ササ 存在 気 生き物

ササ いな存在 、けど気 になる生き物 たち
号 で は、
「ササいな
ちPART
と
」という
II
PAR
T
Ⅲ
の場合は悲しいことに、この葉面に伏せ
る行動によりアゲハチョウの芋虫から逃
げる術が無く、ミカンの葉ごとに食べら
れてしまうそうです。
二次元なダニ
「 サ サ い な 存 在、 け ど 気 に な る 生 き 物
た ち P A R T 」 に て、 二 次 元 な ダ ニ
として、扁平な体をもち、体を葉面に密
着させることで捕食者から身を隠す忍者
の よ う な ハ ダ ニ、「 イ ト マ キ ハ ダ ニ 」 を
紹介しました。その記事では、センター
内のササ群集では残念ながらまだ見つ
かっていないと報告しましたが、なんと
毛 虫( チ ョ ウ や ガ の 幼 虫 で 毛 深 い も
の)など、長いふさふさした「毛」で外
毛深いダニ
ハダニ達の紹介をします。
学生さん達とともに見つけたので、その
見つかっていなかった、新たなハダニを
た ※実習にて、これまで本センターでは
れでも無理やり近づこうとすると、ハダニ
ニの体に口針をさすことができません。そ
ダニの毛が触れてしまうため、容易にハダ
ブリダニはどの方向から近づいてもまずハ
す( 写 真 1 と 同 じ 姿 勢 )。 捕 食 者 で あ る カ
を様々な方向に突き出すことでガードしま
葉面に密着させ、背面は生えている長い毛
ニは葉面に伏せることで、毛の無い腹側は
色植物ダニ羂索図鑑(江原昭三・後藤哲
しましたが、2009年に発行された『原
編 )』 に 基 づ き、 イ ト マ キ ハ ダ ニ と 紹 介
れた『日本原色植物ダニ図鑑(江原昭三
ていました。なお、1995年に発行さ
べったく、その薄さに学生さん達も驚い
見 つ け た イ ト マ キ ハ ダ ニ 同 様、 体 は 平
ま し た( 写 真 2)。 北 海 道 の サ サ 群 集 で
実習に参加した学生さんが見つけてくれ
敵から身を守っている動物は少なくあり
の立派な毛がしなり、カブリダニは弾き飛
) に 属 し、 寄 主 植 物 は 異 な
Panonychus
により、明らかにしています。ササマルハ
といった微小なハダニの毛を脱毛すること
「モデル生物多様性実習」。本センターで
今年度から新たに開講した全国公開実習
臨海実験センターとの連携実習)および、
※
「 海 山 連 携 公 開 実 習 」( 筑 波 大 学 下 田
ません。今回学生さん達が見つけてくれ
㎜未満
るものの形態が類似しているミカンハダ
ダニもミカンハダニと見ためが似ているこ
は、
の 現 象 を 観 察 だ け で な く、 体 長
ニに関しては、京都大学農学研究科・矢
とから、同様の方法により捕食回避してい
立した、シロキクラゲ綱として扱われてい
ます。一般にキノコ類の胞子は、発芽する
と菌糸を伸ばしますが、シロキクラゲ類は
午後は、グループに分かれて調
査体験。木の幹にメジャーを巻
きつけて、胸高直径を計測しま
した。
私立大学の学部生に公開しています。
樹液の出ているシラビソの
樹皮を良く見ると、キクイ
ムシの仲間が開けた穴が沢
山見られました。
弾き飛ばされる
恐れ入りますね。
き 飛 ば す と は、
体毛で天敵を弾
帰ってきました。
rt Ⅲ 」 と し て
さて、ほぼ1年ぶりに「ササいな存在、けど気になる生き物
た ち 」 が「 pa
と思うと楽しみです。
年も樹上から、クルミをかじる音が聞こえる日々がやってくる
菅平はだいぶ寒くなってきましたが、いかがお過ごしでしょ
うか? 先日久しぶりに、ニホンリスの姿を見かけました。今
編 集 後 記
実習・特講を、全国の国立・公立・
野修一助教らの研究グループが興味深い
0.5
るのかもしれません。ただ、ミカンハダニ
0
系統的にはキクラゲや他のキノコ類とは独
キノコ・カビ・酵母―
海藻サラダに隠された秘密
0
うっか0り0冷蔵庫で腐らせてしまった食品に
生えるカビ。食卓を賑わす一方で、時に毒を
0
0
もって私たちに牙をむくキノコ。
そして、
ビー
0
ル や パ ン 作 り に 欠 か せ な い 酵 母。 こ れ ら カ
胞子から酵母が現れ、増殖します(写真2
bおよびc、※単細胞で出芽や分裂によっ
て増えるものを、菌類学では酵母と呼んで
います)。酵 母には動物で言う雌 雄の区別
があり、性の異なる酵母が出会うと「接合」
と呼ばれる現象が起き、カビ状のステージ
になります(写真2d )。そして条件が整
)。このように 3つの顔をもつシロ
うと、キクラゲ状のキノコを作るのです(写
真2
キクラゲは、おいしいだけでなく、菌類の
(山田宗樹)
多様なあり方を理解できるよい観察材料で
もあるのです。
12
今回の講師は、高木悦郎特
任助教です。本センターの
樹木園にて、針葉樹の葉を
観察、見分け方を勉強しま
した。
ビ・キノコ・酵母はすべて菌類という1つの
グループに含まれます。しかしそれぞれ全く
異なるイメージがあり、生物学的に同じと言
われてもあまりピンときません。
そんな菌類の3つの顔を、1種ですべても
つ「二十面相」のようなキノコがあることを
ご 存 じ で し ょ う か? そ の キ ノ コ は、 海 藻 サ
ラダの中に ・・・
その名を「シロキクラゲ」
(写
真1)と言います。
シロキクラゲ類は中国名を「銀耳」といい、
古来より中国では高級食材としてもてはやさ
れてきました。
名前にキクラゲと付きますが、
写真 2. シロキクラゲの仲間
( Sirobasidium magnum )の生活環
a. 子実体 b. 胞子の発芽 c. 酵母 d. 接合と菌糸
2015 年9月 12 日に開催し
た、ナチュラリスト養成講座
(第 3 回 )の様子を少しご紹
介します。
様子を想像して楽しくなってしまいました。 (佐藤美幸)
私のイメージ
!?
