部下のやる気を高める法 - JRS経営情報サービス

情報番号:01040943
テーマ:部下のヤル気を高める法
編著者:インサイトラーニング(株)代表取締役
箱田
忠昭
(関連情報:01040938~01040943)
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有言実行を心がける
私は、これからの時代の部下育成に必要となるのは「有言実行」のできる人
間であると信じている。ではなぜ、人に公言してから行動するのがよいのだろ
うか。
部下に対して、
「 今年は支店を3店増やす!」
「 売上げを 30%アップさせる!」
という具合に宣言したとする。そうすると、万一達成できなかった場合には、
どういう反応が部下から出てくるだろうか?「なんだ、部長は口ばかりで大し
たことはなど「ホラ吹きだな」というように、さんざんに批判されることにな
るだろうか。必ずしも、そうではないと思う。要は、その人がどのように取り
組んだかということである。
残念ながら結果はダメだったが、あれだけ一生懸命やったのだ、と思われる
くらいやれば、うまくいかなくても逆に尊敬されるものである。また、部下の
前で宣言してしまうと、「批判されないためにも、実行しなくてはならない」
といった状況に自分を追い込むことになる。
中国の兵法では、「背水の陣は避けよ」という。なぜならば、川や海を背に
して戦うと逃げ場がなくなるからだ。ところが、戦上手と呼ばれるような将軍
は、あえて背水の陣を敷き、兵の死物狂いの力を引き出し、勝利していた。こ
れと同じように、「有言実行」というのは、いわば自分の立場を背水の陣に追
い込む心理作戦といえるだろう。心がけて口に出し、実行していこう。
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部下に勢いをつけよう
中国の兵法書『孫子』では、「善く戦う者は、これを勢に求めて人に求めず」
という。現代の経営に当てはめて考えるのなら、リーダーというのは、個々人
の能力よりも、組織全体の勢い、ムードというものを重視せよとなるだろう。
たとえば、西部劇に出てくるカウボーイというのも、「勢い」の大切さを教
えてくれる。西から東に何百頭という牛を移動させていくとき、そこには何者
にも止められない勢いが生じてくる。牛が1頭だけ、「オレは北に行きたい」
といっても無理である、他の牛の勢いに圧倒されて、自分勝手な行動はとれな
い。これは組織でも同様だ。
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(株)経営ソフトリサーチ・レファレンス事業部
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組織においても「ムード」「空気」「勢い」 が欠かせないのである。管理
者というのは、まさに“Manager is a cowboy”であり、自分が先頭に立って部
下に勢いをつけることを心がけることが大切である。そのためには、たとえば
ムードメーカー的な部下を押さえつけずに重宝し、共通の目的意識を持たせる
ことなどが有効となってくる。
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「貢献」と「みかえり」を明確に
動機づけ、ということを考えたとき、私は、その最も大切な方法・手段は「貢
献」と「みかえり」であると信じている。
その仕事がどれだけ会社に貢献しているか、その「みかえり」として何が得
られるかを把握していることは大切なことである。だから、部下に対しては常
に「貢献度」を忘れさせない工夫をしなければならない。それに対して、どれ
だけ物質的・精神的に「みかえり」を与えているかも、常に自己点検したほう
がよい。
以前、アメリカ人に「浦島太郎」の話をしたことがある。浦島太郎が、子供
たちのいじめていた亀を助けるために、子供たちにおカネを与えて、亀を買い
取り逃がしてあげた、という話をして、「その後、どうなったと思う?」と、
そのアメリカ人に聞いてみたところ、「うん、たぶん、子供たちは、また亀を
どっかからか探してきて、浦島太郎に売りつけたんだろう」と笑いながらいっ
ていた。
なるほど、と思った。人間の心理をついている、と思った。相当な報酬があ
れば、人はそれを得ようと努力するものである。もちろん、報酬つまり「みか
えり」は金銭だけではない。参画意識、地位、賞賛、名誉、表彰などの非金銭
的報酬も多い。これらの「みかえり」を適正に与えれば、人は動くものである。
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報奨制度の落とし穴
ヤル気を引き出し、職場を活性化させるについては様々な方法があろう。こ
こでは「報奨」、営業の世界でいうインセンティブを取り上げてみたい。イン
センティブというのは、たとえば「売上げ第一位の者には、海外旅行をプレゼ
ントする」とか、「部内での目標達成時には、賞金を出す」といった形で与え
る。だから、報奨を欲しさに社員に活気が出てくるというケースは多い。
ただし、一つだけインセンティブ・アプローチにおいては問題がある。それ
は、
「多用すると逆効果になり、ヤル気を失わせてしまう」ということである。
たとえば、子供がテストでよい点を取ったからといって、そのたびに「偉い
なあ、100 円あげよう」ということを繰り返したとしよう。もし、別の機会に
子供がよい点を取ったとき「偉いなあ」とほめても「あれ、お父さん。100 円
くれないの?」「この前、やったろ」「なんだ、ケチ!」という具合になって
しまい、ヤル気よりも反感を持たれてしまうことさえある。
これは子供のお小遣いだけの話ではない。基本的には大人になっても、報奨
