日本の自動車メーカーが、世界で強まる規制に最も対応している

2015 年 2 月 5 日
CDP 事務局
日本の自動車メーカーが、世界で強まる規制に最も対応している
-CDP、自動車製造セクターの分析レポートを発表-
CDP は各国の規制にどの自動車メーカーが対応できているかについて分析したレポートを発表した。
CDP は国際的な非営利団体として、世界最大の企業の環境関連データを有している。
今回発表したレポート「No room for passengers: are auto manufacturers reducing emissions quickly
enough?」では、さまざまな GHG 排出量関連データに基づき、各国自動車メーカーのランキングを行っ
ている(ランキングは本リリース P.4 の別表参照)。この結果によると、世界中で自動車の排出規制が強
化されている中で、排出量の側面は企業の収益に重要な影響がもたらされることが明らかとなった。
今回のレポートでは、欧州、米国、中国における排出規制を考慮し、CDP 質問書に回答している自動車
メーカー(全世界の自動車販売の約 83%1を占める)を対象に分析を行った。
本レポートは、CDP が行うセクター別分析の第一弾として発表するものであり、機関投資家に包括的な
環境関連データに基づく分析を提供することを目的としている。各セクターにおいて重要な基準を特定し
た上でそれがどのように財務パフォーマンスと関連しているかを明らかにし、透明性の高い基準に基づ
いたウェイトで投資家がそれぞれの目的に応じて調整することが可能となるような分析を行っている。こ
のランキングは、特定の企業の優劣を示すものではなく、さまざまな規制が導入されている中で、企業が
どのような戦略的優位性を有しているかを明らかにするものである。
レポート「No room for passengers: are auto manufacturers reducing emissions quickly
enough?」の主な所見

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日本企業はトップの日産自動車をはじめ、トヨタ自動車が 2 位、マツダが 4 位と高評価を得ている。
(3 位はルノー(仏))これらの企業は、電気自動車やプラグインハイブリッド車、燃料電池車といっ
た、車体の排出削減に積極的に取り組んでいることが評価された。
現代自動車(韓国)が車体の排出量の基準で D ランクであったほか、ゼネラルモーターズ(米)、フィ
アット クライスラー(伊)が車体の排出量の基準で最も低い E ランクとなり、タタ・モーターズ(印)は
CDP 回答企業の中では最低ランクとなった。この評価は、次世代自動車の開発・販売が進んでい
ないことに基づいているが、CDP 質問書における情報開示が不十分であることも一因である。
1
ブルームバーグのデータに基づく。ただし、中国の合弁会社による販売については、中国国外の OEM パートナー企業に割り当ててい
る。
1




