1症例 〜二次救急を始めるにあたって 診療放射線技師の立場から

第10回 健育会グループ
チーム医療症例検討会 in 熱川
演 題 名
発症から治療までの時間が予後を決定する急性心筋梗塞に対
発症から治療までの時間が予後を決定する急性心筋梗塞に対し
急性心筋梗塞に対し時間外緊急カテーテル
を実施した1症例
~ 二次救急を始めるにあたって 診療放射線技師の立場から ~
施 設 名
石川島記念病院
発 表 者
放射線科 西村 仁
概
要
発症から治療までの時間が予後を決定する急性心筋梗塞に対し、時間外緊急カテーテルが行われた。
連絡の手順・術前検査の種類など決め事がないままでの始まりであった。いくつかの幸運により PCI
は終了した。当院が心臓病センターとしての役割を果たすための課題が残った。今年 8 月に始まる二
次救急に向けて、診療放射線技師の立場から考察する。
【はじめに】
石川島記念病院は 20014 年 4 月に心臓病センター
を開設した。高度な心臓病センターを構築するため
の体制作りを行っている。
12 月からは放射線科・臨床工学科でオンコール体
制を始めた。時間外の緊急カテーテルを行うにあた
り、
経験者が少なく、
またそれぞれの背景も異なり、
運用の話合いを始めたばかりで、体制は整っていな
い状況であった。
しかしある日、時間外に緊急カテーテルを行うこ
ととなった。患者は近隣クリニックからの紹介であ
った。18 時 12 分医師からの連絡が回った。
【症例紹介】
氏名:M.Y 様 年齢:80 歳 性別:男性
疾患名:急性心筋梗塞(AMI)
午後から冷汗を伴う胸部苦悶感により近隣クリニ
ックを受診した。半年くらい前から胸部症状に自覚
はあったと言う。
来院時、血圧:134 / 64mmHg 心拍数 85bpm
SPO2 97%、十二誘導心電図で ST 上昇を認めたた
め緊急カテーテルの依頼が発生した。
スタッフは循環器医師 2 名、心臓血管外科医師 2
名、臨床工学技士 2 名、診療放射線技師 1 名と、心
臓を得意とする看護師が 1 名居合わせ、このメンバ
ーで緊急カテーテルを開始した。
【治療】
19 時 06 分緊急カテーテルが開始された。冠動脈
造影(CAG)で、左前下行枝#6 に完全閉塞が認め
られたため、経皮的冠動脈形成術(PCI)を開始し
た。血栓吸引後、ステント治療を行い、血管内超音
波検査(IVUS)で治療後の確認を行い、20 時 10
分に終了した。これによる総 X 線量 1867mGy、透
視時間 15.08min、造影剤量 215ml であった。
【経過・結果】
PCI により胸部症状がなくなったが、以前より気
になっていた症状のため他科を受診するなどして 2
週間後に退院した。その後の経過観察のための外来
受診では、”階段を上っても息切れが出にくくなっ
た”とコメントされている。
【考察】
今回、看護師が居合わせたため、臨床工学技士、
診療放射線技師では実施できない薬剤投与を行えた
事は幸運であった。現在、時間外での緊急カテーテ
ルは、看護部の勤務態勢から参加が難しいようであ
るが、他のコメディカルでは薬剤の投与が出来ない
ため問題となる。
当院での時間外緊急カテーテルは、
医師 2 名、看護師 1 名、臨床工学技士 1 名、診療放
射線技師 1 名が必要最低人数と考える。
本症例が、心臓病センターががこれから目指すべ
き方向性を示せた点が大きいが、来院から緊急カテ
ーテル開始までの時間短縮、実施するべき事のルー
チン化、物品のセット化するなど、ご家族への対応
も含め、円滑な運用に向けて課題となった。
また、
当院では 2015 年 8 月より二次救急を開始す
る。
今回のように AMI の対応が増加すると思われる。
当病院が東京都中央区に立地することもあり、近所
に住居を構えるのは難しく、また郊外の住宅地から
呼び出された場合、
迅速な対応が困難と予想される。
放射線科としては二次救急に対し当直体制が妥当と
考える。
【結語】
発症から治療までの時間が予後を決定する急性心
筋梗塞に対し、理念とする心臓病センターとしての
治療を達成できた。しかし、より適切で円滑な運用
には、しっかりとした体制作りが必要で、まだまだ
課題は多い。