保健と関連した新世紀の発展目標(MDGs)の進捗状況 Progress on the health-related Millennium Development Goals (MDGs) Fact sheet N°290, Updated 14 May 2015 鍵となる事実 ● 世界的に、5 歳未満の子供の死亡数は 1990 年の 1270 万から 2013 年の 630 万に減少した。 ● 発展途上国において、5 歳未満の子供の低体重の割合は 1990 年の 28%か ら 2013 年の 17%に減少した。 ● 世界的に、新たな HIV 感染は 2001 年と 2013 年の間に 38%減少した。結 核の既存症例は、HIV 陰性結核症例の間における死亡とともに、減少して いる。 2010 年には、安全な飲料水の利用に関する新世紀の発展目標は、改善された 飲料用水源の利用という代理的指標による測定で世界は適合したが、衛生 目標を達成するためにより多くの必要事項を実施する必要がある。 国連の新世紀の発展目標(MDGs)は、国連加盟国が 2015 年までに達成す ることで合意した 8 つの目標である。 国連の新世紀の宣言は、2000 年 9 月に署名され、世界の指導者は貧困、飢 餓、病気、非識字(読み書き不能)、環境劣化および女性差別と闘うことを委任 された。MDGs は、この宣言から派生している。それぞれの MDGs は、2015 年を目標とし、1990 年の水準から進捗状況を監視する指標を持っている。これ らのいくつかは、保健と直接関連している。 保健と関連する MDGs の進捗状況報告 一部の国は保健と関連する目標の達成において顕著な成果を上げているが、 他の国々は後れを取っている。最小の進捗にある国々は、しばしば、HIV・エ イズの罹患率が高く、経済的困難や紛争を抱えている。 新世紀の発展目標 1:極端な貧困と飢餓の撲滅 目標 1.C:1990 年から 2015 年の間に、飢餓人口の割合を半分にする 母乳不足に伴う胎児の成長阻害、発育阻害、消耗、ビタミン A と亜鉛の欠 乏を含む栄養不良は、5 歳未満の小児の全死亡の推定 45%の根本原因となって いる。発展途上国における低体重児の割合は、1990 年から 2013 年の間に 28% から 17%に減少している。この進捗率は MDG 目標を達成するために必要な速 度に近いが、様々な地域の間および内部において改善は均等に分布している。 新世紀の発展目標 4:子供の死亡率を減らす -1- 目標 4.A:1990 年から 2015 年の間に、5 歳未満の死亡率を 3 分の 2 まで減 らす 世界的に、5 歳未満の子供の死亡率を減らす上で重要な進歩があった。5 歳 未満の死亡は、1990 年の 1270 万と比べて、2013 年には 630 万になった。1990 年から 2013 年の間に 49%減少し、推定死亡率は出生数 1000 当たり 90 から 46 に低下した。世界的な減少率は近年加速しており、1990~1995 年の年率 1.2% から 2005~2013 年には 4.0 %となった。この改善にもかかわらず、2015 年ま でに 1990 年の死亡率を 3 分の 2 の水準に削減する MDG 目標を達成できそうに ない。 多くの国は、高レベルの予防接種を達成しており、2013 年に加盟国の 66% が少なくとも 90%に達した。2013 年に、世界的な麻疹予防接種率は 12~23 ヶ 月齢の子供達の間で 84%だった。2000~2013 年の間に、麻疹による推定死亡は 481,000 人から 124,000 人へと 74%減少した。 新世紀の発展目標 5:母体の健康を改善する 目標 5.A:1990 年から 2015 年の間に、妊産婦死亡率を 4 分の 1 に減らす 目標 5.B:2015 年までに、性と生殖に関する健康の完全普及を達成する 1990 年の推定 523,000 名から 2013 年の 289,000 名へと妊産婦死亡数の大 幅な減少にもかかわらず、減少率は、1990 年から 2015 年の間に死亡率を 4 分 の 1 に減らす MDG 目標を達成するために必要な半分以下である。 妊産婦死亡数を減らすために、女性は、良質の性と生殖に関する医療および 効果的な介入策を利用する必要がある。2012 年に、結婚または合意婚していた 15~49 歳の女性の 64%は何らかの避妊法を利用していたが、12%は出産の停止 または延期を望んでいたが避妊法を利用していなかった。 妊娠中に少なくとも一度の妊婦健診を受けた女性の割合は 2007~2014 年 は約 83%だったが、推奨された 4 回以上の受診回数についてはその割合は約 64%まで下がった。 熟練者に解除された出産の割合は、周産期、新生児および母体の死亡を減ら すために不可欠であり、WHO の 6 地域中 3 地域で 90%を越えている。しかし ながら、未だわずか 51%に留まっているアフリカ地域など、一部の地域で増加 させる必要がある。 新世紀の発展目標 6:HIV/エイズ、マラリア、その他の疾患と闘う 目標 6.A:2015 年までに HIV/エイズの蔓延を阻止し、その後減少させる 目標 6.B:2010 年までに必要とする全ての者が HIV/エイズの治療を受けら れるようにする。 2013 年に推定 210 万人が HIV に新たに感染し、2001 の年 340 万人から減 少した。2013 年末までに、世界で約 1290 万人が抗レトロウイルス療法(ART) -2- を受けていた。これらの内、1170 万人は低・中所得国に住んでいたが、それら の国における推定 3260 万人の HIV 感染者の 36%に当る。現在の傾向が続けば、 2015 年までに 1500 万人に ART を施す目標を超える。 ART の利用の向上に伴う新規感染者数の減少は、2005 年の 240 万人から 2013 年に推定 150 万人へと HIV 死亡数の大幅な減少に貢献した。エイズに関 連する原因で死亡する者が少なくなるとともに、HIV に罹患している者の数が 増え続ける可能性がある。 目標 6.C:マラリアおよびその他の主要疾患の蔓延を 2015 年までに阻止し、 その後減少させる マラリア: 世界人口の約半数はマラリアのリスクに曝されており、2013 年に推定 1 億 9800 万症例の内約 584,000 人が死亡し、その大半はアフリカに 住む 5 歳未満の子供であった。 2000~2013 年の間に、世界のリスクがある集団におけるマラリアの発生率 と死亡率は、それぞれ 30%と 47%減少した。 殺虫剤を噴霧した蚊帳や屋内用スプレーの配布などの介入策の範囲は大幅 に増加しており、マラリアによる病気や死亡の再流行を防ぐためにこれを維持 する必要がある。2015 年までにマラリアの拡大を止め、発生率を減らす MDG 目標は既に満たされている。 結核: 全世界における結核の年間新規症例数は 10 年間ゆっくりと減少し ており、2015 年までに病気の蔓延を反転させる MDG 目標 6.C は達成されてい る。2013 年に、推定 900 万の新たな症例と 150 万の死亡があった(HIV 陽性 者における 360,000 の死亡を含む)。 世界的に、治療成功率は、2007 年以降高い水準を維持しており、85%以上 の目標を超えている。ただし、主に不適切な治療の結果として発生する多剤耐 性結核(MDR-TB)は、依然として問題になっている。 その他の疾患: MDG 目標 6.C には顧みられない熱帯病を含み、様々な病 原体によって引き起こされる医学的に多様な感染症グループが含まれている。 2013 年に、アフリカトリパノソーマ症がわずか 6314 しか報告されず、過去 50 年間で記録された症例数が最も少なかった。この病気は、2020 年までに公衆衛 生問題から排除する対象となっている。メジナ虫症も 2014 年に 126 例と歴史的 に少数が報告され、根絶の寸前にあり、WHO は 2015 年末までにその伝播を止 めることを目標にしている。 2020 年までに世界的な公衆衛生問題としてのハンセン病を制圧する計画も 準備され、実施されている。 インドの亜大陸の公衆衛生問題として内臓リーシュマニア症を 2020 年まで に撲滅することは、2005 年に計画が開始されて以来発生率の 75%以上の減少を -3- 記録している。