演習問題解答例(資料4-11)

電気回路学I及び演習 (2015.7.28)
資料 4–11,演習解答例 A–33
【演習問題解答】
〔資料 4–11〕
□問題 3.100 V,60 Hz の電源に 10 kVA,力率 0.8 の誘導性負荷が接続されている.
この負荷に並列にカパシタを接続して全体の力率を 1.0 にしたい.このとき,カパシ
タは何 kVA,何 µF のものを用いればよいか.
ヒント 1:誘導性負荷のインピーダンスを求めて,カパシタを接続したときのインピー
ダンスが力率 1.0 になる条件を考える.
ヒント 2:誘導性負荷の無効電力をカパシタの無効電力で打ち消す,と考える.
※問題 3 は「力率改善」の問題で,実用上よく出てくる問題である.この目的で使わ
れるカパシタを「進相コンデンサ」と呼ぶ.なお,ヒント 2 の考え方の方が計算は簡
単である.
(解答例)
(ヒント 1 の方法) 問題の回路図は右のように描ける.
誘導性負荷のインピーダンスを Z = R+jX [Ω] (X > 0) とおく.また,求めるカパシ
タの容量を C [F] とし,角周波数 ω [rad/s] におけるインピーダンスを ZC = 1/jωC [Ω]
とおく.
100 V
60 Hz
まず,誘導性負荷のインピーダンスを求める.電源電圧 |E| = 100 [V],皮相電力
Pa
10 × 103
|E|
100
=
= 100 [A] , |Z| =
=
= 1 [Ω]
|E|
100
|I|
100
力率 cos θ = 0.8 から,
R = |Z| cos θ = 0.8 [Ω]
√
√
X = |Z| sin θ = |Z| × (± 1 − cos2 θ) = 1 × (± 1 − 0.82 ) = ±0.6 [Ω]
である.ここで,X > 0 より,
Z = 0.8 + j0.6 [Ω]
カパシタを並列接続して力率 1.0 にするには,全体のインピーダンスが純抵抗にな
ればよい.並列接続なのでアドミタンスで考えると,
[
]
[
]
1
1
R
X
X
Im
+
= Im
−j 2
+ jωC = ωC − 2
=0
Z
ZC
R2 + X 2
R + X2
R + X2
したがって,求める C の値とその皮相電力 PaC は,
C=
PaC
1
X
1
0.6
·
=
·
' 1.59 × 10−3 [F] = 1.59 [mF] = 1 590 [µF]
ω R2 + X 2
120π 1
0.6
X
2
2
|E| =
1002 = 6 [kVA] · · · (答)
= ωC |E| = 2
R + X2
1
···
となる.
(ヒント 2 の方法)
誘導性負荷の無効電力を並列接続するカパシタの無効電力で打ち消すことを考える.
誘導性負荷の無効電力 PrL は,皮相電力 Pa = 10 [kVA],力率 cos θ = 0.8 から,
PrL = Pa sin θ = Pa
√
√
1 − cos2 θ = 10 1 − 0.82 = 6 [kvar]
I
10 kVA
0.8 ( 誘導性 )
Pa = 10 [kVA] から,
|I| =
E
(答)
C
電気回路学I及び演習 (2015.7.28)
資料 4–11,演習解答例 A–34
一方,並列接続するカパシタの容量を C [F] とし,角周波数を ω [rad/s] とおくと,
電源電圧 |E| = 100 [V] からカパシタの無効電力は次のように表される.
PrC = −ωC |E|
2
力率 1.0 のときには,これらの無効電力が打ち消しあって,次の関係が成り立って
いる.
PrL + PrC = 0
したがって,求める C の値とその皮相電力 PaC は,
C=
1 PrL
1
6 × 103
=
·
' 1.59 [mF] = 1 590 [µF]
2
ω |E|
120π
1002
PaC = |PrC | = |PrL | = 6 [kVA]
···
···
(答)
( 答)
となる.
※カパシタとインダクタ (純リアクタンス素子) の場合は,(無効電力の大きさ) = (皮
相電力) であり,無効電力の符号に気をつければ,どちらで議論しても良い.
□問題 4.200 V の交流電源に接続された電流 10 A,力率 0.6 の誘導性負荷がある.
この負荷は 2 つのインピーダンスが直列に接続されたものである.そのうち一方が,
8 + j7 Ω とするとき他方のインピーダンスを求めなさい.
ヒント:問題の最初の文章は,負荷の動作条件を示している.これから,まず全体の
インピーダンスを求める.
(解答例) 問題の回路図は右のように描ける.
この誘導性負荷のインピーダンスを Z = R + jX [Ω] (X > 0) とおく.題意より,
|Z| =
I
|E|
200
=
= 20 [Ω]
|I|
10
200 V
これと,力率 cos θ = 0.6 から,
R = |Z| cos θ = 12 [Ω]
√
X = |Z| sin θ = 20 × (± 1 − 0.62 ) = ±16 [Ω]
である.ここで,X > 0 より,
Z = 12 + j16 [Ω]
したがって,求めるインピーダンスは,次のようになる.
