(財)人工知能研究振興財団 第18回人工知能研究成果発表会 2015.9.15. 人込みの中を同行者と連れ立って 行動できる自律移動ロボット 電気通信大学 大学院情報理工学研究科 知能機械工学専攻 教授 金子正秀 1 研究の背景 人間共存型のロボットが備えるべき重要な機能の一つ 自律移動 ロボット単独での自律移動時における障害物回避や 経路探索に関する研究が活発 人間と行動を共にするロボット 周囲の人物との係り合いの中で自らの移動形態、移動経路を自律的に 決めていく機能が必要 特定人物に自動的に追従して移動する機能 人間と同行 良く研究されている 同行者の動きと周囲環境(障害物や他歩行者)の状況 同行者との位置関係を考慮しながら自律的に移動できる機能 が不可欠 まだ限られた研究に留まる 本研究では 実際の生活空間に近い環境の中 ・ 複数の人物、更には、多くの人で込み合っている ・ 障害物が存在 ロボットに同行者と連れ立って行動させる方法について検討 同行者と連れ立つ、とは・・・ 同行者や周囲の人物、環境の状況に応じて 同行者と並走する 同行者の後方を追従する 同行者の前に位置する 同行者に寄り添う(手をつなぐ 或いは 手を添える) 同行者と少し距離を置く など 同行者との相対的位置関係を逐次自律的に変化させながら、 安全に移動 日常生活で人間は・・・ 相手と同行する際 前方 •障害物 •対向人物 •道幅が狭い 横に並んで歩く 並走⇒縦走へ切替 人は •状況把握(人物の位置関係・移動速度) •同行者の行動予測 •回避に最適な順番・経路 を瞬時に認識・判断・行動を行っている ロボットにも同じ行動が できるようにさせたい! 研究の内容及び方法 (1) 周囲環境の認識 : 画像及び距離情報 → 周囲の物と人物を認識 (2) 同行者の認識 : 画像及び距離情報 → 同行者を認識。他の人物との識別。 人込みの中で同行者を見失った場合への対処。 (3) 同行者との位置関係の制御 メイン! : 新たに「手つなぎポテンシャル」の概念を導入 同行者とロボットとの並走・縦走形態の柔軟な動的切替え ロボットの自律移動制御手法の基本 : ポテンシャル法 ポテンシャル法 ポテンシャル場に応じて移動 障害物を回避しての自律移動 動的な環境下で利用可能 仮想ポテンシャル場を設定 ポテンシャル 高 障害物 移動機能 低 仮想ポテンシャル場の一例 6 人工ポテンシャル法 ・人工的なポテンシャルを設定 ・勾配で移動方向を決定 ポテンシャル高 中心に同行者 障害物 + 同行者 ポテンシャル中 引力ポテンシャル 斥力ポテンシャル 統合ポテンシャル 壁 ポテンシャル低 k 2 : 引力ポテンシャル係数 k1 : 斥力ポテンシャル係数 d 2 : 同行者までの距離 d1 : 障害物までの距離 7 7 手つなぎポテンシャルの考え方 ・基本 ・並走用斥力ポテンシャル ・同行者の左右に可変引力場 ・光源と影との関係に基づくポテンシャル場法 (影ポテンシャル場法) ・光の反射に基づく柔軟なポテンシャル制御 手つなぎのさせ方 : 基本 問題点 引力場(青色):同行者の隣り 斥力場(赤色):周辺人物、障害物や壁 引力と斥力の合力からロボットの移動を判断 自然に障害物を回避しながら並走移動 引力:強い 引力:弱い 周辺人物 ・柔軟な対応ができない ・手法的に限界 同行者 ロボット 基本型 ・ ポテンシャルの形状が固定 ・ロボットの位置に曖昧さが残る ・ポテンシャル最下点に必ず落ち 着くとは限らない ロボットが前 より複雑なケースへの対応 混雑度、社会性の考慮等 並走用斥力ポテンシャルの導入 等方的ポテンシャル ・同行者の後ろを追従 ・状況により並走モード、 縦走モードを選択 並走用斥力ポテンシャル ・平常状態では並走移動 ・壁や障害物を避けて反対側を並走 ・狭い通路等を通る時は縦走を行う 状況毎にモードを用意しなければならない 人物 ロボット + 引力ポテンシャル 同行者の上下斥力 ポテンシャル最下点≒ゴール シミュレーション結果 ① 人物 ② ④ ロボット ③ 左側を並走 ② ③ 障害物回避(縦走) ④ ① スタート 移動軌跡 右側に移動 右側を並走 実機実験 使用機器 PIONEER3-DX LRF(Laser Range Finder)2台 人物検出 実験環境 建物内廊下 直線10m(障害物回避) 12 同行移動 実機実験結果 青:同行対象人物 緑:ロボット 赤:障害物 同行者の左右に可変引力場を設定 • 同行者に斥力場と引力場を設定 • 引力場(仮想的な手)を制御 • 引力場の状態で様々な同行状態に対応 同行移動の状態を制御するパラメータ • 引力場の強さ • 引力場の位置(距離と角度) 引 強さ 同 引力場の強さ・・・左右の選択や強さ 引力場の位置・・・同行者との位置関係を決定 引 距離 14 同行者のポテンシャル 標準状態 同行者の真横 に引力場 引 同 同行する 側を選択 引 強さ 引 同 引 引 引力場の移動 同行者との位 置関係を変更 左右の偏り 引 同 引 同 距離 引 15 周囲の歩行者への対応 事前に回避 廊下での歩行者同士の回避 ・十分な距離をもって回避準備 ・事前に回避しやすい位置へ ・振る舞いで進路を提示 R R 同 同 発見 回避準備領域 通行可能 歩行者の回避時の挙動を参考 ⇓ 同行者の引力場の位置を制御 歩 歩 16 すれ違い歩行者の回避 1.