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に対しては同様な心理作用が働くといえよう。だから、ヤル気を引き出すため
といっても、のべつまくなしに報奨を与えるのではなく計画的・効果的にする
のがよい。
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相手には常にプラスワンで接する
挨拶は人間関係における潤滑油の役割を果たす。しかし、同じ挨拶をするに
しても、効果のある方法というものがある。それは、「プラスワン」の法則で
ある。つまり、挨拶するだけでなく“笑顔”“相手の名前”“ひと言、用件以
外のことを付け加ける”ことだ。
たとえば、「お早うございます」と、暗く冷たい雰囲気で接するのでなく、
ニコニコと温かみを持って「お早うございます。田中さん、調子はどうです
か?」といったほうが、挨拶の効用は倍増するといえる。
これは、電話で話すときでも、営業の交渉をするときでも同様なことがいえ
る。いきなりセールス・トークをする人もいるが、まず相手との間に人間的な
心のつながりを持たせるのが第一である。もちろん、ビジネスでの電話で何時
間も世間話をせよというのではない。いきなり用件を切り出すのはタブーであ
る、ということだ。
「お元気ですか?」「奥さんの調子は」「最近、体調はどうですか」といった
プラスワンを心がけることで、あなたの人間性というものが伝わっていくので
ある。これは、部下に対して接する際にも同様であることを心したい。
用件のみですませる人は、冷たい人と思われるものである。
6
“ほめ言葉”から“殺し文句”へ
ほめ言葉をつかえ、というと、「どうも、私は苦手だ」という人もいる。し
かし、気をそらさぬ愛想のよい言葉をかけられて不快になる人は滅多にいない。
お世辞とわかっていても、ほめられたほうはうれしいものだ。
私のように講演・研修の仕事をしていると、毎日のように「箱田さんは、お
話がとてもお上手ですね」とほめられる。何度ほめられても、うれしい。逆に、
主催者に何もいわれないと、かえってさびしくて 私のほうから「今日の受講
生の反応は、どうでしたか」などと聞きたくなってしまう。
ここでは、ほめ言葉から殺し文句へ一歩進めて部下に接することをおすすめ
したい。ほめ言葉と殺し文句はどう違うかというと、前者は事実・現象をほめ、
後者は存在を認める、というものである。
たとえば、「佐藤君、キミは最近、営業成績があがっているね」というのは、
ほめ言葉である。つまり、営業成績向上という事実をほめている。殺し文句は、
「キミのお陰で、ウチの営業所もしばらく安泰だよ」というものである。つま
り、佐藤君の存在そのものを認めている。いうまでもなく、後者のほうが、受
け手にとって、より効果的である。
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サンドイッチ・テクニックで部下を叱る
部下の長所を伸ばし、欠点を直すように努めるのが上司の務めであるが、部
下を叱るのはむずかしい。人は、自分はいつも正しいと思っているし、何か間
違いを犯しても、他人のせいにしたり環境のせいにしたりする。
たとえば、「山本君、遅刻しちゃダメじゃないか、今日みたいに大切な会議
に遅刻するなんて、困るよ」と叱った場合、相手の山本君は一応、「はい、す
みません。これから気をつけます。」と謝るかもしれない。
しかし、心の中ては、「なんだ、課長だって先週一回遅刻したくせに」とい
う反発的な気持ちを抱くかもしれない。そこで、上手に叱るには、「サンドイ
ッチ・テクニック」というのをおすすめしたい。これは、他人に注意を与える
場合は、まず最初にほめる、そして叱る、その後またほめる、という手順を取
るものである。
たとえば、「山本君、この前のレポートよく書けていたな、部長もほめてい
たよ」という具合にほめる。相手はよい気分になる。次に、「ところで、朝の
ミーティングのときは、もうちょっと早くくるとよいね」と遠回しに注意を与
える。その後、
「ともかく、最近の山本君のヤル気には感心しているんだから、
これからもよろしく頼むよ」とほめる。つまり、ほめ言葉で“注意”をサンド
イッチにしてしまうのである。
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「部下はいいやつだ」と信じる
私は、部下育成の問題は理詰めでは説明しきれないな、と思っている。理屈
や理論だけでは、部下はついてこないからである。
たとえば、「課長のいってることはわかるけれども、あの言い方が気に入ら
ない」とか、「部下の説は正しいかもしれないが、なんとなく任せられない」
ということがある。これは、部下との間に信頼関係が築かれていないことの証
明ともいえよう。
孔子は、完成された人間になるためには「仁、義、礼、智、信」の五つが必
要だと説き、他人との信頼関係が大切なことを説いた。これまでに述べてきた
こと、たとえば「叱り方」についても「有言実行」にしても「プラスワン」 に
しても、すべて部下との信頼関係なくしては働かないものといえよう。
大切なのは、「あの部長のいうことなら信用しよう」と、部下に思わせるだ
けの人間的信頼関係を積極的に築いていくことにある。そして、信頼関係とい
うのは、根本的には、「お前はいいやつだ」という考えを持つことである。と
きどき間違いをしたり、怠けたり、反抗したりするけれども、本当は一生懸命
仕事をしようとしている、真面目な男なんだ、という気持ちを常に持つことで
ある。この基本的な心構えがあれば、必ず相通ずるものができるはずである。
(23.9)
(出典)
インサイトラーニング(株) 代表取締役 箱田 忠昭著
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