活気以外の5尺度の合計から活気得点 䈅䈭䈢䈱䈱᳇ಽ䉇ᗵᖱ䈲䈇䈎䈏䈪䈜䈎䋿䈠䉏䈡䉏䈱᳇ಽ䈮䈧䈇䈩䋰䋨䉁䈦䈢䈒䈭䈇䋩䈎䉌㪈㪇䋨䈖䉏એ䈭䈇䈒䉌䈇ᒝ䈇䋩䉁䈪䈱✢ಽ䈱䈬䈱䈅䈢䉍䈮ᒰ䈩䈲 䉁䉎䈎䉕䉼䉢䉾䉪䋨䅜䋩䈚䈩ਅ䈘䈇䇯 ✕ᒛ 㪇 㪈㪇 ᛥ䈉䈧 㪇 㪈㪇 䋼ਇᯏህ䈣䈦䈢䉍䉟䊤䉟䊤䈚䈢䉍䈫䈇䈦䈢䋾 ᔶ䉍 㪇 㪈㪇 䋼Ⓧᭂ⊛䈭᳇ಽ䉇ర᳇䈏ḝ䈇䈢䉍䈫䈇䈦䈢䋾 ᵴ᳇ 㪇 㪈㪇 䋼䈓䈦䈢䉍䈚䈢䉍∋䉏䈢䉍䈫䈇䈦䈢䋾 ∋ഭ 㪇 㪈㪇 䋼㗡䈏ᷙੂ䈚䈢䉍⠨䈋䈏䉁䈫䉁䉌䈭䈎䈦䈢䉍䈫䈇䈦䈢䋾 ᷙੂ 㪇 㪈㪇 䋼᳇䈏䈲䉍䈧䉄䈢䉍⪭䈤⌕䈎䈭䈎䈦䈢䉍䈫䈇䈦䈢䋾 䋼ᖤ䈚䈎䈦䈢䉍᳇ᜬ䈤䈏ᴉ䉖䈣䉍䈫䈇䈦䈢䋾 図2.POMS-VAS 測定用紙 11 健康支援 第17巻2号 9-14,2015 表1.POMS短縮版およびPOMS-VASの測定値 POMS⍴❗ 㧔ὐ㧕 POMS-VAS㧔cm㧕 2࿁⋡ 2࿁⋡ ೋ࿁ ೋ࿁ ലᨐ㊂䋨 㫉 䋩 ലᨐ㊂䋨 㫉 䋩 7 (4-9) 13 (8-16) -0.70 2.9 (0.6-5.4) 5.4 (2.3-7.6) -0.48 5 (3-8) 7 (4-10) -0.30 2.4 (0.7-5.0) 3.6 (1.1-6.2) -0.20 ᛥ߁ߟ㧙⪭ߜㄟߺ* * 3 (1-5) 4 (2-7) -0.30 1.3 (0.2-4.4) 3.3 (1.1-5.8) -0.36 怒り - 敵意* ᔶࠅ㧙ᢜᗧ † 6 (4-8) 5 (3-8) -0.21 4.2 (2.3-5.0) 3.9 (2.0-4.9) -0.08 ᵴ᳇ 9 (5-12) 12 (9-16) -0.50 5.9 (3.8-7.7) 7.0 (4.9-8.5) -0.22 ∋ഭ * 8 (5-10) 10 (7-13) -0.43 3.3 (0.9-5.9) 5.2 (2.4-7.4) -0.41 ᷙੂ * * TMD㧔ో⊛᳇ಽ㧕 27 (16-36) 41 (28-52) -0.59 14.3 (6.1-20.9) 20.6 (11.0-28.6) -0.43 † 㧦POMS⍴❗ ߩߺೋ࿁́2࿁⋡㑆ߦᗧᏅࠅ㧔p <0.01㧕 ਛᄩ୯㧔྾ಽ▸࿐㧕 *ޓޓ㧦POMS⍴❗ ߅ࠃ߮POMS-VASߣ߽ߦೋ࿁́2࿁⋡㑆ߦᗧᏅࠅ㧔p <0.01㧕 ޓޓPOMS: Profile of Mood States㧘POMS-VAS: Visal Analogue Scale for Profile of Mood States ޓޓTMD: Total Mood Disturbance * 緊張 - 不安* ✕ᒛ㧙ਇ Ⅲ.結果 表2.POMS短縮版とPOMS-VASの対応項目間の相関係数 表1に 初 回 お よ び2回 目 の POMS 短 縮 版 と POMS- ೋ࿁ VAS の測定値を示す。POMS 短縮版および POMS-VAS 2࿁⋡ ✕ᒛ́ਇ 0.51 * 0.70 * ᛥ߁ߟ́⪭ߜㄟߺ 0.65 * 0.52 * ᔶࠅ́ᢜᗧ 0.68 * 0.57 * 意な差(p< 0 . 01)を認め,初回よりも2回目の方が有意 ᵴ᳇ 0.59 * 0.55 * に高値を示した。 「活気」については,POMS 短縮版の ∋ഭ 0.61 * 0.64 * ᷙੂ 0.60 * 0.62 * TM D㧔ో⊛᳇ಽ㧕 0.72 * 0.74 * それぞれにおいて,初回と2回目の各項目及び TMD の 結果を比較した結果, 「緊張」 , 「抑うつ」 , 「怒り」 , 「疲労」 , 「混乱」および「全体的気分」はともに初回 -2回目間に有 みが初回よりも2回目の方が有意(p< 0 . 01)に低値を示 した(表1)。 