第5学年 1 単元名 2 目標 算数科学習指導案 図形の角を調べよう ・筋道立てて考えることのよさを認め,三角形の内角の和が180°であることを基に, 四角形や他の図形の性質を調べようとする。 (関心・意欲・態度) ・三角形の内角の和が180°になることを帰納的にとらえ,それを基に四角形の内角の 和について演繹的に考え,四角形の性質としてとらえることができる。 (数学的な考え方) ・三角形や四角形の内角の和を用いて,未知の角度を計算で求めるこ とができる。 (技能) ・三角形の内角の和が180°であることや,四角形の内角の和は三角形に分けることに よって求められることを理解する。 3 (知識・理解) 指導にあたって (1)教材観 第3学年においては,二等辺三角形や正三角形の性質を学習するときに,角を切り取ったり 折って重ねたりする操作を通して,形としての角の相等について学習してきている。第4学年 においては,量としての角をとらえることも扱っており,回転による半直線の開き具合の量と して角をとらえ,分度器を用いてその量を測定したり,必要な角の大きさを表したりする学習 を行っている。分度器での角の測定や表し方は,回転する角がどこからどこまでの角なのかは っきり意識した測定が必要であり,本単元の学習においても,確実に身につけておきたい基本 的な技能の1つである。また,平行や垂直を定義し,その観点で分別を行うことで平行四辺形 や台形などの四角形を定義するとともに,四角形を対角線で分けたときにできる三角形の特徴 も考察している。さらに,第5学年の第5単元においては,ぴったり重ね合わせることができ る2つの図形を合同な図形と定義し,合同な図形の性質やかき方を学習している。 本単元では,これらの学習を基に,まず三角形の内角の和を求める学習を行う。ただの知識 として学習させるような指導過程をとるのではなく,具体的な操作に重点を置いた指導過程を とるようにしたい。教科書では2種類の三角形の敷き詰めや,三角定規の角の測定などから, 「三角形の内角の和は180°になりそうだ」という推論をたて,それが正しいかどうか調べるた めに,様々な三角形の内角を調べ,その推論が正しいことを帰納的な考えにより納得して理解 させるようにすることが大切である。 四角形や多角形の内角の和についても考えるが,同様に単なる知識として学習するような過 程をとるのではなく,三角形の内角の和が180°になっていることを基に,それぞれの形を三角 形に分割し,児童が自分なりにそれぞれの内角の和を求めるといった演繹的な思考過程をとる 5年-1 ようにしていきたい。対角線を引いて三角形に分割する考えを簡単に思いつかない児童には, 「四角形の内角の和を見当つけてみよう」「三角形の内角の和を使って考えられないかな」な どの助言を与えることで,児童自身が自ら考える手がかりとしていく。さらに,他の児童の様々 な考えを読み取り,その方法を考え表現することで児童自身の思考力や表現力の伸張を図る。 本単元の学習の関連と発展 4年 5年 6年 ②角の大きさ ⑤合同な図形 ⑤対称な形 ・回転の角の大きさと単位 ・合同の定義 ・線対称,点対称の概念,性 ・角度のはかり方,かき方 ・合同な図形の性質 質,かき方 ・対頂角の性質 ・合同な図形のかき方 ・対称性による多角形の考察 ④垂直・平行と四角形 ⑨図形の角 ⑦拡大図と縮図 ・台形,平行四辺形,ひし ・三角形,四角形の内角の和 ・拡大図・縮図の定義,性質, 形の定義,性質,かき方 ・多角形の定義 かき方 ・対角線の定義 ・多角形の内角の和 ・縮図を利用した実測 ⑬正多角形と円周の長さ ・三角形,四角形の内角の和 ・多角形の定義 (2)児童観 ・多角形の内角の和 算数の課題を解決することには意欲的な児童が多いが,わからないと自力で考えることをあ きらめてしまったり,すぐ教師に頼ろうとしたりすることもある。そのような児童たちに自ら 課題を解決する力を育てるために,算数の時間はまず解決方法の見通しを持たせ,既習事項を 用いていろんな方法で考える学習をおこなってきた。みんなの前で自分の考えを話すことは全 員できるが,聞いている人にわかりやすく説明するためにどのような言い方が適切かを意識し て話せる児童はまだ一部である。また,自分の考えを書くことも積極的に授業に取り入れてい るが,要点を押さえて見やすく書く工夫ができる児童は少ない。 (3)指導観 単元の導入では,「2つの三角形はしきつめられるか」と言う課題から2種類の三角形を敷 き詰める活動を行う。児童には「しきつめられることができた」という結果から「なぜしきつ められるのか」という新たな課題を持たせ,1つの点に三角形の3つの角が集まると一直線に なることから,三角形の内角の和が「いつも180°になっているのではないか」ということに目 を向けさせる。 