乙3テーブル ジャッジ:岡本

2015年度
アッセンブリー
3番テーブル
総評
ジャッジ:岡本一真(日本大学4年)
メンバー:杉野谷(青学2)、西山(東洋3)、後藤田(立教3)、衛藤(武蔵3)、村上(日大
3)、三原(立教3)、五十嵐(明治2)、由良(フェリス2)、米村(東洋3)
※順不同
1.初めに
本年度のアッセンブリーにおいて3番乙テーブルとして位置付けられたこのテーブルで
あったが、残念ながらあまり良いテーブルとは言えず乙一が出ない、いわゆる「全落ちテ
ーブル」に近いものであったことをまず申し上げたい。その理由として議論を評価する際
に用いられる「進度」と「深度」の2つの指針が著しく不十分だったことがあてはまる。
詳しくは後述するが、Practicability の確認で議論が終了したこと及びそれまでに検証さ
れたアイディアがほとんどなかったことによりテーブルを評価し得る材料が少なかった。
しかしながら結果として乙一を選出することになり、衛藤(武蔵3)が選ばれる運びと
なった。
2.議論の大まかな流れとコメント
<Narrowing> 18分
後藤田の narrowing、西山、衛藤、杉野谷、後藤田の4名がオピニオンプレゼンターに立
候補。各々の考えるコンパリソンのイメージやDAに関して質問が交わされた後、Voting
によって衛藤がオピニオンプレゼンターに選ばれた。
(コメント)差別化及び理解を深めるために質問を行っていたのは良かったが、そのや
り取りから「テーブルメンバー全員がコンパリソンに進みたい」ということはほぼ自明で
あったためテーブルで停滞が起こったときに、それを用いて何かしらのサジェスチョンを
打つことも1つの選択肢であったと思う。
<ASQ> 1時間22分
TGや精神的苦痛の特徴や性質など、またADなどSQにはあまり関連性の見られない
ものやオピニオンプレゼンターのスタンスについても質問が行われた。また Reason for
Cause について西山が「ドナーの家族を尊敬しているから」という一例をコンセンサス(以
下 コンセ)にした。ASQを通して何度か停滞が起こるも衛藤と杉野谷、次いで後藤田が
介入し収束させていた。NFCではタスクを確認するのみで反論はなかった。
(コメント)時間の掛け過ぎである。あくまでASQはASQだ。もちろん、ときどき
ASQから派生して深みのある議論になったりするケースがあるため、時間を掛けるべき
でないと言い切るのは安直かもしれない。しかし今回ASQで行われたQAのほとんどが
コンパリソンを前提としたものであったことから、結果論ではあるが意味のないものにな
ってしまった。また今回、ジャッジをしていてなんとなくテンポの悪さを感じた。
「ASQ
はコンパリソンを見据えてオーソリティを築く機会である」というのが筆者の考えではあ
るが、このテーブルではそこまでオーソリティを築いた人物がいなかったことが後の大き
な停滞を招いた一因である、と思っている。
<Direction・Mandate・> 15分
ドナーを脳死者のみに絞る理由などについていくつか質問が行われた。
(コメント)特になし。
<Practicability> 1時間5分
まず初めに西山と村上がオブジェクションを持っていること、村上の意図はコンセを取
ることなので stop dis をゴールとした西山のオブジェクションから話すことが決まる。西
山のアイディアは「ソクラテスの唱えた医療倫理の概念に政策が反するため法的実効性が
無い」というものであった。ロジックのアウトラインを確認した後に西山がコンセを取る
方向にゴールを変更したため、他のテーブルメンバーは反論ではなくコンセを取りたい部
分やその影響について理解するアプローチに切り替えた。結果としてDAで話すこととな
った。次に村上のアイディアに移る。村上はDAだけでなくシチュエーションコンパリソ
ンも取り入れたいとする意図を見せたが、これにより各テーブルメンバーの理解度と方向
性が一致しなくなる。シチュエーションコンパリソンの方法論や3impact コンパリソンと
の結び付き、あるいはDAの内容を確認、さらにDAがイメージしにくいといったダウト
など異なったアプローチがテーブル上に現れ大きな停滞を招く。時間を要した後、衛藤と
杉野谷により praca ではDAのみのコンセに絞ることになる。結果、村上のアイディアは
DAの1つとして認められるも、ここで時間終了となった。
(コメント)このエリアにおいて、最大の失敗と言えるのは”Taking concensus”を尊
重し過ぎたことであろう。そもそもコンセを取る作業はタスクの観点から見れば不必要な
ものである。また筆者の個人的な意見であるがコンセを取ることは費用対効果の面でも有
用とは言い難い。まずコンセを取るためにはそれ以前のエリアでいくらか時間を割かねば
ならないし、コンセを取ったことによる効力も不明でありテーブルによっては意味のない
ものになるかもしれない。(例:コンセを取ったAさんとコンセを取らなかったBさん、D