リンパ管フィラリア症についても、広がりを止めるために 2000 年以来 50 億回以上の治療が施され、流行が知られている 73 ヶ国中 39 国は 2020 年までに公衆衛生問題として撲滅する軌道に乗っている。 新世紀の発展目標 7:環境の持続可能性を確保する 目標 7.C:2015 年までに、安全な飲用水と基本的衛生を持続的に利用でき ないでいる人々を半減させる 世界は、安全な飲料水の利用と関連する MDG 目標を現在満たしている。 2012 年には、1990 年の 76%と比べて、人口の 90%が飲料水の改善された水源 を使用している。しかしながら、都市と農村との間、金持ちと貧乏人の間など 異なる地域で進行状況は等しくない。 基本的な衛生に関して、現在の進捗状況は、MDG 発展目標を世界的に満た すには余りにも遅い。2012 年に 25 億人が改善された衛生施設を利用できない でおり、10 億人が野外での排便をしている。改善された衛生設備を利用できず に都市部で生活する人口は、都市人口の急速な増加のため増えてきている。 新世紀の発展目標 8:発展のための国際的協力を確保する 目標 8.E:製薬会社と協力して、開発途上国へ必要不可欠な薬を手頃な価格 で提供する 多くの人々は公共部門における医薬品の不足に直面して続けており、価格が 大幅に高い民間部門に行くことを強いられている。2007~2013 年に行われた調 査は、低・中所得の 21 ヶ国における対象としたジェネリック医薬品の平均利用 可能率はわずか 55%であった。 最も低価格のジェネリック医薬品ですら、一般的治療が開発途上国における 低所得世帯の手が届く範囲を超えていた。慢性疾患を患っている患者が支払う 額が最高だった。世界的な慢性疾病の大半に対する効果的な治療法が存在する が、普遍的な利用は手が届く範囲にない。 WHO の対応 WHO は、保健関連の MDG を達成する各国の活動を支援するため協力者と 連携している。WHO の活動には以下の事項を含む。 ● 予防と治療の指針およびその他の世界的な規範と基準の設定 ● 各国が指針を実施するため技術支援を提供する ● 社会的・経済的な要因を解析し、より広範なリスクおよび健康のための 機会に焦点を当てる WHO は、各国が保健政策と計画を策定するのを手助けし、国内の優先的事 項に外部援助を合わせるため協力者と一緒に政府を支援する。WHO は、各国が -4- 保健の支出を計画し進行状況を追跡できるように、保健に関するデータの収集 と普及も行う。 訳注: WHO は新世紀の発展目標(MDGs)を達成する活動とともに、突 如発生したエボラ、MERS、鳥インフルエンザなどの世界流行を防ぐための活 動も行っている。WHO の活動は、各国の分担金および欧米諸国の海外支援基金 とともに、国境なき医師団などの民間協力者によって支えられている。日本も ODA や JICA などの支援を行っているが、人的支援が弱いため余り評価されて いない。 国会における安全保障論議の中で「積極的国際貢献」が主張されているが、 テロとの闘いのみに目を奪われ、発展途上国の貧困や保健問題への人的支援が ほとんど取り上げられない。エボラに対しても米国は CDC などの多数の専門家 が現地入りしており、中国も数百人規模を送り込んでいる。兵隊を送り込むこ とだけが「積極的国際貢献」ではなく、人々の生活と健康を改善するために命 がけで支援活動している WHO への協力を強化することが重要である。平和国 家として「積極的国際貢献」する道は、その他に環境問題など多数あり、日本 の人的支援の在り方を検討すべきである。 新世紀の発展目標(MDGs)および関連目標の達成に向けた国際的進捗状況 Global progress towards the achievement of Millennium Development Goals (MDGs) and associated targets: -5-
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