ベイズ推定を用いた加速度センサからの人物姿勢の推定に向けて ○ 弓 山 卓 哉 † 右 田 尚 人 ‡ 井 上 創 造 † 西 田 † 健† 九州工業大学 Toward Estimation of Human Postures from an Acceleration Sensor Using Bayesian Estimation Takuya Yumiyama, Naoto Migita, Sozo Inoue and Takeshi Nishida † Kyusyu Institute of Technology A b s t r a c t : I n t h i s p a p e r , w e p r o p o s e a m e t h o d e s t i m a t e h u m a n p o s t u r e s f r o m acceleration sensors, using bayesian estimation. We formalize the probabilistic model, and show a preliminary experiment in a single dimension with the data collection tool we developed. 1. はじめに 本 研 究 で は ,ス マ ー ト フ ォ ン な ど の 携 帯機器に埋め込まれた加速度センサの 情報から,ベイズ的手法により, 人物姿 勢 を 推 定 す る こ と を 目 標 と す る .加 速 度 から二回積分により姿勢を解析的に求 めることは, 変数の多さや誤差の累積に よ り 困 難 で あ る が ,ベ イ ズ 推 定 を 用 い る こ と に よ り ,無 理 な 姿 勢 と い っ た 頻 度 の 偏りを考慮した姿勢推定が期待できる. 本 論 文 で は ,加 速 度 セ ン サ か ら の 姿 勢 推 定 手 法 の 定 式 化 を 行 い ,動 作 認 識 デ バ イス, および加速度センサを用いて姿勢 情報と加速度データを収集するシステ ムを構築した.また予備評価として,本 シ ス テ ム を 用 い て 1次 元 空 間 に お け る 加 速度と変位の条件付き確率分布を生成 するシステムを構築し, それを用いて, 加速度データから一次元の変位の推定 結果を確認した. 2. 関連研究 カメラと加速度・角速度センサを用い てセンサの所持位置と向きを推定する 研 究 [ 1 ] が あ る が ,我 々 の 研 究 は 加 速 度 の みから人物の姿勢を推定することを目 指 す . 他 に , Kinectと IMU( Inertial Measurement Units) 間 の デ ー タ 変 換 に 関 す る 研 究 も あ る [2]. Kinectは 深 度 画 像 から人物姿勢を推定するシステムで, IMUは 関 節 に 付 け た セ ン サ か ら 人 物 の 動 き計測する装置である.我々の研究も Kinectを 用 い て い る が , ベ イ ズ 推 定 に よ る確率的アプローチを行う点が異なる. 3. 加速度センサからの姿勢のベイズ推定 加速度センサ付きの携帯端末を持つ 人 物 の 姿 勢 ベ ク ト ル L={l1,l2,… }を 推 定 し た い . 各 li =(lix、 liy、 liz)は 関 節 iの 変 位 だ と 考 え る と 良 い .本 来 は こ れ ら の 変 数 は 時 刻 t の 関 数 と な る が ,こ こ で の 説 明 に は 不 要 な の で , 以 下 で は tを 省 略 す る . ある時刻において加速度センサから 得 ら れ る 加 速 度 を S=(Sx、 Sy、 Sz)と す る . 加 速 度 Sか ら 姿 勢 Lを 求 め る に は , L=argLmax P(L|S) を求めればよい.ベイズの定理から, P(L|S)は P(S|L)・ P(L)に 比 例 す る . ま た , こ の 加 速 度 セ ン サ の 値 は 重 力 加 速 度 Gと 運 動 加 速 度 Aの 合 成 で あ る か ら , L= argLmax P(G+ A|L)・ P(L) と な る . P(G+A|L)は P(G|L)と P(A|L)の 畳 み 込 み 積 分 で 求 ま る か ら ,結 局 P ( G | L ) , P(A|L), P(L)を 事 前 に 用 意 す れ ば よ い . 