事業者向けコンセプト集 教えない教育 ∼学習者のための「学び場」教育∼ 「教えない教育」とは 私たちは、学校の教室で先生から教科書に沿った授業を受けることが教育だと思ってきました。問 題も答えも先生が握っている学校教育では、優劣をつける画一教育は進みますが、個性が育つ教育に は至りません。 「教える教育」に慣れてしまった人は、答えを他人に求め、自分で考えようとしなくな るのです。教えるのでなく、むしろ、人が育つ邪魔をしないための教育環境をつくる事業、学習者の 立場に立った学び方が学べる教育事業、自分の問題が自覚できるプログラムを持った教育事業が求め られているのです。 指導者が構成して与える教育から脱却し、学習者が構成に参加して知恵を学び取る学習者主体の学 び方教育が「教えない教育」です。 コンセプトの背景 ■ 求められる異質との共存や個性の発揮 ・富国強兵策の下で培われてきた日本の教育政策は、個性を抑圧し、画一的な人 材を養成する結果を招いてきた。 ・生活習慣の多様化と個性化が進む中で、異質な存在と共存すると共に、個性豊 かな資質をもった人材が求められるようになってきた。 ・小学校では総合学習のカリキュラムが定着し、 環境教育や職場体験など地域と つながる機会が増えてきた。 ■ 不登校、引きこもりも珍しくない学級崩壊 ・指導要綱に添った学校教育についていけない児童、生徒が増え、今では不登校 や引きこもりは特殊な存在ではなく学級崩壊が浸透している。 ・「フツウの子」が突然キレたり、授業中に座っていられない精神不安定な子ど もが増えつつあり、地域での少年犯罪も絶えない状況になっている。 ・教える側の教師は、 学級をコントロールできなくなる中で無気力、 精神不安定、 不良教師が析出し、社会問題になっている。 ■ 教育制度の自由化で競争原理が浸透 ・公立小中学校の運営が民間に委託できるようになる。 ・地域のPTAが運営母体となる学校が設立できるようになる。 ・国立大学の独立法人化が浸透し、大学のマネジメント力が試されている。 ・産学官共同による経済活性化政策が打ち出され、 各大学はTLOを設置するな ど民間企業との技術提携を推進している。 関連キーワード ◎寺子屋 ◎治さない医療 江戸時代に庶民がお互いに教え合った学びの場。上 患者の生活支援を中心に据え、病を排除する対象と 意下達の学校よりも寺子屋の学習システムに注目。 せず、病気とうまく付き合っていくことを学ぶ医療。 ◎フリースクール ◎TLO(Technology Licensing Organization) 学ぶカリキュラムやコースを生徒が選べるシステ 技術移転機関の略称で、大学の研究成果を特許化し ムを持った学校。不登校や引きこもり向けが多い。 企業に技術移転する産学官連携を目的とした機関。 ◎チャータースクール ◎知育、徳育、体育 アメリカのミネソタ州ではじまった手づくりの公 全人的な教育の必要性を表現する場合に、この3育 的学校で、教師や父母の市民運動のなかから生まれ が引き合いに出されます。ビジネスとしては、知育 ました。認可が下りると公的資金が助成されます。 玩具、知育ソフトが注目。その他、食育、保育など。 事業者向けコンセプト集 コンセプトの構造 C.Bへの活用例 ◎・・・・・・・ 「体験型の環境教育」 環境への取り組みや環境意識の向上について、机上の知識として教え込むより、 自然体験や現場実習や生活実践を通じて身体と感性に訴え、行動を喚起する体験 学習が企業の環境教育や学校での総合学習に取り入れ始めています。 ◎・・・・・・・ 「ゲームを使った学習プログラム」 現実を単純化したルールやツールのもと、一定の枠組みの中で参加者どうしが 創意工夫し競い合う場がゲームです。疑似体験により考える力を養う学習ツール として有効で、会社ゲーム、貿易ゲーム、レッツゲームなどはコミュニティ・ビ ジネスの入門研修として実践的な学習プログラムです。 ◎・・・・・・・ 「プリントを使った教えない学習塾」 合格することを目的とせず、学ぶプロセスで、自分の学習進行度や苦手な箇所 が自己評価できるしくみをもったプリントを使い、学ぶ力、ひいては育つ力を自 分でつかみとる学習塾です。 中には幼児から高齢者までが学ぶ学習塾があります。 ◎・・・・・・・ 「不登校者が通うフリースクール」 公的な学校に通わなくなった不登校者が多く集まるフリースクール。画一的に なりがちな公的教育の反省から、個別の学習進行度や自発的な意志で学習プログ ラムを生徒が選択できる学習者主体の学校は、全国に数多くできています。 事業自立のポイント ■教育は場づくり 学ぶ環境づくりは、人が育つ邪魔をしないことが何より大切です。教えない教 育では、教育指導者よりも「学び場」のつくれる学習コーディネータが望まれて おり、学習者と共に学ぶ学習コーディネータの存在が事業自立のポイントです。 ■ニーズを汲み上げ進化させるシステム 学習者主体の「学び場」でありつづけるためには、常に学習者のニーズや時代 の変化を取り入れ、進化していくシステムをもっている必要があります。生徒、 現場教育者、親、地域住民、経営者など多様な意見を聞く場が欠かせません。 地域での役立ち分野 ■あらゆる地域問題を解決する基礎 教育は、あらゆる地域問題を解決する基礎となる重要なテーマですから、役立 ち分野は、不登校や少年非行など教育問題に限りません。未来の参加型市民社会 を創る根本が「教えない教育」にあるといっても過言ではありません。 ■自ら考え、行動する「志民」を育成 無気力、無関心、無感動の若者は戦後教育の一つの成果でした。いつも教えら れることを待っている「奴性化」した大衆を脱し、自ら学び、考え、行動できる 「志民」を育成するために「教えない教育」の貢献分野は多大です。
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