三角形の内角の和は,児童に身近な三角定規の3つの角の和を調べることによって気づかせ, 他の三角形も180°になることを実証するために,3つの角を切り取って1点に集めるなど敷き 詰めの学習の経験を生かす。 四角形の内角の和は,四角形の1本の対角線によって2つの三角形に分割したり,3つや4 つの三角形に分割したりして,三角形の内角の和が180°であったことを基にして四角形の内角 5年-2 の和を演繹的に考えて求める。 さらに五角形,六角形などの多角形の定義を知り,それらの多角形の内角の和を求める活動 を行う。四角形と同様に三角形に分割することによって求められることを理解させ,対角線で 分割してできる三角形の数と内角の和を表にまとめる。多角形の辺の数と対角線で分割してで きる三角形の数の規則性にも着目させる。 一般四角形の敷き詰めの学習では,敷き詰められたという驚きとともに,「なぜしきつめら れるのか」という課題を追究させたい。三角形の敷き詰めと同様に,1つの頂点に四角形の4 つすべての角が集まり,四角形の内角の和である360°を作っていることに気づかせる。 (4)校内研究とのかかわり 算数では,自ら学ぶ力を育てるため,ガイド学習をおこなっている。ガイドはまだ学習の進 行係としての働きが強いが,ガイドになるとどの児童もはりきって学習に臨んでいる。課題解 決にあたってはできるだけ教師を頼らず,自分の考えをもち整理するために,まずノートに課 題の解決方法を書く活動を取り入れている。図や数直線,式,言葉などを場合に応じて使い分 けながら,聞き手にわかりやすく説明するように働きかけている。解決方法も1つだけではな く,他の解き方はできないか考えさせ,既習事項を活用してできるだけ多くの方法を見つけさ せることを大切にしている。コミュニケーション能力の育成のためにも自分の考えはペアや全 体の場で紹介し合うようにしているが,根拠や理由を明確にしながら話すことを常に意識させ ている。現時点では,自分の考えの根拠を明らかにしながら説明することだけでなく,相手の 考えを受け止め,それに対する疑問や意見を出し合い,共に学び合おうとする学習集団づくり をめざしている。多様な考えを認めながら,よりよい方法を選んだり,さらに自分の考えを深 めたりしていけるような教師の助言や支援を工夫していきたい。児童が互いに友達の考えのよ いところを取り入れ,よりよい考えを見出すことができるような学びが生まれる授業を目標に していく。 4 次 ( 時 ) 第 一 次 ( 4 ) 単元計画(総時数7時間) ○指導と●評価 ◆評価規準に達しない児童への手だて 学習活動と主な思考の流れ ・写真を見てタイルの形や並び方について気づ いたことを話そう ・三角形がきれいに並んでいる ・合同な二等辺三角形が並んでいる ・三角形がきちんとしきつめられている 〈どんな三角形でしきつめられるかな?〉 ・アの三角形もイの三角形もしきつめられたよ ・長さの等しい辺どうしがくっついている ・すきまなくしきつめられたとき,1つの点に 三角形の3つの角が集まっている ・ 「角 A・B・C」 「角 D・E・F」が一直線に並 んでいる 5年-3 ○教科書の写真を見て,三角形で敷き詰め られた模様について話し合い,関心を高め る ●三角形の敷き詰めに関心をもち,敷 き詰められたわけについて考えようと している【関心・意欲・態度】 〈観察, 発言〉 ◆敷き詰めたとき,どうやったら敷き詰め られたかを考えさせ,それぞれの角が3つ 集まっていることに目を向けさせる ・3つの角を合わせると 180°になっている ・三角形の角の大きさにきまりがあるからかな ○角の大きさについて気づいたことがど んな三角形でも言えることか予想させる しきつめられたのは,三角形の角の大きさ にきまりがありそうだ 第 一 次 ( 4 ) 本 時 ・三角定規の3つの角はそれぞれ何度かな ・三角定規の3つの角の大きさの和は 180°に なっている ・他の三角形の3つの角の大きさの和はどうな っているのかな ・三角形の内側の角のことを「内角」と言うよ 〈どんな三角形でも内角の和は,180°になる のかな〉 ・三角定規の内角の和は 180°だったよ ・三角定規以外のいろいろな三角形の内角の和 はどうなっているか調べよう ・分度器ではかろう ・3つの三角形を使って並べてみよう ・三角形の3つの角を切って1か所に集めると 一直線になる ・一直線になるから 180°だ ・ノートに三角形をかいて,内角の大きさをは かってみよう ・自分でかいた三角形も内角の和は 180°にな った ・どんな三角形の内角の和も 180°になりそう だな ○三角定規の3つの角の大きさを思い出 させる ○ア・イの三角形について内角の和を多様 な方法で調べさせる ○内角の和についてどのように調べたか, また何度になったかを説明するように指 示する ○敷き詰められたことと関連づけて考え るように助言する ●三角形の内角の和を,三角形を敷き詰 めたり,三角定規の角の大きさを調べた りすることを通して帰納的に考え,説明 している【数学的な考え方】〈ノート、 発言〉 ◆分度器ではかる方法以外に,三角形の3 つの角を切って1つの点に集める方法で 考えさせる ○ノートにかいた任意の三角形について も,内角の和を調べさせる 三角形の内角の和は,180°になります だから,どんな三角形もしきつめられます ・学習したことを使って,計算で角の大きさを 求めよう 〈四角形の内角の和は何度になるかな〉 ・角度をはからないで求めるにはどうすればよ いかな ・三角形の内角の和は 180°だった ・三角形の内角の和より大きそうだな ・三角形の内角の和=360°を使って考えよう ①頂点Aから頂点Cに対角線を1本ひいて2 つの三角形に分ける 180×2=360 だから 360°です ②頂点Aと頂点Dから底辺BCに2本直線を 引いて3つの三角形に分ける 180×3=540 辺BCの上にある 180°をひい て 540-180=360 で 360°になります 5年-4 ○内角の和は何度になるか予想させる ○三角形を基にした見当をつけさせる ●三角形の内角の和を基にして,四角 形の内角の和の求め方を演繹的に考 え,説明している【数学的な考え方】 〈ノート、発言〉 ◆四角形を分割して考えると三角形がで きることに気づかせる ○自分の考え方を発表し説明させる ③頂点ABCDから四角形の内部の1点にそ れぞれ直線を引いて4つの三角形に分ける 180×4=720 四角形の中の点の周りの 360° をひいて 720-360=360 で 360°です 四角形の内角の和は 360°になります ・練習問題をしよう 第 一 次 ( 4 ) 〈合同な四角形はどんな四角形でもすきまな くしきつめられるかな〉 ・すきまなくしきつめられるのは正方形です ・長方形もしきつめられます ・平行四辺形もしきつめられます ・p129 の四角形を切り取って調べよう ・しきつめられた ・4つの角が1つの点に集まるように並べたら しきつめられたよ ・四角形の内角の和は 360°だから4つの角を 1つの点に集めればいい ・ひし形や台形もしきつめられそうだ 四角形の内角の和は 360°だから,合同 な四角形はすきまなくしきつめることが できる ・平行四辺形の一部を変えて,楽しいしきつめ もようを作ろう ・五角形,六角形の特徴を見つけよう ・辺が5本の形は五角形といいます ・辺が6本の形は六角形といいます ・直線で囲まれた形を多角形といいます 第 二 次 ( 1 ) 〈五角形や六角形など,多角形の内角の和には どんなきまりがあるのかな〉 ・四角形の場合と同じように,三角形に分けて 考えよう ・対角線の引き方を工夫しよう 〔五角形〕 ・1つの頂点から対角線を2本引いて3つの三 角形に分けると 180×3=540 で 540° ・1つの頂点から対角線を1本引いて三角形と 四角形に分けると 180+360=540 で 540° 〔六角形〕 ・1つの頂点から対角線を3本引いて4つの三 角形に分けると 180×4=720 で 720° 5年-5 ○正方形,長方形,平行四辺形,一般四角 形を提示し,敷き詰められるかを考えさせ る ○敷き詰めた結果を確認する ○敷き詰められた理由を考えさせる ●合同な四角形が敷き詰められること の理由を考え,筋道立てて説明している 【数学的な考え方】[ノート,観察,発 言] ◆4つの角に●▲■◆の印をつけて,1つ の点にどのように集まっているか考えさ せる ○教科書を参考に,どの辺をどのように変 形しているか調べさせる ○多角形の定義を理解させる ●三角形の内角の和を基に,多角形の内 角の和を三角形に分けて求める方法を 考え,説明している【数学的な考え方】 〈ノート、発言〉 ◆三角形に分けるためには,1つの頂点か ら対角線を引けばいいことに気づかせる ○自分の考え方を説明させる ・1つの頂点から対角線を2本ひいて2つの三 角形と1つの四角形に分けて 180×2+360= 720 で 720° ・三角形だけに分けて考える方が,三角形の数 だけを考えればいいから簡単に計算できる ○それぞれの考えのよいところを見つけ させる ○求めた結果と三角形の数を表に整理す る ・きまりを見つけるために表にまとめよう 第 二 次 ( 1 ) 三角形 四角形 五角形 六角形 三角形の数 1 2 3 4 内角の和 180° 360° 540° 720° 七角形 ・三角形の数が1こ増えると角は 180°増える ・三角形の数は,辺の数から2ひいた数だ ・○角形の内角の和=180×(○-2)で表せ るよ ○表の変化のきまりに着目させる ○ ○角形の内角の和=180×(○-2) ○三角形の内角の和を基に考えさせる ○角形の内角の和は 180×(○-2)の式を 使えば,求められる 第 三 次 ( 2 ) 5 ・七角形,八角形の内角の和も式で求めてみよ う 〈 「しあげのもんだい」をしよう〉 ・三角形の内角の和は 180°です ・四角形の内角の和は 360°です ・三角形,四角形,五角形などのように直線で 囲まれた図形は多角形といいます ・計算で角度を求めよう ・三角定規の角度の和の求め方を説明しよう 図形の角について学習したことを使って 問題をとくことができた 〈 「おもしろ問題にチャレンジ」をしよう〉 ・図形の角をもっと調べよう ・分度器を使わずに計算で求めよう 図形の角について学習したことを使って, 計算で角の大きさを求めることができた ○三角形や四角形の内角の和について,図 形の性質を確かめる ●基本的な学習内容を身につけている 【知識・理解】 [ノート,発言] ◆教科書の横欄にある該当ページを見て, 学習内容を確認させる ●三角形や四角形の内角の和を用いて, 未知の角度を計算で求めることができ る【技能】 [ノート,発言] ◆児童の実態に応じてできる問題に取り 組ませる 本時の学習(第一次中2時) (1)題目 三角形と四角形の角 (2)本時のねらい 三角形の内角の和を,三角形を敷き詰めたり分度器で角度を測定 したりすることを通して,帰納的に考えることができる。 【数学的な考え方】 (3)期待する関わり合いの姿 ・自分の考えを,図形や式,言葉などを使ってわかりやすく説明しようとしている。 ・自分の考えと比べながら友達の考えを聞き,そのよさを認めることができる。 5年-6 (4)学習過程 ○指導と●評価 時 ◆評価規準に達しない児童への手だて 学習活動と主な思考の流れ G学習ガイド 1 本時の課題をつかむ ・三角定規の3つの角の大きさの和は 180°だったよ ・三角形の内側の角のことを「内角」といいます ・三角定規以外のいろいろな三角形の内角の和はどうなって いるのかな どんな三角形でも内角の和は,180°になるのかな 5 G進行 ○前時の学習を振り返り本時の課 題を確認する ○用語「内角」を用いるようにす る 2 課題について考える(自力解決) 15 ○ア・イの三角形や自分でかいた 任意の三角形について,内角の和 ・分度器ではかろう を多様な方法で調べさせる ・アの三角形,イの三角形を分度器で測ろう ○帰納的に考えさせるために,複 ・他の三角形でも調べてみよう 数の三角形を調べさせる ・ノートに三角形をかいて角の大きさをはかってみよう ○内角の和についてどのように調 ・分度器で はからないで調べる方法はないかな べたか,また何度になったかを説 ・ア(またはイ)の三角形を3つ並べてみよう 明するように指示する ・ア(またはイ)の1つの三角形を折り曲げてみよう ○図形や式,言葉などを使った自 ・三角形の3つの角を切って1か所に集めると一直線になる 分 の 解 決 方法 を ノー トに 書 か せ ・一直線になるから 180°だ る。 3 考えを交流し,深める(全体) 15 G 話し合いの指名 ・分度器ではかったらアは 65+80+35=180 で 180° ●三角形の内角の和を,複数 イは 40+110+30=で 180°でした の三角形について調べること ・自分でかいた三角形も3つの角の大きさの和は 180°になり を通して帰納的に考え,説明 ました している【数学的な考え方】 ・三角形の3つの角を切って1か所に集めると一直線になり [ノート、発言] ました。一直線になるから 180°です ・どんな三角形の内角の和も 180°になりそうです ◆分度器ではかる方法以外に,三 角形の3つの角を切って1つの点 4 まとめる 5 に集める方法で考えさせる ○敷き詰められた理由と関連づけ 三角形の内角の和は,180°になる て理解を深める だから,どんな三角形でもしきつめられるんだね G まとめの確認 5 5 練習問題をする ・学習したことを使って,計算で角の大きさを求めよう 板書計画 しきつめ 〈どんな三角形でも内角の和は,180°になるのかな〉 分度器で ならべて 角を切って ア 65+80+35=180 答え 180° 三角定規…30+60+90 45+45+90 3つの角の和は180° 正三角形は60×3=180 ほかの三角形では? イ 40+110+30 =180 答え 180° 一直線…180° しきつめられる 一直線になった ↓ 180° 三角形の3つの角の大きさの和は,180°になる だから,どんな三角形でもしきつめられる 5年-7
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