POMS 短縮版と POMS-VAS の対応項目間の相関係数 * Spearmanߩȡ㧘ޓޓ㧦p <0.01 POMS: Profile of Mood States POMS-VAS: Visal Analogue Scale for ޓޓޓޓޓޓޓProfile of Mood States TMD: Total Mood Disturbance を表2に示す。初回および2回目ともに,全項目におい て有意な正の相関(ρ = 0 . 51 ∼ 0 . 74)を認めた (p< 0 . 01) 。 Ⅳ.考察 本研究では,簡便に測定可能な気分・感情評価とし て作成した POMS-VAS の臨床的妥当性を示すために, 化させる負荷として捉えて行った。その結果,POMS- 気分・感情状態を変化させる負荷に暴露されている状 VAS による気分・感情状態の評価は,定期試験の直前は, 態における大学生の気分・感情状態を POMS-VAS によ 定期試験の2ヶ月前と比較して有意に高値になった。 り測定し,負荷を受けていない状態と比較して有意な POMS 短縮版においても同様の結果が得られており,学 変化が示されるか,また,同時に POMS 短縮版を測定 生にとって,定期試験は気分・感情状態を変化させる要 し,POMS-VAS との相関関係を検討した。その結果, 因であることが明らかになったとともに,気分・感情状 POMS-VAS は負荷のない状態に比べて気分・感情状態 態の変化を POMS-VAS で測定可能であることが示され を変化させる負荷に暴露されている状態では有意に高 た。ただし, POMS-VAS による 「活気」 については,気分・ 値を示し,POMS-VAS は学生の気分・感情状態を捉え 感情状態を変化させる負荷による有意差が認めなられな ており,臨床的妥当性が示された。また,POMS 短縮 かった。この理由については明らかではないが, 「活気」 版と POMS-VAS は,気分・感情状態を変化させる負荷 のみが6項目の中で唯一のポジティブ感情の評価であっ に暴露されている状態においても有意な相関を示し, たことに由来すると推察した。POMS 短縮版では, 「活 POMS-VAS による測定値は,気分・感情状態の評価と 気」に関わる項目を研究者が明確に定義した5つの項目 しての併存的妥当性が本研究においても確認された。 の合計によって評価される。一方,POMS-VAS は1項 本研究では,学生の定期試験を気分・感情状態を変 目の例文を提示しているが,「活気」の捉え方を対象者 12 健康支援 第17巻2号 9-14,2015 本人に委ねているため,回答がイメージし難かったのか 文献 もしれない。これは,簡便に測定可能な POMS-VAS 実 1.McNair D, Lorr M, Droppleman L. Revised manual 施における限界であろう。 for the Profile of Mood States. San Diego, CA: 本研究で得られた POMS 短縮版と POMS-VAS の対応 Educational and Industrial Testing Services; 1992 . 項目間の相関係数は,0 . 51 ∼ 0 . 74 の範囲で全て有意で 2.Leserman J, Stuart EM, Mamish ME, Benson あった。相関係数は 0 . 39 から 0 . 67 で中等度の相関,0 . 68 H, The efficacy of the relaxation response in 23) から 0 . 90 で高い相関とされている 。このことから, preparing for cardiac surgery, Behavioral medicine, POMS 短縮版と POMS-VAS の対応項目の間には中等度 1989 ; 15(3):111 - 117 . から高い相関関係があるといえる。