一般教育科 言語の認知意味構造分析 人間が自らと関わるものを自らとの関連で意味づけるという主体的捉え方 を含めた総体が〈意味〉であるという観点から,言葉を分析しています。 ■認知文法における意味観 私たちの用いている言葉は,客観的に外部世 界(conceived world)をあるがままに映し出すも のではないことは容易に理解できます。例えば, 客観的に同じ状況が,能動態でも受動態でも表 されることあります。 ある表現の〈意味〉とは,(1)表現される外部 世界の状況(conceptual content)と,(2)言語使用者 (conceptualizer)が何に焦点をあてて,どのよ うな視点から,どの程度精緻に捉えるかという 主体的な外界理解の認知プロセス(construal)の 総体であるという点が認知文法の最も中心的 な主張です。 ■構文の認知意味構造 Taro resembles Jiro.「太郎は次郎に似ている」, Jiro resembles Taro.「次郎は太郎に似ている」と いうような表現において,何を主語として言語 化するかは,(1)外部世界の状況によって決まる のではなく,(2)言語使用者の認知プロセスを反 映していると言うことができます。このように 考えると,構文と一般的に呼ばれる表現のパタ ーンは,私たちがどうのように状況を把握する かを反映したものであり,認知プロセスという 観点から意味規定がなされることになります。 ■言語の普遍性と個別性 人間は同じ生物学的な制約を有することか ら,英語であれ,日本語であれ,私たち人間に 共通の認知のメカニズムに基づいて言語化を 行っていると考えられます。ただ,この言語化 の過程には様々な認知プロセスが複雑に競合 していることが考えられ,競合する認知プロセ スのいずれを強くは反映するかが,言語によっ て異なると考えられるようです。 ありません。そのため,単に逐語的な翻訳(i)で は,しばしば不自然ですわりの悪い訳になって しまう場合があります。 言語表現の反映する認知パターンをよく理 解し,捨象された部分を補うなどの段階を経て 元となる状況を復元理解し,目的とする言語の 認知パターンで改めて言語化すること(ii)が重 要であると考えられます。 表現される状況 (ii) 英語の認知鋳型 日本語の認知鋳型 英語の表現 日本語の表現 (i) 日本語,英語の反映する認知パターンの相違 を適切に提示することで,英語教育に貢献でき るのではないかと考察を行っています。 小熊 猛(こぐまたけし) [email protected] 076-288-8050 【生年月】1965 年 12 月 【職名】准教授 【学位】博士(文学) 【 学 位 論 文 名 】 Nominative-Genitive Conversion in Japanese: A Cognitive Grammar Approach 【学歴・職歴】中央大学文学部卒業(1989),県立小松工業 高等学校教諭(1989),県立金沢中央高等学校教諭(1992),小 ■英語教育との接点 言語表現はそもそも,それぞれの言語に反映 される特徴的な認知パターン(鋳型)に従って 切り出されたものです。そのため,ある言語の 言語表現はすでに,他の言語では言語化される 要素が捨象されてしまっていることも珍しく 松市立高等学校教諭(1995), 金沢大学大学院教育学研究科 修了(1995),石川工業高等専門学校講師(1998),石川工業高 等専門学校助教授(2001),石川工業高等専門学校准教授 (2007) 【専門分野】認知言語学,認知文法 【研究課題】構文と認知プロセス 【キーワード】認知言語学,認知文法,認知意味論
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