平成 27 年 10 月 28 日放送 いいことだらけの禁煙生活 JAとりで総合医療センター 健康管理センター 保健師 小林美智江 司会者:今日のタイトルにもありますが、禁煙生活はそんなにいいものですか? 小 林:そうなんです。いいことだらけです!まず、お金がたまります。毎日 20 本吸 う人のタバコ代は、1 箱 400 円で計算すると 1 ヶ月で 12000 円、1年で 14 万 4 千円、10 年で 144 万円。毎日 50 本吸う人は禁煙すれば 10 年で 360 万円の お小遣いができます。1 年では家族で一泊旅行に行けて、10 年では車一台に 手が届きます。 司会者:そんな金額になるんですね!なんだか得をする気がします。 小 林:まだまだ良いことがたくさんあります。 ① まず肺がん・のどのがん(喉頭がん)のリスクが減ります ② 禁煙を初めてわずか 20 分後から、すぐに体に良い変化が起こり、禁煙の効 果が表れます。 20 分後 血圧が正常化し始め、脈拍が改善する、手足が温かくなる 8 時間後 血液中の酸素濃度が増え始める 24 時間後 心筋梗塞・狭心症になる確率が下がる 2 日後 味覚・嗅覚(臭覚)が回復し始める 3 日後 ニコチンが身体から完全に消える 2~3 週間後 血液のめぐりが良くなる、肺機能が 30%アップし歩行が楽になる 1∼9 ヶ月後 せき・たん・疲労感・息切れが改善する 5 年後 肺がんになる確率が半分になる 10 年後 肺がんになる確率が 1/10 になる あとは… ③ 周りの人に気兼ねしなくてよくなります ④ イライラしなくてよくなります ⑤ 匂いが気にならなくなり、「くさい」と言われなくなります ⑥ 食事がおいしくなります ⑦ のどがイガイガしなくなります ⑧ 唇がうるおうようになります ⑨ 喫煙場所を探して歩き回らなくてもよくなります。最近は禁煙化が進み、タ バコを吸える場所は年々少なくなっています。思い切って禁煙してしまえば、 そういう場所を求めて歩き回らなくてよくなります ⑩ そしてなにより家族や大切な人の健康を守ることができます 1 司会者:なるほど。いいことだらけですね!そもそもタバコが身体に悪いと聞きますが、 具体的にどのような悪影響があるんでしょうか? 小 林:代表的な有害物質はニコチン、一酸化炭素、タールの他、カドミウムやアンモ ニウム、ダイオキシンなどがあります。ニコチンは殺虫成分にも含まれる猛毒 です。胃潰瘍や十二指腸潰瘍なども引き起こされます。また、タールには約 40 種類の発がん物質が含まれます。タバコを吸う人と吸わない人を比較する と、のどのがん(喉頭がん)はなんと 32.5 倍!肺がん 4.5 倍、食道がん 2.2 倍に もなります。さらに一酸化炭素には動脈硬化を進行させ、心筋梗塞や脳梗塞な どを引き起こすと言われています。また、タバコを吸っている人ばかりではな く、最近受動喫煙も深刻な問題になってきています。 司会者:受動喫煙ってなんですか? 小 林:受動喫煙とは、タバコから立ち上る副流煙を周りの人が吸ってしまうことです。 タバコの有害物質の含有量は直接吸い込む主流煙より、副流煙の方がはるかに 多いと言われていて、タバコの煙の影響は7m先まで到着します。そして受動 喫煙によって引き起こされる疾患のリスクが報告されています。肺がんは2倍、 心筋梗塞 1.3 倍、小児気管支喘息 2.3 倍、乳幼児突然死症候群 4.7 倍、低体重 児 1.4 倍との報告があります。 (JPHC Study 津金 2008)タバコを吸 っている人は“自業自得”といった部分もありますが、タバコを吸っていない 人が副流煙の被害を受けるのは大変つらく、深刻な問題です。ですから、最近 では公共の場所は禁煙や分煙が多くなってきたのです。自分の健康を守るため だけでなく、周りの人への害を与えることを考え、ぜひとも禁煙にトライして みてほしいと思います。 司会者:でも体に悪いことがわかっていても、実際にはタバコをやめられない人は多い ように感じます。どうしてなのでしょうか… 小 林:それはタバコによって依存症という病気になってしまうからです。よく意志が 弱いからダメだという方がいますが、そうではありません。依存症には「身体 的依存」と「心理的依存」があります。「身体的依存」はタバコに含まれるニ コチンによって作り出されるものです。脳内の神経伝達経路に作用して、タバ コが吸いたい、イライラする、落ち着かない、といったニコチン離脱症状(禁 断症状のことです)が出て、禁煙を難しくします。 「心理的依存」は、 “食後の 一服”のような「習慣」です。喫煙が習慣として生活の中に組み込まれている 状態のことです。 2 司会者:禁煙と一口に言っても、なかなか自力では難しいと思います。どのような方法 がありますか? 小 林:まずは「禁煙してみよう」と思う勇気ときっかけが必要です。方法は、自力、 市販の禁煙ガムやパッチなどの他、専門の医療機関での禁煙外来などがありま す。 司会者:禁煙外来とは最近CMで耳にしますが、詳しくはどのようなことですか? 小 林:病院で健康保険を使って治療を受けることです。禁煙は適切な支援を受けるこ とで成功率が高まることが知られています。離脱症状(ニコチン依存)が強く、 禁煙が困難な方には(ニコチン置換療法の)お薬による治療と、医師・看護スタ ッフ・薬剤師などが支援を行っています。 司会者:治療費はどれくらいかかるものですか? 小 林:保険診療で禁煙治療が受けられるようになってから、自己負担3割として、処 方される薬にもよりますが、約 3 ヶ月で 13,000 円∼20,000 円程度です。1日 20 本喫煙する方なら、3 ヶ月分のタバコ代より保険診療で禁煙治療を受けた 場合の自己負担額の方が安くなる計算になります。ただ、誰でも保険適用で禁 煙外来を受けられるわけではありませんので、まず、禁煙外来を行っている病 院に問い合わせてみることをお勧めします。 司会者:ちなみに、禁煙外来を受けて成功されている方の割合はどれくらいいらっしゃ るんでしょうか? 小 林:全国の統計では約 5 割、当院での禁煙外来での成功率は約 6 割です。実際に禁 煙を成功された方から、 「10 月から禁煙して、中学校に上がる孫に 7 万円の自 転車を買ってやれた」 「浮いたお金で旅行に行けた」 「タバコを吸う場所を探さ なくてよくなった」 「他人に臭いと言われなくなった」 「口臭が気にならなくな った」などの喜びの声をいただいています。そして、禁煙外来にお見えになる 方で「友達が、禁煙外来でタバコをやめられたから、あいつができたから私に もできるかと思って」とおっしゃる方もいます。さらに、 「一度失敗したけど、 また挑戦してみようと思って」と再度お見えになる方もいらっしゃいます。 司会者:結構成功されているんですね。このことを今回皆さんにお知らせすることがで きて良かったです。 小 林:はい。この話を耳にされて、ご自分も「禁煙してみよう」「禁煙できるかもし れない」「もう一度挑戦してみようかな」と考えるきっかけにしていただけた ら嬉しく思います。現在タバコを吸っている方もご家族も、禁煙によって健康 で健やかな生活が送れますよう、心から願っています。本日はありがとうござ いました。 3
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