男鹿市議会議員政治倫理審査会 審査結果報告書

男鹿市議会議員政治倫理審査会審査結果報告書(概要)
1 審査の趣旨
笹川圭光議員がおが産減農薬米利用支援事業費補助金を男鹿無洗米安定
供給の会を通して受領した件に関する一連の審査を行う。
2 男鹿市議会議員政治倫理審査会の設置
(1)調査請求
米谷勝議員他4名の議員により、平成23年度から25年度まで、笹
川議員がおが産減農薬米利用支援事業費補助金を男鹿無洗米安定供給の
会を通して受領した件が、男鹿市議会議員政治倫理条例第3条第1項第
1号に規定する倫理基準に違反している疑義について調査請求が議長に
対し提出された。
(2)設置
議長は(1)の請求を受け、男鹿市議会議員政治倫理条例第6条に基
づき男鹿市議会議員政治倫理審査会を設置し、当該事案についての審査
を付託した。
(3)委員の定数
委員6名
(4)委員長、副委員長、委員の氏名
委 員 長 佐藤巳次郎議員
副委員長 中田謙三議員
委
員
吉田清孝議員、三浦一郎議員
土井文彦議員、佐藤 誠議員
3 審査会の開催状況
区
分
第1回
開催月日
出席委員数
平成27年4月22日
6名
第2回
5月
7日
6名
第3回
5月22日
6名
第4回
6月
5日
6名
第5回
6月16日
6名
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第6回
6月24日
6名
第7回
7月
9日
5名
第8回
7月28日
6名
4 事情聴取の出席状況
調査請求議員氏名
出席の区分
米谷勝議員(請求代表者)
第3回審査会
被請求議員氏名
出席の区分
笹川圭光議員
その他関係人氏名
第3回審査会
第7回審査会
出席の区分
佐藤盛己市民福祉部長
原田良作産業建設部長
目黒重光教育次長
伊藤文興健康子育て課長
第2回審査会
中田和彦農林水産課長
吉田雅美学校教育課長
原田良作産業建設部長
目黒重光教育次長
中田和彦農林水産課長
第5回審査会
吉田雅美学校教育課長
原田良作産業建設部長
目黒重光教育次長
吉田雅美学校教育課長
第7回審査会
武田誠農林水産課主幹
5 審査の経過
【調査請求】
男鹿市議会議員政治倫理審査会(以下「審査会」と言う。)は、男鹿市議会議
員政治倫理条例(以下、「条例」と言う。)第5条の規定により、請求代表者米
谷勝議員、高野寛志議員、船木正博議員、木元利明議員、畠山富勝議員の5名
の連名で男鹿市議会議員政治倫理調査請求書が三浦利通議長に提出され、議長
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はこれを受けて平成 27 年 3 月 18 日、条例第 6 条により審査会を設置したもの
であります。設置にあたっては同日開催の議会運営委員会において委員の選任
及び正副委員長の選任が行われ、委員には私佐藤巳次郎、中田謙三議員、吉田
清孝議員、三浦一郎議員、土井文彦議員、佐藤誠議員が選任され、互選により
委員長には私佐藤巳次郎が、副委員長には中田謙三議員が選任されたのである。
調査請求内容について、対象議員は笹川圭光議員、対象となる事由は条例第 3
条第 1 項第 1 号違反、対象となる事由の内容は、
「おが産減農薬米利用支援事業
費補助金を平成 23 年度から 25 年度まで、議員が男鹿無洗米安定供給の会を通
して受領した件」である。
【審査概要】
本委員会は、第 1 回の審査会を 4 月 22 日に開会した。
この際、条例第 7 条に基づく当該請求の適否及び当該請求に係る政治倫理基
準違反の存否について審査、調査請求の対象となっている議員(以下「被請求
議員」という。)、調査請求議員及びその関係人に対し行われた事情聴取におけ
る内容について報告する前に審査日程、経過について概略を報告する。
第 1 回の審査会は、本審査会における協議事項の確認として審査する上で基
本的なことを整理しながら条例の規定を踏まえて審査することとし、また、審
査日程として、委員の全員出席を基本に 6 月定例会を報告期限とすると決定し
たものである。
第 2 回の審査会は、5 月 7 日に再開し、①子育て応援米の取り組みについて、
②減農薬米の補助金等について、③無洗米の組織設立と納入経緯等について当
局から事情聴取を行い、また、次回までに①から③に関する資料の提出を当局
に求めることとしたものである。
第 3 回の審査会は、5 月 22 日に再開し、調査請求議員の米谷議員に対して「調
査請求の対象とした事由が倫理基準に反しているとする具体的内容について」、
被請求議員の笹川議員に対して「男鹿無洗米安定供給の会への関与について」、