生態を明らかにしています。ミカンハダ
類 学 上 は 同 じ マ ル ハ ダ ニ 属( the genus
雄 編)』では、「イトマキヒラタハダニ」
と改名されています。 (佐藤幸恵)
発見されたイトマキヒラタハダニ
ばされてしまうのだそうです。しかも面白
写真2 センター内のササ群集で
た「ササマルハダニ」
(写真1)の生態は、
発見されたササマルハダニ
いことに、矢野助教らの研究グループはそ
写真1 センター内のササ群集で
詳しくは調べられていません。ただ、分
ました。今回は、八月に行っ
ニ達の変わった生態を紹介し
上に生息する、ゆかいなハダ
験センター敷地内のササ群集
タイトルのもと、菅平高原実
I
II
今年もササ刈りの季節とな
りました。昨年の生き物通信
号と
36
存在、けど気になる生き物た
37
写真 1. シロキクラゲ
( Tremella fuciformis )
a
第 43 号 2015 年
(平成 27 年)
10 月 12 日発行 発行者:筑波大学菅平高原実験センター © 筑波大学菅平高原実験センター
かはげら草子
カワゲラは渓流域に生息
し、釣り餌や河川環境の指標
※2
ロゴにも採用さ
として利用される昆虫で(セ
ンターの
本通信の印刷・配布は、
東郷堂さんにご協力
いただいています。
月
図 1 1~ 12 月まで見られる 菅平のカワゲラ達
れ て い ま す )、 菅 平 で は 季 節
クの一部。ミネトワダカワ
ゲラをイメージしている。
カ ワ ゲ ラ
※2 本センターロゴマー
を 問 わ ず 観 察 で き ま す( 図
1)。 私 は カ ワ ゲ ラ の 卵 の 中
で起こる発生の様子を観察
し、彼らの進化の道筋を理解
するために発生学の研究を
行 っ て い ま す( 図 2)。 材 料
集めに苦労しないことは喜ば
しい一方、日々休みなく研究
に追われ、カワゲラに振り回
されています。
そんな菅平のカワゲラ達の
1年を枕草子風にまとめまし
た。季節の移ろいと、カワゲ
図 2 オナシカワゲラ科
ユビオナシカワゲラ属の
一種の卵、発生の様子。
はげら。やうやう雪の溶けゆく沢際、少しく
春はか
灰 色 が か っ た 細 い カ ワ ゲ ラ が
らくて、灰色だちたるかはげらの細くうごめきたる。
大明神の滝 しぶきがかかる場所
夏はかはげら。 滝 のそばはさらなり。笹藪もなほ、
かはげらの多く飛びちがひたる。また、ただ一つ二つ
の明かりにさそわれて
などといはず、ほのかに自販機にはりつきたるもをか
灯 火 採 集 を す る の も
し。かがり火など焚くもをかし。
秋はかはげら。夕日のささぬ山奥いと険しゅうなる
沢に、かはげらの、成虫になるとて、三つ四つ、二つ
石のうらに連なって つ い て い る の
三つなど羽化急ぐさへあはれなり。まいて、抜け殻な
どのつらねたるが、いと数多見ゆるは、いとをかし。
日入り果てて、沢の音、 ※ドラミングの音など、はた
言ふべきにあらず。
ラの様子を想像しながら楽し
んでいただければと思いま
雪の上にいる
の かはげらは言ふべきにもあら
冬はかはげら。 雪
ず、沢辺のいと白きも、またさらでもいと寒きに、餌
す。 (武藤将道)
掘り起こして
凍りついた大明神の滝
など急ぎおこして、雪の上歩き回るも、いとつきづき
ミヤモトクロカワゲラ
し。昼になりて、ぬるく雪の溶けたれば、 滝の氷も、
黒きかわげらがちになりてわろし。
※ドラミング…植物の葉や枝などを腹部で叩
いて音を出す行動で、繁殖に関わるコミュニ
次号は
発行予定です
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ケーションに用いられる。なおトワダカワゲ
ラ科はドラミング行動を行わない。
100 μ m (0.1 mm)