「学び続ける教員像」 の理念を 実現するために

特集 1 「教え」から「学びの専門家」へ
教育再生実行会議、中教審教員養成部
会の提言が相次いで公表されたが、いず
」の 理
れも﹁教員の養成・採用・研修の一体改
革 ﹂ を 謳 い、 学
「 び続ける教員像
念を強調している。
未来の教育の成否が、教員の資質向上
にかかっており、そのための社会システ
ムの構築が重要だと強く認識されている。
なぜ教員制度の改革か
││﹁学び続ける教員像﹂の確立
現代社会を象徴する﹁変化と変貌﹂の様
相は、教育のありようにも大きな影響を与
える。かつて、教員は﹁既知の伝達﹂を生
業とした。教育とは、文化と文明の基礎を
なす知識を効果的に子供に伝えることであ
り、 少 な く と も 学 ん だ 知 識 は﹁ 一 生 も の ﹂
であった。
しかし、知識基盤社会、生涯学習社会と
言われる時代は、知識の陳腐化が加速する
社会である。極論すれば現代とは、生まれ
た と き に 存 在 す る 社 会 と、 少 年 期・ 成 人
期・老年期に現出する社会が、すべてその
門家としての教師﹂等、教育改革の方向を
﹁ 世 紀 型 教 育 へ の 転 換 ﹂﹁ 新 し い 学 習
観、 ア ク テ ィ ブ・ ラ ー ニ ン グ ﹂﹁ 学 び の 専
﹁危ない﹂と考えている。
と 教 員 は 対 応 で き る か。 ど う も、 誰 も が
教育の現状に対する危機感、少子化、グ
ローバル化等の急激な社会の変化に、学校
だと考えられている。
ある。その本質は今次の教育改革でも同様
けることが課題だとすれば、その仕事がよ
を担う子供たちに、時代を乗り切る力をつ
蓄積した専門の知を少しずつ提供すれば
よかった時代は終わった。予測困難な未来
ニケートする力﹂の育成にある。
主 体 的 に 学 ぶ 力 ﹂ で あ り、
﹁他者とコミュ
能 で は な く、﹁ 思 考 力・ 判 断 力・ 表 現 力、
への役割期待も変化する。今、教師に求め
そのような時代の進展のなかで、学校教
育の機能にも大きな転換が求められ、教員
様相を異にする時代のことである。
示 す 言 説 に は、﹁ 今 を 変 え た い ﹂ と い う 意
り高度で複雑なものになるのは当然であ
られる資質・能力は、かつての知の伝達機
欲が、ややスローガン的にではあるがはっ
る。
学校が教育の中心を担う時代になって以
来、﹁ 教 育 の 最 初 で 最 後 の 問 題 ﹂ は 教 員 で
ポ イント
きりと見て取れる。
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独立行政法人
教員研修センター理事長
髙岡 信也
「学び続ける教員像」
の理念を
実現するために
法定研修
教員研修制度の大改革
校内研修
から
まで
教職研修 2015.10 18
特集 1 「教え」から「学びの専門家」へ
教員研修制度の大改革 ─法定研修から校内研修まで ─
のうえでこの問題の最終地点は、教員の資
る現状への厳しい批判を内包している。そ
教育の改革が社会的課題として強く意識
されるのは、過去の教育とその延長上にあ
である。
論を貪欲に獲得しようとする人材像のこと
﹁ 学 び 続 け る 教 員 像 ﹂ と は、 こ の よ う な
自らの仕事に必要だと考えられる知識や理
時代なのである。
問的成果に敏感に反応する姿勢が不可欠な
学・心理学・脳科学などの最新の科学や学
等 の 新 し い 教 育 方 法 に つ い て 等 々、 教 育
識の発達の過程、アクティブ・ラーニング
そ れ ゆ え に、 子 供 の 認 知 や 行 動 に つ い
て、コミュニケーション力、自然や社会認
ならない。
目標︵ルーブリック︶が明示されなければ
だけは基本的に習得してほしいという到達
明である。教員のキャリアに応じて、これ
ば続けることができない﹂ということの表
せば﹁教職という職業は、学び続けなけれ
こ と。﹁ 学 び 続 け る 教 員 像 ﹂ と は、 裏 を 返
二つめは、高度専門職に見合う﹁専門職
基準﹂を構築し、その社会的認知を広げる
することが求められる。
度な次元で連携・協働するシステムを構築
国・大学・行政等関係機関が組織的かつ高
一 つ め は、﹁ 養 成 は 大 学、 採 用・ 研 修 は
行 政 ﹂ と い う﹁ 棲 み 分 け ﹂ か ら の 脱 皮。
﹁学び続ける教員像﹂の理念を実現する
ための抜本改革の方向性は三つある。
⑵ 採用段階の改善課題
①多様な資質を有する人材確保方策の構築
教員志願者を輩出しなければならない。
記の課題に積極的に対応して、資質の高い
各大学は、そのそしりを退け、教員の養
成を自らの社会的使命として再確認し、上
造、乱発という評価がある。
開放制免許制度のメリット・デメリット
の議論のなかで、現行制度は免許の粗製乱
①学びの専門家としての﹁教員基礎力﹂の
質向上の問題だと理解されているのであ
を設置
」
⑷ 現職研修の抜本改善︱︱連続する職能
成長への支援
置促進
再構築、初任研担当メンターの養成と配
②初任者研修の抜本的見直し、研修内容の
長︶、修了者の研修免除
⑶ 初任段階の改善課題
① 教 職 大 学 院 の 活 用︵ 名 簿 登 載 期 間 の 延
策の構築
②多様なキャリアパスを有する人材確保方
営する﹁全学教職センター
④各大学に、教職課程を一元的に管理・運
実施
③養成教育の質保証、教職課程認証評価の
②大学の人材育成方針の確立・公表
育成
る。
養成段階では、次の四点の改善課題があ
る。
⑴ 養成段階の改善課題
養成・採用・研修の
各段階の改善課題、
連続する職能成長への支援
う、国の役割である。
三つめは、養成・採用・研修の改善方策
の実施に焦点化した支援方策の確立とい
抜本改革の方向性
﹁ 学 び 続 け る 教 員 像 ﹂ の 理 念 は、 実 は す
でに教育基本法9条に、
〝教員の研修義務〟
と〝行政機関等による養成と研修の環境整
備〟として定められている。
問題は、そのことを具体の制度としてど
うつくるか、どのような社会システムとし
て構築するのかということである。
19 教職研修 2015.10