Z − (8 + j7) = 4 + j9 [Ω]
···
(答)
E
10 A
0.6 ( 誘導性 )
8 + j7 Ω
電気回路学I及び演習 (2015.7.28)
資料 4–11,演習解答例 A–35
□問題 5.3 kV の交流電源に 240 kW,力率 0.8 (遅れ) の負荷と,120 kW,力率 0.6
(遅れ) の負荷が並列に接続されている.このときの全電流および力率を求めなさい.
ヒント:複素電力を利用する.
(解答例) まず,問題の回路図は下のように描ける.
I
3 kV
I1
E
I2
240 kW
120 kW
0.8 ( 遅れ ) 0.6 ( 遅れ )
次に,実効電力 P ,力率 cos θ,複素電力 Pc の間には次の関係がある.
Pc = P + j
√
P
(± 1 − cos2 θ)
cos θ
力率が遅れ (誘導性負荷) であることに注意して,上の関係からそれぞれの負荷の複素
電力を求める.
240 √
( 1 − 0.82 ) = 240 + j180 [kVA]
0.8
120 √
= 120 + j
( 1 − 0.62 ) = 120 + j160 [kVA]
0.6
240 kW 負荷:Pc1 = 240 + j
120 kW 負荷:Pc2
ここで,交流電源を基準フェーザにとり,E = 3 [kV] で表す.また,各負荷に流れる
電流を,図のように I1 , I2 とおくと,次の式が成り立つ.
240 kW 負荷:Pc1 = E I¯1
→
120 kW 負荷:Pc2 = E I¯2
→
PC1
240 + j180 [kVA]
240 + j180
I¯1 =
=
=
[A]
E
3 [kV]
3
PC2
120 + j160 [kVA]
120 + j160
I¯2 =
=
=
[A]
E
3 [kV]
3
全電流 I は,
I = I1 + I2 =
240 − j180 120 − j160
360 − j340
+
=
' 120 − j113 [A]
3
3
3
あるいは,大きさを考えて,
360 − j340 ' 165 [A]
|I| = 3
···
···
(答)
(答)
力率 cos θ は,全体の複素電力 Pc = Pc1 + Pc2 から,
cos θ =
RePc
360
=
' 0.73
|Pc |
|360 + j340|
···
(答)
※問題 3 で見たように,交流の電力の計算でインピーダンスをいったん求めるやり方
は,計算が煩雑になりがちである.一般に,複素電力を利用したほうが交流の電力の
計算は簡単になる.
□問題 6.図 2 の回路で消費される全電力は 1 100 W である.それぞれの抵抗器の消
費電力および交流電流計の読みを求めなさい.ただし,電流計は実効値指示とし,そ
の内部抵抗は無視できるものとする.
ヒント:電流計の指示,各抵抗における消費電力,電流の関係,などを式の形で書い
てみよう.
電気回路学I及び演習 (2015.7.28)
資料 4–11,演習解答例 A–36
3Ω
j4 Ω
I1
10 Ω
A
I
I2
問題図 2
(解答例) ヒントにしたがい,求めるべき量と問題で与えられている関係を式の形で書
くと,次のようになる.
• 電流計の指示 (よみ)
|I|
2
• 各抵抗における消費電力
3 Ω : 3 |I1 | , 10 Ω : 10 |I2 |
2
• 全体の消費電力
2
3 |I1 | + 10 |I2 | = 1100 [W]
• 電流の関係
I = I1 + I2 [A]
···
(2)
• 電圧の関係
I1 (3 + j4) = 10I2 [V]
···
···
2
(1)
(3)
式 (3) より,
I1 =
10
6 − j8
I2 =
I2
3 + j4
5
|I1 | = 2 |I2 |
···
(4)
···
(5)
式 (5) を式 (1) に代入して,
2
2
3 × 4 |I2 | + 10 |I2 | = 1100
2
|I2 | = 50
···
(6)
したがって,10 [Ω] の抵抗器の消費電力は,
2
10 |I2 | = 500 [W]
···
(答)
3 [Ω] の抵抗器の消費電力は,
1100 − 500 = 600 [W]
···
(答)
である.
次に電流計の読み |I| については,式 (4) を式 (2) に代入して,
I=
11 − j8
6 − j8
I2 + I2 =
I2
5
5
この式の両辺の大きさをとり,式 (6) の結果を用いると,
√
√
11 − j8 112 + 82
|I| = ×
50
=
|I
|
=
370 [A] ≈ 19.2 [A]
2
5 52
···
(答)
※求めるべき量と問題で与えられている関係を式の形で書ければ,式の操作により解
答が得られる問題である.
※式 (1) が成り立つ理由については,電力の保存則(教科書 p.170) を参照のこと.