2回の測定において 3.韓在都 , 内山明彦 , 精神負荷後回復期における香り POMS 短縮版と POMS-VAS との間に中等度以上の相関 や音楽提示が生体に与える影響 , ライフサポート , 係数が示されたことから,POMS-VAS の気分・感情状 2002 ; 14(3):113 - 119 . 態評価指標としての併存的妥当性が示された。 4.Grosskopf J, Mazzola J, Wan Y, Hopwood M, VAS は,設定する質問により様々な主観的情報が評 A randomized, placebo-controlled study of 価可能であり,これまでに生活の質や主観的健康感の評 oxcarbazepine in painful diabetic neuropathy, Acta 価に用いられ,妥当性が確認されている 20 , 24 , 25) 。本研究 neurologica Scandinavica, 2006 ; 114(3): 177 - 180 . では,複数の質問項目を設定した VAS が気分・感情評 5.征矢野あや子 , 上岡洋晴 , 岡田真平 , 他 , 転倒予防教 価である POMS 短縮版で得られた結果と有意な相関を 室による移動能力と心理的 QOL への効果 , 身体教 示すことが確認された。さらに,気分・感情状態を変化 育医学研究 , 2002 ; 3(1):27 - 34 . させる負荷に暴露されることによって有意な数値変化を 6.新井基洋 , 吉富愛 , 伊藤敏孝 , 他 , めまい集団リハビ 認めたことから,臨床的妥当性の一端が示された。本研 リテーションの治療成績(第 1 報)―身体機能検査 究では,限られた年齢層のみを対象としていることか と心理学的検査を用いて―, Equilibrium research, ら,これらのことが広く全般的な臨床に応用可能かは明 2010 ; 69(4):225 - 235 . らかではない。しかし,本研究結果から,POMS-VAS 7.梶田泰一 , 吉田康太 , 永井俊也 , 若林俊彦 , 脳神経外 は若年者が対象となる教育や医療の現場において,簡便 科通院中のてんかん患者の気分障害とラモトリギン に気分・感情状態を評価する尺度として使用できる可能 による改善効果 , 脳神経外科 , 2013 ; 41(3):209 - 218 . 性が示唆される。今後は,多様な年齢層や患者群におけ 8.山本壮則 , 土井裕佳里 , 村井裕美 , 臥床時におけるラ る検討や,気分・感情状態を変化させるような負荷量の ベンダーの香り付加による気分尺度 POMS の変化 , 違いによる POMS-VAS の変化値の違いの検討,高頻度 日本看護学会論文集 看護総合 , 2008 ; 39 : 63 - 65 . で測定することによる検討をすることで,臨床的妥当性 9.瀬戸美夏 , 濱崎理恵 , 坂本悠三子 , 高岡昌男 , 喜久田 がさらに明らかになっていくと考えられる。 利弘 , 口腔外科手術時の新旧 STAI による不安度予 POMS 短縮版は,複数項目から総合的に気分・感情状 測と静脈内鎮静法に関する検討 , 日本歯科麻酔学会 態を把握でき,全年齢を通算した標準化得点や年代別の 雑誌 , 2012 ; 40(1):25 - 30 . 標準化得点が示されている。さらに,これまでに数多く 10.田 中 和 宏 , 森 本 修 充 , 大 橋 雪 英 , 下 山 節 子 , 保 利 の症例研究により,その有用性は確認されている。一方, 敬 , 藤見惺 , 透析患者の精神的側面についての考察 複数項目の回答を対象者に要求する点については臨床で l-CMI・SDS・STAI を用いた横断的研究 , 日本透析医 使用する際の欠点になっていた。