歩行者と接近前に回避準備 2.回避(縦走状態へ変化) 3.ポテンシャルが横に戻る 4.並走へ戻る 17 追い越し歩行者の回避 1.歩行者と接近前に回避準備 2.回避(縦走状態へ変化) 3.ポテンシャルが横に戻る 4.並走へ戻る 18 偏ったポテンシャル 1.歩行者と接近前に回避準備 2.回避(縦走状態へ変化) 3.ポテンシャルが横に戻る 4.並走へ戻る 19 光源と影との関係に基づくポテンシャル場法 (影ポテンシャル場法) 動的環境 : 動的障害物(歩行者など) 基本的には : ロボット - 障害物 : 距離のみ 影ポテンシャル場法 : ロボット – 障害物 距離、移動方向 : 近くでも離れていくなら考慮不要 Shadow Potential Dynamic obstacle: moving SUN Goal (User): Shadow behind him Robot: Shadow is the attractive field 21 Simulation Result About 10m The shadow potential The robot motion under Shadow Potential 22 光の反射に基づく柔軟なポテンシャル制御 影ポテンシャル場法からの発想 手つなぎポテンシャルの形成のために 同行者周辺 : 引力ポテンシャル(手つなぎポテンシャル) 歩行者周辺 : 斥力ポテンシャル 光の反射の考え方を利用 反射の利用(同行) • 同行者を両面鏡 ロボットを光源 • 鏡は並走方向に向ける • 反射光に沿って引力場を生成 • 位置関係のみで最適化 標準状態 同 行 者 ロ ボ 引力場 引 力 場 ロ ボ 反射光 鏡 光 源 入射光 光 同行者 同行者 行き過ぎの時 遅れてる時 同 行 者 鏡 同行者の向き ロ ボ 同 行 者 反射光 鏡 入射光 引力場 同行者 光 24 源 同行用ポテンシャル 同行用ポテンシャル 白破線が反射光線 25 反射の利用(回避) • 歩行者を平面鏡(片面) ロボットを光源 • 鏡は進行方向に向ける • 反射光に沿って斥力場を生成 • 進路が重なる場合に回避 向かい合う 入射光 すれ違う 歩 行 者 斥力場 歩 行 者 斥力場 鏡 歩行者 反射光 光 源 鏡 歩行者 入射光 ロ ボ ロ ボ 反射光 光 源 26 回避用ポテンシャル 基本ポテンシャル 歩行者のポテンシャル 白破線が反射光線 同行+回避=合成ポテンシャル場 ロボットの移動制御を行う 27 提案ポテンシャルの動作確認 ロボット 同行者 歩行者 28 すれ違い 0.6m • 縦走に切り替えて回避 29 追い越され 0.6m • 割り込まれるようにして回避 30 人物検出の方法 人物 同行者 個人の識別が必要 同行途中で離れたり他人に割り込まれても同行者を 継続的に認識 周囲の人物(歩行者) レーザレンジファインダ or RGB画像+距離画像 : Kinect で 人物検出(レーザレンジファインダによる) 入力距離情報 人物 楕円フィッティング 人物 ロボット 腰の高さ 長径60[cm]以下 同位置 人物検出 膝の高さ 長径30[cm]以下 32 複数人物認識 複数人物検出 ユーザグループの認識 マルチモーダルのファジィ融合 LBP: (Local Binary Patterns) Color histogram Height & skeleton length Face recognizer (LBP) 複数人物検出 結果 色、身長、body size、顔 ファジィ融合 ユーザグループの 33 33 認識結果 本研究によって期待される効果 人間との係り合いを前提としたロボット 期待 日常生活空間の中で自律移動を行わせるための汎用的な手法 ロボットに、より賢く、また、人間に優しく気配りをした行動を汎用的にさせる ケースバイケースで、特定の状況に適したように動作の チューニングを行うことが不要 今後の人間共存型ロボットの発展にとって、 重要なキーとなる技術
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