「当該補助金制度の立上げへの関与について」及び「その他倫理上の行為につ
いて」事情聴取を行ったものである。
第 4 回の審査会は、これまでの事情聴取及び提出資料を踏まえて論点整理を
したものを示した中で、論点決定及び事実確認を行い、さらに事情聴取等が必
要かについて協議を行ったものである。
第 5 回の審査会は、6 月 16 日に再開し、ア.無洗米機設備投資の業者負担額
について、イ.業者における無洗米処理に係る手数料について、ウ.笹川商店の
減農薬米集荷状況について(全体及び男鹿中地区)、エ.学校給食用米に関する
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給食費の流れについて(無洗米処理料 30 円含む)、オ.当該補助金の支出根拠に
ついて、カ.議員の請負契約における当局の認識について当局から再度事情聴取
を行い、その後、倫理基準違反の存否について委員に意見を求めたものである。
第 6 回の審査会は、6 月 24 日に再開し、給食米の納入代金及びおが産減農薬
米利用支援事業費補助金等に関して新しい事実が出てきたことから、次回、再
度、被請求議員及び当局から事情聴取を行うこととしたものである。
第 7 回の審査会は、7 月 9 日に再開し、(1)おが産減農薬米利用支援事業費
補助金の支出に関する一連の流れについて、
(2)学校給食用無洗米供給の支出
(給食米代金及び無洗米処理料)に関する一連の流れについて、
(3)男鹿無洗
米安定供給の会におけるおが産減農薬米利用支援事業費補助金及び学校給食用
米代金の受け取り方法について、
(4)男鹿中地区以外の減農薬米の対応につい
て(①学校給食への供給量、②トレーサビリティ(栽培暦、シール添付)の状
況)
、
(5)無洗米機の使用について(①1,245 円/30 ㎏(使用料 975 円、無洗米
機負担分 270 円)の根拠、②吉運商店へ支払っている 1,245 円/30 ㎏以外の有無、
③無洗米処理設備の形状)、被請求議員から再度事情聴取を行い、その後委員に
意見を求めたものである。
第 8 回の審査会は、7 月 28 日に再開し、審査報告書の素案について協議が行
われた。無洗米機無洗米機導入における被請求議員及び当局の答弁の食い違い
に関して議論があったが、素案については文言の訂正など調製を行い、審査報
告書を決定したものである。審査会はこれをもって終了とし、議長に対し審査
報告書を提出することとした。
以上、審査経過について概略を申し上げたが、計 8 回の審査会を開会し、精
力的に審査を行ったものである。
【論点整理】
①男鹿無洗米安定供給の会は、おが産減農薬米利用支援事業費補助金を受給す
るため設立した疑義、②議員・監査委員の立場の中で、男鹿無洗米安定供給の
会へ参画しての請負に疑義の2点を論点として決定したものである。
【請求適否】
第4回審査会において、男鹿市議会議員政治倫理条例第 7 条第 1 項における
「当該調査請求の適否」については、適であると判断した。
【調査概要】
被請求議員及び調査請求議員並びに当局からの事情聴取等を踏まえた委員か
らの論点ごとの意見について主なものについて報告する。
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論点1
男鹿無洗米安定供給の会は、おが産減農薬米利用支援事業費補助金
を受給するため設立した疑義
(1)第 5 回審査会
①当局で男鹿無洗米安定供給の会を作るように説明してやったというこ
とから、無洗米の会の皆さんは積極的に自分のためということはなかっ
たと思うが、結果的には無洗米についても扱うということで給食米も一
般米と同じく自分たちが収益を上げることができた。
②JA が取り扱わない状況でやらなければならないということも併せて考
えると、設立の動機としては補助金を受給するためということは当ては
まらず、疑義はないと思う。結果はどうなったかわからないが、設立し
た疑義ということであればこれには当てはまらない。
③質疑応答の中で補助金をもらうために設立したとはとらないという内
容であった。しかしながら、無洗米安定供給の会を設立する当時のこと
を考えた時に、無洗米機がないのに無洗米安定供給の会を作るにあたっ
て、質疑応答の中では、明確化していないのが現状であったと感じた。
④当局の説明を聞いた中では問題はない、疑いはないということで判断
させていただく。
⑤聞き取りの中においても教育委員会から設立してほしいという中で設
立した経緯があり、笹川議員が積極的な関与はしていないものと思うの