Aプレゼンターに選ばれたのはBさん) 結局、特にDA立論などのためのコンセは1つの
手段であり決して目的ではない、ということをもう一度考えてみてほしい。そういった意
味では今回ゴールがコンセだとわかったロジックの取り扱いに終始し、そこで終わってし
まったのは非常にもったいなかった。
「時間がないので君たちのアイディアをしっかり話す
ためにコンセ無しで、そのエリアに向かいましょう」といったシンプルな提案は誰にでも
できたはずである。このように議論を進めるためにもタイムマネジメントの意識が必要だ
と筆者は考えている。
3.順位と選定理由
1位 衛藤(武蔵大学3年)
チャートやプレゼンの技術が高く、オピニオンプレゼンターとしてスムーズなQAや的
確なカンファメーションを行っていた。しかしながらQCで終わってしまい議論を進める
サジェスチョンが素早く出てこなかったこと、またオピニオンプレゼンターながらAD立
論ができずに終わってしまったことは大きな課題である。基礎的な能力は完成されている
と思うので、今後は後輩の指導に邁進してほしい。
2位 杉野谷(青山学院大学2年)
介入量が多く他者の話に積極的に介入していた。議論の停滞が起こった際にQCのみな
らずサジェスチョンにより収束させようとする意識は見えたが、そのサジェスチョンの浸
透率が低く(ジャッジ目線から見れば的を得たものが多かったが)テーブルメンバーに内容
や意図が伝わっていない、もしくは通るまでに時間を要する場面が多かった。どんなに良
い発言をしてもテーブルメンバーに伝わらなければ意味がないので、今後は自分の考えを
伝える能力を磨いていってほしい。
※今回、1位の衛藤と2位の杉野谷は点数上、非常に僅差だった。ただ、杉野谷は
「Workability にオブジェクションがある」という意思を事前に見せていたものの結局
Workability に進むことなく時間切れとなってしまったため、杉野谷のアイディア次第では
結果が変わる可能性はあった。いずれにせよ、それまでに時間を掛け過ぎたことが問題で
ある。
3位 後藤田(立教大学3年)
伝わりやすいQCを軸に介入していたが上位2名と比べると介入が限定的であったこと、
サジェスチョンがほぼ無かったこと、また後藤田自身のアイディアは発されることがなか
ったためこの順位とした。逆に言えばサジェスチョンによっては上位に食い込めたので、
今後はサジェスチョンに重点を置いて後輩へのエデュケーションを行ってほしい。
4位 西山(東洋大学3年)
Q及びコンパリに向けてのコンセンサスを用いて介入していたが、テーブルに影響を与
える介入がほとんどなかったためこの順位となった。エリアごとにタスクをQで確認して
おり、その取り組みは良かったと思うものの実際にテーブルが停滞した際にそれを用いた
サジェスチョンなどが打てず結局Qのみで終わってしまっており、もったいなかったと言
える。後輩へのエデュケーションでは「QCで引き出したものをSにつなげる」ことを教
えられるとより良いはずである。
5位 村上(日本大学3年)
DA及びシチュエーションコンパリソンを行うためのコンセンサスを通じて介入してい
た。しかしながら他の場面で介入することは全くなかったため、5位となった。今後は自
分のアイディアを話すだけでなく、他者の話にも介入できるようプレパレーションを積ん
でほしい。
※コンセンサスに関しては上で述べたため、ここでは村上のアイディアについて一言添
えたい。彼のDAアイディアは「日本政府の政策によって左翼的な人々が暴動やテロを起
こし日本が崩壊する」というものであった。Japan collapse というアイディアは医療問題
だけでなく刑事問題などでも目にするため特段珍しいものではないのだが、ここで考えて
ほしいことは「コンパリソンを行う上でDAとしてふさわしいか」といった点である。今
回の場合だと①ADと同レベルのものであるか(日本が崩壊する=誰がどんな被害を被る
…?)②テーブルメンバーにとって話しやすい(≒想像しやすいものであるか)
少なく
とも以上の2点は考慮するべきである。DAというのは基本的に投票で決められるため、
例えそれがどんなにプレゼンターが深刻・重要であると感じるものでも皆に選ばれなけれ
ば意味がないのである。そのため今回、村上もアイディア自体はユニークであったがDA
としてふさわしいかと問われれば微妙なところであろう。これからは、どういうアイディ
アが選ばれるのか・どうやったら選ばれるのかという部分にも着目していってほしい。
6位 由良(フェリス女学院大学3年) 介入が非常に限定的であった。
7位 三原(立教大学3年)
米村(東洋大学3年)
五十嵐(明治大学2年)
介入が全く見られなかった。
4.最後に
お疲れ様でした!2年生は1年後までにもっと成長できるように、3年生は後輩たちを
全力で支えられるように頑張ってください!!
日本大学4年 岡本一真
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