木登りを可能にするスーツ

木登りを可能にするスーツ
2班
1.はじめに
先人達が現代にまで積み上げてきた科学の進歩は
素晴らしい,人類は行動範囲を陸地から地底,深海,
空,ついには月面にまで拡大することができた.しか
し人類は地球上の全ての陸地を踏破できたわけでは
ない,ジャングルや洞窟,秘境と呼ばれる場所では車
両が介入できないことが多々あるからである.これ
らのような場所を踏破,探索するためには人の動き
を高度にし,かつ安全を確保出来る能力を携えたス
ーツの開発が必要であると考え,ジャングルでの使
用を前提に木登りを容易に,かつ安全に行えるスー
ツの開発を行った.
海司大輝
市販のリュック
長さ約 2 m
直径 3 mm
図3
2.木登りの手段の検討
木登りを安全に行うために次の手段を用いる.
① グラップリングフックガン(スパイ映画等で登
場する鉤付きの弾を打ち出す銃)を作成する.
② 靴裏に滑り止めのスパイクを装備する.
③ 命綱を木の各所に取り付けながら登る.
④ 木から降りるのを機敏にするために簡易下降機
を作成する.
3.スーツ装備の構造図およびモデル図
3.1装置の構造図
目的①~④を実現するための各装置の構造図を図
1~4 に示す.
幅 5 mm 直径 10 mm のネオジム板磁石
直径 10 mm の金属球
30 mm
③の命綱の構造図
目
的
約 30 cm
図4
直径 10 cm の滑車
④の構造図
3.2使用時のモデル図
図5
命綱を木に固定する際のモデル図
図 5 は木の幹に命綱を取り付けているモデル図で
ある.拡大図は綱の両端を M3 ネジとナットで固定し
ている部分を示している.
35 mm バネ
図 1 ①の構造図
靴
PVC ワイヤ
直径 60 mm の金属板
150 mm
M3 ネジ
図2
②の構造図
図 6 ④の使用の際のモデル図
図 6 は木の枝にワイヤを通して降りようとする際
の図である.
4.実験と観察で得られた結果
4.1目的①について
発射台は完成したが弾頭に鉤爪を取り付ける事が
できず,打ち出しても木の枝に掛けることができな
かった.
4.2目的②について
装備なしと有の時では大きな差があった.
ⅰ)無しの場合
靴が滑り全く登れなかった.
ⅱ)有の場合
M3 のネジを 3 本スパイクにして登った時,非常
に登りやすくなった.観察したところ,トラの様に
爪を刺して登るのではなく,半円上に配置した 3 本
のネジが木の表面の微妙な凹凸に引っかかっている
のが確認できた(図 7).またこの形状はクマの鉤爪
の形状を模倣して加工している 1).
図7 ネジが凹凸にかかる様子
4.3目的③について
ⅲ)装備なしの場合
登ることは可能だが,危険性を感じたため高所ま
では行けなかった.
ⅳ)装備有の場合
命綱が 1 本の場合,体重を掛けると連結部分のワ
イヤが破損し危険だった(図 8 参照)
.
図8
破断したワイヤ
命綱が 2 本の場合,体重を支えることに成功した
が高所に登るにしたがって,命綱が枝にかかり,綱
の長さが足りないために機敏に動くことは難しかっ
た(図 9).しかし木に登り始める前に予め幹に綱
を掛けることで登り始めはスムーズに移動できた.
図9
実際の木登り
4.4目的④について
図6のモデルを再現できたが下降途中でワイヤが
切れてしまい落下した.
5.考察
①の作成において弾頭の発射台を 2 個作成した.
これを発射台 A(a),発射台 B(b)とする.発射台 A
と B で打ち出した際の飛距離に大きな差があったの
で比較を行う.
発射台 A は弾頭が打ち出される寸前で,発射口の
凹凸により軌道が中心から大きくずれてはねあがっ
ているが,発射台 B の構造では弾の動きが 1 方向に
限られているため軌道がぶれることなく発射できた
ことが飛距離の差に現れたと考えらえる.
(a)
(b)
図 10 発射台(a)と(b)との比較
②の装置を使用中,靴底との固定が不十分であっ
たためスパイクが外れることがあった.ワイヤの締
め付けと固定を強化することで一体感を向上させる
必要がある.
③連結部の脱着をより容易に,また命綱の長さを
可変にできなければ,木の上での移動を機敏にする
ことは難しい.
④ワイヤの強化により解決すると考えられる.各
装置は各々の性能を発揮できたが,使用する際に恐
怖心が常にあった.装置の性能を十分にするために
は設計段階での検討を十分に行うこと,ならびに何
度も実験と修正を繰り返し,安定した性能を発揮で
きるようにする必要がある.
6.おわりに
(1)各装置の性能を引き上げるにはより強靭なワ
イヤを用いる事と,各装置との固定をより強力にす
ることで一体感は向上する.
(2)スーツの性能を十分に発揮するためには装置
の検証と修正を何度も繰り返し安定した性能を発揮
できるようにする必要がある.
参考文献
1)クマ,<http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AF%E
3%83%9E> (参照日 2015 年 1 月 16 日).