4. データ収集および予備実験 この節ではデータ収集システムおよ び , 1次 元 空 間 で の 予 備 実 験 を 述 べ る . 4.1 データ収集システム データを収集するためのソフトウェ ア を Processing環 境 で 作 成 し た . 作 成 し た ソ フ ト ウ ェ ア の 画 面 イ メ ー ジ を 図 1に 示 す . Kinectか ら の 姿 勢 情 報 と 同 時 に 加 速 度 セ ン サ の 値 も UDP通 信 で 受 信 し , 姿 勢情報と同じタイミングでサンプリン グしファイルに保存する.同時に,音声 と動画も保存する. 周波数は加速度が 1 0 0 H z , K i n e c t が 3 0 H z で あ る が ,上 述 の よ う に Kinectの 周 波 数 に 同 期 さ れ る . 加 速 度 セ ン サ で あ る iPodTouch上 の ソ フ ト ウ ェ ア は , Hasc Logger[3]を 用 い た . 図 1 データ収集システムの画面 4.2 予備実験 加速度センサの水平の動きから変位 を推定する予備実験を行った.被験者1 名に加速度センサを右手に持ってもら った.センサの持ち方は,画面が表向き を 向 く , つ ま り 左 手 側 が 正 の X軸 速 度 に な る よ う に し た .記 録 を 開 始 後 , 約 1 分 間 手 を 横 方 向 に ゆ っ く り ,か つ 緩 急 を つ け て動かしてもらった. このデータを元に P(S|L)お よ び P(L)の 分 布 を 作 り , セ ン サ の 変 位 L を 3 章 の 方 法 で 推 定 し た .た だ し 加 速 度 は 0.2G, 変 位 は 5cmを 階 級 幅 と し て離散化した.水平方向なので,今回は 重 力 加 速 度 Gに つ い て の P(G|L)は 考 慮 し ていない. 結 果 を , Kinectか ら 得 た 変 位 と 加 速 度 と 共 に 元 に 図 2に 示 す . 図 2で は , デ ー タ 数 や 階 級 数 が 少 な い た め 予 測 値( e s t i m a t e _ l o c a t i o n )は 直 線 状 に な っ て い る が , Kinectに よ る 変 位 (true_location)を あ る 程 度 追 随 で き て い る . た だ , 0-12秒 付 近 で は , 真 の 値 を 見 つけきれずに必要以上に振動を起こし て し ま っ て い る .こ れ ら は argmax演 算 に より最尤推定をしていることも一因だ が ,今 後 カ ル マ ン フ ィ ル タ や パ ー テ ィ ク ルフィルタといった時系列フィルタも 導 入 す る こ と で ,精 度 向 上 が 見 込 ま れ る . 今 回 は Kinectを 用 い た キ ャ プ チ ャ を 用 い た が ,手 が 体 の 前 に 来 た り す る と キ ャ プ チャに失敗する現象もたびたび起きた. 精 密 な 確 率 分 布 の 生 成 に は ,モ ー シ ョ ン キャプチャの高精度化も有用であろう. 図 1 変 位 (true_location),加 速 度 (acc),お よ び 変 位 の 推 定 結 果 (estim ate_location) 5. まとめ 本論文では加速度データから姿勢の 変位へベイズ推定により変換する手法 を提案し,予備実験を行った.今後,次 元 を 上 げ な が ら デ ー タ を 増 や し ,ま た 別 の関節についても推定を試みる. 関連研究 [1] 進藤康孝, 鏡慎吾, 橋本 浩一:人物の姿勢 情報を用いた加速度・角速度センサの所持位置と 向 き の 推 定 , 一 般 社 団 法 人 電 子 情 報 通 信 学 会,ASN2013-4(2013-05) [2] Oresti Ba˜nos et al., : Kinect=IMU? Learning MIMO Signal Mappings to Automatically Translate Activity Recognition Systems Across Sensor Modalities, ISWC2012. [3]HASCTool,http://hasc.jp/
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