価格─しくみと適正価格を知る 一般に一物四価という言葉でも表されるように、不動産にはさまざまな公表 された価格があります。また、不動産鑑定士のように不動産の価格を査定する 専門家もいます。不動産の適正な価格を把握することは、正しい取引を行う第 一歩となるわけですが、実はこれが非常に難しいことが分かります。ここでは 不動産の価格が形成される要因と適正な価格の把握法について説明します。 1 価格はどうして決まるか 不動産の価格には、実勢価格、公示価格・基準地標準価格、相続税評価額、 固定資産税評価額など、それぞれの目的に応じてさまざまな価格があります。 このうち実勢価格以外は、それぞれ評価担当者がいて各評価基準等に従って価 格を算出していますが、実勢価格はこれと異なり一般の売主と買主とで合意し た価格等から導かれるものといえます。 ■不動産の主な価格の種類 不動産の価格は、理論的にはその不動産を作るために要した費用(建物など)、 周辺で取引されている不動産の価格、その不動産が今後生み出すであろう収益 (賃貸アパートなどの収益用不動産)などを要因として形成されます。これに、 売主・買主の個別事情(売急ぎや買急ぎなど)が反映されるわけですが、これ らの個別事情が影響するのは特別な場合と考えて良いでしょう。 不動産を市場で売りに出すにあたっては、いくらで売りに出すかというその 販売(売出)価格を決めなければなりません。売主はなるべく高く売れること を望みますし、買主はなるべく安く買えることを望みます。その交渉のなかで お互いの合意により価格が形成されるわけです。 不動産業者に媒介を依頼して取引をする場合は、これらの要因を考慮して販 売価格を判定しますので、通常の場合は市場価格にあった価格をつけることに なります。このため、周囲の取引事例と比べてかなり安い物件が市場に出てい る場合は何か価格を引き下げる要因があるものと考えた方が良いでしょう。不 当に高い物件を購入してしまったり、市場価格より安く物件を売却してしまう など、不動産取引で失敗しないためには、その不動産の適正価格を知っておく ことが大切です。 2.適正価格を知る方法 不動産の適正価格を知る方法として、次の方法があげられます。 1.鑑定評価を依頼する 国家資格を有する不動産の価格を鑑定評価する専門家に不動産鑑定士がい ます。不動産の適正価格を知りたい場合、不動産鑑定士に鑑定評価を依頼する 方法があります。不動産鑑定士は不動産の価格を形成するさまざまな要因を検 討して対象不動産の適正な価格を求め、鑑定評価書として交付します。ただし、 鑑定評価手数料が必要となりますので、事前の費用の確認が必要です。 2.地価公示価格、地価調査価格を参考にする 一般に公表されている土地の価格として、地価公示制度に基づく地価公示価 格、地価調査制度に基づく標準価格があります。地価公示価格とは、都市およ びその周辺地域において、国土交通省が毎年 1 月 1 日現在の標準地の価格と して発表する価格のことです。標準価格とは、同様に都道府県知事が毎年 7 月 1 日現在の基準地の価格として発表する価格のことです。 対象土地の近隣にある公示価格または標準価格と比較して、対象となる土地 の価格を推定することができます。 3.周辺の取引事例、売物件の価格を調べる 一般の人が比較的簡単に相場を把握する方法として、近隣における取引事例 や売出価格を調べるという方法があります。新聞の折込チラシや、不動産会社 の店頭広告、住宅情報誌、インターネット情報などから対象物件の周辺でいく らくらいで売り出されているのか知ることができます。 ただし、中古物件などは売出価格をもとに、価格交渉により取引価格が決定 することが多く、売出価格と成約価格とは異なる場合も多いので注意が必要で す。また、長い間売りに出されている物件の場合は、適正価格よりも上回った 価格であると判断されます。 国土交通省は、平成 18 年から市町村ごとに実際に取引された事例のうち、 取引価格を把握できた事例を公開しています。国土交通省のホームページにア クセスして条件を指定して検索することで取引情報を閲覧することができま す。 4.不動産業者に価格査定を依頼する 不動産業者は、常に不動産売買に携わっているため、周辺地域の物件情報は 豊富であり、取引事例などの資料も持っているので、不動産の価格にも精通し ています。 不動産業者に価格査定を依頼した場合、その評価額だけでなくなぜそのよう な価格に至ったのか査定のプロセスについても確認しておいた方が良いでし ょう。 3 3.タイミングと価格 現在住んでいる住宅を売却して、新しい住宅を購入する場合には、売却と購 入のタイミングを考慮したスケジュールを検討することが必要です。新しい住 宅の購入代金の支払時期が決まっている場合は、それまでに現在住んでいる住 宅の売却を完了させなければなりません。その場合、売り出しの価格がその不 動産の相場より高い価格であれば、買主が見つかるまでは時間がかかり計画ど おり売却ができないことにもなりかねません。 4.新築住宅と中古住宅の価格 一般に建物は築年数の経過とともに価値が減価するため、また、新築住宅と 中古住宅が同じような価格で市場に売りに出ていると、通常は新築物件から先 に売れるため、中古住宅は新築住宅よりも低い価格で売りに出されます。 なお、新築住宅と中古住宅とでは、適用される税の特例や、受けられる融資 の額や利率が異なる場合がありますので注意が必要です。 5.所有権と借地権 建物を建てるために土地を借りることを目的とした地上権や土地の賃借権 を「借地権」といいます。地上権は自由に譲渡ができますが、賃借権を譲渡す る場合には地主の承諾が必要となります。現実には地上権は少なく、賃借権に よるものがほとんどで、一般に借地権といわれているのもこの賃借権のことを さします。 借地権は、完全な所有権と比較すれば権利が弱くなり、両者の価格も当然異 なるといえます。また、借地権の取引は、地域の慣行によりその態様が異なり ます。 借地権の一形態に定期借地権があります。定期借地権とは借地期間が定まっ た借地権であり、その期間が満了したら借地を地主に返還しなければなりませ ん。このため、一般の借地権よりも価格は低く設定されることが多いといえま す。 三井住友トラスト不動産より引用致しました
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