ゼネラルモーターズとフィアット クライスラーは、欧州と米国でそれぞれ 17 億米ドル(EBIT の
33%)、5 億 7400 万米ドル(EBIT の 15%)にのぼる不利益を被っている可能性がある。フォード
(米)も同じく 8 億 8900 万米ドル(EBIT の 16%)の損失を受けている可能性がある。2
次世代自動車は今後 5-10 年に渡って、売上成長の要因となりうる。特に、中国が大都市におい
て低排出ゾーンの導入など厳しい規制を課した場合にはこの傾向が顕著になる。
車体の排出量は非常に重要性が高いといえる。スズキや起亜自動車(韓国)、吉利汽車(中国)、富
士重工業、三菱自動車、テスラモーターズ(米)などは、車体の排出量や規制に対応する事業戦略
などの情報開示を求める CDP の質問書に回答していない。
自動車メーカーのスコープ 1, 2 排出量(自社の直接排出量、間接排出量)は、メーカーの全体の排
出量のわずか 3%にしかすぎず、車体からの排出量を含むスコープ 3 排出量が 75%を占める。
CDP のエグゼクティブチェアマンのポール・ディッキンソンは次のように述べている。
「現在の石油価格の低下についてはさまざまな議論があるが、本レポートが示すように、自動車をとりま
く各国の規制強化が財務的なリスクとなりうるメーカーがある。今回で取り上げた自動車メーカーは、世
界中の大手機関投資家のポートフォリオに組み込まれており、メーカーの規制への対応や技術への投資
が将来財務パフォーマンスに影響をもたらすことが考えられる。私たちが今回新たに実施したこのような
分析は、投資家の投資判断や企業へのエンゲージメントにも活用されうる。高評価を得たメーカーは、効
率性の高いエンジンや電気自動車、ハイブリッド自動車などの技術に投資を行っており、このことが売上
に繋がるだけでなく、排出削減目標の達成に寄与し、私たちにもよりきれいな空気をもたらしている。」
CDP の本分析の責任者ジェームス・マグネスは次のように述べている。
「本分析では排出量データを投資評価やモデル構築に適用させ、製品のパフォーマンスや将来強化され
る可能性のある規制による影響といった重要な評価基準に重きを置いている。同様の分析を他のセクタ
ーでも行っており、年 4 回にわけて公表する予定である。セクター別に評価基準を設定し、評価を行い、
最終的には全ての基準を統合した包括的な分析を実施していく。」
以上
2
これらの財務影響の数値は各メーカーの目標不達の場合に被るリスクとして CDP が試算したものである。このような影響がいつ顕在化
するかは不明で、一例として掲載している。
2
評価方法
CDP は自動車メーカーをいくつかの基準で評価を行い、それぞれの基準で A-E(A が最高評価)のラ
ンクづけを行った。基準としては大きく以下の 3 点を採用している。
1) 車体の排出量:欧州、米国、中国の市場における自動車メーカーごとの車体の排出量について分析
を行い、各市場での排出規制の目標を達成しているかどうか、および財務的な影響について評価し
た。
2) 次世代自動車:電気自動車とプラグインハイブリッド車の全世界での販売車種について調査した。加
えて、メーカーごとの、燃料電池車の開発状況や、国内市場での充電設備の整備や消費者への補
助金施策への関与状況、電気自動車・プラグインハイブリッド車・燃料電池車の販売状況などを考慮
した。
3) 製造時の排出量:製造時の排出量について、自社の製造時の排出量(スコープ 1, 2 排出量)やサプ
ライヤーの排出量(スコープ 3 排出量)などからなる 4 つの基準から評価した。
4) 上記 3 点に加えて、CDP 質問書への回答結果における、CDP 2014 パフォーマンス評価も考慮し
ている。CDP 気候変動パフォーマンス評価は、排出量管理や戦略、ガバナンス、気候変動リスク管
理といった観点から企業の気候変動対応を評価するものであり、CDP 気候変動質問書に回答した
企業が評価の対象となる。2014 年は全世界で 2,023 社が回答を行っている。
CDP について
CDP(旧カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)は、企業や都市の重要な環境情報を測定、開示、管
理し、共有するための唯一のグローバルなシステムを提供する国際的な非営利団体です。 CDP は、企
業が環境や天然資源に及ぼす影響を開示するように、またその影響を軽減する対策を取るように、合計
92 兆米ドルの資産を持つ 767 の機関投資家を含む市場経済とともに働きかけています。 CDP は現
在、気候変動、水、森林に関するリスク商品情報のグローバル最大の一次データを有しており、これらの
知見をビジネス、投資、政策の戦略的な意思決定の場に提供していきます。
Web サイト:www.cdproject.net ツイッター:@CDP
本件に関するお問い合わせ
CDP(ロンドン本部)
Ashleigh Lezard (communications manager)
+ 44 (0) 7811 428030, [email protected]
Alex Farquharson (communications executive)
+44 (0) 7817 948 076, [email protected]
CDP 事務局(日本)
[email protected] 03-6869-3928
3
【別表】各国自動車メーカーランキング
順
位
企業
国
総
合
ス
コ
ア
全世界
でのシェ
ア(2013
年)(ⅰ)
車体の
排出量
次世代
自動車
製造時
排出量
(サプライ
ヤー含む)
製造時
の排出
削減目
標達成
状況(サプ
CDP パ
フォーマ
ンス評価
(ⅱ)
ライヤー除
く)
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
日産自動車
トヨタ自動車
ルノー
マツダ
ダイムラー
フォルクスワーゲン
本田技研工業
BMW
PSA・プジョーシトロ
エン
フォード
フィアット クライスラ
ー
ゼネラルモーターズ
現代自動車
タタ・モーターズ
日本
日本
フランス
日本
ドイツ
ドイツ
日本
ドイツ
4.1
3.6
3.6
3.3
3.3
3.2
3.1
3.1
5.9%
10.6%
4.0%
1.4%
2.4%
14.8%
5.7%
3.1%
B
A
A
A
B
C
B
D
A
A
C
E
D
C
B
C
B
D
D
C
A
A
D
A
A
E
E
A
C
E
E
E
A
A
A
B
A
A
AA
フランス
2.9
3.2%
C
D
B
A
A-
米国
2.9
7.0%
D
B
E
C
D
イタリア
2.3
4.9%
E
B
B
B
A
2.2
2.0
2.0
12.3%
5.6%
1.7%
82.8%
E
D
C
A
D
n/a
E
C
E
D
E
E
A
B
n/a
75%
50%
25%
20%
15%
3%
5%
5%
米国
韓国
インド
合計
セクターに占める排出量の割合(ⅲ)
ウェイト
注)
(ⅰ) ブルームバーグのデータに基づく。ただし、中国の合弁会社による販売については、中国国外の OEM パートナー企業に割り当て
ている。
(ⅱ) CDP 気候変動パフォーマンス評価は、排出量管理や戦略、ガバナンス、気候変動リスク管理といった観点から企業の気候変動対
応を評価するものであり、CDP 気候変動質問書に回答した企業が評価の対象となる。2014 年は全世界で 2,023 社が回答を行ってい
る。
(ⅲ) 排出量の総量は CDP の試算に基づく。出張などの小規模なスコープ 3 排出についてはここでは考慮していないため、合計値は
100%とならない。
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