で、受給するために設立した疑義には当たらないと思う。
(2)第 7 回審査会
①無洗米機の購入方法の意見聴取について、前回と今回で答弁が大きく
違っているのは、倫理審査上、問題がある。無洗米機の買い方などよく
わからないまま補助金を出していることはあり得ない話だ。
②疑義はどこから聞いてもないだろうと思う。
③無洗米安定供給の会というのが明確でなく、あいまいな会になってい
ると感じた。当局においても反省すべき点があったと思う。
④無洗米安定供給の会はいろいろ流れ的には問題点はあるが、お金の流
れ、補助金のあり方等は何も問題ないと思うのでその点はよかったと思
っている。
論点2
議員・監査委員の立場の中で、男鹿無洗米安定供給の会へ参画して
の請負に疑義
(1)第 5 回審査会
①金の流れについて適正かどうかを把握するというのが監査委員の立場
として重要なことだと思うので、監査委員になれば請負ができないとい
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うことについては積極的な意味で「わからない」と言っているが、消極
的な意味では倫理的には少し疑問点があるという感じがする。
②直接請け負ったのではなく会の中の会員であった。それは疑義とは言
えないと思う。
③議員は主として請負をしてはいけない。監査委員は市から直接仕事を
請け負ってはいけないというのが倫理基準だと思っている。想像である
が、無洗米安定供給の会においては、笹川議員自ら率先して参加できな
い、表には出てはいけないと認識していたのではないかと感じる。まし
て、監査委員自らが補助金を市からいただいたというのは、倫理基準違
反としてまさしくありえないことだと思う。
④請負というのは直接笹川議員が請け負ったとすれば請負である。監査
委員というのは笹川議員がやっている役職でだが、受給したのは男鹿無
洗米安定供給の会ということで、過去の判例でも地方自治法第 92 条の 2
の解釈の中で 25%程度の請負については問題ない。監査委員として直接
笹川商店が請け負ったのであれば請負だが、無洗米安定供給の会として
やっていることなので請負ではないと判断する。
⑤笹川商店の減農薬米の集荷状況からみても、給食に提供している量は
全体の1割にも満たない量である。結果的に積極的に関与して利益を求
めるようなことはなかったと思う。当然、請負をする場合においては儲
けという部分が先に考えられる部分があるが、その点は笹川議員におい
ては監査委員という立場というのは薄いのではないか。議員、監査委員
の立場の中で、笹川議員の問題意識としての倫理観について、本人の自
覚が乏しいのではないか。笹川議員の言葉を聞いても、自分が置かれて
いる立場というものを考えない行動、発言があったように思う。
(2)第 7 回審査会
①議員プラス監査委員、ダブルの倫理観が必要。ただの議員とは違う。
地方自治法にも監査委員は特別高い倫理基準がある。米の納入等につい
て名前は無洗米の会となっているが、実質的には個人取引だと思う。
②会の持っていき方として、給食用米もすべて無洗米安定供給の会を通
したり、伝票関係もきっちりやるなど、もっと気を使ってやればよかっ
たと思う。当局もその辺がチェックできていない。本人は全然自覚がな
く倫理観が足りないと思う。ただ、唯一救われているのは実質的に学校
給食米でも実態としてちゃんと流通させて子供たちの口に届いていると
いうところに、補助金が行っているところであり、それはよかった。
③議員として高い倫理感が求められている中で、農業振興につながる補
助金かという観点で監査しなければいけない立場であったのに知らなか
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ったとか、非常におそまつだなという感じがした。
④減農薬米、学校給食米と市の施策にのっとった中での男鹿無洗米安定
供給の会の立上げがあって、その中に笹川議員が議員個人ではなく笹川
商店として関与していることに政治倫理が問われているわけだが、しか
らば意図的に自分の意思でそれに参画してかなりの利益を得ているとは
思えない。
【倫理基準違反の存否】
(1)指摘事項
審査における事情聴取や事実確認を踏まえ、被請求議員及び当局に対し、
事務事業の運営手法等について次の事項を指摘する。
まず、被請求議員である笹川議員に対しては、男鹿無洗米安定供給の会の
運営については、年会費の徴収がないほか、総会についても、情報交換会が
年1回開催されているというものの、設立総会以降の開催がないことと併せ、
事業決算も行われていないなど、組織としてずさんな運営が明らかであり、