POMS-VAS は単一の 学会雑誌 , 1996 ; 29(6):1057 - 1066 . 質問で気分・感情状態を評価するという点で,詳細な評 11.松 岡 治 子 , 行 田 智 子 , 今 関 節 子 , 横 田 正 夫 , 妊 娠 価が不十分という欠点を持つ。この欠点を解決するため 期・産褥期・育児期の母親の不安について : 日本 には質問項目の精査が必要かもしれない。しかし,本研 版 STAI を用いた横断的研究 , 母性衛生 , 2002 ; 43 究で用いた POMS-VAS は極めて短時間で測定可能であ (1):13 - 17 . り,その結果は POMS 短縮版と中等度から高い相関関 12.福井至, Depression and Anxiety Mood Scale(DAMS) 係を認めることから,繰り返し測定が必要となる臨床に 開発の試み, 行動療法研究, 1997;23(2):83 - 93. おいては有用性が高い評価方法と言える。 13.徳田完二 , イメージ呼吸法と筋弛緩法による気分変 化 , 立命館人間科学研究 , 2008 ; 16 : 1 - 12 . 14.福井至 , Positive Mood Scale(PMS)の開発 , 東京 家政大学研究紀要 1 , 人文社会科学 , 2004 ; 44 : 227 13 健康支援 第17巻2号 9-14,2015 233 . 15.Ritz LJ, Nissen MJ, Swenson KK, et al., Effects of advanced nursing care on quality of life and cost outcomes of women diagnosed with breast cancer, Oncology nursing forum, 2000 ; 27(6):923 - 932 . 16.河原ゆう子 , 美和千尋 , 出口晃 , 水谷行雄 , 介護施設 における入浴介護の現状と新たな入浴設備の必要 性 , 人間と生活環境 , 2010 ; 17(1):23 - 30 . 17.永井成美 , 山本百希奈 , 御堂直樹 , 磯村隆士 , 脇坂し おり , 森谷敏夫 , スープ摂取後の安堵感の評価と心 理的,生理的要因の検討 , 日本栄養・食糧学会誌 , 2010 ; 63(6):279 - 285 . 18.大石康彦 , 金濱聖子 , 比屋根哲 , 田口春孝 , 森林空間 が人に与えるイメージと気分の比較− POMS およ び SD 法を用いた森林環境評価− , 日本森林学会誌 , 2003 ; 85(1):70 - 77 . 19.大杉紘徳 , 田中芳幸 , 兒玉隆之 , 村田新 , 気分・感情 状態評価としての Visual Analogue Scale の応用 , ヘ ルスプロモーション理学療法研究 , 2014 ; 4(3):137 141 . 20.村田伸 , 津田彰 , 稲谷ふみ枝 , 高齢者用主観的健康感 評価尺度としての Visual Analogue Scale の有用性 その自記式尺度の信頼性と妥当性 , 日本在宅ケア 学会誌 , 2004 ; 8 : 24 - 32 . 21.Aitken RC, Measurement of feelings using visual analogue scales, Proceedings of the Royal Society of Medicine, 1969 ; 62(10):989 - 993 . 22.横山和仁 . 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