倫理観の希薄さが見受けられる。また、学校給食米の納入に必要とされる無
洗米機の所持に関わらず、市内集荷業者 4 社においてこの会を設立した経緯
については、当局も含めその手法や手順に疑問を感じざるを得ない。
これらについては、議員及び当時の監査委員として、補助金の適正な管理
執行を監視する立場上、強く指摘されるものである。
一方、当局においては、男鹿無洗米安定供給の会の運営実態について把握
していないことと併せ、おが産減農薬米利用支援事業費補助金を会長の個人
口座へ振り込んでいるほか、学校給食用として納品される減農薬米について、
確実に減農薬米であるという確認がされていない。また、納品に対する代金
支払いについても、当該安定供給の会へ口座振り込みや現金払いに加え、会
長の個人口座に振り込むなど、男鹿無洗米安定供給の会の統一性に関してチ
ェックができていない状態であった。
審査においては、無洗米機の所持のあり方が疑問視され、被請求議員の事
情聴取における無洗米機の購入に関する質疑への答弁において、一度目の聴
取では、
『みんなでその費用を出し合った。(4 社での費用負担)
』と発言した
のに対し、二度目の聴取では『無洗米機の使用時に使用料に上乗せした。
(使
用料は実質 1 社ないし 2 社の使用業者のみ支払)』とする発言の撤回があり、
審査する上で大きな障害となった。さらに当局は、そもそも吉運商店が前年
から所持していたとし、違いが見られた。また、減農薬米の生産状況からそ
の位置付けが問題視され、おが減農薬米栽培実証事業費補助金の対象地区で
ある男鹿中地区以外にも広範にわたって作付けされている現状が明らかとな
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り、これにより男鹿中地区以外の減農薬米についても学校給食米として使用
されている事実が判明した。これらの状況から、減農薬米をどう定義するの
か、学校給食米への使用の信頼性をどう証明するのかについて意見が分かれ
た。審査においては、この2点について多くの審査時間を要したものである。
議員・監査委員として請負に伴う兼業禁止については、法に抵触しない行
為だとしても、倫理上、男鹿無洗米安定供給の会の会員として、しかも会員
2社で学校給食米を取り扱い、市から補助金を受領している状況は、そのあ
り方が問われているものである。
(2)事業の感想
おが産減農薬米利用支援事業費補助金の制度のあり方については、当該補
助金の交付にあたって、男鹿市農林水産関係補助金交付要綱では「減農薬米
と通常米の価格差」としているものを、運用として「子育て応援米と学校給
食米の価格差」に置き換え補助金を支給していることと併せ、既に減農薬米
栽培実証区域である男鹿中地区以外においても減農薬米が栽培されているこ
と及び補助対象事業者が不明確であることなど、事業目的である「学校給食
へのおが産減農薬米の利用を促進し、食と農に対する理解や、消費拡大、減
農薬米栽培の啓発・普及を図る。」とした事業の取り組みに対し、農業振興施
策上の観点から不透明感は拭い切れないとの印象を持ったものである。
(3)違反の存否
政治倫理基準違反の存否については、当倫理審査会は、論点整理のため調
査請求者及び被請求者並びに当局からの事情聴取を行うとともに、聴取した
事実確認を基に議論を繰り返し行いながら精力的に審査した結果、その存否
については、明らかな倫理基準違反は見受けられないものの、倫理上、誤解
を招かれる行動は厳に慎むべきものであり、その面では道義的批判は求めら
れるものである。また、被請求議員である笹川議員の質疑に対する答弁にあ
いまいさがあり、残念ながら誠意を持った対応であったとは受け止められな
かった。
審査は当議会議員の倫理に関することであるが、公選により市民から負託
された議員諸氏においては、疑われるような行為はしないほうがよいとする
かでん
くつ
い
り
か
「瓜田に履を納れず李下に冠を正さず」という古くからの故事を今一度確認
しながら、市勢発展に向けご尽力いただきますことをご期待し、調査結果の
ご報告といたします。
なお、当倫理審査会はこの報告をもって調査を終了いたすものであります。
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以上により、本審査会に付託されました男鹿市議会議員政治倫理調査請求
について、男鹿市議会議員政治倫理条例第9条第1項の規定によりご報告い
たします。
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